腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2023年12月

気分は下剋上 ロンドン編 157 香川教授視点

 何となく並んで歩きながら聞いてみた。
「いいえ、ただ『田中先生を語る会』でしたっけ?
 正式名称は忘れましたがとにかく、そういう田中先生のことを語るライングループが有りまして。
 私()入会していないのですけれども、手術室のナースから画面を見せて貰いました」
 もしかしてライングループとやらでは既に拡散されているのだろうか。いや、柏木看護師のこの表情では間違いなくされている。
 「私()」と彼女が強調した理由は、祐樹が以前教えてくれた。
「柏木看護師は貴方のことを淡い片思いの対象だと思います。しかし、柏木先生というれっきとしたご主人がいらっしゃいますし、言うなればスターを見るような眼差しというか距離感なので別に問題はないでしょう」
 そんな想念が頭を(よぎ)ったのは現実逃避をしたがっている脳の働きなのだろう。
 しかし、現実というのは直視しなければ何も始まらないことも重々承知しているので恐る恐る口を開いた。
 本来ならば聞きたくないのだけれど。なにしろ、斎藤病院長の方針通り、成功した暁には大々的に広める心積りはしていた。
 ただ、こんなにも早い段階で病院に知れ渡ってしまっていたなら億が一の事態になれば恥をかくのは祐樹なのだから慎重にことを行うべきだと考えていたにも関わらず……。思わず天を仰ぎたくなったが。
「……ちなみにどんなことが書かれていたのですか?医局の中では既に情報が共有されているので、柏木先生もご存知です。
 しかし、病院内のウワサというのはアテにならないのも周知のことですよね。
 誤ったことが流布されていたら(すみ)やかに訂正をしないとならないと考えています」
 彼女はスマートフォンをシャネルのバッグから取り出している。
「その部分だけ切り取って送って貰いました。
 ただ、発信元は心臓外科の三好さんなので単なるウワサではないと判断していたのですが念のために、主人に見せて、真偽を確認するのが先だと思いました。
 しかし、ご存知のように主人は病院泊まりが多いものですから、ここで教授に会うことが出来て本当に良かったです」
 祐樹と同様に柏木先生も救急救命室では重量な戦力だ。しかも救急救命室がセンターに格上げになった場合はセンター長というポジションが確定している。
 センター長は准教授並みと病院では見做されるので、心臓外科の医局長よりも「出世」することになる。柏木先生ほどの人材の流出は正直痛いのだけれども、救急救命センターとなれば責任者を常駐させないとならないので仕方がない。
 今の救急救命室は北教授が一応の責任者だけれども、災害地医療の世界的先駆者として地震などが起こった場合は即座に駆けつけている。
 四六時中災害が起こるわけではないので、実際は北教授曰く「秘密の隠れ家」で救急救命室のモニタリングをしているが、現場の指揮官として杉田師長に全幅の信頼を置いているので滅多に指示を出すこともない。
 しかし、大学病院に縛り付けられるのを嫌っているし、身軽でありたいという北教授の意志を斎藤病院長も尊重している。
 というのは病院内で国際学会の講演依頼が入るのは北教授だけだった。
 北教授は今のまま据え置きとしてセンター長のポストを新たに作る理由の大半は国際学会に重きを置いているからだ。
 次に呉先生が指名されたので斎藤病院長の得意顔が目に浮かぶようだ。
 まあ、センターに昇格すれば、救急救命医全ての念願だったドクターヘリも購入出来るようになるだろう。救急救命の場合はいかにして早く専門医の手当が受けられるかで救命率も跳ね上がるのだから。
 ただし、経費削減を念仏のように唱えている事務局長との壮絶なバトルを覚悟しなくてはならないが、事務局長に前人未踏の勝率5割クリアを達成している祐樹も交渉に加わると以前言っていたので大丈夫だろう、多分……。
「これですわ」
 スマートフォンの操作をしていた柏木看護師が画面を見せてくれた。
 文面を確認し、え?と内心で首を傾げた。
 ……これは三好看護師が医局にずっと居ても知り得ない内容までが書かれている。
 看護師が医局に居続ける慣習はないし、医師への報告などすべきことを果たすと直ぐに部屋を出ると祐樹からも聞いている。
 しかし、三好看護師が知り得ない情報、しかも物凄く正確かつ端的な文面に眩暈を覚えつつ必死で頭を動かしてリーク元を探った。
「オックスフォード大学での国際公開手術なんて素晴らしい快挙ですわね。香川外科の更なる栄誉です!!」
 自分の暗澹とした心中(しんちゅう)など窺い知る(よし)もなく柏木看護師は明るい笑顔で告げている。
「そうですね。あくまで成功を収めれば……の話ですが……。
 いえ、勿論、田中先生の成功を信じてはいますが……」
 この文章の書き方は多分祐樹だ。
 そして、患者さんにも看護師にも気さくに話し掛けている祐樹が三好看護師に頼んで拡散をお願いしたのだろう。
 他の医師はそこまで看護師と円滑な関係を結べていない。唯一の例外は久米先生で、脳外科のアクアマリン姫こと岡田ナースと婚約をしている仲だけれども、もっと散文的な文章になるだろう。散文的というか詩みたいなやり取りが続くハズだ。
 だから、総合的に考えてこれは祐樹が意図的に病院内に拡散させた文章に違いない。
「どこか間違った情報でも?」
 彼女の声に我に返った。
「いえ、全てが真実です」
 真実なのだけれども……。




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気分は下剋上 ロンドン編 165

「実は……搭乗していた飛行機でドクターコールが鳴ったので、名乗り出ました」
 本当はレアチーズケーキをお豆腐の冷奴と思いっきり勘違いをして醤油を掛けてしまったエピソードも持ち合わせていた。
 そしてCAさんに露見するのが恥ずかしくて完食した。
 しかし、ケーキもこよなく愛している彼には言わない(ほう)が良いだろう。
 なまじ卓越した記憶力の持ち主だけに、レアチーズケーキを食べる時にそんなネガティブな情報が頭の中を過ったらきっと困る。
「ドクターコールか……」
 最愛の人が感心した表情と月の光のような眼差しで祐樹を見上げている。
 彼()特にプライベートではネガティブなことは言わない人なのだけれども、ドクターコールに応えるのが医師の義務だと信じている。
 それは医師免許を取得してからずっとそのように考えていたらしい。
 その点祐樹は彼と付き合ってからドクターコールが掛かっても消極的だったことも覚えているのだろう。
 彼が当然のように応じたので祐樹が仕方なく付き合ったことも。
「はい、貴方と対等の恋人でいるためには、同じように医師の責務を果たす必要があると思いまして。
 それに一応私も救急救命医の端くれです。
 しかし、心臓外科医は端くれで終わる積もりは毛頭有りませんけれども」
 救急救命医は端くれとうか兼業のようなモノだ。
 ただ、専門は心臓外科だし、明日の手術に成功して「世界的」という認知度を得ようと固く決意している。
「そうなのか……。ただ、一人で処置に当たるというのはなかなか大変だっただろう?」
 案じるような憂いを帯びた声が夜の静寂(しじま)に一瞬煌めいた後にテムズ川の水面に溶けていく。
「何とかCAさんの協力を得て大事には至りませんでした。ヒースロー空港に飛行機が着いたらピンピンして降りていらっしゃいましたよ?」
 結果報告を先にしておいた(ほう)が最愛の人が余計な気を揉むこともないだろう。
「そうなのか?それは良かったな。
 心筋梗塞とかそういう大事に至らなくて本当に良かった」
 薔薇色の溜め息を零している最愛の人と繋いだ指を力付けるように指をスライドさせた。
「緊急着陸をするかどうか、機長からお伺いが入ったのも事実なのですが、モンゴルしか降りる空港がないらしくて、病院が有るかも分からないですし、有ったとしてもどんな設備が整っているかとかそういう細部のことは全く分からないので……。
 だったら無理に下りずに出来るだけ飛んで所謂(いわゆる)先進国まで辿り着く(ほう)が良いと判断しました」
 彼もさり気ない感じで左右を見回した後に細いけれども力強い指が祐樹に絡んできた。
「それが正解だと私も思うな……。祐樹、お疲れ様」
 労わるような笑みを浮かべる最愛の人の怜悧で艶やかな眼差しと祐樹の視線を絡めた。
「そのせいで直前まで感じていたプレッシャーは雲散霧消してしまったので良かったと思います。
 その後もその患者さんのエコノミークラスの座席まで異常がないか見に行って程よい緊張感を味わいました。
 ヒースロー空港に着いた時点では患者さんではなくなり、名前も顔も忘れてしまったのですが……」
 最愛の人は若干華奢な肩を竦めて苦笑の花を咲かせている。
「それも祐樹らしいエピソードだな……。
 ただ、プレッシャーがなくなったという点は大変喜ばしい……。ああ、もしかしてファーストクラスと往復していたので、私が同じ飛行機に乗っていないことを知っていたのか?」
 確かめるような光が眼差しに宿っている。 
 そう言えば「同じ飛行機云々(うんぬん)」と聞いた覚えがある。
「それも有るのですが、もし同じ飛行機に貴方が乗っていらっしゃったら、私よりも先に応えたと思います。
 私がベルリンに居ても立っても居られずにホテルにお邪魔しましたよね?その再現をして下さったのは嬉しかったですが、ドクターコールの(ほう)が貴方にとって優先順位が高いと思います。
 そういう点も医師として見習わなければならない美点なのですが……、だから同じ飛行機に乗っていたら貴方と鉢合わせしただろうと思いました」
 実際は後付けの理由だった。
 というのは教授職として充分忙しい彼がこの地に来てくれるとは全く思っていなかったので飛行機にも当然ながら居ないと思い込んでいただけだった。
 ただ、間違いなくドクターコールが掛かった場合に条件反射的に応えていただろう。
「確かに。祐樹を驚かせたかったが目の前の患者さんの命が掛かっていた場合にはそちらを優先するな。
 祐樹とは遅かれ早かれ会うことになるだろうから、その時点で邂逅していてもさほど問題はないだろうし」
 一際煌々と光を放つ宿泊先のホテルが見えてきた。
「やはり、夜の闇も街の雰囲気として受け入れているロンドンのしっとりとした雰囲気ではなくて、夜の闇を恐れて、人間の力で屈服させようと頑張ったルイ十四世の気持ちを強く感じますね、ベルサイユ宮殿を模したホテルは。
 国民性の違いかも知れないですが。
 ただ、光が燦々と煌めいているのも綺麗ですが。バッキンガム宮殿で今でも舞踏会が開催されるかどうかは全く存じませんけれども、舞踏会の開催などで宮殿中の灯りが燈されたらこんな感じになるのかなと想像してしまいます……」
 ずっと繋いでいた手を名残惜し気に離した。




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気分は下剋上 クリスマス編 最終話 (2023年)

「いや……私が付けて良いか?」
 欲しいなと思っていたが、なかなか買う機会がなかったアップルウオッチだった。
 相変わらず最愛の人のプレゼントは祐樹が欲しいと思っている物をピタリと当ててくる点も愛情を感じる。
「勿論です。有難う御座います」 
 上着を脱いでワイシャツのボタンを外し、そして、彼に手を差し伸べた。 
「病院でこの時計を付けて働いてくれると、別の場所に居ても同じ時を刻んでいるというのが分かって……、ベルリンの時のお土産の時計も大切に使ってくれているだろう?
 アナログとデジタルの両方で祐樹と共に時を刻んで生きていくと実感出来る品物が良いなと思ってこれに決めた」
 話しながら黒いベルトを時計本体に水が流れるような動きで付けていってくれた。
「同じ時間の共有ですか……。それをこれでより一層実感出来ますよね。有難う御座います。
 アップルウオッチ、欲しかったので本当に本当に嬉しいです」
 最愛の人は生気に満ちた薔薇色の笑みを浮かべている。
「実は知っていたというか、察していた。
 私のネクタイを買いに店舗に一緒に行っただろう。その時に祐樹が店員さんと熱心に話し込んでいた。
 欲しいのかなと思って見ていて、祐樹が真剣な眼差しを浮かべてくれていたのでこれに決めたのだけれども……」
 ネクタイのエリアに居た彼が、そこまで見ていてくれたのかと思うととても嬉しい。
 集中力を何分割にも出来るのは優れた外科医としてある意味当然だったが、死角に入っていたと記憶している。
「とても嬉しいです。
 私の立場からすると、こちらの時計のほうが有能な医師に見えそうなので、とても嬉しいです」
 彼は極上の鮮やかな笑みを浮かべている。
「祐樹はそんな物を付けていなくても既に有能な医師として病院内で認知されているだろう?
 ボーナスも病院長が破格の金額を決めたと聞いているし……。
 そのお蔭様でこんな綺麗な指輪を貰ってとても嬉しい」
 薄紅色の指が、まるで芸能人の婚約発表の時のような感じで翳された。
「その指輪も貴方の指を飾るためだけ・・に作られたみたいに似合っています、よ?
 それはそうと、あの薔薇のツリーをバックに撮影するには良い時間ですね……」
 聖なる夜の愛の交歓はその後にしようと下心を押し殺して笑みを浮かべた。
「そうだな……。あの薔薇のツリーをバッグに画像を撮って祐樹のお母様にも送りたいな……。
 ああ、指輪は気を悪くなさるかな?」
 そういう配慮深さも彼の美点だ。
「母は貴方が幸せそうに笑っている画像のほうが喜ぶのでそのお気遣いだけで充分ですよ。
 ……そもそもダイヤモンドをリフォームして下さった時も喜んでいましたし。
 あれも私の国際公開手術の祈り・・のためにリフォームして下さっていたのですよね……。色々考えて下さったのを後から伺って愛の深さを感じました。
 今年は貴方の愛情を再確認した年でした、ね……」
 ジャケットを羽織り直して部屋の外に行く準備をしながらも、真摯な口調で告げた。
「今年は、祐樹の外科医としての飛躍の年だったからな。
 結果が良かったから全て良し、なのだが……」
 懐かしそうな笑みを浮かべている最愛の人もしなやかな動作で立ち上がっている、左手の薬指を艶やかな薔薇のような笑みを浮かべて見詰めながら。
「やはりこの時間だと人が居なくなるな……」
 一階に降りていくと暖炉の火と静謐な薔薇のツリーが存在感を放っていた。何だかクリスマスディナーが終わった貴族の屋敷のような雰囲気だった。
「そうですね。このホテルは正面玄関にはドアマンが居ますよね?ですからフラッと入って来る人が居ないのでしょう……」
 最愛の人が納得した感じで頷いている。
「確かに……」
 薔薇のツリーを背後に佇んだ最愛の人は、生花の薔薇の瑞々しい魅惑を湛えている。
「来年どんなツリーになるか必ず一緒に見に参りましょうね」
 嬉しそうな笑みを浮かべる最愛の人にスマホを向けると、右手を翳してくれた。
 その姿を永遠に残すためにタップしてカシャっという音を静謐な空間に響かせる。
「ツーショットが欲しいな……。あ!あの人たちに頼むというのはどうだろう?」
 円安のせいなのか、明らかに外国人と思しき雰囲気の男性の二人連れに最愛の人が弾んだ視線を向けていた。
 祐樹の勘だけれども、そう・・いう・・カップルだろう。彼はそういう裏事情には疎いので何も気付いていないだろうが。
「良いと思います。頼んでみましょうか?」
 近付いて英語で頼めば、全てを了解した雰囲気で快諾してくれた。
「愛していますよ、永遠に」
 若干華奢な肩を抱いて囁いたら、極上の笑みを浮かべた顔が祐樹のほうへと鮮やかに咲き誇った。

              <了>





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「心は闇に囚われる」 211

 だって、さぞかしいっぱい手に持っているとか台車?押し車?とにかく呼び名は度忘れしたんだけど、手で運び切れない物を載せて運ぶ企業に置いてある運び道具みたいな物を持って戻って来るかと思っていたら、何も持っていなかったのだから。
 幸樹も切れ長の目を驚いたように見開いている。
「西野警視正、このリストにあるモノを全てお送りします。ご確認下さい」
 カツカツと靴音を響かせて東野副部長が近づいて何だか賞状授与式みたいにA3と思しき紙を渡している。
 そっか、たくさんあり過ぎて一度で運べないからお品書きみたいな物を作成していたのかぁ。
 道理で時間が掛かっていたんだな。
 幸樹と西野警視正はその空き時間を利用して話し合っていたから良いんだけど、さ。
 もしかしたら、一気にいっぱい持ち出して上司の部長とか部下の目を憚ったのかも知れない。
 ドラマでしか知らないけど、出世コースに乗るとライバルが足の引っ張り合いの機会を虎視眈々と狙っているらしい。
 社内秘を持ち出すなんて、とんでもない人間だとか会社を裏切ったな!とかそう言って追い落としに掛かる人も居るのかも。
「これほどの物を……」
 西野警視正とそしてその紙を覗き込んでいる幸樹が驚いたような声を出している。
 俺は隅っこに座っていたせいと、視力の悪さが相俟って文字がぼんやりとしか見えなかったので、具体的には全然分からなかったんだけど、幸樹が満足そうな表情を浮かべていて、またずっと繋いでいる手の力が強まったことから察した。
「全幅の信頼を置く部下と私でこのリストに載っているものは全てお送りします。
 社外秘の物が多いので内密に運びたいのです。
 送り先を教えて頂ければ幸いです」
 西野警視正はK戸大学の研究室の住所と電話番号をメモ帳に書いて渡している。
 幸樹が言った通り、原因療法は専門家に任せるらしい。
「確かに承りました。
 ま、どこの組織でも多かれ少なかれ、有ること無いことを騒ぎ立てて上役に告げ口する人間が居ますから、その予防策です」
 俺の当てずっぽうが的中したのかな?
 ドラマでしかそういう足の引っ張り合いは知らないんだけど、ホントにあるんだぁ!
 俺のお父さんは零細企業を経営しているんで、大企業の実態なんて知らない。いや、大企業に勤めていても、子供に一から十まで話さないのかも知れないんだけど。
 だって「倍返し」が主人公の口癖だった銀行を舞台にしたドラマを母さんと観ていたけど、計画倒産というのかな?お金は充分にかき集めておいて自分名義とか愛人名義の預金はたんまり持っていて、会社のお金はゼロっていう倒産を仕組んだ「悪役」が居た。
 ウチだって一応、零細とはいえ会社経営者のお父さんが居るし、一応後継ぎになろうと思っていたんで真面目に講義を受けている。
 株式会社になっている場合には、会社が倒産したら会社名義のお金とか資産とかは銀行に持って行かれるとか一括返済は迫られる。
 また、ウチくらいの規模だったら、自宅とかも抵当に入れないと銀行はお金を貸してくれないっていうのが実状らしい。
 だから、社長の持ち家とかの「個人資産」と会社という法人資産はぐちゃぐちゃに混在しているってのがホントみたいなんだけど、上手く隠そうと思えば出来るらしい。
 といっても色々な手段を講じないと不可能っぽいんで、幸樹ならともかく俺には無理いっぽい。
 それはともかく、億単位の新規融資を受けて直ぐに会社を倒産させた悪役の社長から、その融資したお金を取り返す銀行員の奮闘が描かれていて、その銀行員の奥さんは何にも知らなかったっぽい。
 他にも金融庁監査だかで見られたらヤバい資料を自宅に「疎開」させていた。銀行員は「見られたらマズいものだからしばらく家に置いて欲しい」とだけ説明して段ボールの箱の中身の具体的内容を説明していなかった。
 まあ、延々と説明されてても銀行に縁もゆかりもない奥さんにはサッパリ分からないんだろうけど。
 ちなみに俺だって父さんの極秘書類があったとしても、説明されたってきっとチンプンカンプンだ。
 家族なんてそんなモノかもしれない、な。
 そっちの銀行のドラマなんてミスをしたり精神疾患なんて患ってしまったりしたら片道切符の「島流し」としての出向が、ほぼ確定するらしい。
 そういう大企業の内情がどこまでリアルに描かれているのかは分かんないけど、まるっきり嘘ってわけでもないっぽい。
 西野警視正は納得したように頷いている。
「あと、上野教授から電話が掛かってきたと部下から伝言を受けました。
 『私』がK学院大学に伺ったらしいですね」 
 やっぱり西野警視正が出した『東野』副部長の名刺が本物かどうかを確かめに来たんだ……!!
 西野警視正も苦笑いをしている。
「あまり名刺を悪用しないで頂きたいです。
 今回は不問に致しますが……」
 西野警視正は首を亀のように竦めている。
「済みません、正直に名乗るのを憚ってしまいまして……。警察関係者だと知られるわけにはいかなかったもので……。申し訳ありません。
 ただ、一つだけ弁解を許して頂けるならば、決して副部長の評価を落とすような言動はしていないです。
 商社の人間が当然知っていることしか聞いていませんので」
 深々と頭を下げている。
「ご事情は充分にお察しいたしましたので、それは良いのですが。
 それはともかく、部下が受けた電話なので私が直接話したわけではないのです。
 そして幸運なことに予定には『顧客訪問』とざっくりしか書いていなかったので『お伺い致したかと存じます』と返答をしたらしいです。
 ただ……」
 何となく不審そうな表情を浮かべていた。
 「ただ」何だろう??




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気分は下剋上 クリスマス編 9 (2023年)

「今の貴方のように薄紅色の指には良く映えると思いまして……。
 これはパパラチアサファイヤという石だそうです」
 瞠った目が珍しそうな煌めきを宿している。
「そうなのか……?ルビーとサファイヤはコランダムだろう。紅く発色すればルビー、青くなるとサファイヤと呼ばれるのは知っていたが、赤系なのにサファイヤなのか?
 何だか池に咲いたはすの花のような感じなのだな……」
 指輪を持った薄紅色の長く細い指を宙に翳してリングをじっと見つめている、生気に満ちた薔薇のような眼差しで。
「私もその辺りのことは気になって聞いてみたのですが、仄かにオレンジがかった薄い桃色のこの石だけが、そう呼ばれるのだそうです。これ以上ピンク色に寄っても、同じくさらにオレンジっぽい色をしていてもそうは呼ばれないらしいです。
 つまり、特別中の特別だそうです。選定に選定を重ねたという感じですね。
 貴方にははっきりとした色も似合うのですが、この指が綺麗な薄紅色をしていますよね?
 デートの時などは特に。
 二人きりの時に付けて下さればとても嬉しいです。
 それに、この色は『奇跡の蓮の花の色』とも呼ばれているそうですよ。
 この指も神の手と呼ばれていますよね」
 薄紅色の指を祐樹の指と絡めた。彼が指輪を持っていないほうの手を。
「仕事の時もつい見入ってしまう指ですが、こうして二人きりで過ごしていると、こういう色になりますよね。ですから、この薄紅色に良く映える色を必死に探してこれを買いました。
 日常使いではなくて、デート専用に良いかと思いまして」
 彼の指からリングを恭しく取って眼差しで合図をしたら、花よりも綺麗な笑みを浮かべて指をすっと伸ばしてくれた、祐樹が指輪を指に通しやすくするために。
「ああ、思った通り、いや予想以上ですが……やはり似合いますね。綺麗な指がより一層映えてこの世の物とは思えないほど綺麗です……」
 細く長い指に蓮の花が咲いたような、いやそれも京都の寺で咲いている花ではなくて何だか極楽浄土に咲いているとか言われている天上の蓮とはこういう物に違いないと思ってしまう。
「指よりも祐樹が贈ってくれた宝石の方が綺麗だ。それにこの石は大きいだろう?
 だから内側から煌めく蓮の花の色が映えるのだと思う。
 祐樹、有難う、宝物がまた一つ増えた……」 
 最愛の人の細い指全体を覆うような石の大きさというのもなかなか無くて、祐樹が取り寄せて欲しいと百貨店の宝石売り場に依頼してから二カ月も掛かった代物だった。  
 ダイヤモンドは大きい石もたくさんあるが、コランダムは1カラット以上の物はなかなか出来ないらしい。  
 しかし、この天上の蓮の花を彷彿とさせる宝石はある程度大きくなければこんなに美しくは煌めかないので、それこそ世界規模で探して貰った。
「いえ、貴方に似合う物をと考えたのと、ロンドンまでわざわざ来て下さったお礼を兼ねてです。
 不覚にも金庫に入れていたのを失念してしまって焦りましたが……。まあ、あれはその……忘れて下さい。
 しかし、私は貴方が私の些細な行動の変化をしっかりと覚えて下さっていたことだけ・・は覚えておきますけれども、ね」
 彼の薄紅色の指と第一関節までを「奇跡の蓮の色」が煌めいて相乗効果で活き活きとした眩い光が艶めいて煌めいている。
「誰だってうっかりすることは有るので、そのことは全く気にしていない。
 これは色こそ特別だけれども、コランダムなのだろう。だったら硬度は心配しなくても良いな?」
 薔薇色の笑みを浮かべた彼が祐樹の目を真っ直ぐに見て、眼差しが絡まった。
「はい、そのように聞いています」
 先ほどよりも紅を増した滑らかな彼の首が頷いてソファーから立ち上がった。
 そして彼も鞄を持って戻って来た。
「これは私からの祐樹へのクリスマスプレゼントだ。
 私も国際公開手術成功のお祝いを含めているので、祐樹ほどではないけれども普段よりも奮発した」
 魔法のように見覚えがある暖炉の日を彷彿とさせるオレンジ色の大きめの紙袋が出てきた。
 この鞄にこれほど嵩高い物が入っていたとはと目を見開いてしまう。手先が器用で空間認識力も神業な人だけが出来る芸当だろう。

 祐樹はそこまでご縁はないものの、最愛の人御用達の老舗ブランドの物だった。
「有難う御座います。中身を見ても構いませんか?」
 何が入っているのかとても気になった。そして口調こそ疑問形だが「いい」と言われることが前提の問いだ。
「勿論だ。気に入って貰えればとても嬉しい」
 リボンをほどいてオレンジ色の箱を開けた。彼からは時折ネクタイを貰っているけれども、箱の形から考えてそれではないのだろう。
 しかし、祐樹に必要な物がこのブランドに有るのだろうか?
 箱を開けて白く薄い紙を剥いでいくと黒い牛革のベルトと思しき物が目に入った。ただ、中途半端な長さと形で内心首を傾げた。
 さらに薄紙の中に指を入れると本体部分と思しき物が出て来た。
「有難う御座います。これだと病院内でも使えますね。
 ただ、正式の場所に行く時にはやはり昔からの時計をしている先生の方が多いので、その場その場によって使い分けをしなくてはならないとは思うのですが。
 ベルトを付けてから手首に巻いてみても良いですか?」




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