腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2023年11月

気分は下剋上 ロンドン編 145

「これはケイジャン味ではないように思える。『オリジナル』ではないか?
 ケイジャンはもっと香辛料とスパイスが効いていて独特の味なので」
 涼やかな声が薄紅色の煌めきを宿している。
「そうなのですね……。香辛料が効いているということはシンガポールのラッフルズで食べたアフタヌーンティーみたいな味ですか?
 香港のペニンシュラと異なって貴方は『本格的な英国的風ではなくてシンガポール風だな』と仰っていましたよね?」
 夜目にも白い首筋がしなやかに動いて祐樹の顔に視線が当たった。薄紅色の唇が懐かしそうな笑みを浮かべている。
「確かにそういう感想を言ったな。ただ、どちらも甲乙つけがたい味だった……」
 「どちらも」を強調しているのは、リッツカールトン大阪の物のように見た目の良さに拘るあまり、スコーンがビスケットよりも小さくなっていたりサンドイッチも下手に凝っていたりしている。
 その上マカロンなどの甘い物中心の味になっていることに対する彼なりの批判だろう。
 最愛の人は誰よりも外科医の才能を持ち合わせているけれども、ネガティブなことを口に出さず黙って首を振るだけだった。職場では端的で明瞭な言葉遣いはするものの。
「本場のアフタヌーンティーはどうなのでしょうね……。時間が有ったら是非ペニンシュラの味と比較したいですね」
 明日は祐樹は絶対に参加すると心に決めているレセプションが終わったら帰国の途につく予定だ。……もちろん手術に失敗したら出席出来ずに尻尾を巻いて帰るしかないが。
「……そうだな。折角イギリスまで来たのだから、本場の味を食べてみたいなとは思っている」
 それほど乗り気でない雰囲気だったので、時間が空いた場合にだけ誘ってみようと決意した。
「それはそうとスコッチエッグは思っていた以上に美味しいです。
 きっと私一人で食べていたらこんなに心にしみる味では無かったと思います。
 最愛の貴方が隣で召し上がって下さるからでしょうね」
 一人で食べるよりも誰かと食べる(ほう)が美味しいというのは誰もが経験していることだろう。
 その(・・)()が祐樹最愛の人なので尚更だ。
「私も初めて食べるスコッチエッグが、他でもない祐樹と共にベンチに座ってなので、美味しさは十倍、いや十乗になっている、な」
 最愛の人の紡ぐ言葉が川面に花びらのように散っていくような気がした。相変わらず無意識に紡ぐ口説き文句は健在のようだった。
 それにしてもロンドン市民はジョギングとかウオーキング・犬の散歩といった習慣はないのだろうか?
 日本だったらこんな場所はそういう人が通りかかりそうな絶好の場所なのに……?
 同じベンチに座っているけれども、パーソナルスペースは友達の距離感だ。勝手知ったる場所だとか、絶対に人が来ないと分かっている場所では恋人の距離感で座るのだけれどもここはそのどちらでもない。
 ただ、人通りが少ないと言っても公共の場所なのでこの距離感は必須だろう。
 ロンドン市民に時を知らせるビッグベンは煌々とした灯りを川面に振り撒いているが国会議事堂は必要最低限の照明のみで、その対比も興味深かった。
「まさか貴方と一緒に食べることが出来ると思っていませんでしたので、本当に美味しいですよね。
 売り場で見た時は二つで足りるかと内心思っていましたが、何だかどっしりとした味わいで……、三つも買わないで正解でした」
 花のような白皙の顔が活き活きとした笑みを浮かべている。
「確かにそうだな……。三つずつ買っても冷えていても充分美味しいのでホテルに持って帰って明日の朝ご飯にするという手段もあるけれど……」
 最愛の人と他愛のない話を交わして、そしてテムズの川面を見ながら軽食を摂るという行為だけで祐樹の心は満たされていく。
 ジョギングなどの人が来ないのも祐樹の運の良さだと思うことにしよう。そして、その強運が明日まで続くことを心の底から祈りたい。
「明日の朝は本場のイングリッシュブレックファーストを食べてみたいです」
 いつも控え目な最愛の人はリッツホテルで「邂逅」を果たしてからより一層言葉少なくなっている。
 多分、明日に控えた国際公開手術のことを話題にしたくないのだろう。
 祐樹が言い出したら応えてくれるだろうけれども……。
「本場のイングリッシュブレックファーストか、それも良いな。
 あのホテルならばもしかしたらフワフワのオムレツをコックさんが目の前で焼いてくれるかも知れないし……」
 弾んだ声が金色の粉を撒いたようだった。
 祐樹はスコッチエッグを一つ食べ終わって、アイスティを飲んだ。
「ああ、フワフワのオムレツ作りは貴方の野望(・・)ですからね……」
 第二の愛の巣とも言うべき大阪のリッツカールトンのクラブラウンジでもオムレツはコックさんが焼いてくれる。
 美味しいことは美味しいのだがただ、高さはそれほどでもないことが彼には不満らしい。幼い頃にお母様が作ってくれたオムライスの高さを目指していると聞いている。
 しかし、どの料理の本を見てもその作り方は載っていないらしい。
 幼い頃なので記憶が美化されているのではないかと祐樹は密かに思っている一方で彼の卓越した記憶力は何でも鮮明に覚えている。
 例えば通りすがっただけの車のナンバーすら無意識に暗記していて、凱旋帰国後の医局内トラブルの時に随分助けられた。
 だから、幼い頃に食べたオムレツも実在する可能性はある。
「大阪のリッツカールトンのクラブラウンジのように目の前で焼いてくれれば良いのだが……」
 怜悧な声で言葉を紡ぐとアイスミルクティの容器を持ち上げている。
 こんなに人が通りかからないのであれば、もっと距離を詰めても良かったのだけれども、今夜愛の行為をしないと宣言した手前、そう(・・)いう(・・)気持ちになったら歯止めが効かなくなりそうで自重(じちょう)しよう。
「そうですね。ただ、万が……」
 祐樹が他意なく言葉を選ぶために口を閉じると最愛の人の若干華奢な肩が夜目にも分かるくらい揺らいだ。
 もしかして「万が一」という言葉に敏感になっているのは祐樹よりも彼かも知れない。慌てて言葉を継いだ。
「普通の……いや、一般的なレストランのようにお皿が運ばれて来て、その上に載っているのがフワフワのオムレツだったらどうしますか?」
 安堵めいた吐息を零す最愛の人はやはり祐樹の手術(オペ)のことを案じてくれているのだろう。
 その肩を抱き寄せたい欲求に必死で耐えた。
 「100%大丈夫です」と言い切ることが出来ないのだから下手な慰めは逆効果だ。




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気分は下剋上 ロンドン編 139 香川教授視点

「まずは、貴方の次期病院長選挙について斎藤病院長が後継者と考えていて下さった点については良かったと思います。
 まあ、妥当な判断でしょうけれども、現職からの応援が有るのとないのとでは大違いですし」
 祐樹は多分自分が怒っていることを察したに違いない。
 その怒りの気持ちを逸らそうとしたのだろうか、冷静な感じで今回の要点でないことを口にしている。
 その心遣いはとても嬉しい。嬉しいが今の自分にとっては焼け石に水といった感じだ。
 それにいつ行われるかも分からない病院長選挙よりも目の前に迫った国際公開手術の(ほう)が優先順位は先だ。だから熱く(たぎ)った怒りを少しでも緩和すべく口を開いた。
「それはその通りなのだが、祐樹が国際公開手術の術者に選ばれたことをもっと喜ぶべきではないかと思った」
 なるべく抑えた積もりだが、祐樹は自分が怒っていることもお見通しなのだろう。宥めるような笑顔を浮かべている。
 言いたいことをはっきりと口に出したら気持ちが軽くなった。
 マグマのような怒りではなくて赤い炎程度にクールダウンしていった。
 祐樹の輝くような笑みを見上げて、そして自分を惹き付けて止まない生気に満ちたオーラに包まれていると、次第に怒りが冷めていく。
 祐樹は以前言っていた。呉先生の不定愁訴外来のことを心無い医師は「クレ(・・)ーム外来」呼んでいると。特に真殿教授に追従(ついしょう)している精神科医は。
 厳密に言えば精神科医とはいえ入院患者さんの愚痴やクレームを延々と聞いているだけで精神疾患を診ているわけではないので現役ではないという揶揄を含めているらしい。
 ただ、医師や看護師の言動に関して不満やその状態を通り越して怒りを覚えた入院患者さんの心のケアは必要だと身に沁みて分かったような気がする。
 自分は不満とか怒りを覚えたことはなかったので初めてのことだった。
 斎藤病院長は結果しか見ない人間だということも分かっている。しかし、祐樹に対してあんなふうに言うとはあまりにも酷いと思った。
 きっと不定愁訴外来に通う患者さんも同じような気持ちを抱えて呉先生の元に足繁く通うのだろう。
 その上、健康な自分とは異なって大学病院に入院するレベルの病気を抱えているのでそれだけでストレスなのだろう。
 そんな患者さんに倣って、呉先生ではなく世界中で最も大切な祐樹に聞いてもらうべく、さらに口に出したら怒りの気持ちがなくなって行きそうな気がした。
 そもそも今日は祐樹が国際公開手術の術者に選ばれた記念すべき日なのだから不快な気分でいるよりも大好きという言葉では表現出来ない祐樹のことを考えたい。
「祐樹の言うのも尤もなのだけれども、そして私のことはどうでもいい。もう済んだ話だし。
 しかし、祐樹に対して『~たら』とかを連発していたのは聞いていてとても腹が立った……」
 祐樹に告げただけで怒りの炎に消火器の泡を撒いたようになった。
「いえ、斎藤病院長は成功して初めて認めるという人ですからある意味仕方ないと思います。
 貴方の時だってそうでしたよね?
 イギリスから帰国した時に医学会のお歴々の前で握手なり拍手なりをして貰いますのでそれまでのお楽しみとして取っておいてください」
 祐樹の太陽を彷彿とさせるオーラが更に強く輝いているように思えた。
 その眩い白色のフレア(閃光)に怒りの気持ちも弾き飛ばされた気がした。
 祐樹ならばきっと無事に成功させるだろうという確信に満ちた気持ちが氷の矢のように胸を射るようだった。いや、もしかしたら頭かも知れないが。
 先ほどまで抱いていた怒りの気持ちが雲散霧消していく。
「いえ、気にしていませんよ。取り敢えず、医局に戻って……」
 もっと二人きりで喜びの余韻に浸りたかったのに、仕事熱心な祐樹は教授執務室ではなく医局に帰るらしい。
 先ほどの怒りの気持ちが溶けて、やっと気を取り直した自分が歓喜の気持ちに切り替わったというのに。
 何だか八合目まで登った山の頂上を見ることなしに無理やり降りるような無念な気持ちだ。
 といっても自分に登山経験はなくてあくまで想像上のことだが。
 ただ、医局の責任者として仕事をサボらせるわけにもいかない。
 もう少しお祭り騒ぎめいた歓喜に身を委ねたかったのに、とても残念だ。
 何か良い口実はないかと必死になって脳をスキャンした。
「え?いや……斎藤病院長が清水病院長に連絡を入れてくれるだろう?
 その結果が執務室に来るので待機してもらう方が良いかと思う」
 我ながら良い足止め策を考え付いて胸が躍った。祐樹も納得した感じの眼差しを自分の瞳と重ねてくれている。
 病院長執務階の廊下は幸いにも誰も通らなかったし、エレベーターが停まる音もしなかった。
 教授執務階よりも人口密度が極めて低いからという点も有ったのだけれども、斎藤病院長が病院内部の人間とアポイントメントを交わしていなかったのだろう。
 時計をチラチラと見ていたのは目上の人間から電話が掛かって来る予定だったのかも知れない。
「貴方が他ならぬ私のために怒って下さって嬉しいですよ。笑っている貴方も魅惑的ですけれど、滅多に見ることが出来ない怒った顔も魅力的ですね」
 目敏い祐樹には当然気取られていると思っていたが案の定だった。
 しかし「怒っている顔も魅力的」と優し気に黒く輝く瞳と笑みで告げられると心の底から嬉しさの花が咲いたような気がする。祐樹が太陽の光だとすると自分はさしずめ向日葵の花だろう、きっと。




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「心は闇に囚われる」 190

 幸樹は俺の反射神経を信じてくれているのか普段通りの男前の顔だった。
 でも、何で渡されたモノがコンビニで売っていてしかも最も安い透明なビニール傘なんだろう。西野警視正はキャリア組なんで制服警官が腰に付けている警棒的なモノは持っていないのは分かるんだけど……?
「よし!今から行くぞ!遼、オレが投げろって言ったら自転車の車輪、前後どっちでも良いからそれを目掛けて投げって……。あ!そうだ」
 幸樹はさも重大なことを思い出したかのように俺の手からキチンと巻いてあるビニール傘を取っている。そして、ボタン、いや留め金って言うのかもしれないんだけど、とにかくそれを外してビニールがバラバラになるようにしている。
 何でそんなことをするのか全く分からなかったけど、幸樹的には意味があることなんだろうな。
「これで良い。あ!!あの自転車だ。遼、頑張れ!」
 幸樹の黒い瞳が俺を安心させるように、そして𠮟咤激励をするような感じの光を宿している。
 俺の手に傘を返しそうとした幸樹は、さり気なく指を絡めてギュッと握ってくれた。ビニール傘をはだけさせた時は真剣そのものといった感じだったけど、指を握る時は何だか恋人って雰囲気の優しい動作だった。
「分かった!頑張るよ!」
 問題の自転車は必死の疾走といった感じで近づいて来る。車輪に上手く当てるには、もう数秒だけ待つ方が良いだろう。
 取り敢えず平常心を保とうと深呼吸した。チャンスは一度きりなので失敗は許されない。でも、幸樹と俺の特技でもある手品だってミスしたらタネまで分かってしまうし、見物人も白けてしまう。手品と同じだと思うと何となく気が楽になった。
「遼、投げろっ!」
 幸樹の鋭い声に前の車輪目掛けて思いっきり投げた。
 狙い通り車輪に当たったビニール傘はバキバキって音がしたかと思ったら、自転車が転倒した、物凄い勢いで。漕いでいたコンビニ強盗は道路にもんどりうって倒れている。
 ほんの一瞬の出来事なんだけれども、何だかとても時間が経っているような気がした。
 気絶したと思しき犯人に西野警視正が走り寄って手錠を掛けている。幸樹は俺に一瞬だけ「よくやった」と言いたげな優しい視線を向けた後に西野警視正と手錠を掛けられたコンビニ強盗へと走って行った。
「何かお手伝いすることは有りませんか?」
 幸樹の涼やかな落ち着いた声に西野警視正は充足感めいた笑みを浮かべている。
「私はこれからここにパトカーを呼ぶので、見張っていて欲しい。ま、この様子だと当分は意識不明のままだろうが、ね」
 普段通りの飄々とした感じで車内に戻って無線機と思しき物を口に当てている。
「ね、幸樹。何で傘を投げたの?警棒とかそういう物じゃなくて……?」
 幸樹は気絶して地面に倒れている犯人を注意深く見ている感じだった。俺もこんなに頑張ったんだからここで逃げられたりしたら目も当てられない。
 幸樹の視線がちらっと俺の顔に向けられた。端整で男らしい顔も一瞬だけ笑みを浮かべている。
「グッジョブ!遼のことだから失敗はしないと思ってたけど、万が一ってこともあるだろ?ここで取り逃がしたら川を渡って隣の府に逃げられるとこだった。
 そうしたら龍崎さんだって面目を失うし、西野警視正も何らかの処分を免れない」
 幸樹のお父さんに似ているとか言って龍崎さんのことも苦手っぽい感じだったのに、直接話してみて評価も変わったのだろう。幸樹の口振りはとても穏やかで安堵に満ちている。
「ああ、傘の話な。警棒じゃなくてビニール傘にしたのはさ、たとえ狙いがずれてかすっただけでも、ビニールの一部が自転車の車輪に巻き込まれると転倒するだろう?
 警棒だと外したらそれっきりなんだ。だから自転車を倒す時にはああいうペラッペラな傘の方がよっぽど役に立つ」
 転倒した拍子にひしゃげた自転車の前の車輪には傘の弱っちい骨も折れていたし、ビニール部分が(これ、どうしたら外せるんだろう?)って真剣に悩むような感じで巻き付いている。
 まあ、俺の自転車でもないし、どうだっていいんだけれど、さ。
 万が一この犯人が逃げる気になっても、前輪が動かなくなっている自転車では無理だ。
 良く考えられているなって感心しているとパトカーが何台も物凄い音を立てて近寄って来たかと思うと、何か曲芸でもしているような感じで手錠を掛けられて気絶している犯人を中心に円を描いて停まっている。
「西野警視正!」
 パトカーのドアが一斉に開いて私服や制服の警官達が降りて来た。皆は一様に西野警視正に敬礼をした後に犯人を囲んでいる。
「いやあ、現着まで2分35秒。理想的な数字だね。ご苦労様」
 50歳くらいの私服警官がどうやらこの場の責任者らしい。目配せしたかと思うと警官達が犯人をパトカーの中に連行したり自転車をトランクの中に入れていたりしている。
「西野警視正、A崎南署の浜口警部であります!」
 飄々とした感じで警官の動きを見ている西野警視正の前に走って近付くと浜口警部はドラマで見たり……、そして姫神池でもそうだったりしたっけ……悲しいことに……マニュアル通りといった感じの敬礼をした。
 西野警視正は鷹揚な感じで敬礼を受けてから、不審そうな表情を何故か浮かべていた。何かが引っ掛かっているといった感じの。




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読者様

やっと「心は闇に~」再開出来ました!ただ、本業副業、そして気管支炎のため毎日更新は難しいと思います。お待たせして申し訳ありませんが、気長にお付き合い下されば幸甚です。
コメント頂いているのに、全然返せなくて済みません。過分な御心遣いに感謝致しております。
有難うございます。
 こうやまみか拝

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気分は下剋上 ロンドン編 138 香川教授視点

 斎藤病院長室に二人して赴き報告を済ませた。
「国際公開手術の術者に選ばれるのは素晴らしい快挙ではあります。その点は病院の誇りです。日本の大学病院に所属している人が選ばれたのは香川教授以来ですからね。Т東大学病院の永倉病院長などは歯ぎしりをして悔しがっているのが目に浮かびます」
 Т京大学附属病院と何かと張り合っていることは知っている。
 特に山中教授のiPS細胞ノーベル賞受賞時にも欣喜雀躍していたらしい。
「これで憎っくき永倉の鼻を明かすことが出来る!!今頃は新聞をびりびりと破いて紙吹雪にしているに違いない!!」
 病院長執務室で腹を揺すって哄笑しながら言っていたと内田教授が教えてくれた。
 何故密室で大笑いしたことが内田教授に漏れたかというと腹黒タヌキとウワサされる病院長の本音を探るべく秘書を密かに味方につけたからだ。
 ただ、病院長秘書は良家の子女が嫁入り前の箔付けに来るので入れ替わりが激しい。
 自分のように秘書業務に秀でた人間を長く使うという発想はないらしい。
 自分の秘書は先を読んで書類の草稿を準備してくれたり意を汲んで友好的な関係の内田教授や浜田教授秘書などは長話が出来るように、そしてそれほど仲の良くない教授には絶妙の時間しか与えなかったりするようなことまでしてくれる。
 それに反してスケジュール管理とどんなに不味くてもお茶汲みが出来ればそれで充分だと考えているらしい。
 だから、内田教授が内通していた秘書は既に退職済みだ。
 祐樹の顔を密かに窺うと男らしく整った唇の口角を僅か(・・)に上げている。
 祐樹の表情の変化を息を詰める感じでずっと見て来た自分にだけ分かる程度の皮肉な笑みだ。祐樹も斎藤病院長のいわれのないライバル心を内心笑っているに違いない。
「……その件はともかくとして『参加したことに意義がある』というある意味甘い世界ではないことは香川教授の手術を実際にご覧になった田中先生ならご存知だと思います」
 自分の時はそれほど腹も立たなかったけれども、祐樹のことを言われると目の前が真っ赤になったかと思うほど物凄く腹が立った。
 要するに成功しなければ何の意味もないということを斎藤病院長は言っているわけで。そんなことは言われるまでもなく分かっている。
 そもそも斎藤病院長は術者に選ばれたことすらない。そんな立場で良くそこまで偉そうに言えるなと怒りがふつふつと湧いてきた。
「つまり成功しなければ何の意味もないということですね」
 だったら、病院長自らあの舞台に立ってみろ!と滾る怒りを押し殺してなるべく穏やかな口調になるように自制した。
 祐樹に「貴方は喜怒哀楽のウチの怒りの感情をお母様の子宮に置いてきたような人ですね」と感心した感じで言われた覚えがある、しかも何度も。
 自分も怒りっぽいタイプではないと自覚しているけれども、今は奥歯を噛みしめていないと斎藤病院長に暴言めいた言葉を投げつけてしまいそうだった。
 自分に対して何を言われても全く怒りの感情を抱くことはなかったが、こと祐樹のことに関してのみ怒りがこみ上げてくるのだなと。多分祐樹を自分以上に大切に想っているからだろう。
「その通りです。流石は栄冠を手にした香川教授は良く分かっていらっしゃいますね。田中先生が一介(・・)()()局員(・・)にも関わらず心臓外科学会の理事に選ばれていたことも幸いでしたね」
 病院長の言葉にぎくりとした。推薦者の明石教授が祐樹の箔付けに裏から手を回していたということも、そして自分も祐樹が理事に選ばれるように心を砕いたこともお見通しかもしれないなと思ってしまう。
 斎藤病院長は医学会のあらゆるところにパイプを持っているので何処(どこ)からか漏れてしまった可能性はある。
「ご安心下さい。斎藤病院長()ご期待に必ず添いますので。大変お忙しいでしょうが、私の帰国時、お出迎えのスケジュールを空けておいて下さい」
 怒りの感情という自分にとっては慣れない、いや生まれて初めてかもしれない物はどう宥めて良いかすら分からない。
 取り敢えず祐樹にも勘付かれないように浅い深呼吸を繰り返していると、祐樹が頼もしい口調で宣言している。
 横目で窺うと太陽の光よりも眩しい瞳と決意に満ちたような間一文字に結ばれた唇が普段以上に凛々しい。
 そして男らしく整った眉が勝気な感じを醸し出していて思わず見惚れてしまった、場所も弁えず。
 祐樹の国際公開手術への準備を清水病院長の元で行うという約束を取り付けた後に斎藤病院長が腕時計をチラチラ見るというジェスチャーで退室を促されたことも何だか物凄く腹が立った。
 頭の中を赤い炎ではなくて青い色の焔が渦巻いているようだった。ちなみに青い色の方が温度も高い。
 自分に次いで二番目の術者、しかも生粋の病院育ちという点では初めてだ。そんな「病院の誉れ」を背負って手術に臨む祐樹にはもっと心の籠った激励の言葉があってしかるべきではないかと思ってしまった。
 内心の怒りをせめて表情に出さないように努めながら病院長執務階の廊下を二人して歩んでいた。
 病院長の次のアポが会食などで外出ならばこの廊下は祐樹と二人きりだ。しかし、教授職や事務局長などの面談予定だとエレベーターの扉が開く可能性もあるし、当然顔を合わせる。
 そういう場所であからさまな感情の発露をしてはならないと必死でポーカーフェイスを取り繕う。
 どんな状況であれ、祐樹と二人で歩むと心が晴れ晴れとするというのに、今回ばかりはマグマが噴き出しているような心をどうやって鎮静化させるべきか全く分からない。




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気分は下剋上 ロンドン編 144 

「それは光栄です。あのベンチに座ってスコッチエッグを食べませんか?」
 シャーロックホームズの本の挿絵(さしえ)か何かで見たのと同じような照明が等間隔で並んでいる場所にベンチが置かれている。
 まさか当時のようにガス灯ではなくて電気だろうが。
 あのビッグベンや国会議事堂など、当時と変わっていない建物が黄色や白のライトアップで浮かんでいるのはシャーロックホームズが活躍した時代と何も変わっていないような風情だった。
 シャーロックホームはコナンドイルが作り出した想像上の人物なのは承知している。
「そうだな……。こういう場所で祐樹と二人、スコッチエッグを食べると一際美味しいだろうな……」
 最愛の人は弾んだ怜悧な声と白い花のような笑みを祐樹に向けている。
 すらりと佇んだ最愛の人はどのベンチが良いかを確かめているのだろう。白い照明に照らされた優し気な笑みを浮かべた顔で周りを見回している。
 長い睫毛がボーンチャイナのような白い肌にくっきりと影を落としているのも物凄く綺麗だった。
「あのベンチに座ろうか」
 白く長い指が示すと黄色の薔薇のような趣きだった。
「そうですね」
 彼が選んだベンチはビックベンと国会議事堂が最も良い角度で見える。
 ロンドンに来たという実感が先ほどよりも祐樹の心に満ちている。そして、最愛の人とまさか二人でこのような場所に座ることが出来るとは思ってもいなかったので気持ちが高揚している。
 二人してベンチに座ると早速スコッチエッグの紙袋を開けた。
「これが『オリジナル』っぽいですね。違っていたら済みません」
 何しろジャガイモみたいな外見をしているのでどれがどれだか分からない。
「何だかロシアンルーレットをしているみたいでとても楽しい……」
 薄い紅色の唇が笑みの花を満開に咲かせて隣に座った祐樹を見ている。
 正直なところ「ハニー&マスタード」はさして食べたくなかったが、25%の割合で祐樹に当たることになる。出来れば避けたいところだけれども……、こういう場所で最愛の人と二人で軽食を食べるならばどんな味でも美味しそうな気がした。
「日本で売っている熱々のコロッケを想像していたので正直意外です」
 冷たいコロッケめいたモノは美味しいのだろうか?
 祐樹は町の市場で売っているコロッケよりもコンビニで売っているモノの(ほう)に馴染みがある。救急救命室の凪の時間に久米先生や清水研修医が買い出し担当で、コンビニに行くこともままあった。
 特に久米先生は「コンビニに行くのがこの上ない気分転換になるので」と喜んで出掛ける。そしてポテチの新しい味とかコロッケなども買って来て大変美味しそうに食べている。
 祐樹は太ると最愛の人に嫌われそうなのでおでん(・・・)蒟蒻(こんにゃく)とか玉子や白滝(しらたき)しか頼んでいないのだが。
 時には久米先生に「何をするんですか?」と半泣きの顔を見せて他の休憩室に各々最も寛ぎやすい恰好をしている医師達に笑いを提供していた。
 研修医の久米先生の熱々のコロッケを横取りするのはもしかしたらパワハラに抵触するかも知れないが、久米先生はそうやって祐樹に(イジ)られて喜んでいるようだった。
 パワハラもセクハラも相手が不快に思ったら、めでたく(?)成立する。
 例えば最愛の人との「千のキス」いや、千ではなくてもっと多いだろうが、それだって彼が望んで唇を交わしているのでセクハラではないのと同様だった。
「揚げたても美味しいらしいが、冷たいのも異なった味わいがあるらしい」
 蛍光灯の灯りではなく、しっとりとした白い光が薄紅色の細い指をより一層引き立てている。もしかしたら中身は蛍光灯でガラスか何かの照明カバー的なモノでそういう優し気な光を演出しているのかも知れないが。
 その白魚のような指が祐樹にスコッチエッグを手渡してくれる。
 彼自身は左手でスコッチエッグを持っていて、薬指に付けたダイヤの指輪が青っぽく煌めいているのも、とても綺麗だった。
 一口食べてみると、スパイスが効いている(コロモ)部分と半熟っぽい卵の味が調和して何だかクセになる味だった。
「美味しいです!外はカリっとしていて、これはケイジャン味でしょうか……?胡椒味しか分からないのですが、とにかく色々な香辛料が入っていて、中の卵を引き立てていますね……」
 熱々だったらその香辛料の味も分からないだろう。冷たいことが幸いしてじっくりと味わうことが出来た。
 隣に座った最愛の人も白く長い指で持った物を薄紅色の唇に運んでいる。
「ん!美味しい。蜂蜜の甘さがマスタードの辛みを引き立てている感じだ。
 胡椒が効いているということは多分ケイジャン味なのだろう。しかし、『オリジナル』も胡椒が入っているかも知れないので……」
 紅く弾んだ声がテムズ川に小さな花火を上げたような感じだった。
「マスタードの味が勝っているのですか?だったら私でも食べられそうです」
 ビッグベンの黄色とオレンジの中間の色が時計を照らしているのも物凄く綺麗だった。
 先ほどよりも心なしか美しく、そして荘厳さが増して見えるのは最愛の人と同じ物を食べているせいだろう。
「食べてみるか?」
 スコッチエッグのジャガイモめいた物を持った白い指が一際優雅な美しさだった。ジャガイモのような無骨さと精緻な雰囲気を宿す長い指との対照(コントラスト)のせいだろう。
 一口食べると蜂蜜のねっとりとした甘さは辛子(からし)を引き立てているようだった。
「売り場で見た時は、ハチミツと辛子を混ぜればとんでもない味になるのではと思っていました。
 しかし、マスタードをより際立たせているのですね。美味しいです」
 感想を述べた後に最愛の人の花のような唇に食べかけのスコッチエッグを近づけた。白い花のような唇が開花(かいか)という感じで開いて夜目にも煌めく白い歯にも魅せられる。




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読者様
更新、休み休みになって申し訳ありません。
家庭教師は話すのが仕事で咳き込んでいると生徒の貴重な時間を奪うことにもなるので、家では医師から貰った咳止めを飲んで安静にしています。共通テストまで1カ月半しかない切羽詰まった状況でお休みを貰うわけには行かないですし。
そのためブログ更新がまちまちになってしまっています。
読者様にはご理解とご寛恕頂きたく思います。
 こうやまみか拝

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