腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2022年10月

気分は下剋上 二人がどうして探偵役? 34

 女性らしいというか生活感のない部屋だった。何だかドラマのセットとかモデルルームのような部屋というか……。(もっと)も祐樹はモデルルームに実際に行ったことはない。

 最愛の人と一緒に住むことにした時には既に彼の部屋は決まっていたし、それ以前は学生時代から住んでいるアパートに毛の生えたようなマンションだったので行く機会などなかったし、別に行きたいとも思わなかった。

 ただ、最近脳外科の岡田ナース、通称アクアマリン姫と何とか順調に――柏木先生や祐樹のアドバイス通りにデートをしている点は相変わらずだったが――お付き合いしている久米先生が新居をパソコンで探している。最近の不動産屋のサイトは凄くて、部屋の様子をパノラマビューで紹介したりもしていて、その画像をたまたま目にしていた。その新築マンションの紹介されていた部屋がちょうどこんな感じだった。

「それはどうも有難う。座ったらどう?その辺りに適当に。

 コーヒー、紅茶どちらがいいかしら?」

 キッチンスペースに入ろうとする西ケ花さんを慌てて止めた。

「勤務中ですので、一切お構いなく。そういう規則になっておりますので」

 確かゲイバーのマスターがミネラルウオーターを出そうとした時に警官はそう言っていた。

 それに気分の浮き沈みが激しい女性なだけに、薬でも盛られたら大変だ。たいていの物なら味で気付くだろうが、無味無臭の砒素(ひそ)のような薬も存在する。まあ、ヒ素までは自宅に用意しないだろうが……。それに最愛の人も祐樹以上に薬物に精通している。ただそんなことを言っても仕方ないので「勤務中」ということで押し通そう。ただ、部屋に通されてコーヒーとか紅茶を勧められるとは思ってもいなかった。

 そういう「家庭的」なこととは無縁な女性に見えたので。まあ、缶コーヒーとかペットボトルから直接注いだだけの紅茶かも知れないが。

「じゃあ、私だけ。食べながらでも構わない?」

 可哀想な青年が必死の思いで運んできた「京風湯葉弁当」だ。もしかしたら正式名称は間違って覚えているかもしれないが。

「どうぞ。お待ち致しますので遠慮なく召し上がってください。その後でお話をお聞かせ願えればと思いますので宜しくお願い致します」

 高そうな革張りの白いソファに腰を下ろした。祐樹が座ったのを見て最愛の人も静かに横に座った。もちろん距離は適切さを保っている。

それにいきなりお邪魔した自分達が悪いとも思っていた。仕事の延長線上とはいえ、そんなことは西ケ花さんには関係ないだろうし。

意外なことにきちんと茶葉から淹れたと思しき湯呑に入った日本茶が温かそうな湯気を立てている。

最愛の人が知っていた店名だけあって、湯葉や京野菜の煮つけとかお漬物とかがちまちまと並んでいるお弁当からはまだほんのりと湯気が立っていた。

「ここのは時間が経てば経つほど美味しくなくなるのよね……」

 さっきの青年にあんなに腹を立てていたのはどうやらそのせいもあったらしい。単に短気というだけかも知れないが。

 箸使いも意外に――と言っては彼女に失礼かもしれないが――綺麗で、その辺りには素直に感心した。

 ただ、繊細な味と香りを楽しむ京風の料理にはこの香水の匂いはキツ過ぎるような気がした。

「で、なんで京都府警ではなくてサツ庁が出張って来るのよ?あ、食後のタバコを吸っても良いかしら?」

 「サツ庁?」と内心で不審に思ったが、まさか聞き返すわけにはいかない。隣に座った最愛の人が意味ありげな表情で「警察庁のことを略した言い方だ」と囁いてくれた。多分祐樹の表情に微細に不信感が漏れていたのだろう。最愛の人は誰よりも祐樹の表情の変化に詳しいし敏感だ。

「もちろんです。心行くまでごゆっくりどうぞ。お邪魔をしたのはこちらの(ほう)ですので」

 応接セットの中央にも重そうなガラスだかクリスタルの灰皿が置かれていたにも関わらず、彼女はキッチンスペースまで戻ってから聞いてきた。森技官の用意したIDカードの精巧さだけでなく、祐樹の警官の演技もバレていないらしい。家に警官関係者が来て緊張したら煙草が欲しくなるのは喫煙者の祐樹にも分かるし、食後の一服が最高に美味しいのも知っている。

 好き嫌いはないらしく、小さ目のお弁当のパックはすっかり空になっていた。そして割り(ばし)は包み紙を綺麗に折った即席の橋置きに綺麗に収まっている。彼女の口紅が付いた部分はすっかりと隠れてしまうように工夫されている。

 意外と女らしい性格なのか、それともアフターとか言ったハズの常連客との食事のマナーなのかは分からない。

 最愛の人と良く行くカウンター割烹でも明らかに水商売の女性とそのお客といったカップルが食事をしているのを何回も見たことがあって、彼女達もお箸使いは綺麗だったなと今更ながらに思い出した。ただ、京都という歴史のある街ならではのことなのか、銀座や大阪の北新地(きたしんち)といった一流の場所で働く女性たち皆がそうなのかは知識不足だ。

 最愛の人も病院長命令で仕方なく行く場合を除いて歓楽街には行かないタイプだ。

Aiセンター長になってからは祐樹にも医療機器メーカーの社長などが接待の席を設けるとか言って来てもらえるポジションだったが、そんな改まった場所で露骨に(へつら)われたり、女性に持て(はや)されたりすることに一切の興味も関心もないのでずっと謝絶してきた。そんな時間が有ったら最愛の人と一緒にまったりと寛ぐ方がずっと心身を癒してくれるので。

 西ケ花さんはキッチンの換気扇の下と思しき場所で煙草を吸っている。

 思いついたことが有って、ノートを取り出して最愛の人に向けてメッセージを綴った。

 祐樹が確かめても良かったが、こういう点は最愛の人の記憶力と知識の方が確実だろうから。



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気分は下剋上 ハロィン企画 15

「どうぞ。入ってください」

 最愛の人の怜悧かつ落ち着いた声が返ってきた。思わず内心でガッツボーズをしてしまうがまだここは教授執務階の廊下だ。誰に会うか分かったものではないので、若干神妙そうな表情を繕ったまま扉を開けた。

「祐樹、とても評判になっているな……。あと、アニメ観てしまった……。結構面白かった」

 細く長い指で応接用のソファーへと促しながら祐樹に向かって花の綻ぶような笑みを浮かべている。

 アニメを観た……?朝はいつも通りに過ごして二人で出勤した。その後最愛の人は執刀医、祐樹は最近では稀なことだったが第一助手を務めた。白河教授と桜木先生の手術を優先させるようにというのが病院長命令だった。何しろ「夏の事件」で失墜した脳外科の権威が爆上がりするかも知れない好機だ。白河・桜木チームが悪性脳腫瘍の外科的アプローチを確立すれば病院全体の国内外問わずの快挙だ。病院には患者さんも押し寄せてくることも容易に想像出来る。

 心臓外科の他にも病院の看板が出来ることは病院長もいけ好かない事務局長も諸手を挙げて賛成している。斎藤病院長はT大病院の鼻を明かすためとか、次期学長選で法学部長に更に差を付ける目論見だろう。事務局長はもちろん病院経営の黒字化という観点から。

 その点は祐樹も納得しているので、今の時点では手術室を譲る気でいた。それまでは脳外科の狂気の研修医のせいで香川外科に迷惑を掛けた(つぐな)いも兼ねて、元々は脳外科が使うハズだった手術室を融通してくれていたのだから。

 手術の後は主治医を務めている患者さん巡りをしてから内田教授の執務室に行った。

 最愛の人はその時間は空いていたが――もしかしたら、黒木准教授とか長岡先生などと打ち合わせなどが有ったかも知れない――時間にすると一時間に満たないし、昼食の時間も45分ほどだろう。そんな短時間の内にどうやって観ることが出来たのだろうか?

「アニメをご覧になられたのですか?全部ですか……?」

 DVDは自宅のマンションに置いてきている。

「検索したらアニメを配信しているサイトが多々有って、五倍速で観ることが出来る機能が付いていたので、観てしまった……。ただ最後までは視聴していないが、時間がなくて……」 

 最愛の人が申し訳なさそうな表情で祐樹が渡した紙袋を大切そうに持っている。

 申し訳ないと思っているのかも知れないが、五倍速で鑑賞出来る(ほう)が凄いと思う。

「そうですか……次の休みにでも寛ぎながら二人で見ようと思っていたのですが。

 でも五倍速は流石(さすが)というか、貴方らしいというか……。素直に感心してしまいました」

 コーヒーを淹れてくれている最愛の人が眉を下げて祐樹のへと振り返った。

「そうだったのか?それは済まない……ただ、話は面白いので休みの日に一緒にもう一回観よう」

 反省するほどのことはないと思うのだが、最愛の人は違うらしい。祐樹もYouTub〇を二倍速で見ることは良くある。せっかちな性格のせいもあるし、話し手さん、いやユーチューバーさんと呼ぶのだろうか?そこまでは詳しくないけれども話し方が割とゆっくり話している。何だか時間が勿体ないと思ってしまってつい二倍速を選んでしまうが、YouTub〇は二倍速までしか選べなかったような気がする。

 その2,5倍でも内容も全て頭に入ってしまう最愛の人の頭脳は処理速度が格段に異なるのだろう。

 外科医としても素直に尊敬出来る人だし、記憶力の良さも凄いのは知っていたが、改めて明敏な頭脳に感心してしまった。

「とても評判になっているとは、具体的に?

 あ、運営の件は貴方のアドバイス通りに内田教授に言ってみたら快諾して貰えました。これで与えられた役割をこなすだけで済みます。本当に有難うございました」

 ソファーに座ったまま頭を下げた。

「与えられた役割……」

 最愛の人の唇は花弁(はなびら)が多数風に舞っているような雰囲気の笑みを浮かべている。

「祐樹はあの役にピッタリだと思う。あんなに『強者感』と『無敵感』を出せるような人は病院中どこを探してもいないので……」

 そういえば「大丈夫、僕最強だから」というセリフを練習させられたな……と思う。あんなに熱くなっている内田教授や主催者の浜田教授とは異なって、祐樹としてはイベントが無事に終わればそれで良いと思っている。

「そうですか……。ただ、特にあの宝石よりも綺麗な青い目をどう再現するのか気になっています。白い髪は(かつら)だかウィッグだかを被れば大丈夫だと思うのですが……。

 ちなみに、日本人ですか……?」

 時間を気にしつつ薫り高いコーヒーのコクのある苦さを舌で堪能しつつ聞いてみた。

 向かいに座った最愛の人はコーヒーの湯気を薄紅色の唇に当てながら楽しそうに小さく笑っている。

「あの目は本当に綺麗だった……。再現出来るかどうかは小児科のナース達の技術力とか熱意に掛かってくるだろうな……。

 ただ、祐樹……(かつら)とウイッグは似ているし使用法も同じだが、用語の使い方は異なっている。前者は毛髪が寂しくなって、その露出した頭皮を隠すために被るもので、後者は豊かな自毛がありながらも、その日の気分で茶色にしたり、髪の長さを変えたりしたい人が使うものだ……。

 ナース達の前ではともかく、頭髪の寂しい人の前で安易に(かつら)と言わない(ほう)が良いだろうと個人的には思うのだが……」

 コーヒーを飲みながらそう告げてくれた。

 祐樹もそういう用法の違いがあったのかと初めて知った。将来は分からないが、今の時点で最愛の人も祐樹も人並みの毛髪量は保っている。そんな祐樹が「知らずに」鬘を連呼したら、ギクリとして頭に手をやる医師とか、ズラを被るまでもないくせに!とか思われてしまいそうだ。

「気を付けます。それはそうと、アニメをご覧になったのですよね?一つリクエストがあるのですが……」

 今が絶好のチャンスかも知れないと思って言ってみることにした。



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気分は下剋上<秋休み>27

 「秋の日は(つる)()落とし」のコトワザ通りに辺りは暗くなっている。この様子だと車が入って来た時にはヘッドライトで分かるだろうし、それ以外は暗くて見えないだろう。

「祐樹は……どちらが良いのだ……?」

 激しく重なり合うキスのせいで紅く濡れた唇が艶やかな吐息交じりに言葉を紡いだ。

 ウエスト部分から素肌に触れていく。布地の下で座っても(たる)みが全くない腹部を通過して尖りまで到達する。男性でも触れられ続ければ大きくなるとゲイ雑誌で読んだ覚えもあるものの、最愛の人の尖りは初めて触れた時と同じく慎ましやかなままだった。ただ、感度も硬度も上がってはいるが。

 親指の爪で下から上へと弾くと、艶やかな声が車内を濡らすように小さく響いた。

 その声をもっと濡れて高く上げさせたいと思うのは愛する者としてはむしろ当然なのかとも思う。

 ただ、今ではないような気もした。

「……先ほど、体形を褒めて下さいましたよね?

聡の肢体もこの上ないほど綺麗ですよ。

ただ、体形を維持するためには先に食事でしょうか……。医学的根拠というか出典(ソース)は不明ですが、美味しい物を食べた後に激しく愛し合えば……カロリー消費にもなって良いらしいです……」

問題は祐樹や最愛の人が我慢出来るかという点だったが。

ただ、寝る前にカロリーの高い物を食べるより、朝ご飯の時の方が太りにくい程度は知っている。だからあながち間違いとも思わない。まあ、栄養士ではないので――病院には生活習慣病の患者さんのために栄養士が具体的な食事の指導をするブースも有るので、祐樹などの心臓外科医は内科医とは異なってデータを栄養士と共有しているだけの関係で直接会って話したこともない――専門的な知識はなかったが。

先に愛の交歓に雪崩(なだ)()んでしまわないようにするためにどうすれば良いかを考えて、名案を思い付いた。

 好物は先に食べるタイプの祐樹にとって少し自分に我慢を強いることにはなるが、その忍耐が俗に言う焦らしプレイと思えばどうということもないような気がする。最愛の人には散々焦らしプレイをさせてしまっていることもあって今回は祐樹がその気持ちだけでも味わって共有出来るのも良いかも知れない。

「祐樹は……どちらを先に……味わいたいのだ……?」

 祐樹の指とか爪の―-片手しか布の下に入っていない――動きに従ってしなやかな肢体がシートからヒクンと跳ねるような動きをする。指で尖りの熱さと硬さが増していることへの満足感は有ったものの、湯上りに着替えた彼御用達のフランスの老舗ブランドの黒い長袖のポロシャツめいたモノは布もしっかりしているし、ボタンは三つしか付いていなかった。

 全部外しても見える位置でないのが残念だった。今度のドライブデートの時には1センチ刻みでも構わないのでせめて胸の尖りを露出出来る服をリクエストしようと心に固く決意した。

 胸の尖りの色を思わせるような紅く甘い声が車内の空気に煌めいては溶けていくような錯覚を覚える。

「聡……と申し上げたいところなのですが……。涙を呑んで我慢します……。

 ただ、その我慢の見返りというかご褒美を頂きたいのですが……。そのワガママを聞いて頂けたらとても嬉しいです」 

 尖りを弾く動きは停止して、夜目にも鮮やかな紅色の耳朶(じだ)を甘く噛みながら取って置きの甘く低い声で囁いた。

「聞く……。これ以上……爪で……弾かれると……どうにかっ……なって……しまいそうだからっ……」

 紅い薔薇の上に宿った水滴のような艶めかしい声が(したた)り落ちるように紡がれた。

 羽毛のようなタッチで指を動かして最愛の人の脚の付け根を確かめてみたが、欲情の証は目立つほどには育っていなかった。

 祐樹の愛情と丹精を込めた尖りは、そこだけの愛撫で乾いた絶頂を迎えることが出来るようになっている。性医学は専門外だが、最愛の人の場合、前立腺と胸の尖りの連動が人よりも強いようなので、尖りを愛撫すると同時にそちらへも同じ悦楽を受けたように変換されるのだろう。渇いた絶頂の仕組みは専門医でも分からないほどの謎が多々あると祐樹が調べた医学書と医学雑誌には書いてあった。

 最愛の人の鋭敏な肢体とか筋肉で出来ているハズの花園の中がそう思えないほど素晴らしいとかは、祐樹だけの秘密にしておきたかった。

「約束です、よ」

 区切りの意味を込めた口づけを交わした後で、発車させた。

「夜風に当たった方が良いかと思います。その紅い顔も満開の花の趣きでとても綺麗ですし、涙の膜を張った目もとても艶っぽくて素敵ですが……そういう表情は私だけが独占したいので……」

 甘く物憂い表情で先ほどの余韻に浸っている様子の最愛の人にそう告げると、我に返ったような感じでスイッチを押して窓を全開にした後に、ポケットからハンカチを出して目元を拭っている。

 その切り替えの早さは名だたる外科医としての本領発揮というところだろうか……。ただ、ホテルに着いても中途半端な愛の行為の甘い色香を漂わせているようなら祐樹にも言い抜け出来る言葉を予め考えていることは内緒にしておこう。

 怜悧で涼やかな端整な表情を出来るだけ取り戻して欲しかったので。散々煽った祐樹が悪いとは思っているが、独占欲は愛情の証だと思っている。

 日常生活というか仕事では最愛の人を独占出来ないものだからデートの時くらいは存分に祐樹の愛情の、目に見えない(くさり)で縛っておきたかった。



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気分は下剋上 二人がどうして探偵役? 33

「夜分にいきなり参ってすみません。少し話をお聞きしたいのですが、宜しくお願い致します。

 私もこういう者です」

 多分マスカラをたっぷり塗ったらしい長い睫毛(まつげ)(ふち)どられた目が獲物を狙う猛禽類の鳥のような感じで最愛の人を見ている間に割り込んだ。

「田中祐樹捜査官ね……?ふーん、どちらかというと香川特別捜査官に取り調べとやらを受けたいわ。

 京都府警が動いているわけではなさそうね……?そんなに重大な事件なのかしら?

 そして、私に何か関係があることなのかしら?」

 先ほどの若者とは異なって色々知識があるようだ。まあ、元ホステスだったのだからお客さんから色々話を聞く機会も有ったハズだし、酔っ払いが起こした騒ぎで警察沙汰に巻き込まれることなども。

 警察と聞いて臆する様子も全くない。虚勢なのか本来の気の強さなのかは分からないが。

 ただ、話し方で頭の良さが大体分かった。化粧の濃い顔も100人中98人が派手な美人だと答えるだろう。後の二人は好みが偏向しているか清楚系しか好きではないタイプだ。

 セーターにスラックスという恰好でもあざといくらいに胸の大きさと形の良さはハッキリ分かるしウエストは(くび)れている。祐樹やホッとした表情で三歩ほど後ろに下がった最愛の人には通用しない魅惑的な身体だが、37歳とは思えない魅力の(とりこ)になる男性の方が多いだろう。

 警察の介入……かつては行きつけのゲイバーグレイスでも――オーナーの(しつ)けや禁止事項はかなり遵守(じゅんしゅ)されている店だったが――それでもケンカ沙汰に一回巻き込まれたことが有った。祐樹がケンカをしたわけではない。ただ目撃者ということで警官に話を聞かれた。その時の警官の態度や口振りを真似て強引で有無を言わせない感じで押していけば良いだろう。

「まずは私が話をお聞きして、足りない点を上司が補う決まりでしてその点はご了承ください。

 ああ、夕食が冷めますよね?宜しければお部屋にお邪魔して話を伺います」

 一応、「宜しければ」とか言っているが、普段以上に押しの強い話し方をする。共用ラウンジで話を聞くよりは、どんな生活振りなのかを見ておく必要もあった。

「分かったわよ。散らかっているけれども構わないかしら?」

 強気な口調を崩さないままカツカツとヒールの音を響かせてエレベーターの方へと歩いていく。

「全く問題有りません。押しかけたのはこちらの都合ですから」

 嗅ぎ慣れた香水の香りがエレベーターの箱の中で強くなった。

 この香水は確かマリリン・モンローが「寝る時にはこれだけを付ける」とか言っていたモノだと思う。ただ、エレベーターの中では濃すぎると思ったが。

「良い香りですね……?」

 非難とまでは行かないが、思わずそう呟いてしまった。

「この香り……。高校の時の授業参観の時を連想する香りです……」

 最愛の人は単なる記憶を確認しただけで悪意はないと思う、多分。

 この人は京都の公立高校に在籍した過去が有るが、京都市民なら誰でも知るような進学校で、いわゆる良家の子女率も高い高校だ。

「はぁ!?高校生の子供がいるようなババアって言いたいのっ!!」

 案の定、彼女がケンカ腰で言い返してきた。

「え?いや、そんな積りは毛頭なくてですね……。単なるノスタルジーです。この香りを嗅ぐと思い出してしまっただけで、別に他意はないです」

 最愛の人が半ば驚き、半ば言い訳のような感じの口調だった。美貌とスタイルが売りの女性は年齢のことを言われると怒るという発想はなかったのだろう、多分。

 それに最愛の人の場合、ホステス遊びとか舞妓・芸子遊びの場所には――教授会の後に病院長命令などで仕方なく、そして渋々(しぶしぶ)参加した場合は例外だが――全く行かないので「年齢のことを言わない」という不文律も知らなさそうだ。そして職場ではカルテに生年月日と年齢は漏れなく記載されていることも有ってタブーという認識もないのだろう。

 ただ、どうフォローしたら良いのか祐樹にもサッパリ分からないのが、最愛の人に対してある意味申し訳ない。西ケ花桃子さんは割とどうでも良いというのが本音だが、話をする上で協力的になってもらう必要がある……。

「良いわよ。貴方とはもう話さないから」

 先ほどまでの媚びた甘い声ではなくなっている。

 ワガママで勝気、そして割と子供っぽい考えをする女性なのだなと思った。まあ、生まれ持っての美貌とか努力しているらしいスタイルの良さのせいでちやほやする男性が多かったからなのかも知れない。

 最愛の人と話さないのは祐樹にとっては大歓迎だ。それに「貴方と『は』話さない」ということは祐樹とだけ話す気持ちがあるというコトなので都合が良い。

 高校の時の授業参観の話をしたのが逆に良かったのかも知れない。

「良いお部屋ですね。

 それに凄く片付いていて、実に女性らしい部屋で感心しました……」

 彼女の部屋は3階の(かど)部屋(べや)で間取りは3LDKというところだろうか。ただ、全ての部屋が大きいので解放感がある。

 外では綺麗にしている女性が部屋の中は乱雑とか混沌(カオス)とかいう言葉でしか表現出来ないケースがあると読んだ覚えもあるし、身近には長岡先生という生きたお手本も居たので逆に意外だった。

 最愛の人は不審そうな表情を浮かべている。別に不審なモノはないのにな?と思いながらリビングルームに案内された。

 後で何を感じたのか聞いてみよう。



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気分は下剋上 ハロウィン企画 14

「ああ、このシーンを再現なさったわけですか……。流石です」

 何故かピアス(だと思うが違うのかも知れない)を付けた黒髪の長髪男性が僧侶の恰好をしている。僧侶といえば髪の毛は剃っているハズだが、マンガやアニメの世界では違うのかも知れない。そして主人公の男の子や祐樹が演じる予定のキャラクターの前で宣戦布告をしている。

 そのセリフを見事にパクって……いや、改変して内田教授は言い放ったわけだ。

「いえいえ、私などは単なる猿真似、いや猿芝居ですよ」

 内田教授は、はにかんだような笑みを浮かべているが、あの場で咄嗟(とっさ)に思いついたセリフのハズで、なかなか出来ることではない。それに読めば読むほど――といってもセリフ自体は少ないので楽勝だが――あんなに都合よく変えることが出来たなと思ってしまう。流石は医局内クーデターを指導して成功を収めただけのことはあるなと感心した。まあ、内田教授もこのページだか映画だかを――祐樹はまだ観ていないが――読み込んでいるか何度も観たので自然に出たのかも知れないが。

 祐樹はそこまで熱意を持って読み込んだ経験はないので、何とも言えないけれども。

 祐樹が演じるキャラクターはこの場面にも出て来るが、目を覆っている包帯の具体的な巻き方が気になってしまう。これは一種の職業病かも知れないが。

包帯を巻くのは看護師の役目だが、救急救命室では手の空いている人間がすることになっているので、数えきれないほど行っているので大体こうかな?とは見当がつく。

 パラパラと(めく)っていると(くだん)のキャラクターが包帯を巻いている場面が有って、補助具も使わずに布だけを使用していた。流石にそれは現実的に無理だろうと思ったが。

「ではお借りします。ただ、いつお返し出来るか確約は出来ないのですが……」

 そろそろランチタイムも終わる時間で、これを最愛の人の執務室まで持って行く約束になっている。

 病院内の医師の例にも漏れず――いやキャラクターのセリフの「最強」ではなくて、「最速」かも知れない――読むのは早い。21巻あるマンガ本でも多分、一時間も掛からないだろう。

「いえ、ハロウィンまでに――いえ、お時間が許せば……ですけれど――読んで頂いて下さるだけで充分です。返すのは本当にいつでも結構ですから。

 救急救命室で読まれて血の付いたものであっても、却ってこのマンガには相応しいと思いますので……」

 ……内科の先生らしいな……と思ってしまう。確かに救急救命室の処置室では床が血まみれになることは有る。それは事実だが、休憩室に入る時には皆当然のように手を洗うし、そもそも処置室では医療用の手袋を着用しているので、手に血液がつくことすら稀だ。

 それはともかく、確か「呪霊」と表現されている人でないモノも出てくるマンガだし、この0巻は物理的に不可能なハズの同級生四人ロッカー詰め事件で血も流れている。

 久米先生が一時(いっとき)ハマっていた美少女恋愛シュミレーションゲームに流血は全くもって相応しくないし、そんなものは誰も求めていないだろうが、このマンガだと血痕が残ったとしても――現実的に有り得ないが――作者さんが描いたモノとして認識されそうだ。

「昼食までご馳走になって本当に有難うございます。では失礼します」

 最愛の人はまだ執務室に居るだろうか?

 廊下をなるべく早く歩きながら考えていた。

 お互いの仕事のスケジュールは把握しているが、分・秒刻みでは当然ない。

 居なかったとしても秘書に渡したら確実に彼の手に渡る。お飾りみたいな若くて美人の秘書を置く教授も居ないわけではないが、最愛の人は実務能力以外について全て無視しているし、そもそも若い美人に興味すらない。

 マンガ本は本来一巻から始まると祐樹は認識しているし、最愛の人もおそらくそうだろう。ただこのマンガは0巻から始まるので注意喚起すべきだろうかを真剣に考えた。

 昼食から戻って来た教授達に会ってお辞儀だけは欠かさずしたが、祐樹の表情を見て同情めいた表情を浮かべている人もいた。

 多分、医局で何か仕出かしてしまって、その謝罪と叱責のために教授執務室に赴くとでも思われているのだろう。実はマンガの巻数のことで悩んでいるだけだったが。

 几帳面な性格の最愛の人なので、複数巻続いている外科大全なども必ず一巻から並べ直す癖を持っている。祐樹などは3巻の右に1巻が並んでいても自分の部屋だと全く気にならないし――というか気にも留めない――直しもしない。最愛の人は無意識に手が動いているといった感じで一巻から順に並べていっているのを長岡先生のマンションで見たことがあった。

 彼女は香川外科が誇る優秀な内科医だ。最愛の人がアメリカから帰国する際に連れ帰っただけの価値は充分にあると思う。しかし、私生活は全くダメで卵をそのまま電子レンジに入れて爆破させたとか、そういう「武勇伝」には事欠かない女性だ。

 ただ、婚約者の岩松氏も彼女に家事能力は望んでいない。むしろそういう「武勇伝」を楽しみにしているフシすらある。それに、彼女がどんなことを仕出かしても――他人に迷惑を掛けないという大前提は存在するだろうが――笑って許す器量と財力も持ち合わせている人物だ。

 最愛の人も祐樹も女性に「そういう」欲望を抱かない人種(?)だと知っているので、彼女のマンションに入室しても良いという許可を貰っているし、最愛の人が掃除を始めてしまって祐樹も渋々付き合うということが過去に何度も有ったので、そういう几帳面さは知っている。

 だから紙袋から出した彼は、あの白く長い指が魔法のように動いて巻数を揃え直すだろうし――ざっと見た範囲では順番通りに並んでいたが――1巻から20巻まで並んでいた場合、0が最初に来ることは彼ほどの明敏な頭脳の持ち主でなくとも容易に推察出来るだろう。

 執務室に最愛の人が居てくれたら良いなとは思う。勤務時間中に会えると何だかそれだけで祐樹にとっては予想外のご褒美のようなモノだったので。

「田中です。お呼びにより参上しました」

 一縷の期待を込めて彼の部屋をノックした。


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