腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2022年09月

気分は下剋上 香川教授の小さな煩悶 12

「教授はご自分のことに対して決断は素早くて的確ですが、田中先生が絡むとお一人で悩んで解決しようという傾向に有りますよね……。悩んでご自分を追い込むよりも、田中先生に直接聞いた方が建設的です。帰宅は無理でも病院内でも良いではないですか?

 田中先生も少しくらい時間、取れますよね?私の個人的感触からしてそんな深刻な問題にはならないような気がします。

 同居人なんて……、新宿二丁目に詳しいということで……とある大臣の案内役(ガイド)というか接待して、良い感じにカップルになった某大臣をお見送りした後――まあ、バレれば物凄いスキャンダルになりますので某大臣は同居人に頭が上がらないハズなのは良いのですけど――声を掛けられた人間がタイプだったようで、一緒に一杯呑んだ後にラインを交換してやり取りしていたのですよ!!

 もうアイツ信じられないと思って」

 新宿二丁目は確か自分のような性的嗜好を持った人間が集まる場所だと聞いている。実際に行ったことはないし興味も皆無だが、森技官が詳しいというのも知っていた。 

 厚労省のナンバー2だった人に何故か「そういう」厚意を持たれてしまって料亭で唇を奪われた覚えがある。その後必死に逃げたものの、祐樹に申し訳ない気持ちでいっぱいだったし別れを覚悟した。

 呉先生の言う「自分を追い込む」性格なのも分かっている。

「ラインの交換って何故分かったのですか?」

 呉先生には絶対に言えないことだけれども、祐樹が幹事を務めた医局の慰安旅行の宴会の日時と旅館が厚労省ご一行様と恐怖のバッティングをしていたことがあった。

 色々と無理難題を言ってくる厚労省に対して良い感情を持っている医師はいないだろう。

 呉先生だって個人としての森技官に対しては恋愛感情を抱いているだろうが、厚労省は大嫌いだったハズだ。とある薬剤に認可取り消し決定が厚労省から降ってきて「あの薬が使えなくなると、却って入院患者が増える」とかで。

 自分の医局も皆が日ごろは口に出さないだけで、思うところはたくさんあった。旅先の宴会場は(ふすま)で仕切られただけだったので隣の宴会の様子など筒抜けだ。会話の端々で相手が憎き厚労省の人間だと分かったら酒の勢いも加勢して大乱闘に成りかねない。

 そうなったら幹事役の祐樹も事態の収拾に忙しくなるだろうし、警察沙汰になった場合は医局の名誉にも関わるし、個人的には祐樹が深夜に夜這(よば)いに来てくれるという約束が果たされないのは嫌だった。

 なので、日程を替えて欲しいという交渉に一人で森技官と会ったことが有る。もちろんその時も呉先生と森技官が恋人同士だった。交渉成立した後に、森技官は祐樹がナースをお茶に誘う程度の感じで――実際に祐樹がナースをお茶に誘うところは見たことがないけれど――ホテルへと誘われた。

 誘われたけれども断ったのは言うまでもないが、呉先生には黙っておこうと思っていて、今更そんな話を蒸し返す積りもなかったけれど、森技官なら呉先生に露見しないような火遊び程度はしてそうだ。

 国家公務員なので職業柄全国を飛び回っているみたいだし、東京にずっと居る時も有って呉先生の目をかすめる程度は森技官も出来るだろうし。

「たまたまスマホをテーブルの上に置いたまま、トイレに行ったのです。そしてそのスマホが振動したので何気なく見たのです。

 アプリを起動させなくても始めの数行は読めますよね?既読も付かないし……。(職場関係の緊急の用件だったら早く知らせないと)という思いも有りました……」

 思い出しても腹立たしいのか先ほどとは違って焼き栗の袋を華奢な指が強い力で破っている。親の仇と言った風に焼き栗の洋菓子を三個も口の中に入れている。スミレの花のような可憐な唇が自棄(やけ)になったかのように動いていた。

 多分だが、呉先生の愚痴を祐樹も聞いたのだろう。あの時の会話を録音していたのであれば、それを聞かせると火に油を注ぐようなものだと思って自重したのかもしれないなと思う。

「……それでね、文面が『会えてチョーうれしい今度はホテル』までが読めて、問い詰めたのです」

 お菓子の欠片を付けたままの唇が悔しそうに震えていた。いや、怒りなのかも知れないけれど。

「なるほど……。即座に聞くのがコツなのですね……。

 ちなみに森技官はどう言い訳を?」

 祐樹とも仲の良い口喧嘩友達な森技官は口も良く回るし頭脳も明晰な人だが、怒った呉先生の場合理屈で納得させるのは無理だろうなとも思う。

「『一杯呑んで話が弾んだのも事実だけれど、ラインを交換したのはその場のノリで。そして、自分は見た目がゲイっぽい人には興味がないので、ホテルに行く気など全くなかったし、これからも行く気は一切ない』と。一応は納得しましたけれど……10日間は許す積りはなかったのですが、二日の間見ているこちらが噴き出すほど悄然とした雰囲気というか、叱られた犬がそのまま家から飛び出して、ゲリラ豪雨に打たれてしょんぼりと家に帰ってきたみたいな雰囲気を醸し出していて……。

 思いっきり笑ってすっきりした後……そのう……恋人としての『語らい』をベッドの上でした……というか……。

 それで仲直りをしました。香川教授もあれだけ田中先生に愛されているのですから本音をぶつけても良いと思いますよ」

 あれだけというのが具体的にどの数字を指すのかは分からないけれども、目の前でコーヒーを飲んでいる呉先生も先ほど相談に行った長岡先生も自分に対する祐樹の愛情については全く疑ってはいないようだった。

「そういえば、うちの医局の唯一の内科医である長岡先生にも相談に行ったのです……。あいにく呉先生が診察中でして……」

 呉先生の細い眉が怪訝そうに寄せられたが、直ぐに花が開くように微笑んだ。

「ああ、あの優秀な先生ですか。

 そして、エルメスのバーキンを腐るほど持っているというウワサの……」

 言葉を切ってなんだか秘密めいた口調に変わった。

「固定資産税通知書が来て、年四回の納税日が迫って来た時などはね……」

 次の言葉に思わず耳を疑ってしまった。


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気分は下剋上 二人がどうして探偵役? 5

 この三人だけならば、最愛の人ではなくて祐樹が聞いても問題はない。

「その通りです。香川教授に関することは全て私に一任されていますので、省内では」

 祐樹が幹事を務めた医局の慰安旅行が厚労省ご一行様と最悪のバッティングをしそうなことに気付いた最愛の人が森技官と直接交渉に向かい、日程変更の引き換えに厚労省の研究会参加という――今まで厚労省のどんな誘いも蹴って来た過去がある――条件を引き出した成果を買われて森技官の株も更に上がったと聞いている。その後厚労省のナンバー2が最愛の人に(よこし)まな下心を抱いて実力行使に出た。といっても、料亭に呼び出してキスをされただけで必死に逃げたと聞いている。最愛の人はアメリカに居たこともあるのに、キスで酷く動揺していた。そういう初心(うぶ)な点も愛おしいのだが、祐樹最愛の人の花よりも綺麗な唇を汚されたことは許しがたくて森技官に協力を頼んだ。その時はこれ以上ないほどの報復が出来たのは彼のお蔭だった。

 そういう流れからも厚労省内部では「香川教授の件は森に任せた」というふうになっていると、祐樹が付いていった霞が関で和泉技官に聞いた覚えがある。

「で、犯人捜しですか?警察にも分からないモノを素人の私達が突き止めることが可能だと?」

 最愛の人と祐樹が組んで犯人に医学的なアプローチから犯人を割り出す可能性は50%くらいだなと直感的に思ったが、牽制(けんせい)しておくに越したことはない。

 何せ相手は森技官なので「50%の自信が有ります」などと言ってしまえば、結果的に犯人が分からなかった時には毒舌と冷笑が待ち構えている。悔しいことにそれがまた良く似合う容貌だし表情も憎たらしい。祐樹も最愛の人と出会う前はそういう傾向に有ったのも自覚しているので同族嫌悪かも知れない。

「では説明します。メモを取る必要がないように(まと)めて来ました」

 流石は将来の事務次官との呼び声が高い人のことだけはある。

 ただ、祐樹にはメモが必要だが、最愛の人の記憶力はビデオカメラ並みなのでその場で暗記しそうだが……。

「亡くなったのは、長楽寺(ちょうらくじ)真司(しんじ)氏、63歳です。行きつけの小規模医院ですね。息を引き取ったのは。

まあ、ベッド数は12有りますが、割と商業主義の院長のようで亡くなりそうな患者さんを積極的に受け入れているとか。だから死亡は日常茶飯事のようで、当然Aiセンターに依頼なんてしません。

 そういう医院も撲滅(ぼくめつ)したいと個人的には考えているので……世界の香川教授が直々に赴くことに加えて田中先生のご活躍を期待しています。

 病院もビジネスであることには変わりがありませんが、やはり医師の良心というか今までは通用していた(こと)(なか)れ主義を猛省してもらうためにも是非ともご協力頂きたいのです。

 死因は心不全との診断で、埋葬まで済んでしまっています。香川教授はともかく……救急救命室を兼任されている田中先生は死亡診断書を書くのは慣れてらっしゃいますよね?医師のサインや必要事項が書かれていれば、葬儀社が引き取ってくれます」

 森技官の用意してくれた書類を見ながら説明を聞く。自分の苗字について思う所は特にないが、漢字三文字の名前は何だかお金持ちっぽいイメージがある、独断と偏見だが。

 救急救命室と発音した時の森技官は何だか雑巾がけをした後にバケツで洗った水を飲んだような表情だったのが何だかウキウキしてしまう。彼の弱点は血液で、良く医学部を卒業出来たなと思うレベルの恐怖症だ。まあ、森技官のことなので強靭(きょうじん)な意志の力で乗り切ったに違いない。冷静そうな端整な顔をしながら冷や汗を必死で隠すとか、嘔吐しそうなのを我慢して周囲の人間に気取られないようにしていた学生時代の森技官を見たかったなと思ってしまう。

「会社経営者と書いて有りますが、会社は順調でしたか?」

 森技官の作成した書類を白く長い指でパラパラとめくって――多分、全部記憶出来たに違いない――隣に座った最愛の人が聞いている。

 彼と付き合うまでは行きつけのゲイバー「グレイス」で杉田弁護士と話す機会も多かったし、中小企業の社長さんもその中に混じっていた覚えがある。資金繰りが上手く行かないと多大なストレスを抱え込むとか、従業員の給料とかツケで仕入れた品物の支払いのためにバカみたいに高い金利のヤミ金にまでお金を借りてその返済のために別のヤミ金に頼みに行くとか聞いた覚えがある。心疾患とストレスの関係は高いので最愛の人も気になったのだろう。

「いえ、手広く事業展開をしていて金銭的には困っていなかったようですね。生活ぶりは派手だったようです。妻の()()の他に愛人まで囲っていましたよ」

 書類には佳世58歳と書いてあった。愛人は元ホステスの西ケ(にしが)(はな)桃子37歳と。偏見かも知れないが現役ホステスをするのは年齢的に無理がありそうだし、愛人契約を結んで安楽な生活に逃げる方が賢明な気がする。

「63歳で愛人を囲うとはお元気ですね……」

 性欲は人によって死ぬまで有ると医学書で読んだ覚えがある。しかし、37歳といえばまだまだ女盛りなのにそのお相手も務まるのだろうかと疑問に思った。

「まさか腹上死とかではないでしょうね?」

 最愛の人が「ふくじょう……し……?」と不思議そうな呟きを零している。医学書には書いていない言葉以外の下世話な言葉は全く知らない可愛い人だ。



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気分は下剋上<秋休み>2

 あれだけ楽しそうにセミを捕まえていた人なので、もしかしたら探すことも大好きかもしれない。山歩きも全く苦にならなさそうだったし。

 取りあえずは最愛の人の意見を聞こうと思った瞬間に救急車からの専用電話が鳴り響いた。

 

「ただいま帰りました」

 午前三時が祐樹の帰宅時間だったので、極力音がしないように玄関を始めとするドアを開けた。

「あ、祐樹お帰り。お疲れ様」

 眠っていて欲しいと再三言っていたのだが、最愛の人は祐樹が帰宅する時間には自然に目が覚めてしまうらしい。ただ、明日に備えてベッドの中に入っている。

 手指の消毒とかうがいを済ませてパジャマに着替えて寝室に入るとベッドに半身を起こしていた最愛の人の指を付け根まで絡ませて「ただいま」のキスを交わした。

「起きていても大丈夫なのですか?」

 ベッドに並んで横たわっている最愛の人は祐樹の指を強く握ったままだった。

 今夜の救急救命室は(なぎ)の時間が幸運なことに9割を占めていて、休憩室で熟睡出来たしシャワーを浴びる時間の余裕まであった。そして明日は――というかもう数時間後だが――祐樹執刀の手術(オペ)の予定はなくて久しぶりに最愛の人の手技に参加出来る。

 彼の鮮烈な手際の良さとか大胆でありながらも繊細な動きは第一助手としてずっと見てきたが、祐樹も執刀経験を重ねたのでより身近に観察して盗む絶好の機会だった。単に見ているだけだった時よりも、祐樹も経験を重ねてきたのでより具体的なコツなども勉強出来る目論見も持っている関係上久々の第一助手は楽しみだった。

 ただ、最愛の人は当然執刀医で……充分に休まなくても良いのだろうかと心配になってくる。

「それが……夕食を済ませた後で急に眠くなってリビングのソファで休んだ。気が付いたら二時間経っていたので……、今はそれほど眠くない。祐樹は疲れただろう?早く休んだらどうだ……?」

 生活の時間割がキチンとしている最愛の人がソファで眠ってしまったのも珍しい。ただそういう日もあるだろうなとも思ってしまう。

「それが、今夜は凪の時間が90%でして……。充分過ぎるほど休憩や仮眠は取りました。では、少しお話ししても良いですか?

 夏に『秋になったら牡丹鍋を食べに来よう』と交わした約束はお忘れではないですよね?」

 疑問ではなくて確認だった。最愛の人の驚異的な記憶力は知っているし、それでなくとも約束を交わした後に祐樹の実家に帰省した時、母から干し柿の作り方やコツなどを教えて貰ってとても幸せそうだったので。

「もちろん。ただ、干し柿はマンションのベランダで作るのは難しそうだなと思った。太陽光が入る角度もいまいちだし。

 またあそこに連れて行ってくれるのか?」

 電気を落とした寝室のベッドルームに弾んだ声が闇を照らすように響いた。

「ええ、貴方との約束は――時間の制約が有って、実現していないものもあるのも事実ですけど、それは停年後などの約束が殆どですよね――忘れることはないですよ。

 9月のシルバーウイークにでも一泊で出かけませんか?素敵なイベントも見つけましたし、旅館もあの近くの城下町――そんなモノがあるとは知らなかったのですが――には素敵な旅館も存在します。

 旅館というかホテルなのですが、珍しいことに一棟のビルではなくてあちこちに分散していてそれぞれに違った趣の建物や部屋が用意されています」

 夏に通り過ぎた牡丹鍋屋さんのことを調べていると偶々(たまたま)そういう情報に辿り着いた。

「そうなのか?それは楽しみだ……。私にとっては祐樹とのデートというだけで心が弾むのに、そういう珍しいホテルを見つけてくれて有難う」

 さらに弾んだ声が寝室を朝の光がキラキラと舞っているような錯覚を覚えるほどだった。

「いえ、貴方を喜ばせることとか、したことのないことを体験させるのは愛する者の務めですから。

 干し柿用の渋柿(しぶがき)は買って帰るのですよね?」

 即時に返事が貰えるかと思っていたら、数秒の間が二人の前に揺蕩(たゆた)った。何故かと聞くよりも早く返事が返って来たけれども。

お盆休みに帰省した時に母から習っている最愛の人を眺めていた時に仕入れた知識だった。それまでは全く関心がなかった祐樹だが、最愛の人と母が話しているのを微笑ましく聞いていたので。

「祐樹のお母さま直伝の干し柿は是非とも作りたい。ただ、少し悩んでいるというか、祐樹の知恵を借りたいことが有って……」

 最愛の人は何でもそつなくこなすが、祐樹を頼ってくれるのはとても嬉しい。

「何ですか?最愛の貴方にアドバイス出来るのは嬉しいです……よ?」

 束の間、逡巡(しゅんじゅん)めいた空気を感じた。

「実は呉先生のことなのだが……。クワガタやカブトムシを取りに行った時に、干し柿を作る充分な場所の候補に薔薇屋敷が挙がっていただろう?

 呉先生が、森技官も家賃を入れているらしいけれども……それでも大変らしくって。

 ほら……私が祐樹の言葉を断片的に聞いて誤解したことが有っただろう?」

 以前よりもかなりマシになったとはいえ、最愛の人の悲観的な性格は知っていた。ただ、患者さんとの会話を聞いて不安にさせたのはマズかったと思う。ただ、その日のうちに祐樹に聞いてくれたのは進歩だろうが。

「有りましたね。もう少し私の愛を信じて欲しいな……とは思いました。こんなに愛している貴方に悩み事を作ったのは反省しています」

 詫びる代わりに前髪を梳いた指で頭皮をマッサージする。祐樹が最愛の人のためにマッサージ屋に通ってコツを盗んだ後に、最愛の人のツボ(?)を指で確かめて記憶している場所は重点的に。

 呉先生が大変というのは金銭問題だろうか?森技官が家賃を入れているという流れからするとそうだろう、多分。


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気分は下剋上 二人がどうして探偵役? 4

 厚労省のトップは言うまでもなく厚生労働大臣で、確か総理大臣の椅子に最も近いと報道されている人だ。現職の総理大臣にも、そして――スキャンダルなどで議員辞職をしなければという前提だけれども――未来の総理大臣の覚えを良くしておくと、多分斎藤病院長が狙っている学長の座にも有利に働くのだろう。

 権威に物凄く弱い斎藤病院長が現職の総理大臣が「披露宴」にご来臨された時にも主役だった最愛の人と祐樹のことはそっちのけと言った感じだった。

 二人の共著の本の記念のパーティという名目だったが二人の間では「披露宴」が共通認識だったのでむしろ病院長の下手な介入がなくて助かったと思っていたが。

 総理大臣経由か厚生労働大臣単独かは分からないものの、大臣のご指名だったとしたら土下座してでも最愛の人や祐樹を動かすだろう。

 そして救急救命の仕事は誰にでも出来るわけではないものの、祐樹が抜けても問題がない程度に人材は居る、というか育っている。斎藤病院長のこの意気込みだと救急救命室勤務からも外れるだろうし、Aiセンター長の業務は幾らでも調整が効く。そもそも死亡時画像診断なので一刻を争うようなことは全くなくて、依頼された――会社的な表現だと納期だろうか――日時までに所見を送れば良いだけだ。祐樹が居なくとも放射線科の野口准教授以下の医師も控えているので大丈夫だろう。

そして、最愛の人の勤務時間以外で動くことは確定なので、夜間が主な活動時刻になるハズなので、夜の時間は二人で長く過ごせるというのも新鮮だった。平日の夜は祐樹の夜勤が詰まっているせいもあって一緒に過ごすということは殆どなかった。

この申し出を受ければ病院長公認で二人の時間が取ることが出来る。

犯人捜しは専門ではないし、したこともない。ただ最愛の人の記憶力と医学的知識、そして祐樹の分析力が合わされば何とかなるような気がした。といっても、具体的なことは何も聞いていないが。

一緒の時間が増えることは単純に嬉しいので、この(さい)病院長の命令に乗ってみようと思う。

「では警察の協力は一切仰げないということですか?」

 怜悧で落ち着いた声で我に返った。

「そうです。厚労省の指示に従ってください。では香川教授と田中先生宜しくお願い致します」

 長いままの煙草を重そうなクリスタルの灰皿に押し付けて消している。どうやら「御高説」(土下座付き)は終わったらしい。

 重い荷物を下ろしたような足取りで隣室のドアを開けてお辞儀寄りの会釈をしている。

「ご紹介の必要はないですよね?では、後は良しなにお願い致します」

 隣室のドアから現れたのは予想通りの森技官だった。アルマーニの服がこれほど似合う日本人もそうは居ないだろう。個人的には物凄く悔しいが事実なので仕方ない。

「香川教授、田中先生お引き受け頂いて有難うございます。今回も宜しくお願いします」

 斎藤病院長は大任が済んだと言わんばかりに隣室に消えていった。

「いえ、こちらこそ。相変わらずこの病院に通い詰めていらっしゃいますね。愛しの君が居るからという公私混同かも知れませんが……」

 祐樹のジャブを柳に風と受け流した森技官は不敵かつ神妙な笑みを浮かべている。この二つの表情を同居させるのは難易度が高いにも関わらず、完璧に出来ている点は祐樹も見習いたい、個人的には悔しいが。

「森技官、呉先生から色々とお話を伺っていますので久しぶりという気はしないですね。

 お元気そうで何よりです」

 ごくごく自然な淡い笑みを浮かべた最愛の人が律儀な挨拶をしている。森技官の恋人の呉先生共々親しい仲ということも有るが、来るべき病院長選に向けて愛想よく振る舞おうと努力している姿が愛おしい。

 秘書が三人の顔を見ながら愛想笑いではない感じの笑みを浮かべてコーヒーを運んできた。

「いえ、充分頂きましたので結構です」

 祐樹と森技官が珍しく異口同音で答えてしまった。個人的には大変不本意だったがこの程度のことで怒っては最愛の人の前で男が(すた)るというものだし、祐樹にはスマホで録音した、取って置きのモノが有る。核兵器を持っている国は批判されるが、所持していると気持ちに余裕が出来ると身を以って知っている。森技官のあの発言を呉先生が聞けば確実に激怒するに違いないので、イザという時には仄めかそうと思った。

「私は頂きます……」

 律儀な性格の最愛の人は出されたモノを断らない。彼自身の淹れたコーヒーが100点満点だとすれば、この秘書嬢のシロモノは20点といったところで正直自販機のコーヒーの方が美味しい。

 きっと森技官も同じような感想を抱いているのだろう。どうせ別室で飲んでいたに決まっているし。秘書嬢はコーヒーをトレーに載せたまま祐樹最愛の人に何か話しかけようとしている、しかも世の中のノーマルな男性なら断る気が起きないような笑みを浮かべて。

「この先は内密の話になりますので席を外して頂けませんか?」

 祐樹同様に美女に微塵も興味のない森技官が斬って捨てるように言った。もしかして祐樹の内心を見透かしたのかも知れない絶妙なタイミングだった。その点は素直に感謝したい。最愛の人の秘書は停年間近と聞いている。だから病院内の人脈も当然広いので病院長選に向けて協力を仰げるという利点もあるし、裏方に徹して決して出しゃばったりはしない。

 しかし、病院長の秘書は腰かけ程度しか居ないので味方に付けるほどでもないから放置・スルーが一番だろう。

「警察の協力は一切なしということでしたよね。では森技官が説明して下さるのですか?」

 秘書嬢が肩を落として――多分祐樹最愛の人狙いのような気がする――別室に消えたのを確認した後祐樹が質問した。

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気分は下剋上 香川教授の小さな煩悶 11

「話を断片的にしか聞いていない点に問題が有ると思います。

 伺った限り、田中先生は患者さんと話をしていたと思いますがそう考えても良いですよね?香川外科で患者さんと冗談を交わせる親しみやすい医師として病院内でもウワサになる程度の人ですし、研修医と真剣な話をしている感じではないでしょう?そんな『見てくれだけのバカ……愛している』みたいな会話をするような職務怠慢な態度を取る人とも到底思えないのですが。

 医局内とかで、しかもお暇な時間に雑談を交わしている中でそういう話が出るというのは良くあります。ちなみに、田中先生は才色兼備の東京在住の商社レディと『交際』しているという噂は良く耳に入ります。こちらの(ほう)は田中先生が意図的に流したミスリードとしての噂ですよね……。ま、バレンタインデーのチョコ獲得数ナンバー1の座を不動の物にしている田中先生は本命が居ると見せかけていた方が良いという判断なのでしょうが。

 それはともかく……久米先生という研修医に言っていたわけではないという認識で大丈夫ですか?」

 呉先生の流暢に流れる言葉の洪水に押し流されそうになる。流石は言葉を主な武器とする精神科医だけのことはあるなと思いながら「あの時」のことを思い出してみようとした。

 ショックの余り、脳が再生を拒否するのを宥めながらのことなので時間が掛かってしまったが。

「確かに患者さんに向かって言っているようでした。久米先生は『え?田中先生ってそうなのですか?それは意外でした……』と言っていましたので。

 患者さんに何か言われて、それに対してゆう……田中先生が答えたという感じの流れでした」

 呉先生は栗の焼き菓子を満足そうに食べている。

「これも患者さんからの頂き物なのですけれど、和菓子とかミカンなどを持って来られる患者さんも居ます。まぁ、以前教授がここに持って寄られた生きた伊勢海老は流石に持って来られたことはないですけれど」

 苦笑交じりの呉先生の言葉にあの時のことを鮮明に思い出す。病院の会計を通さないお金やそれに準ずる物は一切受け取らない方針を徹底した結果、患者さんは返せない物を色々と送りつけて来るようになった。

 老舗料亭とか一流ホテルの昼食がメインだったが、生きた伊勢海老が届いたことが有って、妻帯者の黒木准教授に譲ろうとしたら珍しく断られたので自分で料理しようと持って帰った。祐樹と二人で美味しく頂いた記憶がある。

「大体何でも食べますけど……。同棲……いや同居人は甘いモノが苦手でして、重複した場合辛いのです……。

 しかし『いつも美味しい物を有難うございます』と言うのは社会人としてのマナーですよね。内心美味しくないと思っているお菓子も実は有りますよ?

 その場合、どうやって判断出来ますか?例えばこの栗の焼き菓子は大好きです。でも、嫌いな物などを貰った時も同じように言います」

 それは一理あるかも知れない。呉先生は先ほどから同棲という言葉を使っているな……と頭の隅で考えながら反論してしまう。

「しかし、モノは何もなかったと思います。しかも祐樹は『見てくれだけのバカ』と言っていました。

 お菓子などの話でないことは明白でしょう?」

 呉先生が寒さに縮こまったスミレの花の蕾のような笑みを浮かべている。

「すみません、話が横道に逸れてしまっていたようです。

 例えば『大好きです』という言葉を聞いて、本心で言っているかどうかも分からない上に、何が大好きなのかも不明ですよね。

 田中先生は患者さんのお話しに調子を合わせていただけという可能性は有りますよね?

 『見てくれだけのバカ』『好き……愛している』という断片的な言葉しか聞いてらっしゃらないのですから、総合的に何の話をしていて、どうして『好き』『愛している』なのかの情報が欠落しているのではないかと考えます。

 私が久米先生と面識があれば、聞いて来ますけれどあいにくないので……。そもそも外科とか救急救命は鬼門なので近づきたくないのが正直なところですし……。一面識もない人間がのこのこ行って話を聞くというのも現実的ではないですよね……」

 呉先生の血液アレルギーは重症で、血を見ると吐いてしまうほどだ。だから外科関連には近付こうとしない。

「そうですね。確かに断片的な言葉だけしか聞いていません……。祐樹に直接聞いた方が良いですね……」

 直接聞く勇気がなかったので遠回りをしてしまったな……と思った。

 そして呉先生はそんな自分の背中を押してくれたような気がした。

「そうですよ。

 田中先生って甘いモノ苦手だったじゃないですか?それでも、チョコをくれた女性全ての厚意をムゲに出来なくて全部貰ってしまう人ですよね。……多分、あのチョコレートの山は教授が殆ど召し上がったかと思うのですが……。

 まあ、チョコの行先はこの際どうでも良くて、とにかく思いつめる前に直接聞いた方が良いです!!絶対に。何なら直ぐにでも……」

 直ぐに聞き糺したいような気がして来た。ただ祐樹は二日間も帰宅しない。

「それが……夜勤続きなので……物理的に無理なのです……」

 肩を落として告げた。すると呉先生の細い眉がキリリと上がった。

 可憐な見た目に反して割と短気で怒りっぽい人だったのを思い出したが、後の祭りのようだった。



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