「いや、今は止めておく……。『披露宴』と『二次会』でたくさん食べたし……。それに、こういう恰好のままということは、まだ愛してくれるのだろう?」
濃紺の浴衣を肩に掛けているだけで肝心な場所は寝室の甘く乱れた空気に晒している最愛の人が身じろぎをすると、糊の効いた浴衣が肩から滑り落ちて、ルビーよりも綺麗な煌めきを放つ場所を隠していた。
「あっ……」
目を瞑って糊の効いた木綿の布が与える悦楽を必死に耐えている最愛の人の健気な姿に見入ってしまう。
「もちろんです。『初夜』とか『ハネムーン』などは、睡眠と食事以外はこうして愛を交わすのが普通です……。
それはそうと、この濃紺の浴衣の糊の効き方はやはり擦れてしまって今の聡にはキツいでしょう?」
浴衣を掛け直すついでに、鎖骨の窪みの薄い肌に唇を落とした。
強く吸ってから歯で甘く噛むとそれだけで背筋が撓っている様子も愛らしい。
「アイスコーヒーを頼んできますね……」
浴衣を紅色の素肌に掛けなおして、唇を重ねてから寝室を出た。
「祐樹……新婚旅行で調べてみたのだが、観光旅行と組み合わせてあるのが結構あった。
それもフランスだったらルーブルとかベルサイユ宮殿やセーヌの川下りとか、ルーブルは確かキチンと回ったら三日はかかるという美術館だし、ベルサイユ宮殿だってルイ14世が建てた豪華かつ壮大な建物だろう?
そういうのも回って、夜は愛の行為をするのか……?」
素朴な疑問といった感じで言葉を紡ぐ最愛の人の唇に焼きティラミスを運ぶ。
「いえ、今も婚活パーティとかで知り合ったり、昔ながらのお見合いで数回しか会ってない人達が結婚したりした場合は、お互いの想い出作りという側面がありますから、デートを兼ねてそういう場所に行くのです。
そういうカップルは愛の行為というか夫婦の営みも遠慮がちになってしまうでしょう?
それは分かりますよね。
私達だって知り合って『こういう』関係になった直後は割と日にちが空いていましたよね?それにお互いの感じる場所とかそういうモノを探っていましたよね?
そういう初々しいカップルがそういう新婚旅行を選ぶモノだと思っています。
お互いの肉体に惑溺するようになったカップルはせっかくヨーロッパに行ってもホテルの天井しか見なかったとか、ルイ14世風の天蓋付きベッドから出なかったとかそんなのはザラに有るらしいですよ。
ヨーロッパは日程の関係上無理ですが、私達が行ってもそういう結果になるのは目に見えています。
だから近場の香港のペニンシュ〇ホテルのスイートルームで心行くまでこの甘く香る肢体を堪能したいのです。
フランスに観光旅行に行きたいのであれば、夜の愛の行為も一回だけとかになりますが、企画しますよ?」
まだルームサービスが来ていないので、最愛の人の唇に焼きティラミスを運びながらそう言った。
「いや、別にフランスに行きたいわけではないので……。
今夜の焼きティラミスはことさら美味しい……な。
これも愛の行為の後だからだろうか?」
唇が花のように綻んでいる。
「それもあるでしょうが、出席資格のない女性たちがこのパーティのことを聞きつけてわざわざ集まって下さいましたよね。
その彼女達も貴方や私のことを考えながら食べて下さっているハズなので、その幸せを祈って下さる気持ちがスパイスになっているのではないでしょうか?」
彼女達がどこまで勘付いているのかは知らないし、怖くて知りたくもないことだったが、時間を削ってまで祝福に集まってくれたのは単純に嬉しかった。
そんな厚意も有って焼きティラミスに甘さを添えているのだろうなと非科学的なことを考えたが、味覚というのは感情とか見た目にも左右されるのは知っていた。
例えば病院で患者さんに出されるような味も素っ気もないお皿とかで出されたら最愛の人の頬が落ちそうに美味しい食事も5割引きとかでしか味わえないと思うし。
「そうだな……。パーティに義理というか無理やりに出て下さった教授陣より――といっても首相と直接お話しする機会などないだろうから得難い経験になったとは思うが――貴重な休みにホテルまで駆け付けて下さった人達の方がより一層有難く思った。
そういう人の想いがこの焼きティラミスに詰まっているからより一層美味しいのだろうな……」
最愛の人が花のような笑みを浮かべて唇を綻ばせている。
その紅色の唇に焼きティラミスを近づけると花のように開く。
愛の行為の後の甘い残り香を纏っている肢体も壮絶に色っぽかった。
しかも濃紺の浴衣が紅色の肢体を禁欲的に纏っているのも。
「私はこちらの甘さを堪能します……」
ルビー色の煌めく胸の尖りを唇に挟んでチュッと吸った。
「あっ……それも……とても……気持ち良いっ……。もう片方は、指で緩く円を描いて欲しいっ……」
「緩く」とわざわざ言ったのはまだ小休止を愉しむ積りなのだろう。
「胸の尖りは元々敏感でしたが……今宵はより一層感じ易いですよね?
花園の浅い部分の凝った場所、座っていても意識出来るようになりましたか?」
とある「そういう」雑誌で読んだ覚えがある。ただ、真偽のほどは明らかではないが。
「いや……。この程度ならば特にそういう感じはない、な……。
胸の尖りを愛されると……赤く甘い電流が背筋を奔って……下腹部に溜まっていくような気はするが……。……花園の凝った場所がそんな風になるのか……?」
期待と恐れが交じり合った最愛の人の言葉に何と答えれば良いかと一瞬迷った。
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リアバタでダウンしておりました。
ちなみに「小説家のなろう」様で「気分は、下剋上」の1stステージを再アップしているのですが、自分で書いたモノとはいえ面白いです←
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こうやま みか拝
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心は闇に囚われる 一番進んでいます。ブログと同時に再開しますので、こちらで一気読みをしてみませんか?