「二人きりで熱い蜜のような時間を過ごすのも私にとって酸素よりも貴重なのも確かだが、公の場所で二人が並ぶだけではなくて、共同作業が出来る機会などが訪れるとは思ってもいなかったので、人生最高の神様からのプレゼントだと思ってしまう。
しかも共著の本だけでも嬉しいイベントだったのに、幸せの万華鏡と言うかドミノ倒しのように連鎖的に色々なことが重なって生まれて来て良かったと心の底から喜びが込み上げてくる。特にパーティは、本当のことを知っている人達にも一緒に喜んで貰える蒼いダイアのような稀少さなので、余計に楽しみでならない……。
想像しただけで、こんなに胸が薔薇色の鼓動を刻んでいるし……」
祐樹の手首を掴んで心臓の上に導いた。
医学的に可能ならば、直接心臓も見せたいくらいだったが、それは流石に無理なので。
「本当ですね。普段よりも早いリズムで心臓が動いています。
紅い情痕の咲いた素肌も素敵ですが、それ以上に貴方の鼓動までが薔薇色に染まっているのが分かってとても嬉しいです。
しかし、生まれてきて良かったと思って下さることは今後も有ると思います。
二人の長い歴史の中に深く刻まれる1ページにはなるでしょうが、これからもこういう機会を絶対に作りだしましょう、二人の力で」
レジデンスルームのピリオドを打つような口づけを交わしつつ祐樹の瞳が太陽の輝きで自分を照らしていることを五感で感じて陶然となった。
下りの新幹線の最終便よりも二個前の――最終のは混むことは経験で知っていた――グリーン車は乗客もまばらだった。
その方が自分達にとっては有り難かったが。
「何だかこの人の少なさ加減は、二人で過ごした最初の夜が終わって、朝に京都に戻った時の雰囲気を思い出すな……。あの大阪のホテルだけでも私にとっては夢の中の出来事のような気がして……、それだけで一生分の幸せを祐樹から貰ったような気がしていたが、長く続けたいというワガママな気持ちも有って……手を重ねた……。あの時は清水の舞台ではなくて、摩天楼の上から飛び降りるような気持ちだった……」
すっかり暮れた車窓に祐樹の笑みが映っていた。そして、今度は祐樹の手がさり気なく自分の手に重ねられた。
「あの時が始まりでしたからね……。
しかし、終わりはまだまだです。大学病院をリタイアして小さなクリニックを気ままに経営しつつ、大型客船で世界を回るという『確定した』未来が待っています。
船から二人で見るNYの夜景などもまた格別でしょうね。その日が来るのもとても楽しみです。
あ、コーヒーとお弁当――で良いですか?」
車内販売のカートを押した女性が通り掛かったので、祐樹はさり気なく手を離して彼女へと向き直った。
「新幹線で飲むコーヒーは一際美味しく感じるな……」
味は正直それほどではないのに、車内の雰囲気がそう思わせてくれるのだろう。祐樹が注文してくれたお弁当の包みも。
「パーティの式次第は病院長が一応は決めて下さっているようですが、動画を見て思ったのですけれど……」
コーヒーとお弁当を交互に口に運びながら祐樹が極上の笑みを浮かべている。
多分、自分と同じように「披露宴」のことを考えているからだろう。通常業務だけではなくて、出版関連のこともこなしているので普段以上に多忙なのでなかなか二人で話し合う機会がないのも事実だった。
だから、この新幹線の中でゆっくりと相談した方が良いようだ。それに車内は、平日の夜だけあって、ビールなどで酔って寝ている出張目的らしき乗客しか居ないし。
「動画……。ああ、シャンパンタワーの?」
同性しか愛せないという自分の嗜好は充分知っていたが、イケメンの――なのだろう、女性から見れば――ホストは金とか茶色などの派手な髪型からして受け付けない感じだった。まあ、自分は祐樹という理想が確固として存在しているので、それ以外はそういう対象として見られないという幸せ過ぎる境遇ではあったが。
「そうです。サイン会の時に見た動画では時間のことなど考えていませんでしたが、ホストクラブの動画を見る限りシャンパンが一番下のグラスにまで行き渡る所要時間はかなり長いと思われます。
ほら、普通の披露宴ではケーキに入刀だけして引き出物の中に洋菓子を入れてお裾分けをするというのが一般的ですよね。
しかし、私達はそれが出来ないのですから、乾杯用のシャンパンをタワーから取って頂けるようにするのが良いかと思います。
シャンパンを二人で注ぎ続けることは充分可能ですが、それだけでは間が持たないような気がしませんか?
そうかと言って動画のように第三者が途中の段に注ぎ足すというのも意図とは異なるでしょう……」
祐樹の指摘にお箸を止めて考えてしまう。
確かに共同作業という意味合いなのだから、助っ人を頼むのは絶対に避けたい。
「病院長お得意の長いスピーチを存分にして貰うというのはどうだろう?
有り難がって聞く人間も多いだろうし、真実の私達の関係を知って祝ってくれる人はそんな演説を聞かずにこちらを見てくれるだろうし……。
それに感想などは病院長が招いた人とか義理で列席した人が言ってくれる。
しかも金と銀の粉を上から撒くのだから、病院長を立てることにもなるだろうし……。
祝電は今回期待できないので、時間潰しというとその程度しか思い浮かばない」
祐樹もお箸を置いて指をパチリと鳴らした。
「ああ、それは良いですね。病院長の開会の挨拶と同時進行にしましょう。
斉藤病院長予算で――正確には代々の方が貯めたお金のようですが――パーティを開催する以上、それが無難ですよね。
お見せした動画以外にもホストクラブのシャンパンタワーの模様を伝えているのは割とたくさん有るのですが、所要時間まで解説してくれるのは流石になかったです。
ただ、閉店時間は厳守しないと法律に抵触するらしくて……、それでもシャンパンのボトル消費は多い方がお店の儲けにもなりますのでその兼ね合いで時短を試みている画像がありました。
一時間前にオーダーを入れた女性客がギリギリな感じだったので、二人の『共同作業』ならもっとかかるような気がします。さて、その問題はどうクリアすべきかですよ、ね……」
祐樹の長い指が秀でた額の真ん中辺りからこめかみへと動いている。何かを考える時の裕樹のクセだが、それでも唇には笑みを浮かべているのがとても嬉しい。
しかも共著の本だけでも嬉しいイベントだったのに、幸せの万華鏡と言うかドミノ倒しのように連鎖的に色々なことが重なって生まれて来て良かったと心の底から喜びが込み上げてくる。特にパーティは、本当のことを知っている人達にも一緒に喜んで貰える蒼いダイアのような稀少さなので、余計に楽しみでならない……。
想像しただけで、こんなに胸が薔薇色の鼓動を刻んでいるし……」
祐樹の手首を掴んで心臓の上に導いた。
医学的に可能ならば、直接心臓も見せたいくらいだったが、それは流石に無理なので。
「本当ですね。普段よりも早いリズムで心臓が動いています。
紅い情痕の咲いた素肌も素敵ですが、それ以上に貴方の鼓動までが薔薇色に染まっているのが分かってとても嬉しいです。
しかし、生まれてきて良かったと思って下さることは今後も有ると思います。
二人の長い歴史の中に深く刻まれる1ページにはなるでしょうが、これからもこういう機会を絶対に作りだしましょう、二人の力で」
レジデンスルームのピリオドを打つような口づけを交わしつつ祐樹の瞳が太陽の輝きで自分を照らしていることを五感で感じて陶然となった。
下りの新幹線の最終便よりも二個前の――最終のは混むことは経験で知っていた――グリーン車は乗客もまばらだった。
その方が自分達にとっては有り難かったが。
「何だかこの人の少なさ加減は、二人で過ごした最初の夜が終わって、朝に京都に戻った時の雰囲気を思い出すな……。あの大阪のホテルだけでも私にとっては夢の中の出来事のような気がして……、それだけで一生分の幸せを祐樹から貰ったような気がしていたが、長く続けたいというワガママな気持ちも有って……手を重ねた……。あの時は清水の舞台ではなくて、摩天楼の上から飛び降りるような気持ちだった……」
すっかり暮れた車窓に祐樹の笑みが映っていた。そして、今度は祐樹の手がさり気なく自分の手に重ねられた。
「あの時が始まりでしたからね……。
しかし、終わりはまだまだです。大学病院をリタイアして小さなクリニックを気ままに経営しつつ、大型客船で世界を回るという『確定した』未来が待っています。
船から二人で見るNYの夜景などもまた格別でしょうね。その日が来るのもとても楽しみです。
あ、コーヒーとお弁当――で良いですか?」
車内販売のカートを押した女性が通り掛かったので、祐樹はさり気なく手を離して彼女へと向き直った。
「新幹線で飲むコーヒーは一際美味しく感じるな……」
味は正直それほどではないのに、車内の雰囲気がそう思わせてくれるのだろう。祐樹が注文してくれたお弁当の包みも。
「パーティの式次第は病院長が一応は決めて下さっているようですが、動画を見て思ったのですけれど……」
コーヒーとお弁当を交互に口に運びながら祐樹が極上の笑みを浮かべている。
多分、自分と同じように「披露宴」のことを考えているからだろう。通常業務だけではなくて、出版関連のこともこなしているので普段以上に多忙なのでなかなか二人で話し合う機会がないのも事実だった。
だから、この新幹線の中でゆっくりと相談した方が良いようだ。それに車内は、平日の夜だけあって、ビールなどで酔って寝ている出張目的らしき乗客しか居ないし。
「動画……。ああ、シャンパンタワーの?」
同性しか愛せないという自分の嗜好は充分知っていたが、イケメンの――なのだろう、女性から見れば――ホストは金とか茶色などの派手な髪型からして受け付けない感じだった。まあ、自分は祐樹という理想が確固として存在しているので、それ以外はそういう対象として見られないという幸せ過ぎる境遇ではあったが。
「そうです。サイン会の時に見た動画では時間のことなど考えていませんでしたが、ホストクラブの動画を見る限りシャンパンが一番下のグラスにまで行き渡る所要時間はかなり長いと思われます。
ほら、普通の披露宴ではケーキに入刀だけして引き出物の中に洋菓子を入れてお裾分けをするというのが一般的ですよね。
しかし、私達はそれが出来ないのですから、乾杯用のシャンパンをタワーから取って頂けるようにするのが良いかと思います。
シャンパンを二人で注ぎ続けることは充分可能ですが、それだけでは間が持たないような気がしませんか?
そうかと言って動画のように第三者が途中の段に注ぎ足すというのも意図とは異なるでしょう……」
祐樹の指摘にお箸を止めて考えてしまう。
確かに共同作業という意味合いなのだから、助っ人を頼むのは絶対に避けたい。
「病院長お得意の長いスピーチを存分にして貰うというのはどうだろう?
有り難がって聞く人間も多いだろうし、真実の私達の関係を知って祝ってくれる人はそんな演説を聞かずにこちらを見てくれるだろうし……。
それに感想などは病院長が招いた人とか義理で列席した人が言ってくれる。
しかも金と銀の粉を上から撒くのだから、病院長を立てることにもなるだろうし……。
祝電は今回期待できないので、時間潰しというとその程度しか思い浮かばない」
祐樹もお箸を置いて指をパチリと鳴らした。
「ああ、それは良いですね。病院長の開会の挨拶と同時進行にしましょう。
斉藤病院長予算で――正確には代々の方が貯めたお金のようですが――パーティを開催する以上、それが無難ですよね。
お見せした動画以外にもホストクラブのシャンパンタワーの模様を伝えているのは割とたくさん有るのですが、所要時間まで解説してくれるのは流石になかったです。
ただ、閉店時間は厳守しないと法律に抵触するらしくて……、それでもシャンパンのボトル消費は多い方がお店の儲けにもなりますのでその兼ね合いで時短を試みている画像がありました。
一時間前にオーダーを入れた女性客がギリギリな感じだったので、二人の『共同作業』ならもっとかかるような気がします。さて、その問題はどうクリアすべきかですよ、ね……」
祐樹の長い指が秀でた額の真ん中辺りからこめかみへと動いている。何かを考える時の裕樹のクセだが、それでも唇には笑みを浮かべているのがとても嬉しい。
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◆◆◆お詫び◆◆◆
近親者の他界の件で、リアバタに拍車が掛かってしまいました。
毎日振り掛かる事務作業や身内のゴタゴタ……。
そのせいで、「ネット生活もう大丈夫だろう」と再開したにも関わらず、PCに向かう時間がなくて……。
楽しみにして下さっていた方(いらっしゃるのか?)とも思いますが、誠に申し訳ありません!!
今後もこのブログは不定期更新しか無理かと思います……
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ただ、アイパッドで隙間時間OKのこちらのサイトでは何かしら更新します。
下記サイトはアプリで登録しておくと通知が来るので便利かと思います。
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勝手を申しましてすみません!!
◆◆◆宜しくです◆◆◆
ツイッタ―もしています!
更新時間が本当にバラバラになってしまうので、ヤフーブログの更新を呟いているだけのアカですが、ぶろぐ村や人気ブログランキングよりも先に反映しますので「いち早く知りたい」という方(いらっしゃるのか……???)はフォローお願い致します。
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最近はブログ村の新着に載らなかったり、更新時間も滅茶苦茶になっているので、ツイッターアカウントをお持ちの方は無言フォローで大丈夫なので、登録して下されば見逃さずに済むかと思います!!宜しくお願いします。
◇◇◇お知らせ◇◇◇
あと、BL小説以外も(ごく稀にですが……)書きたくなってしまうようになりました。
本業(本趣味)はもちろんBLなのですが。
本業(本趣味)はもちろんBLなのですが。
こちらでそういった作品を公開していきたいと思っています。
「下剋上」シリーズは一人称視点で書いていますので、他の人がどう考えているのかは想像するしかないのですが、こちらはそういう脇役がこんなことを考えているとか書いています。
今は、久米先生が医局に入れてハッピー!な話とかですね。
今は、久米先生が医局に入れてハッピー!な話とかですね。
スマホで読んで頂ければと思います。その方が読み勝手が良いかと。
落ち着くまでは私ですら「いつ時間が空くか分からない」という過酷な(?)現実でして、ブログを更新していなくてもノベルバさんには投稿しているということもあります。
なので、お手数ですが「お気に入り登録」していただくか、ツイッターを見て頂ければと思います。
なので、お手数ですが「お気に入り登録」していただくか、ツイッターを見て頂ければと思います。
更新サボってしまって申し訳ないです!!
山積みのすべきことがまだまだ残っておりまして、四十九日とか納骨とか体力と気力が……。
更新出来る時は頑張りますが、不定期更新となります。すみません!!
山積みのすべきことがまだまだ残っておりまして、四十九日とか納骨とか体力と気力が……。
更新出来る時は頑張りますが、不定期更新となります。すみません!!
最後まで読んで頂いて有難う御座います!!
こうやま みか拝