「それで?まさかその恰好ではパーティだかそういう公の場所には行けないだろう……」
そのまま帰ったのかも知れないが、婚約者の岩松氏が深く関わっている催しだとそういうわけにもいかないのでどうなったのか若干気になった。
「それが、東京の帝国ホテルでの『私立病院懇親会』とかいうパーティで、招待客は岩松氏の病院に浅からぬ縁を持っている病院経営者とその奥さんが招待されていたとかで、たまたまお手洗いに着付けの上手いご婦人方が――もちろん、長岡先生のことは岩松氏の婚約者として知っている人達でした――数人がかりで直して下さったそうです。
大病院の奥様だけにそういう心得も花嫁道具の一つだったようですね。
ただ、貴方の方が良くご存知だと思いますが、長岡先生は仕事で充分助けることが出来るので、そういうモノは要らないと岩松氏は言っているそうですが。
ただ、そういう私立大規模病院では専業主婦が圧倒的に多いのも事実でして、しかも家事はハウスキーパーにお任せしている感じの方が多いらしくて、週に一度はどこかのお屋敷に集まって『家事を教え合う会』を催しているとか。ほら、料理研究家と名乗っている医師夫人とかも多いですよ。そういう人がご自慢のお料理の作り方を先生役で教えるのでしょうね」
自分の知らない世界なだけに、そして祐樹のお母様も万が一のことを考えた、いわば念のために連絡してきて下さったのは分かっていた。だから長岡先生エピソードは肩解しというか、祐樹が気分転換にために話してくれているのも分かっていたので興味深く聞いていたが、矛盾点を発見してしまった。
「祐樹……。ハウスキーパーが家事をしてくれるなら、料理はその方が全てしてくれるのではないか?」
祐樹とたくさんの珠玉の時間を過ごして、自分が「祐樹以前」時代よりも人間らしくなっていることは、祐樹も宝石のように鮮やかな色彩で煌めく言葉で褒めてくれていたし、自分もある程度は自覚していた。
しかし、関西人――特にその他の地域に住んでいる人の思い込みのような――特有のボケとツッコミは到底できない。もしかしたら、祐樹はそのレベルまで要求しているのかも知れないが……。到達するには天文学的な時間を要するような気がする。
「あ!それはそうですね。
料理研究家もあくまで自称ですし、今はインス○などのSNSで気軽に投稿している人もたくさん居るようですが、完成品を豪華な食器に綺麗に盛りつけた食事をアップしたら、フォロワーさんが褒めてくれるようです。
ほら、レジデンスルームで二人した見た動画サイトならば――あちらも編集とかも出来るようですが――ある程度調理の過程を公開していますが、イン○タなら完成品だけでも大丈夫なので、言った者勝ちでしょうね。
だからそのハイソな奥様が実際に作っているかハウスキーパーというか家政婦さんの作品かどうか分かりませんよね、貴方の疑問も尤もだと思いますよ。
ただ、着付けの心得はあったらしくて、豪華な着物をお召しになった方が最寄りのお手洗いを占拠して長岡先生の着物の乱れを必死に直してくれたのは本当みたいですよ」
祐樹の車がグランヴィアホテルの駐車場に滑り込んだ。
「さて、母を探しに行きますか。
予想以上に時間がかかってしまったので待ちくたびれているか、喫茶室――は無いでしょうね。田舎者なので、一流ホテルの喫茶室の値段の高さに驚いて、メニューを見ただけで即座に回れ右をしそうです。
ああ、貴方の携帯から電話を掛けて頂けますか?」
どうやらツッコミを求められてはいなかったようで祐樹には気づかれないように安堵の薔薇色のため息を漏らした。
「ああ、ホテルのコーヒーの値段か……。今は慣れてしまったのでそういうモノだと思っているが、最初は私もゼロの数が間違っているのではないかと思ってしまった」
それに値段に比例して美味しいというわけでもない。
「お母様、香川です。今どこにいらっしゃいますか?私達は京都駅の地下に有る京土産のお店が並んでいる所です」
お母様はホテルのフロント辺りにいらっしゃるとの返事を得てそちらに向かった。
「後は着付けの問題ですよね……。長岡先生も『京都に相応しく』というコンセプトらしく和服だそうです。そして、先程お話しした失敗も踏まえて、今回は気合を入れるとか言っていましたよ。
彼女の気合を入れるというのは、まあ、貴方も方向性は異なるとはいえ『プロに全てを任せる』ことをモットーになさっていますよね。貴方の場合は資産運用の方面で。
もしかしたら、彼女はホテルの着付けのプロ――どうやら、和服を希望する人間は専用の部屋に集められて着付けが出来たら仕事は完了したと専門家もいなくなるらしいです。
そう言うのではなくて、一日着付け師のような人を待機させている可能性が高いです。
だから、一度、彼女に聞いてみるのが良いかも知れません。
ほら、レジデンスルームで見た動画有りましたよね。あのシャンパンタワーの動画ではないのですが『これを見たあなたにお勧め』みたいな動画が紹介されるのですが、ホスト界の帝王だとかいうホストに密着というのがあって、ついついそちらも再生ボタンを押してしまったのです。
ほら、サイン会の時に柏木先生の奥さんが髪の毛を巻いて来ていましたよね。あれは自分でする人も居ますが、美容師に頼むという選択肢もあります。そして、その帝王もレジデンスルームに住んでいるらしいのですが――女性に夢を与えるのも商売の一部ですので――近くのコンビニに行く時ですら、専用のスタイリスト兼美容師に完璧にコーディネートして貰ってからそのフロアを出るそうです。そういう世界も有るのだな……と思って見ていたのですが、もしかしたら最初二人が同時に思い当たった人物が――ま、求めるモノは異なりますけれど――まさかの正解かもしれませんよ。
ロビーの人混みの中で大きな荷物を椅子の横に置いて――フロント付近なのでほとんどの人間がそうだったが――座っている祐樹のお母様を見つけた。
「祐樹、あそこにいらっしゃる」
元気そうな感じだったのでひとまず安心した。
そのまま帰ったのかも知れないが、婚約者の岩松氏が深く関わっている催しだとそういうわけにもいかないのでどうなったのか若干気になった。
「それが、東京の帝国ホテルでの『私立病院懇親会』とかいうパーティで、招待客は岩松氏の病院に浅からぬ縁を持っている病院経営者とその奥さんが招待されていたとかで、たまたまお手洗いに着付けの上手いご婦人方が――もちろん、長岡先生のことは岩松氏の婚約者として知っている人達でした――数人がかりで直して下さったそうです。
大病院の奥様だけにそういう心得も花嫁道具の一つだったようですね。
ただ、貴方の方が良くご存知だと思いますが、長岡先生は仕事で充分助けることが出来るので、そういうモノは要らないと岩松氏は言っているそうですが。
ただ、そういう私立大規模病院では専業主婦が圧倒的に多いのも事実でして、しかも家事はハウスキーパーにお任せしている感じの方が多いらしくて、週に一度はどこかのお屋敷に集まって『家事を教え合う会』を催しているとか。ほら、料理研究家と名乗っている医師夫人とかも多いですよ。そういう人がご自慢のお料理の作り方を先生役で教えるのでしょうね」
自分の知らない世界なだけに、そして祐樹のお母様も万が一のことを考えた、いわば念のために連絡してきて下さったのは分かっていた。だから長岡先生エピソードは肩解しというか、祐樹が気分転換にために話してくれているのも分かっていたので興味深く聞いていたが、矛盾点を発見してしまった。
「祐樹……。ハウスキーパーが家事をしてくれるなら、料理はその方が全てしてくれるのではないか?」
祐樹とたくさんの珠玉の時間を過ごして、自分が「祐樹以前」時代よりも人間らしくなっていることは、祐樹も宝石のように鮮やかな色彩で煌めく言葉で褒めてくれていたし、自分もある程度は自覚していた。
しかし、関西人――特にその他の地域に住んでいる人の思い込みのような――特有のボケとツッコミは到底できない。もしかしたら、祐樹はそのレベルまで要求しているのかも知れないが……。到達するには天文学的な時間を要するような気がする。
「あ!それはそうですね。
料理研究家もあくまで自称ですし、今はインス○などのSNSで気軽に投稿している人もたくさん居るようですが、完成品を豪華な食器に綺麗に盛りつけた食事をアップしたら、フォロワーさんが褒めてくれるようです。
ほら、レジデンスルームで二人した見た動画サイトならば――あちらも編集とかも出来るようですが――ある程度調理の過程を公開していますが、イン○タなら完成品だけでも大丈夫なので、言った者勝ちでしょうね。
だからそのハイソな奥様が実際に作っているかハウスキーパーというか家政婦さんの作品かどうか分かりませんよね、貴方の疑問も尤もだと思いますよ。
ただ、着付けの心得はあったらしくて、豪華な着物をお召しになった方が最寄りのお手洗いを占拠して長岡先生の着物の乱れを必死に直してくれたのは本当みたいですよ」
祐樹の車がグランヴィアホテルの駐車場に滑り込んだ。
「さて、母を探しに行きますか。
予想以上に時間がかかってしまったので待ちくたびれているか、喫茶室――は無いでしょうね。田舎者なので、一流ホテルの喫茶室の値段の高さに驚いて、メニューを見ただけで即座に回れ右をしそうです。
ああ、貴方の携帯から電話を掛けて頂けますか?」
どうやらツッコミを求められてはいなかったようで祐樹には気づかれないように安堵の薔薇色のため息を漏らした。
「ああ、ホテルのコーヒーの値段か……。今は慣れてしまったのでそういうモノだと思っているが、最初は私もゼロの数が間違っているのではないかと思ってしまった」
それに値段に比例して美味しいというわけでもない。
「お母様、香川です。今どこにいらっしゃいますか?私達は京都駅の地下に有る京土産のお店が並んでいる所です」
お母様はホテルのフロント辺りにいらっしゃるとの返事を得てそちらに向かった。
「後は着付けの問題ですよね……。長岡先生も『京都に相応しく』というコンセプトらしく和服だそうです。そして、先程お話しした失敗も踏まえて、今回は気合を入れるとか言っていましたよ。
彼女の気合を入れるというのは、まあ、貴方も方向性は異なるとはいえ『プロに全てを任せる』ことをモットーになさっていますよね。貴方の場合は資産運用の方面で。
もしかしたら、彼女はホテルの着付けのプロ――どうやら、和服を希望する人間は専用の部屋に集められて着付けが出来たら仕事は完了したと専門家もいなくなるらしいです。
そう言うのではなくて、一日着付け師のような人を待機させている可能性が高いです。
だから、一度、彼女に聞いてみるのが良いかも知れません。
ほら、レジデンスルームで見た動画有りましたよね。あのシャンパンタワーの動画ではないのですが『これを見たあなたにお勧め』みたいな動画が紹介されるのですが、ホスト界の帝王だとかいうホストに密着というのがあって、ついついそちらも再生ボタンを押してしまったのです。
ほら、サイン会の時に柏木先生の奥さんが髪の毛を巻いて来ていましたよね。あれは自分でする人も居ますが、美容師に頼むという選択肢もあります。そして、その帝王もレジデンスルームに住んでいるらしいのですが――女性に夢を与えるのも商売の一部ですので――近くのコンビニに行く時ですら、専用のスタイリスト兼美容師に完璧にコーディネートして貰ってからそのフロアを出るそうです。そういう世界も有るのだな……と思って見ていたのですが、もしかしたら最初二人が同時に思い当たった人物が――ま、求めるモノは異なりますけれど――まさかの正解かもしれませんよ。
ロビーの人混みの中で大きな荷物を椅子の横に置いて――フロント付近なのでほとんどの人間がそうだったが――座っている祐樹のお母様を見つけた。
「祐樹、あそこにいらっしゃる」
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◆◆◆お詫び◆◆◆
今後もこのブログは不定期更新しか無理かと思います……
ただ、アイパッドで隙間時間OKのこちらのサイトでは何かしら更新します。
下記サイトはアプリで登録しておくと通知が来るので便利かと思います。
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勝手を申しましてすみません!!
◆◆◆宜しくです◆◆◆
ツイッタ―もしています!
更新時間が本当にバラバラになってしまうので、ヤフーブログの更新を呟いているだけのアカですが、ぶろぐ村や人気ブログランキングよりも先に反映しますので「いち早く知りたい」という方(いらっしゃるのか……???)はフォローお願い致します。
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最近はブログ村の新着に載らなかったり、更新時間も滅茶苦茶になっているので、ツイッターアカウントをお持ちの方は無言フォローで大丈夫なので、登録して下されば見逃さずに済むかと思います!!宜しくお願いします。
◇◇◇お知らせ◇◇◇
あと、BL小説以外も(ごく稀にですが……)書きたくなってしまうようになりました。
本業(本趣味)はもちろんBLなのですが。
本業(本趣味)はもちろんBLなのですが。
こちらでそういった作品を公開していきたいと思っています。
「下剋上」シリーズは一人称視点で書いていますので、他の人がどう考えているのかは想像するしかないのですが、こちらはそういう脇役がこんなことを考えているとか書いています。
今は、久米先生が医局に入れてハッピー!な話とかですね。
今は、久米先生が医局に入れてハッピー!な話とかですね。
スマホで読んで頂ければと思います。その方が読み勝手が良いかと。
落ち着くまでは私ですら「いつ時間が空くか分からない」という過酷な(?)現実でして、ブログを更新していなくてもノベルバさんには投稿しているということもあります。
なので、お手数ですが「お気に入り登録」していただくか、ツイッターを見て頂ければと思います。
なので、お手数ですが「お気に入り登録」していただくか、ツイッターを見て頂ければと思います。
更新出来る時は頑張りますが、不定期更新となります。すみません!!
読者様は10連休お楽しみ下さいね!!
最後まで読んで頂いて有難う御座います!!
最後まで読んで頂いて有難う御座います!!
こうやま みか拝