「いえ、貴方のお気持ちはとても嬉しく思います。久米先生の理想の上司としても、そして、私の手間を省いて下さるという意図も。
しかし、本当のレディになるように百合香ちゃんを教え導くには貴方が適任かと思いますが、久米先生の場合は英国風の『カルチャー』ではなくて、日本の誇るサブカルチャーで……。彼もその趣味を大切に思っているのは明白です」
そういえば、百合香ちゃんの病室に入って来た久米先生に「フギュアを集めていそう」と発展途上の貴婦人が言い放っていた。
「タプンとしたお腹」とも言っていたが自分の鈍い観察眼でも前者の方が心を抉ったのは分かった。
「ところでフィギアとは何なのだ?私が思い当たるのはスケートなのだが、それは絶対に違うだろうし……」
気を取り直すような感じで再びタバコの煙を吸い込んでいた祐樹が紫煙と共に笑い声を立ててくれたことは純粋に嬉しい。
祐樹と過ごす日常の中で、甘やかしてくれたり笑わせてくれたりするのは圧倒的に祐樹の方が多い。
だから、笑わせるネタが少ないことを内心忸怩たる気持ちでいた。生涯に亘るパートナーとして選んでくれた祐樹が笑ってくれるのも多大な喜びの一つだったので。
「私も良く存じませんが、アニメとか、最近は男性用の恋愛ゲームの――これは、好きな女の子を選んで疑似恋愛を楽しむというモノです――登場人物の人形が売られているとか。
何十分の一とかかに縮小されているのは、人形としては当たり前なのですが、人間離れしたナイスバディというか、胸の大きさとかウエストの細さ、そして足の長さと細さは完璧に再現してあるようです。ああ、もちろん、綺麗とか愛らしい顔も。
そういう人形を、特に気に入ったキャラクターのをたくさん集めて部屋に飾っておくのが久米先生の趣味だそうです。ただ、岡田看護師が久米先生のお家を訪問した時にはそういう人形は全て他の部屋に避難させて隠蔽を計ったと聞いていますが。
ただ、華麗なる政治家一族のご令嬢に――年齢が年齢だけに――容赦ない突っ込みを食らってしまって、激しく落ち込んでいたというわけです」
ああなるほどと思った。救急救命室で暇な時間を持て余した祐樹が久米先生のハマっている恋愛ゲームで久米先生が気に入って仮想現実の恋をしている女の子の好感度を下げまくったという話は聞いていた。
「ああ、なるほど。10等身くらいの身体とか、子供っぽいのに胸が異様に大きいとかそういう人形を集めているということか……。それがフィギアなのだな」
他人の趣味までどうこう言う積りは毛頭ない。それに趣味どころか少数派の性的嗜好を持っている自分の方が「変」だろう。
「そうです。しかし、人間は自分が大切にしているものを揶揄混じりとか、知ったかぶり感満載で言及されるのは嫌な気持ちになりますから。
それに――」
祐樹が珍しく言い淀んでいる。男らしく整った眉や万年睡眠不足にも関わらず綺麗で、そして見た目よりも遥かに柔らかい顔に見惚れながら続きを視線で促した。ついでに極上の笑みを添えて。
「メイド喫茶……。結局は柏木先生も断ったようですが。
あの話題が出た時に貴方は全くご存知なかったでしょう?――いえ、咎めているとかそういうのではなくて、逆にご存知だった方が驚きです――。そういうサブカルチャーに縁もゆかりもない人が慰めてしまった場合、得てして藪を突いて要らない蛇を出してしまうという結果になります。
私からも一応フォローは入れておきますが、先に柏木先生の奥さんから岡田看護師が『そういう好みというか趣味』を持っているかどうか確かめて貰った後にそういう趣味を密かに持っていると分かれば岡田看護師から、方向性は異なるものの『同好の士』という立場で話して貰った方がよほど効果的です」
百合香ちゃんの病室に置いてきたマンガを――ちなみにあの病室専門のナースにマンガの件は口外無用と念を押した――買いに行った本屋さんで見た「良く分からない趣味」のマンガや小説本が――帯の宣伝文句からして過激というか自分には理解不能だ――多数並んでいた。
そして、看護師には密かなファンも多いことも分かっている。祐樹は誰もが認める病院一モテる医師だし、自分も人が羨む程度に整った容姿だということは今では充分分かっていた。そういう点では――人間離れをしたスタイルではないが――あの表紙に描かれていたような容姿に近いといえば近い。
「あれらの本は、男性同士の恋愛を描いたものなのだろう?」
祐樹の見た目よりも柔らかな唇の感触を思い出しつつ、タバコを銜えている祐樹の口元を見た。
「そうですよ。それも二人は水準以上の容姿の持ち主というのが一般的らしいですね。
あと、大企業の御曹司の社長とかヤク○とかお金を持っている男性が容姿は可愛い感じの人と恋に落ちるというのも多いとか。
ただ、大企業の社長が若くてイケメンという時点で、その企業で働く女性はもちろんのこと取引先の会社社長のご令嬢とかが指をくわえて見ているハズはないですし。
それにヤ○ザの世界というのは――その世界に詳しい作家さんのエッセーでしか存じませんが――その業界で地位が上がれば上がるほど仁侠道的男らしさというか、同性愛は彼らのアイデンテティーをも崩壊させる上に組織内の人望も一気に損なうらしいですね」
祐樹のトリビアの広さと深さに感嘆のため息を零してしまったが、聞きたいのはそこではなかった。
思い切って――というのはいささか大げさだったのも事実だが――唇を開いた。
しかし、本当のレディになるように百合香ちゃんを教え導くには貴方が適任かと思いますが、久米先生の場合は英国風の『カルチャー』ではなくて、日本の誇るサブカルチャーで……。彼もその趣味を大切に思っているのは明白です」
そういえば、百合香ちゃんの病室に入って来た久米先生に「フギュアを集めていそう」と発展途上の貴婦人が言い放っていた。
「タプンとしたお腹」とも言っていたが自分の鈍い観察眼でも前者の方が心を抉ったのは分かった。
「ところでフィギアとは何なのだ?私が思い当たるのはスケートなのだが、それは絶対に違うだろうし……」
気を取り直すような感じで再びタバコの煙を吸い込んでいた祐樹が紫煙と共に笑い声を立ててくれたことは純粋に嬉しい。
祐樹と過ごす日常の中で、甘やかしてくれたり笑わせてくれたりするのは圧倒的に祐樹の方が多い。
だから、笑わせるネタが少ないことを内心忸怩たる気持ちでいた。生涯に亘るパートナーとして選んでくれた祐樹が笑ってくれるのも多大な喜びの一つだったので。
「私も良く存じませんが、アニメとか、最近は男性用の恋愛ゲームの――これは、好きな女の子を選んで疑似恋愛を楽しむというモノです――登場人物の人形が売られているとか。
何十分の一とかかに縮小されているのは、人形としては当たり前なのですが、人間離れしたナイスバディというか、胸の大きさとかウエストの細さ、そして足の長さと細さは完璧に再現してあるようです。ああ、もちろん、綺麗とか愛らしい顔も。
そういう人形を、特に気に入ったキャラクターのをたくさん集めて部屋に飾っておくのが久米先生の趣味だそうです。ただ、岡田看護師が久米先生のお家を訪問した時にはそういう人形は全て他の部屋に避難させて隠蔽を計ったと聞いていますが。
ただ、華麗なる政治家一族のご令嬢に――年齢が年齢だけに――容赦ない突っ込みを食らってしまって、激しく落ち込んでいたというわけです」
ああなるほどと思った。救急救命室で暇な時間を持て余した祐樹が久米先生のハマっている恋愛ゲームで久米先生が気に入って仮想現実の恋をしている女の子の好感度を下げまくったという話は聞いていた。
「ああ、なるほど。10等身くらいの身体とか、子供っぽいのに胸が異様に大きいとかそういう人形を集めているということか……。それがフィギアなのだな」
他人の趣味までどうこう言う積りは毛頭ない。それに趣味どころか少数派の性的嗜好を持っている自分の方が「変」だろう。
「そうです。しかし、人間は自分が大切にしているものを揶揄混じりとか、知ったかぶり感満載で言及されるのは嫌な気持ちになりますから。
それに――」
祐樹が珍しく言い淀んでいる。男らしく整った眉や万年睡眠不足にも関わらず綺麗で、そして見た目よりも遥かに柔らかい顔に見惚れながら続きを視線で促した。ついでに極上の笑みを添えて。
「メイド喫茶……。結局は柏木先生も断ったようですが。
あの話題が出た時に貴方は全くご存知なかったでしょう?――いえ、咎めているとかそういうのではなくて、逆にご存知だった方が驚きです――。そういうサブカルチャーに縁もゆかりもない人が慰めてしまった場合、得てして藪を突いて要らない蛇を出してしまうという結果になります。
私からも一応フォローは入れておきますが、先に柏木先生の奥さんから岡田看護師が『そういう好みというか趣味』を持っているかどうか確かめて貰った後にそういう趣味を密かに持っていると分かれば岡田看護師から、方向性は異なるものの『同好の士』という立場で話して貰った方がよほど効果的です」
百合香ちゃんの病室に置いてきたマンガを――ちなみにあの病室専門のナースにマンガの件は口外無用と念を押した――買いに行った本屋さんで見た「良く分からない趣味」のマンガや小説本が――帯の宣伝文句からして過激というか自分には理解不能だ――多数並んでいた。
そして、看護師には密かなファンも多いことも分かっている。祐樹は誰もが認める病院一モテる医師だし、自分も人が羨む程度に整った容姿だということは今では充分分かっていた。そういう点では――人間離れをしたスタイルではないが――あの表紙に描かれていたような容姿に近いといえば近い。
「あれらの本は、男性同士の恋愛を描いたものなのだろう?」
祐樹の見た目よりも柔らかな唇の感触を思い出しつつ、タバコを銜えている祐樹の口元を見た。
「そうですよ。それも二人は水準以上の容姿の持ち主というのが一般的らしいですね。
あと、大企業の御曹司の社長とかヤク○とかお金を持っている男性が容姿は可愛い感じの人と恋に落ちるというのも多いとか。
ただ、大企業の社長が若くてイケメンという時点で、その企業で働く女性はもちろんのこと取引先の会社社長のご令嬢とかが指をくわえて見ているハズはないですし。
それにヤ○ザの世界というのは――その世界に詳しい作家さんのエッセーでしか存じませんが――その業界で地位が上がれば上がるほど仁侠道的男らしさというか、同性愛は彼らのアイデンテティーをも崩壊させる上に組織内の人望も一気に損なうらしいですね」
祐樹のトリビアの広さと深さに感嘆のため息を零してしまったが、聞きたいのはそこではなかった。
思い切って――というのはいささか大げさだったのも事実だが――唇を開いた。
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時間がない!とか言っていますが、ふとした気紛れにこのサイトさんに投稿しました!
いや、千字だったら楽かなぁ!!とか、ルビがふれる!!とかで……。
こちらのブログの方が優先なのですが、私の小説の書き方が「主人公視点」で固定されてしまっているのをどうにかしたくて……。
三人称視点に挑戦してみました!
宜しければ、そしてお暇があれば是非読んで下されば嬉しいです。
いや、千字だったら楽かなぁ!!とか、ルビがふれる!!とかで……。
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三人称視点に挑戦してみました!
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「エブリスタ」さんというサイトで、もちろん無料です!!
リンク先です。
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他、前ブログで連載していた「洋館の堕天使」も移しています。「作品一覧」をクリックかタップで見られますので、良かったら♪
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更新時間が本当にバラバラになってしまうので、ヤフーブログの更新を呟いているだけのアカですが、ぶろぐ村や人気ブログランキングよりも先に反映しますので「いち早く知りたい」という方(いらっしゃるのか……???)はフォローお願い致します。
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最近はブログ村の新着に載らなかったり、更新時間も滅茶苦茶になっているので、ツイッターアカウントをお持ちの方は無言フォローで大丈夫なので、登録して下されば見逃さずに済むかと思います!!宜しくお願いします。
◇◇◇お詫び◇◇◇
実は家族が余命宣告を受けてしまいまして。それに伴い更新の目途も自分自身すら分からない状況です。
だいたい、朝の六時頃に更新がなければ「ああ、またリアルが忙しいんだな」と思って頂ければ幸いです。
◇◇◇お知らせ◇◇◇
だいたい、朝の六時頃に更新がなければ「ああ、またリアルが忙しいんだな」と思って頂ければ幸いです。
◇◇◇お知らせ◇◇◇
エブリスタ様に投稿してみて、痛感したのですがヤフーブログは「ルビが打てない!!」という仕様なのは仕方ないのです。しかし、このブログで連載中(現在は休止中です、すみません)の「蓮花の雫」はルビが打てないのは(個人的に)物凄く辛いので、全部エブリスタ様に持って行った上で、再開したいと思います。
楽しみにして下さっている方がいらっしゃるのかどうか分かりませんが、【蓮花の雫】のみ、続きはエブリスタ様単独で書きたいのでご了承とご理解を頂けたらと思います。
【追記】
取り敢えず、このブログで書いていた分を再掲という形でゆっくり移して行きます。
隙間時間に作業しています。エブリスタ様の方がやはり使い勝手も良いので(加筆修正も加えています)全ての記事を向こうに移した後はこちらのブログからは削除したいと考えて居ます。
https://estar.jp/_novel_view?w=25307809
楽しみにして下さっている方がいらっしゃるのかどうか分かりませんが、【蓮花の雫】のみ、続きはエブリスタ様単独で書きたいのでご了承とご理解を頂けたらと思います。
【追記】
取り敢えず、このブログで書いていた分を再掲という形でゆっくり移して行きます。
隙間時間に作業しています。エブリスタ様の方がやはり使い勝手も良いので(加筆修正も加えています)全ての記事を向こうに移した後はこちらのブログからは削除したいと考えて居ます。
https://estar.jp/_novel_view?w=25307809
良かったら覗いて下さいませ。
あと、BL小説以外も(ごく稀にですが……)書きたくなってしまうようになりました。
本業(本趣味)はもちろんBLなのですが。
本業(本趣味)はもちろんBLなのですが。
こちらでそういった作品を公開していきたいと思っています。
こんなお話も投稿していますので、興味を持った方……いらっしゃるのか??はスマホで読んで頂ければ泣いて喜びます!!
興味が有る方は是非!スマホの方が読み易いので、オススメはスマホ経由です。
風邪が長引いていて、家族の入院している病院にも行けない今日この頃なのですが、やふーブログの更新は出来れば二話!最低でも一話を目標に頑張ります。
ただ、お医者様から「急変も覚悟しておいて下さい」と言われているので、綱渡りな更新になりますがご了承ください。
私の都合で更新時間がバラバラになってしまっている上に、「にほんブログ村」はシステムの移行とかで新着記事が反映されたり、されなかったりです(泣)
基本毎日更新しますので「人気ブログランキング」でチェック頂くか、まめにこちらをご覧いただければと思います。
寒い上にインフルや風邪が流行っていますので読者様もお身体ご自愛ください。
◆更新がお休み頂いたり飛び飛びになってしまったりして申し訳ありません。◆
基本毎日更新しますので「人気ブログランキング」でチェック頂くか、まめにこちらをご覧いただければと思います。
寒い上にインフルや風邪が流行っていますので読者様もお身体ご自愛ください。
◆更新がお休み頂いたり飛び飛びになってしまったりして申し訳ありません。◆
余命宣告を受けた家族の容態が急変したりで、動員が掛かるもので……。
当分はこんな感じでしか更新出来ないことをお詫び申し上げます。
当分はこんな感じでしか更新出来ないことをお詫び申し上げます。
こうやま みか拝