腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2018年10月

気分は下剋上 ルミナリエ編 2(I8禁)

イメージ 1

「ゆ……祐樹っ……するのは……良いがっ……。
 せめて……リビングでっ……。何だか、ここだとっ……物を壊しそうっ……なのでっ」
 切なそうに戦慄く桜色の唇がとても綺麗だった。甘く薫る吐息も艶やかさをよりいっそう増していて空中に紅色の粉を撒いたような錯覚を覚える。
「そうですね……。最近はよりいっそう感じて下さるようになりましたので、心置きなく愛を交わせるように、場所を移しましょうか……」
 甘く薫る息と祐樹のミントの香りを混ぜ合わせるような口づけを交わして譲歩した。
 厚めのシルクのエプロンでも胸の尖りは隠せないほどツンと布地を押し上げている様がとても扇情的で目を奪われる。
 「披露宴」と二人の関係を知っている人達から心のこもった祝福を受けた後の「初夜」の時からだったが「生涯に亘るパートナー」として人前でも――真の事情を知っていない人の方が多かったが――祐樹の母とか呉先生や森技官などの人達からの祝福が
「上質なシルクの艶やかさよりも、素肌の方がもっと綺麗ですよね。
 それに、隠されている方が何だか逆に興奮します。
 もっとも、白桃の果実のような双丘は隠されていませんが……」
 リビングのソファーに腰かけた祐樹の衣服を後ろ手で雇用に乱していく紅色の指の動きも気持ち良すぎた。
 祐樹の指なら――指だけではないものの――しどけなく開いて迎え入れる双丘の奥の秘められた花園の門のきつさと柔らかさを二本の指で確かめながらもう片方の手はシルクと素肌の境目から忍び込ませて胸の尖りを目指した。
「半分寝ていたからでしょうね……。素直な欲求を率直に伝えたのは……。
 エプロン姿の聡をキッチンで押し倒すのも新婚間もない感じで良かったのですが、こちらの方が『昼下がりの情事』のようで豪奢ですよね」
 普段はひんやりとしている素肌が、愛の行為の時だけは熱を帯びて艶やかな紅色に染まっているのも瑞々しい花が咲いたような風情だった。
「ゆ……祐樹っ……指ではなくて……、これを……中に挿れて……欲しっ」
 祐樹の熱く滾った欲望の象徴を更に煽るように、しかも的確なポイントを衝く点や祐樹の感じる場所を精妙な力加減で愛されるのだから堪らない。
 最愛の人の指の動きに合わせて淫らな水音が奏でられるのも。
「承りました。下を向いて……御自分の胸の尖りを私の指で愛されるのを御覧になって下さいね」
 シルクの布地をツンと固く押し上げている小さな場所へ指を忍ばせる。
 慎ましやかな小さな尖りの側面部を強く摘まんで唆すように上下に揺すった。
「ああっ……祐樹っ……とてもっ……悦いっ……。
 祐樹の指の動きと快楽が、同時に燃えるようでっ……。
 それに……花園を開いている指……凝った場所に当たりそうで……当たらないのが、もどかしいっ」
 多分、無意識なのだろう、祐樹の太ももに載せた腰が淫らな動きで微かに揺すられるのも物凄く蠱惑的だった。
 悦楽を隠さない最愛の人ではあったが、最近は目覚ましいまでの積極性の花を咲かせてくれてそちらも密かな愉しみの一つだった。
「凝った場所と胸の尖りを……同時に指で愛されるのと、コレで花園を開かれるのとではどちらが良いですか?」
 胸の尖りと花園の祐樹の指の第二関節部分を同時に強く愛すると乾いた頂きを迎えることが出来る肢体の持ち主だし、その点は最愛の人の判断に委ねようと思った。
 実際は早く花園を蹂躙したくて堪らなかったが。
 最愛の人の指が後ろに回されて祐樹の熱く育った愛の象徴を花園の門へとあてがわれた。
「ゆ……祐樹が、より感じるのは……こちらだろう……。だからっ……」
 健気な言葉と甘く蕩けた口調が劣情を煽る。多分そんな意図はないのだろうが、結果的にはそうなってしまうのが最愛の人の美点だった。
「では、遠慮なく……」
 腰を突き上げると紅色の背中がしなやかに反って優美で淫靡な弧を描いた。
 秘めた肉を擦る音とか淫らな水音が紅色の小さな嬌声と混じりあってリビングを愛の空間に染めていく。
「ゆ……祐樹っ……。拓かれる感じが……とても悦いっ……。魂までが、祐樹のモノで潤っていくようでっ」
 胸の尖りも硬度と熱を増して祐樹の指を跳ね返す感じが心地良い。
 それに、最愛の人の花園は熱く濡れたシルクのようにヒタリと祐樹を包み込んでは強く弱く祐樹の愛の楔を天国へと誘ってくれる。
「ゆ……祐樹っ……もっと、強く浅い所を……衝いて……欲しっ……」
 空中に優雅な弧を描くしなやかな背中が汗の雫を散らしている。
 祐樹の動きにつられてその雫が空中に散っていく様も絶妙な眺めだった。
「浅い場所ですか……。だったら、床に下りた方が、確実です、よ」
 ソファーの上――というか祐樹の腰の上――で淫らなダンスをこの上もなく優雅で大胆に踊ってくれる最愛の人の艶姿も捨て難いが、祐樹の要望を全て叶えてくれる最愛の人への愛情の方がもっと大切だった。
 この行為が五感を使ったコミュニュケーションなのを祐樹に教えてくれたのは紛れもなく最愛の人だったので。
 いったん繋がりを解いて、床へと誘った。濡れた素肌が奏で合う愛の協奏曲がリビングに響かせたまま。










 
【お詫び】
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 更新を気長にお待ち下さると幸いです。
 本当に申し訳ありません。
 お休みしてしまって申し訳ありませんでした。なるべく毎日更新したいのですが、なかなか時間が取れずにいます……。
 目指せ!二話更新なのですが、一話も更新出来ずに終わる可能性も……。
 なるべく頑張りますので気長にお付き合い下されば嬉しいです。
 




        こうやま みか拝

「蓮花の雫」<結光・視点>17

「これみつ……うたた寝をしておるのか……」
 昨夜の疲れとか緊張が我が邸に帰って来て一気に緩んだようで、つい柱に寄りかかったままで寝入ってしまったようでした。
 父上の御声で目を覚ましました。
「これは父上、失礼致しました。大江殿はお帰りになられましたか」
 頼長様と一つ褥で過ごすという、全く未知な、そしてこの上もなく幸福で、この上もなく恥ずかしい秘め事を経た身体であることを素肌に纏った単衣の香りが証し立てるかのようでした。しかし、どの程度眠っていたかは全く分からず終いで御座いました。
「大江殿か、もうかなり前に帰られた。もしかして朝餉も済ませておらぬのか」
 何時の間に運ばれて来たのか分からぬまま――そして当然ですが――手つかずのままの朝餉を気遣わしそうな目でご覧になった父上に向かって居ずまいを正しました。
 学問を習う時やその他のお話しが有る時には父上が普段いらっしゃる寝殿に私の方から参るのが通例で、東の対には滅多にお越しにならないというのに、敢えてその決まりめいたことをお破りになったのは寝殿の方が当然ながら女房の数も多いからでしょうか。
「大江殿の御言葉や、私なりの考えを伝えておかねばならぬと思ってな。
 無粋な口出しをする積もりは毛頭ないが、そしてそなたが自ら望んで手折られたというので有れば、父としては何も申すまいとは思う」
 「自ら望んで手折られた」という御言葉に肌が燃えるように熱くなりました。実際その通りでありました故に。
「はい。御心遣い感謝致します。実際その通りで御座いますれば」
 父上は肺腑を空にするようなため息をついた後に、気を取り直すようにお近くに座られました。
「左大臣様のことは世間では色々取沙汰されておる。位人臣を極められた人ゆえ仕方がないと申せばそうなのだが……」
 取るに足らない身分の、私のような人間と異なって世間では知られている人の方が口さがない噂の的になるのが世の習いでありました。
 私ですら、頼長様が女性よりも男性を好むとの噂を耳に致しておりましたし、ご立派な牛車の供回りの人達を拝見して、その皆様が全て見目の麗しいとまでは申しませんが、ある一定の物差しよりは上の人ばかりであったことから得心した面も御座いました。
 普通の色ごとにしか興味のない――と申しましても、上皇様が政の中心となった今の世の中では身分よりも容貌が美しい女性を寵愛するとか、姉妹両方を愛でるとか、息子でもある帝のお妃様とただならぬ仲になってしまうという信じられない噂も漏れ聞こえてくる世の中でしたが――殿方には、遣い走りの小舎人童など細々とした雑用を言いつけられた通りに果たすだけの能力しか求めないもので御座います。そういう目の付け所が「普通」でしたのに、頼長様はそういう下々の者にまで美々しさにまで拘りになる御方であることは私自身が確かめておりました。
 ただ、一つ車――と申しましても異性間では「夫婦」しか同乗はしないものの、同性間では都合に応じて何人もの人を乗せても一向に構いません――しかし、頼長様の御嗜好を知っている筈の彼らが束の間のお相手を務めていたとしても何の不思議も御座いませんが私を見た時の彼らの眼差しにはそういった嫉妬の炎のようなものは全く感じませんでした。
 美貌と才能の誉れが高かったという母上亡き後、次の北の方をお迎えする気配も全くない父上で御座いますが、召人――めしうど――と呼ばれる女房兼愛人という立場でしょうか、そういう日の当たらないというか、お互い割り切った関係とでも申すのでしょうかそういう女房が居るのも世の常のことで殊更どうのと申す筋合いでもないので御座います。
「左大臣様は、そなたとのただならぬ関係を、少なくとも身内には全く隠す積りはなさそうじゃ」
 あんなに激しい心境を読んだ恋のお歌を後朝の文に認めて来られた御方です。それはそれで嬉しいような、おこがましいような心持ちがして心が騒ぎます。
 その心内を察したかのように春の嵐のような突風が吹いて花吹雪が季節を違えた雪のように降りしきりました。
 烏帽子にも直衣にも桜の花が「かざし」のように降りしきるのを嬉しく思っておりました。
「身内と申しますと、父上様だけでなく左大臣家も含まれるので御座いますか」
 普通の秘め事でも艶めいた文遣いは小舎人童か若しくは乳母子とか乳兄弟と呼ばれる私的な腹心が務めるのが一般的です。
 家の司さとも呼ばれる公的な代理人が文遣いに動く場合は相手が軽んじてはならない身分の人か――こちらには私は当てはまりません――表沙汰になっても構わないとまで想って下さっているかのどちらかになります。
 そう想いますと、懐の中に仕舞ってある頼長様の御歌とか香りがこの上もなく慕わしい香りを放って冴え冴えとした頼長様の御顔をまざまざと思い返してしまって胸が熱くなりました。
「三日後の宴……。表向きは『内々に桜を惜しむ』という名目ではあるが、実際は、ごく内々の『所現し』である」
 父上の重々しい御言葉に思わず頼長様に見せて貰った瑠璃のように鸚鵡返しをしてしまいました。
「『ところあらわし』で御座いますか。しかし、あれは身内ではなくて、世の人に知らしめるために行われるもので有りましょう、二人の関係が夫婦の契りを結んだものだとして……」
 半信半疑で聞き返したので御座いますが、頼長様は「三日間」は必ず逢瀬を重ねると仰って下さっています。
 その御言葉の意味や、このような御歌まで頂いている以上父上の仰ることも真実味を帯びて、頬が桜の花よりも紅くなってしまっているのを自覚しておりました。











 
【お詫び】
 リアル生活が多忙を極めておりまして、不定期更新になります。
 更新を気長にお待ち下さると幸いです。
 本当に申し訳ありません。
 お休みしてしまって申し訳ありませんでした。なるべく毎日更新したいのですが、なかなか時間が取れずにいます……。
 目指せ!二話更新なのですが、一話も更新出来ずに終わる可能性も……。
 なるべく頑張りますので気長にお付き合い下されば嬉しいです。
 




        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 162

「確実に届くだろうと高木氏は様々な計測値を元に予測されていますが、万が一実売数がその数値に届かなくてもお招きする人にご迷惑をお掛けするようなことはあってはいけませんので、日にちは確実です。
 どうせ実売数を把握している人間がパーティに来るわけでもないので『言い切った者勝ち』です。
 こういう数値のでっち上げは――学術論文などでは絶対に駄目ですが――別に構わないと思っています」
 病院長が威厳を帯びた口調で言い切った。流石は院内で密かに「腹黒タヌキ」と言われているだけのことはあると妙なところで感心したが。
「分かりました。サイン会と、パーティは決行ということで宜しいのですね。
 スピーチなどへの心構えは必要ですよね?持ち物は特になくても……」
 仕事上では完璧主義者の祐樹が白衣のポケットに常備しているメモ帳を取り出して真剣そうな口調で確認している。
「パーティの主旨上スピーチは5分程度でお願いします。香川教授も『それらしい』ことを考えておいて下さい。田中先生はその場で考えることも充分可能だと思っていますが、念のために一応……」
 斉藤病院長は流石に良く見ているな……と半ば感動、半ば見習わなければならないという気持ちで神妙に頷いた。
「宴会の室内の雰囲気やお花のことは香川教授からのプランで大丈夫でしょうが、お料理のお値段のリミッターを外しますか?」
 先程の祐樹と病院長の会話を聞いていたらしい秘書嬢がタイミングを計っていた感じで口を挟んで来た。
 会場内の照明とか雰囲気などは祐樹に――物理的に無理だったので――相談せずに一人で決めていた。それにこの室内では余り関係ないことだが「披露宴」の時の服装とか持ち物も。
「そうですね。招いた人々の一番印象に残るのが料理なので最上級ではなくて追加料金を上乗せしての『特別メニュー』にしましょうか。食材を吟味しつくした贅を尽くすモノにすると美味だと評判のホテルの食事が更に美味しくなりますし、その料理に合わせたワインをソムリエに考えさせて下さい。
 テーブル席のお客様は舌の肥えた方も多数おられるので、その人達が思わず唸ってしまうほどの料理とワインやアルコール類を。
 立食席の料理もその0.8掛けの値段で出すようにとホテルの担当者に言って下さい。
 病院の至宝、香川教授と病院の次代のエース田中先生のパーティですので、予算は惜しみなく使って下さい。
 ただ、代々の病院長の『予備費』を使わなくても、本の売り上げだけで充分賄えそうですが。
 三百万部の大ベストセラーは一流出版社にとっても大きい喜びだそうですが、ウチのような百部から刷っている弱小出版科からしたら大黒字です。
 これも香川教授の御威光の賜物でしょうね……。
 卓越した手技以外にまでこれほど貢献して下さるとは、正直思ってもいませんでした。
 足を向けて寝られないというのが実情です。そのほんの恩返しということで」
 向かい側に座っていた斉藤病院長が深く頭を下げてくれた。
 そういう気持ちは大変嬉しいが、本を出したらどうかなどのアイデアを出してくれたのは横に座って何やら製薬会社の営業が置いていくボールペンで書き留めている祐樹だったので、最愛の恋人に眼差しで感謝の意を送った。
 祐樹も輝く瞳で自分を見つめ返してくれたので、唇に笑みが自然と浮かぶ。
「いえいえ、こちらこそ病院の一員として出来ることを致しただけです。
 これからも色々とご指導ご鞭撻を宜しくお願い致します。学ぶべきことは色々とありそうですから」
 「学ぶべきこと」と言った時に、隣の祐樹の白衣に包まれた広い肩が不審そうに揺れた。
 教授として――医局内や患者さんに対しては万全の積もりで対応してきたが――対外的なことは全て「拒否」の前提で動いていたことも祐樹は知っている。
 未来の病院長を目指すという心境の変化が有ったことを未だ打ち明けていないので、祐樹の訝しげな眼差しは尤もだろう。
「後で言うから、機会を見て」と告げる眼差しにも薔薇色の光りが宿っているのを自覚して心が雲の上をフワフワと漂っているような多幸感に包まれた。
「病院長、この機会をお借りしてお耳に入れておきたいことがありますがお時間は宜しいでしょうか?」
 祐樹が元からピンと伸びた背筋を更に伸ばして口を開いた。
「何ですか。もちろん時間は……、ああもうこんな時間ですか。次のアポが有るので手短にお願いします。
 パーティのことで各方面に連絡を取らなければなりませんので」
 あくまでも今の斉藤病院長はパーティが優先事項らしいのは喜ばしい限りだ。
 祐樹と自分が――本当の「披露宴」だと自分達で決めることが出来るホテルとか料理のグレードや招待客だったが、社会的に公に出来ない類いの関係性なのは重々承知している。同性愛者であることをカミングアウトした政治家もいるし、同性同士のパートナーも社会的な保障を受けられるようにした自治体も有るようだが、自分達は公にする積もりは一切ない――公の場所で祝福を受ける絶好の機会を作ってくれた斉藤病院長には感謝しかなかった。
「いずれ、白河教授から正式に報告が上がって来るでしょうが、悪性脳腫瘍について外科的アプローチの端緒を桜木先生が見つけたそうです。
 脳外科の手術も多くなると予想されますが、画期的な手技が確立される方が優先順位は高いのは当然ですので私の執刀よりも脳外科を優先して下さいませんか?白河教授が言って来た場合には特に」
 廊下で耳打ちしたのは自分だが、それを即座に病院長に報告する点は見習わなければならないなと思った。
「え?何だって……悪性脳腫瘍の外科的アプローチを……あの桜木先生が。
 それは病院にとっても、この上もない朗報だし、医学界の進歩にもつながる素晴らしい業績になるだろう……。
 田中先生からそういう話があって、手術室を――本来使うべき――脳外科優先にしたという件は白河教授にも私から言っておくので。
 行き届いた配慮は大変有り難いです」
 斉藤病院長も満足そうな笑顔が更に深まっている。
 未来の病院長を目指すためには、祐樹のその臨機応変ながらも相手に確実に恩を売るという生き方も学ぶべき点だった。
 公私共に頼もしい恋人を持てた自分は世界一の幸せ者だとの思いを甘く噛みしめた。











 
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「蓮花の雫」<結光・視点>16

「こちらの文を式部の丞様に、そしてこちらを若君にお渡しするようにと仰せつかって参りました」
 父上には古式ゆかしい正式な書状を、そして私には手触りから最上の陸奥紙と思しき感じではありましたが、厚ぼったさは全くない当世風の貴重な白い紙の下には緋色が透けて見えます。
「拝見しても宜しいか。ご返答をお求めの場合は大江殿にお手数をお掛けすることになるやも知れないのですから」
 学者仲間の会ではなくて今の大江様は左大臣家からの正式なご使者だけに父上の申し出も尤もなものでした。
「式部の丞様にはご返事を賜るようにとの御仰せで御座います。
 若君への文は-――本来ならば私のような人間ではなくてもっと心利いた者が私的に差し上げるべき物で御座いまして……。
 出来ればお一人で読んで頂ければそれで良いとのことで御座いました」
 私の顔を眩しそうに――ただ、そういう視線には口幅ったいようですが慣れていました――そして、探るような感じを再び感じて少し居心地が悪いのも事実でありましたが。
「二日後の夜に、左大臣様の私邸での宴とな……。私のような者がそういう晴れがましい席に侍るのも……」
 手紙を一読した父上が心の底から困惑した感じの声を出されるのも尤もです。
 畏れ多くも上皇様の私的な「観桜の宴」に私が笛の奏者として呼ばれましたのも、一月前に御文を頂いたのですから、父上の驚きも尤もなのです。
「是非ともご来駕下さるようにとの仰せに御座いました。『内裏に提出なさった御物忌みが続くようであれば、後に然るべき僧に加持祈祷をさせれば良かろう』との仰せで御座います。
 ここだけの話しですが……」
 いかにも重大なことを知らせるという感じで大江殿は父上の方へといざり寄りました。
「その御筆跡も左大臣様直筆です。学問の誉れも高い式部の丞殿にお見せするのは恥ずかしいと仰っていらっしゃいましたが。
 もちろん、普段は名筆の誉れの高い人間に代筆させるのは言うまでもありません。
 式部の丞様には是非いらして下さらないと宴を開く甲斐もないとまで」
 父上が驚いたような表情で大江様と、そして何故か私の方もご覧になられました。
 私はと言えば、白色に浮き出る緋色の紙に焚き染められた御薫物の香りが素肌に着けた絹と同じで、つい昨夜のことを思い出して頬が手紙と同じ桜色に染まってしまう有様でした。
「果報なご子息をお持ちで……」
 大江様は、含みのある口調と共にまた品定めでもするような感じの視線を御向けになられました。
「謹んで参上すると左大臣様には仰って頂いて宜しいかな」
 父上も私が気もそぞろなのがお分かりになられたのか、眼差しで下がるようにと促して下さいました。
 一礼して客間を退出しまして、私の部屋の有る東の対へと渡殿を歩みました。
 素肌に纏った絹と綺麗な折り模様を崩さないようにと手で捧げ持った頼長様の御手紙からは同じ香りが漂って参りまして、物狂おしいような心持ちを持て余しながら。
「若様、朝餉の支度が出来ておりますが」
 私付きの女房が控え目な声をかけてくれたのですが、気が急く余りに「後で良い」と素っ気なく返事を返してしまったので御座います。
「夜ごとに 匂ひ咲かせる 我が花を 永久に愛でたき 同じ床にて」
 やまと歌はそうお得意ではないと伺ってはおりました。そして最近の歌と古今集のではどちらが好きかとも。
 確かに技巧はそれほどない御歌ではありましたが、そんなことはどうでも良く想えるほどの御歌に込められた心情は紛れもなく「後朝の歌」で御座いました。
 男女の道については一通り存じておりました。あくまでも乳母や父上から聞くという形では御座いましたが。
 そして男女が一夜を共にしたその日の内に「出来るだけ早く」歌を贈るという習わしも。
 父上をお迎えしての宴がどのような物であるかは詳しくは存じませんが、大江様に和歌を一刻も早く届けさせようとなさった頼長様のご愛情に、胸が熱く震えるようで御座いました。
 二日後の夜の宴……この御歌を拝見するまでは全く思い至りませんでしたが、もしかして……という気持ちとまさかそうではないだろうという気持ちに胸が引き裂かれるような心持ちが致しました。
 汗ばむ陽気ではないというのに、前栽の満開の桜を見ながら桜色よりも上気してしまった頬や額を懐紙で拭って心を鎮めようと致しましたが、なかなか上手くいかぬ我が身と心を持て余しつつ物思いにふけってしまいましたが。
 桜の枝ぶりが一際綺麗に見える場所に座ったまま、舞い散る桜の花が白い直衣に落ちるがままにして。










 
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気分は下剋上 学会準備編 161

「敵を作らない香川教授の普段の言動も相俟って、いやここだけの話、有名な教授であっても、足を引っ張ろうとする人間が出てくるものなのだよ……。病院一丸となって応援しようという動きが私も見たことがないほど活発だ。
 発売日には病院のスタッフ――休日の人も買いに行ってくれる有志まで多数いるそうだし、勤務明けのナースなどは残業代支給の上で各々買いに行ってくれる――総動員だし、初版の二百万部は直ぐに売り切れると踏んでいる。
 だから発売日の一月後の日曜日に宴会場を押さえた。高木氏とも相談の上で『三百万部突破記念パーティ』と銘打つことにしたのだが構わないかね。大安吉日ではないのだが、そういう細かなことに拘っていては、何事も前に進めないので」
 病院内で敵を作るほど活発な活動をしていない。内田教授などは「院内改革の旗手」と呼ばれて若手には人気のようだが、旧態依然とした大学病院に既得権益を持っている教授には煙たがられているのも事実だった。
 ただ、これからは味方を積極的に作って行かなければならないなと頭の隅で考えながら、発売日を手元の本で確認して祐樹と密かに眼差しで快哉の笑みを交わす方が重要なのは言うまでもない。発売日は明日の日付になっていた。
 そんなに急に……とは思うものの、病院長はこういう時こそ頼りになる人なだけに各方面には根回し済みなのだろう。
 病院長室に有る本とは別に書店に運ばれる本は既にトラックか何かで全国に運ばれているのだろう。そこまで詳しいことは流石に把握していないし、知る必要もなかったが。
「そういう縁起担ぎはしないのですが、田中先生は?」
 自分同様、無神論者なのは知っていたが一応聞いてみた。
「仏滅でなければ、どんな暦でも良いです。流石にそれだけは避けたいので」
 意外な返事に――祐樹なら仏滅など気にしないのかと思っていた――目を見開いてしまう。
「ええと、その辺りはどうだっただろうね……」
 斉藤病院長も詳しいことは把握していないようで、秘書の方へと視線を彷徨わせていた。
「一月後の日曜日は『友引』ですね。お葬式ではないので構わないと考えますが」
 スマホを操作しながら――多分、関連アプリでも閲覧しているのだろう――彼女が答えてくれた。確か彼女も結婚が決まっていて「箔付け」のための医学部長兼病院長秘書を務めているのでそういう昔風の習わしにも詳しいハズだ。
「友引ならば特に問題はないのでは……。お目出度い祝い事なので、あやかりたい人間は居るだろうし。まあ、三百万部というのは流行作家しか出せない数字らしいので、我々のような地味な論文集しか出せない人間には却って荷が重いような気がするが」
 確かに専門書などは価格は高いものの、需要がそもそも少ないので――逆に一般人が手に取るのはメンタルヘルスの分野……と気付いた時に祐樹が先に発言していた。
「ニッケイの『ワタシの履歴書』は直ぐに新書化されますよね。その時にも病院一丸となっての動きが有れば、それなりの数字は稼げるので病院長が次のホテルの宴会場の主役になるというのは如何でしょう。
 そのためには病院の威信を賭けた――多分パーティ慣れをしている高木氏をも感心させるほどの――素晴らしい宴の席にする必要はあるでしょうが」
 「ワタシの履歴書」という単語が祐樹の唇から出ると、斉藤病院長の満面の笑みならぬ闘志がわき上がって来た感じの凄味のある笑みだった。
 初心者向けのメンタルヘルスの本の――呉先生に文才が有るかどうかは知らないが、出版が決まれば恋人の森技官がゴーストライターでも雇ってでも何とかでっち上げるだろう、森技官とはそういう人だ――ことしか思い浮かばなかった自分とは異なって祐樹は「披露宴」をなるべく派手にしようと考えてくれたのも、魂が薔薇色の雲に乗ったような気持ちになった。
 病院長というパトロンの意向を汲んだ見事な誘導に惚れ直してしまう。
「それはそうだ。高木氏の覚えを目出度くしておけば、学長選挙の鍵にもなりかねない『ワタシの履歴書』新書版の売れ行きが異なってくるな。田中先生、よくそこまで気を回して下さって本当に有り難いです。
 三百万部の売り上げだけでも病院にとっては大恩恵の貢献をして下さった上に、『病院の』先を見越した卓見は流石ですね」
 「病院の」ではなく「斉藤病院長」の覚えを良くして、パーティに割く経費を上乗せしようとしただけだろうが、祐樹も「披露宴」について積極的に考えてくれていたことは単純に嬉しい。
 てっきり自分だけが一人で舞い上がっていただけかと思っていたので。
「では、サイン会が二週間後の日曜日の朝八時から夜にかけてですね。ああ、有難う御座います」
 秘書嬢が先に用意していたと思しき「香川教授・田中先生サイン会タイムスケジュール」という紙を渡してくれた、二枚。
 書店名と時間が分かった方が、自分達の知り合いなどにも声を掛けやすいことは言うまでもない。
「そして三百万部突破――実際にその数字を叩き出さなくても大丈夫なのですよね……」
 流石の祐樹も余りの数字の大きさに珍しく戸惑ったような声を出している。
 確かに、三百万の人達に祐樹と自分が書いた本を読んで貰うというのは想像も出来ないほどの快挙なので無理はなかったが。
 それとも、本当に三百万部お買い上げの記録を達成するのを待って――その分「披露宴」は延びてしまう、残念だが――からの「祐樹が一工夫加えた」パーティの開催なのだろうか。
 その辺りのことを聞かないと――ちなみに「披露宴」の後は二人きりの儀式まで考えている――動きようがないのも事実だった。
 即座に動くハズの病院長の答えを一日千秋の思いで待ち受けた。隣の祐樹も何となく緊張した感じだったのは、自分と同じ気持ちだからだと思うとそれだけで心が薔薇色の雲の上で踊っているような気持ちだったが。











 
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