腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2018年08月

気分は下剋上 学会準備編 142

「ああ、あの件ですか……意外にもというか案の定というか子供に懐かれていましたよね。
 私は少し苦手ですね……。何かとうるさいし次の行動が予測出来ませんから。
 それで?」
 もう完全に過去の出来事として吹っ切れたのか、思いのほか穏やかな笑みが返ってきた。
「あの時にはお母様方は全く気付かなかったらしいが、あのテレビ中継では二人で同じ画面に収まっただろう?それで、呉先生の家に……」
 祐樹が納得したように頷いた。
「今のように前髪を自然に下ろしていると印象が全く変わりますが、確かに二人して並んでしまっては流石に露見するでしょうね。あの時の『京大医学部出身の家庭教師』が世界に冠たる香川教授だと。
 まあ最高に贅沢な家庭教師、しかも無料でしたからね……確かキョウ君とかエリ何とかちゃんのお母様達が血相を変えて呉先生の薔薇屋敷に押しかけたのですね。想像だけで可笑しいです」
 前髪を上げると印象が変わることは否定しないが、それを言うなら祐樹こそその筆頭だろう。
 秀でた綺麗な額を全部上げると凛々しい顔がより引き締まって見えることを知っているのは今のところ自分一人だけかもしれない。ただ、近いうちに世界の医師限定レベルでは認知されるようになるだろうが。当時のことを思い出して心の底から可笑しそうな笑みを浮かべている祐樹の強さに思わず安堵のため息をこっそり零した。
 その晴れ舞台のための衣装選び――今は店から自宅へと送って貰う手はずになっているが――が今日の一つの目標だった。
「英美理ちゃんだろう、あとハヤト君とか由美子ちゃん、ヒデユキ君などが居たな……」
 あの時は――確かに一時的にメンタルが不安定になっていたし――その五月蝿さとか活気めいたものに癒されていた気がする。あの夏の公園の光景は今となっては懐かしさしか感じない記憶だった。
「ああ、そんな名前でしたよね……確か。でその子達のお母様が何と仰ったのですか?」
 肉をコトコトとデミグラスソースで煮込んだシチュー風の牛肉を嬉しそうに口に入れた祐樹は――ちなみにこれは祐樹のお母様から頂いた田中家のレシピの中で大好物というお墨付きの一品だった――美味しそうに眼を細めてとても満足そうだった。
 こういう表情を見るためなら何時間かかっても作った甲斐もあるし、見ているだけで幸せ色に包まれた気分になる。
「あの時何故知らせてくれなかったとか……。まあそれはあの時は呉先生も私を診るだけで精一杯だったろうし仕方のないことだが。
 それで今回の本のことを話してサイン会に皆で来てくれることになっている。
 全員のお母様が必ず子供と一緒に来てくれそうだ。呉先生の人徳のお蔭も有って」
 祐樹の健啖振りにつられて自分もナイフとフォークを動かすペースがいつもよりも早くなってしまう。
 こういうふうに一生笑い合って過ごしていける確固たる自信が出来た今となっては、この時間すらも黄金色の想い出に変わるだろう。
「ああ、なるほど。そういうふうに地元の人間を動かすわけですか。呉先生とかお年寄り限定で評判が良いらしい森技官もその辺りは配慮して動くでしょうね。
 貴方の株が更に上がれば厚労省内でも森技官に対する評価は更に良くなるでしょうから。
 まあ、彼も呉先生とは異なった意味で貴方のことは好きでしょう、地位などを取った素の状態でも……。嫌いになる人は多分居ないでしょうが……」
 自分のことは良く分からないものの、祐樹が言うのだからそうなのだろう。
 それに森技官も祐樹のことを気に入っていると内心では思っているのだが、それを口にするとせっかくの祝いの席の雰囲気が悪くなるそうで黙ることにした。
「森技官は文科省の知人だかに掛け合って、公立の学校の指定図書にして貰えるように計らってくれるらしい。
 まだ、その後の連絡は来ていないが、彼のことだからきっと上手く立ち回るハズだ……」
 祐樹が宙に浮かせていたフルートグラスを静止させている。
 キッチンの照明を間近に受けてシャンパンの細かい泡が幸福そうに甘く弾けていった。
「それは……。小学校から高校まででしょうかね。具体的に何校あるのかは存じませんが物凄い数になりそうですね。斉藤病院長も鼻高々でしょうね。指定図書に選ばれるだけの価値は充分あると思います」
 空中で祐樹のフルートグラスに自分のとを重ね合せさせたら綺麗な音が響き渡った。凱旋を告げる天使の声のように。
「それもこれも、祐樹が使命感溢れる医師にでっち上げてくれたお蔭だ。本当に有難う」
 祐樹が心の底から可笑しそうな笑いを漏らしている。
「いや、そのままの貴方を書いただけですよ。
 私が一緒に居てもきっと貴方は病院に行ったに違いありませんから。あくまでも二人が無事だったらという前提ですが」
 そう指摘されてしまうと、そうかもしれないなと思ってしまう。
 あの時は祐樹の安否確認しか考えが及ばなかったが、もし一緒の寝室に居て飛び起きたとしても病院に駆けつけて出来ることはないかを考えていただろうから。
 あの日は北教授があいにく国際学会に出張中という事態を受けての代理指揮権を委ねられたが、一人の外科医としても充分以上に役に立てる自負はあるし、祐樹などキャリアというか勤続年数で救急救命医としても立派に働けるだろうから。ああいう時は即戦力は多い方が良いことは知識として知っていたし。
 祐樹の腕の傷はすっかり良くなって執刀にも全く支障をきたしていないのは何よりだった。あの時に咄嗟の判断力で腱を避けてメスを逃しただけでも驚嘆に値するが、万が一のことを考えてしまって内心は案じていたのも事実だった。
 アメリカの恩師の手術中の怪我の嫌な記憶が頭の中に有るせいかもしれなかったが。
「そんなこんなで、サイン会とテレビ出演の件おめでとう。
 そして有難う祐樹」
 姿勢を正して何回してもし飽きない乾杯を重ねた。
 サラダボウルに入れた大根と人参と生ハムのサラダも畑から直接持って来たのではないかと思えるほどシャキシャキとしていて美味しかった。
「いえ、こちらこそ本当に有難う御座います。
 『テツコの部屋』ですか……。母も大好きな番組ですし、ウチの田舎ではあの年齢の人は皆観ていますので、不肖の息子がそんな高名な番組にゲスト、しかも貴方と一緒に出たら母も喜ぶと思います」 
 祐樹が輝くばかりの笑みを浮かべて自分だけを見ている。
 それだけでシャンパンよりも酔ってしまいそうだった。










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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 141

「この件について、病院長は全て事後承諾だが、しかしあの性格ならそれで通りそうだったし……。別に良いかと思っていた……。何か問題でも」
 祐樹が気にしている点がイマイチ分からなくて困惑しながら唇を開いた。
 ただ、その言葉を聞いた瞬間に祐樹のただでさえ眩い笑顔が一際生気に満ちて輝いたので見惚れてしまったが。
「いえ、斉藤病院長がどうのこうのという話ではなくて……。
 あれだけマスコミへの露出を嫌っていらっしゃった――病院長命令とか、それ以降は森技官との裏取引とかで仕方なく厚労省詣でに参加したこともありますが――貴方がお一人で決められたという点が意外というか……。
 患者さんの迷惑にならない限り面倒なことは悉くスルーしていらしたのは存じています。
 それなのに、率先して行えるようになったという心境の変化がどのようなモノだったかの方が私にとってはとても重要です。
……病院長はああいう、ある意味分かりやすい人なのでこの際どうでも良いです」
 言葉を選んでいるのか祐樹の長い指がフルートグラスの縁を意味もなく辿っている。先ほど自分の身体を同じ指がこの上もなく愛おしそうに撫でてくれたことを思い出して心の温度と心拍数が跳ね上がった。
「ああ、そんなことか……。祐樹と二人で出たかったから。理由はそれだけだ。こんなチャンスは人生でそうそうないだろう?」
 別に自分の性的嗜好を卑下する積もりもなかったし「そうだったから」の幸せの方が大きい現状に充分満足している。
 祐樹とか森技官のように同類が何となく分かるというほどの経験を積んでいるわけでもなかった自分が「生涯初めて」好きになった相手の祐樹がたまたまそういう嗜好だったというのも神様がくれた最高の贈り物だと真剣に思っている。祐樹と同じく無神論者だが、この幸運には神様の存在を信じて良いような気がする。
 祐樹とこういう関係になってから、目の前で輝くような笑みを太陽の光り以上に放っている恋人の嘆声で凛々しい顔立ちを見詰めながらそう思った。
「そう仰って下さって嬉しいです。
 本来の貴方は太陽の光を――いやベルリンで拝見した時のように、フラッシュでも構いませんが――身に浴びて栄光の檀上に立つべき人だとずっと思ってきました。
 今はまだまだですが、私もその横に並んで立てれば良いと、ずっと思って来ましたが……まさかこんなに早くそういう檜舞台に立てるとは思ってもいなかったです。
 このシャンパン……あのホテルで呑んだ時も本当に美味しいと思いましたが、今宵の味はひとしおです」
 あのホテルでもコスト削減のせいだろうか、それ以上のことは聞けなかったし、別に追加料金を支払っても個人的には構わなかったのだが祐樹の落胆した表情――それはそれで、滅多に見られないモノだったので記憶に鮮明に焼き付いている――とその後の切り替えの早さにその場をやり過ごしたのは正解だったらしい。
 祐樹もそれなりの収入はあるものの、締めるべき場所では財布の紐が固いことも知っているしそういう点も恋人として嬉しい限りだった。
「そうか?
 ああ、そのテレビ出演とは別に、京都の大型書店でのサイン会という催し物も企画されているのだが……。
 そっちの方も快諾してくれたら本当に嬉しい……。
 二人の署名が本の中だけとはいえ、並んで書けるので……」
 どんなことにも物怖じしない性格が祐樹の数多い魅力の内の一つだったし、事後承諾で良いだろうと勝手に考えていたが、実際に唇に載せてみると内心でドキドキしてしまう。
 ハレの舞台だと勝手に浮かれて喜んでいたのは自分一人の空回りかもしらなくて。
「……今夜の貴方は、何だか幸運のビックリ箱のようですね……。
 それに病院内でも密かな噂になっている『香川教授の笑顔を見たい』派の――主に教授職など鼻もひっかけないようなベテランナースが主流のようですが――が見たら年も弁えずに黄色い声援を送ってくるような笑みまで浮かべられて。
 見ている私が見惚れてしまいます。
 最近の貴方の表情は本当に瑞々しく薫り立つ大輪の花よりも綺麗なのですけれど、今宵は春の女神に幸運の接吻をされたような薔薇の花の風情です。
 そういう笑顔を独占出来る幸せを噛みしめています。
 サイン会……もちろんご一緒に参りましょう。何人来て下さるかは存じ上げませんが。
 まさか一人も来ないなどということはないでしょうから。病院長も沽券を賭けて動員をしてくれそうですし、清水研修医のお父様とかそういう……・
 ああ、清水研修医で思い出しましたが、医局対抗の折鶴勝負……、少しは彼に花を持たせるべきでしょうね。コトここに至っては……。
 容赦なく邪魔させて頂く積もりでしたが、一部作戦を変更した方が良さそうです」
 森技官ほどでないものの――あの冷酷非情というか血も涙もないというか、そういう「容赦のなさ」だと逆にこちらが引いてしまいそうになるが――祐樹も負けず嫌いな点は似ていなくもない。
 ただ、出会った頃――自分がアメリカから帰国して以来という意味だが――祐樹は今でいう清水研修医や久米先生のポジションだったので、この程度のメンタルの強さがなければ、そして思い込みとか自分の言葉足らずで与えてしまった自分の言動がなければこういう関係になれなかったのも事実だった。
 だからこの程度の強気というか負けん気も含めて祐樹のことを愛して止まないのだが。
 自分には完全に欠けている良い意味での「積極性」も惹き付けてやまない美点の一つなのは言うまでもなかったし。
「ああ、個人的には脳外科の皆に花を持たせても良いと思っているが、それでは祐樹の気が済まないのだろう?
 その裁量は全部任せる」
 祐樹の眼差しと長くて優雅かつ大胆な極上のカーブを持つ親指と中指で鳴らす音が二人だけの空間に祝砲のように聞こえた。
「承りました。サイン会の具体的な日にちはいつですか?
 私の方でも何とか働きかけて動員をと思いますので」
 斉藤病院長の後釜を狙っているという「将来的な野望」を今言わないで本当に良かったと心の隅で思いながら、その陽気な笑みを目くるめく想いで見詰めた。
「動員は無理しなくても良いかと。夏の日に呉先生と出掛けた公園で家庭教師をしたことが有っただろう……」
 この辺りは本当に言葉を選んでしまう。何しろ「あの」事件で一番心に傷を負ったのは紛れもなく祐樹だったので。








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ID:18fteb

        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編140

「改めて申し上げますが、こんな好物ばかりの料理の数々を用意して下さったのですから本当に良いお知らせが満載なのでしょうね……。
 それにこのシャンパン……最近はあのホテルでは別料金で提供されている銘柄で泣く泣く断念したのを覚えていて下さったのですね」
 愛の行為の後に身支度をざっと整えたものの、身も心も満たされた甘い気怠さに包まれたままテーブルへ向かい合って腰を下ろした祐樹が感嘆めいた表情でテーブルの上を見回している。
「他でもない祐樹にまつわることは特に良く覚えているので……。
 とりあえず乾杯をしようか?」
 フルートグラスにシャンパンを注ぎながら笑みを零した。多分今の自分の表情はこの上もないほど極上の笑みを浮かべているのは祐樹の眼差しで分かってしまう。
「有難う御座います。今宵はこのシャンパンが殊更美味しく呑めそうです……。最愛の恋人がこんなに生気に満ちた笑顔と愛の交歓の後の気怠い甘さの残る肢体を堪能しながらですので……」
 フルートグラスが繊細な音を立てて部屋の空気を僅かに震わせた。
「私も同じだな……。
 ただ、一番嬉しかったのは祐樹の完成原稿を読んだ時……だったが」
 声を上げ過ぎたせいか、シャンパンの甘さが更に心地よく口の中を潤していく。
 祐樹の力強い輝きに満ちた視線が一瞬怪訝そうな光を宿す。
「え?そんなふうに思って下さっていたとは……。
 先程聡も私にまつわることは特別に覚えていると仰って下さいましたよね。それと同じですよ。
 聡のことを一番良く知っているのは世界中の人の中で私だと自負しておりますから。
 逆にあの当時の状況から私という要因を取り除くとああいう行動をなさるのではないかということくらい予想出来なくて生涯の恋人と僭称するのはおこがましいと存じますが。
 聡のことを伊達にずっと拝見してきたわけではありません……」
 シャンパンの泡越しに見える祐樹の唇が何だか得意げな感じの笑みを浮かべている。
 アルコールではなくて、祐樹の甘い言葉に酔ってしまいそうになる。
「それはそうなのだが……。祐樹の秀逸な文才にも心底驚いた。ほら、あの直後、盛岡医大の教授のメールも文学的価値が高いと二人して感心しただろう。
 あれよりも更に感動した。自分のことを書かれているからかも知れないが……。
 何だか物凄く職業意識が高くて熱意溢れる人物像に美化されているようで……。
 しかし、良く考えてみると確かに私が考えたり行動したりしそうな感じなので、尚更戸惑ってしまって。
 祐樹の表現力の豊かさは知っている積もりだったのだが、まさかあれほどの名文が書けるとは全く知らなかった。
 そういう点も惚れ直した……」
 いそいそとスモークサーモンにレモンを掛けてから祐樹の方へと渡す、この上ない満足感に浸りながら。
「東北の教授に勝っていましたか……?
 他ならぬ聡のお口からお聞きしたいですね……
 惚れ直して下さるのは何回伺っても嬉しいのでドンドン仰って下さいね」
 祐樹の瞳と唇が不敵な感じで輝いている。負けず嫌いな点も祐樹の好ましい特徴の一つではあったが。
「ああ、読んでいて心の底から幸せになった。文章を書いた人が祐樹だと知らなくても感動してしまう程度には。
 あの卓越過ぎる文章が私のレポートそのものといった感じの無機質な文章と同じ本になるのだから、喜びはひとしおだ」
 心も身体も満たされたため息のような笑みを零しながら告げた。
「それは良かったです。二人の共同作業が本に収まるのも、そしてその本が本屋に並ぶのもとても楽しみです。
 オーク○での実質的な披露宴も筆舌に尽くしがたいほどの期待感しかないのですが……。
 斉藤病院長も何だか最近は物凄く喜んでいるらしいと院内でウワサになっているのですけれども、何百万部売り上げだけのはしゃぎようではなさそうな感じでうね……。何か心当たりでも?」
 祐樹の方が当然病院内の人脈は幅広いし、誰かが病院長のことを祐樹に報告したに違いないが。
「ああそれは、出版コーディネーターの高木氏が日本○済新聞社にもコネが有るらしくて、『ワタシの履歴書』の執筆依頼が正式に届いたからだろう……」
 祐樹の普段は凛々しく引き締まっている唇が驚きのカーブを形作っている。そういう表情を見るのも意外な一面だったので嬉しかったが。
「そんなコネが有るのですね。しかもあの新聞社の豪華執筆人しか載らない場所に良く……ああ、今連載中の方がお亡くなりになったからでしょうか?
 ま、それはともかく学長になった後ならともかく学長選挙にこれから臨む病院長ですので、その効果は絶大でしょうね。
 その件を伺ってやっと腑に落ちました」
 大学の慣例として、学長になれば病院長の座は必然的に譲り渡すことになっている。
 その後継者に自分が名乗りを上げようと密かに考えていることはまだ心の宝物入れに仕舞っておくことにしよう。
 祐樹に打ち明けたなら絶対に力になってくれることは確信めいたモノは有ったが、激務に加えて院内政治にまで尽力して貰うのはタイミングが悪すぎることも分かっていた上にまだまだ先の話しだったので。
「それより、祐樹。高木氏のコネで『テツコの部屋』にゲストとして呼んで貰えるかも知れない」
 祐樹が驚いたような眼差しで自分だけを見詰めている。
 そういう類いの表情を見る機会はそうそうなかったので幸福の玉手箱を開けた気分だった。
「……そのゲスト、もしかして二人ですか?」
 確認するような感じで聞かれた。
「共著なので当然二人だが?」
 祐樹の掲げていたフルートグラスが不自然に揺れて黄金色のさざ波が幸福の象徴のように煌めいている。
 ただ、職業的にも、本来の性格的にも物事に動じない祐樹がここまで驚くのは想定外だったが。
「その件をお一人で決めてしまわれたのですよね……。病院長命令とかではなく?」
 唖然とした感じで再確認されてそんなに意外だったのかと内心首を傾げながらも唇を開いた。
 花のような笑みがフルートグラスに映っているのを視界の隅で捉えながら。










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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編139(I8禁)

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 見慣れてはいるものの、生涯見飽きることのない祐樹の凛々しさと優しさとそして欲望を潜めた男らしい眼差しの輝きに瞳が外せない。
 祐樹が困ったような苦い笑みを甘く浮かべて自分を見下ろしている。その視線を受け止めているだけでチョコレートのような甘さと苦さで心が満ちていく。身体は祐樹を欲して甘く疼いていたものの。
「私との愛の交歓の夜を重ねたせいで、すっかり淫らな大輪の花を瑞々しく咲かせた肢体と異なって……そういう無垢な眼差しとかお顔の表情は出会ったばかりの頃と変わっていないので、毎回拝見する度にドキドキします。
 何だかいけないことをしているような背徳感すら感じられて……。
 そういう精神の無垢さとかひたむきさも大好きなのですが……」
 繋いだままだった手を解いて、祐樹の額の輪郭を眼差しだけでなく指でも確かめるように辿った後で、額を小さく弾いた。
「最愛の祐樹にされる『いけないこと』なら何でも大歓迎だが」
 文字通り身も心も愛されているという揺るぎない安心感からつい軽口を言ってしまった、唇にはきっと極上の笑みを浮かべながら。
「聡もそんなことを……しかも薄紅色に染まった瑞々しい唇に極上の艶やかさを浮かべて仰って私を両面で煽るようになったのは、鮮やかな開花の一つですね。
では、遠慮なく……」
 唇同士が触れ合って直ぐに舌と口腔を溶かすような熱く甘い濃厚なキスを交わしながら祐樹の指が上半身のあちこちに優しく触れるだけの指使いで辿り下りていく。
「あっ……」
 胸の尖りの側面部を強く弾かれて、喘ぎ声が祐樹の唇の中に淡く溶けていく。
「こちらの花の芯のような、そして水晶の雫を止め処なく零しては濡れていく場所もとても綺麗で、愛さずにはいられませんが、私の唇はあいにく一つしかないもので……。
 真剣に愛する人が出来たら唇も指ももっとあればと望んでしまうのはある意味必然かも知れませんね」
 祐樹の歯で甘く噛まれた胸の尖りと声に伴う息の熱さに薔薇色の眩暈にも似た甘い旋律が脳裏を過った。
「あっ……ゆ……祐樹っ……。とてもっ……悦いっ……。
 熱いのにっ……何だか研ぎ澄まされたっ……氷を当てられているようなっ……そんな悦楽がっ……」
 思わず床の上から背筋を浮かせて愛撫をせがんでしまうほどの紅い色の花火が脳裏に爆ぜる。
「普段のこの尖りは、本当のルビーのように冷たいのですが……今夜はそれほど触れてもいないのに熱いです」
 祐樹の歯だけでなく尖らせた舌が全体を転がすような愛の仕草を受けて背筋が跳ねる。
「ゆ……祐樹っ……。それ以上愛されたらっ……」
 絶頂の甘い予感に震える部分を祐樹の身体へと押し付けてしまう。本当は着衣のままの状態なので遠慮すべきだと理性が後に告げたが、熱く滾る情動に突き動かされて。
「夜露に濡れる大輪の薔薇のような綺麗で艶めかしい聡の姿とか……。ルビーよりも紅くて硬く熱い二つの尖りとか、悦楽の涙を宿した紅色のお顔を見ていると、流石に我慢の限界です……。
 挿れて……良いですか」
 返事の代わりに要を失った扇のようにしどけなく大きく足を開いて、期待のうねりに唆されるまま腰を掲げた。
「ゆ……祐樹っ……来てっ……ああっ……。
 濡れて開かれる感じが堪らなく悦っ」
 一瞬奇妙な間が出来たので、我に返って祐樹を見上げた。
 二人が魂までを深く繋がった状態のまま。
「え?……もしかして悦くない……とか……」
 言葉にしてしまうと先程の熱がさっと引いて唇が氷のように冷たくなった気がした。
 祐樹は何が可笑しいのか甘く熱い笑みで唇を弛めているので内心は安堵してしまったが。
 恋人として楽しませなければ何だか祐樹の傍にいる資格がないような気がしてならない。
「まさか……。
 聡の凄まじく艶っぽい姿に見惚れていただけですよ……。動くのも――いえ、動きたいのはヤマヤマですが――忘れてしまうくらいにね。
 血よりも紅いルビーの尖りとか八重桜の濃艶さを放つ肢体、そして私を嬉々として受け入れて下さっている場所がこの姿勢だとハッキリ見えてしまって……。
 その上育ち切って先端から水晶の雫を零している、咲き始めるのを待つ風情の聡自身とか。
 とても、素敵です。
 夜に咲き誇ろ大輪の瑞々しさと妖艶さに薫り立つ肢体とは裏腹に透明な涙の雫を零している滑らかな紅色の頬もとても綺麗で、そして初々しい色っぽさに満ちています。
 そのギャップにも惹かれてしまいますが」
 射抜くように見下ろす祐樹の瞳の光りの熱さすら素肌を悦楽に焦がしていくようだった。
「そうか……。それなら……良い。
 あっ……ゆ……祐樹っ……動いてっ。もっ……う……」
 大輪の花火が頭の中を次々と上がっていくような甘く狂おしい切なさに身を震わせた。絶頂の予感に慄きながら、祐樹の動きに合わせて身体が揺れた。
 身体、しかもごくごく一部分が濡れた淫らな音と確かな熱を共有しているだけなのに、身体だけではなく魂までが一つに溶けて甘美で淫らな協奏曲を奏でている――その充足感に揺蕩いながら――物理的な極みだけでなくて魂までが祐樹と二人して天上まで上り詰めて極上の目くるめく世界に「一つになって」上り詰めているようだった。









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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編138(I8禁)

イメージ 1

「ゆ……祐樹っ……」
 背後から聞こえてくる熱い息遣いにすら声を上げてしまう。深く浅く身体の奥へと刻まれる律動にも。
「普段以上に艶やかで艶めかしい声ですね……
 小ささは同じですが……。
 二人の身体が繋がっている場所を高く掲げて、しどけなく開かれた場所から真珠の雫が転がり落ちて紅の素肌を転がっていく様子も、絶景……ですね」
 祐樹の低く濡れた声に背筋が撓っていく。
「ゆ……祐樹っ……とても悦いけどっ……」
 熱く甘い嬌声混じりの吐息を止め処なく零していたため閉じられなくなった唇が切なく震えている。
「けれど……。何ですか?」
 祐樹の力強い律動と共に一際大きくなった灼熱の楔が身体だけでなく魂をも甘く濡らしていくようだった。
 それに祐樹の声も甘やかな苦痛を帯びていて、極みが近いことを告げていた。
「身体の……向きを……変えて欲しっ……。
 祐樹の顔を見ながら最高の時を迎えたいので……。
 私もそんなには保たなっ……いっ……し」
 繋がった場所から甘く熱い花火が脊髄に弾けるような悦楽を絶え間なく浴びせかけられた感じが堪らない。
 何を思ったのか祐樹はピタリと動きを止めて、撓む背中に身体を預けて耳朶を甘く噛んできた。
「聡のお願いなら何でもお聞きしますが……。身体の位置を変えるというリクエスト……聡の愛らしい唇から出たのは初めてです。
 以前、行為の流れでそうなってしまいそうな時に物凄く不安そうなお顔をなさったでしょう。
 貴方の極上の花園はすぐさま真珠の放埓を放ちたくなるほどの名器なので……愛の営みの形を変えるのは、少しでも長く絶頂を長引かせるための些細なテクニックだったのに、それすらご存知なかったようでした。
 それに比べると随分進歩なさったものだと……思いましてね……。その開花がとても嬉しいです。
 良いですよ。一旦繋がりを解きますね……」
 祐樹の熱い愛情の塊がゆっくりと出ていくことに刹那の寂しさと空虚さを感じながら、そういえばそういうことも有ったなとぼんやりと思い出してしまった。
 長く保たせることがそれほど重要だと個人的には全く思っていないのだが、祐樹の男としての矜持は異なるらしい。
 むしろそちらの方が普通なのかもしれなかったが、自分にとって祐樹がしてくれる愛の仕草の一つ一つが宝石のように貴重だったし、そもそも祐樹が自分に欲情してくれることだけで甘く切なく身体も心も疼いてしまっているだけなのだが。
「向きを変えるだけで良いのですか?お好みの姿勢とかが有りましたら何でもお聞き致しますよ」
 祐樹の甘く低い声が濡れた熱帯の夜の闇のような湿度と熱を感じさせてくれる。
「祐樹の……、頂点に達する時の……ほんの一瞬浮かべる甘くて辛そうな……そして無防備でいてこの上もなく満たされた表情を見るの『も』大好きなので……。
 それ以外は祐樹のしたいように振る舞ってくれれば……、それで良い。祐樹にして貰える行為全てが私の宝物なのだから……」
 汗に濡れた手を繋ぎ合わせて、祐樹のリードに任せることにした。
「こんなにあちこちを愛らしく尖らせたり濡らしたり、そして艶やかな煌めきに満ちて滴っていたりして下さったのですね」
 祐樹の瞳の輝きが灼熱の炎の熱を纏って焦がすように身体のあちこちを見下ろしている。
 どこを見られているか分かってしまうほどの確かな熱を帯びて愛の行為に乱れた自分を見下ろしている。
 僅かな羞恥心を必死に押し殺してその視線を甘く受け止めて、更に息が甘さを帯びていく。
「花園の中の甘く熱いうねり……あんなふうになったのは初めてですが、また開花を遂げて更に狂おしく私を誘っているようです。極上の大輪の花のように。
 しかし、あの場所は直ぐに持って行かれそうなので……。
 そうですね……あまり触れてもいないのに、ルビーよりも紅く硬く尖った場所を愛しても構いませんか……。
 私も貴方の薫る肢体全部に乾いているので……。
 もう少し愛の交歓の時間を長引かせたいです……。熱烈に愛し合う二人にしては御無沙汰してしまっていましたので。
 慎ましやかに尖った場所も、先端から雫を溢れさせて育ち切った場所も瑞々しい蠱惑に満ちて私を誘ってやまないのですが……。
 聡の方でご希望があればお聞き致しますよ……」
 祐樹は――肝心な場所こそ空気に触れてはいるが――スーツ姿というのも何だか却って新鮮だし、それに自分が部屋着を乱すだけ乱した肌の露わな状態でいることへの甘い背徳感すら抱いてしまう。
「祐樹の……好きな方を愛して……くれれば、それで良いのでっ」
 大粒の汗の雫を纏った祐樹の男らしい凛々しい顔――しかも前髪が汗のせいで後ろに流れていて秀でた綺麗な額のラインが露わになっていているというおまけつきだ――思わずマジマジと見入ってしまう。










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  • 気分は下剋上 公認カップル騒動 95
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