腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2018年08月

気分は下剋上 学会準備編 147

「充分可能だと思いますよ。元々外科系の教授が圧倒的に有利ですので対外的に顔が売れていない教授でもそうだったようですので、世界的な名声をお持ちの香川教授なら尚更です。
 私なども内心は御決心を促そうかと何度も思っていたのですが、そういう野心というかこれ以上のポジションをお望みではないようでしたので……遠慮申し上げていました。
 教授ご自身からそのような言葉を承ることが出来て本当に良かったです」
 先程までの健啖家振り――ついつい自分の分のお皿も内田教授に回そうかと思うほどだった。祐樹も食べることが出来る時にはたくさん食べるタイプだが皿を渡そうと思うような食べ方はしない――はどこかへ行ったらしく、ドラマの中の深窓の令嬢のように並んだ料理に箸を運ぶことを忘れ去った感じだった。お淑やかさはまるでなかったが。
 ただ、筋金入りの改革の闘士でもある内田教授から断言されて安堵の溜息を心の中で零した。
「そうですか。そう判断して頂けて幸いです。次回の学長選挙に出馬予定ですよね、斉藤病院長は。そして対抗馬は法学部長ですよね……。その選挙協力をすれば貢献度とか病院長の評価も上がりますよね?」
 病院勤務のキャリアは祐樹や内田教授といった病院生粋の医師達よりも浅いが、その程度のことは教授会などで小耳に挟んだ会話の断片とか、大学内でのウワサなどでおおよそのことは知っていた。
「そうですね。ウチは医学部と法学部が学長への早道ですから。
 香川教授がそのように御決意を固められたのなら、教授会での発言を増やすことでよりいっそうの存在感を示すでしょうね。もちろんご助力は惜しみませんが、教授自身の積極的な味方を増やすことが一番かと存じます。病院への貢献度は手技もそうですが、あの災害の時の迅速な対応、そして卓越したリーダーシップなどからも高く評価されているのも事実です。
 しかし、今までは病院長への意欲というか熱意はお有りにならなかったので当然といえばそうですが……、そういう院内工作という点はこれからですよね。
 私などは教授の御決心を心の底から熱望しておりましたので大変喜ばしいのですが、教授自らがその存在感をアピールしないとならないかと存じますし、また医局――いえ、医局以外にも頼もしい味方もお持ちでしょう――に極秘プロジェクトチームをお作りになることをお勧め致します。院内政治を知悉した、ね」
 目の前の料理の存在をすっかりと忘れ去った内田教授は――日頃の温和さがウソのような――すっかり院内改革の革命の闘士めいた表情を浮かべて熱弁をふるっている。
「医局内に極秘プロジェクトチーム……ですか」
 医局外の味方なら不定愁訴外来の呉先生――精神科の真殿教授とケンカをした過去が有るにも関わらず病院内に残ることが出来たという点で政治力も持ち合わせているのだろう。
 普通は教授職に逆らった場合は僻地の公立病院に左遷させられるか病院を辞めて自力で転職活動をしなければならないのが、この狭い世界では常識だった。
 それなのに彼は単独で生き残り、しかもその上今では森技官という権謀術数がアルマーニを纏っているような人と恋人関係なのだから。
「そうです。医局内に最低でも5名に動いて貰わないとなりませんね。
 田中先生は如何ですか?その実質的なリーダー役には。彼は私が拝見する限り最も政治的才能にも実行力にも長けていると思っております」
 それは内田教授に指摘されるまでもなく分かっていた。ただ、固有名詞を出さなかったのは「自分から部下の固有名詞を頻繁に出すと何かとマズい」という女性向けのビジネス誌の記事で読んだからだった。何故そんなモノが目に触れたかというと、仕事も恋愛もバリバリこなすキャリア女性向け雑誌を祐樹が「彼女」の設定に役立つようにと長岡先生から貰って来て職場では読めないからと自宅へと持ち帰って読んだ後の雑誌入れに放り込んでいたのをたまたま手に取っただけだったが。
 何でも「部下の固有名詞を自分から出すと贔屓しているように絶対に思われるし、異性の場合は恋愛感情を持っていると誤解されかねない」とかで、異性ではなかったものの「実際」恋愛感情――と表現するには浅すぎるような気もするが――を持っている祐樹の名前は絶対に自分からは口に出さないようにしている。
 柏木先生とたまに行く呑みの席でも当然医局の話しになるし、祐樹は才能に相応しく目立つ存在なので柏木先生の口から出やすいものの、先方から振ってきた場合にのみ答えるようにしている。
「田中先生の政治力やリーダーシップはもちろん良く存じています」
 あの災害の時の非常事態宣言下の自分の指揮のほとんどが祐樹の決定だったことは言うまでもない。そしてあの神憑り手技……そして折鶴勝負までして無理やり連れていったお店での試着した祐樹の知的さと凛々しさと頼もしさの深まった衣装まで一気に連想が飛んで唇が自然と笑みの形になってしまう。
「最近の教授には……。何と申し上げたら良いのか分からないのですが……。以前よりも落ち着きの増した、いや違いますね、余裕と自信に満ちた笑顔……いや、上手く言葉では表現出来なくて申し訳ないのですが……とにかく以前とは異なった人心掌握力が増したともっぱらの評判でしたが……。
 そういうお顔で微笑まれたら更に支持者が増えますよ」
 以前から手技にだけは自信と矜持を持っていたのは事実なのでそれを指摘されているわけではなさそうだ。落ち着きとか余裕を実感出来て――しかもこの上もなく幸せなことに――心の底から笑えるようになったのは最愛の祐樹との関係が確固たるものになった確信と、そしてその世界中の誰よりも頼もしい祐樹と対等の関係になりたくて表情筋の活性化を試みた結果だろう。
「なるほど……そういうものですか?田中先生に早速打診してみましょう。ただ、『実質的』なリーダーと仰るからには『形式的』な人も当然据えなければならないのですよね」
 元々の発想の原点が「祐樹を教授職に就かせる」というものだったので、腹心として振る舞って貰わないとならない――それに祐樹自身がそもそもその気で居てくれる――のは当然として、「実質的」なリーダーに――内田教授のことだから医局の人間関係は知悉しているハズだった――相応しいのは誰なのだろう。黒木准教授の柔和な顔が脳裏を一瞬掠めたものの、学長選挙時に停年を迎えているハズなので。
 祐樹が教授職……、漠然と脳裏に描いていた夢が内田教授に向かってとはいえ口に出してしまって、目くるめく多幸感に包まれながらも「病院改革の闘士」の貴重なアドバイスの続きを待った。









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 更新を気長にお待ち下さると幸いです。
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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 146

「昼食に呼んで頂き有難う御座います。我々内科医は患者さんからこんなに感謝されることがないもので……。
 いつも豪華版ですね。お相伴に与れることを光栄に思います」
 患者さんから差し入れの昼食が届いた――「予告すると謝絶される」というのは歴代患者さんの暗黙の申し渡し事項になっているらしく、午前の手術が終わって執務室に帰れば唐突というか突然に届いている――優先順位は当然ながら祐樹が断然トップだが、今日は文学部英文学科の講師を務めている、国籍は日本ではあるもののアメリカでの暮らしの方が長いという人に、完成原稿を暗記済みの祐樹が発音の最終チェックの特別レッスンが入っていたことは知っていたので誘うのは諦めている。
 何しろ学会レベルに限って言えば英語が不自由な教授というのは学部問わず存在するし、そういう人へのレッスンを一手に引き受けている人なので突然キャンセルなどは非礼過ぎるだろう。
 少し見ないうちに貫録が増した――主に腹部から来る印象だろうが――内田教授の温和な笑顔に微笑みを返した。視線の先には、尊敬めいた光と驚嘆めいた感じを浮かべる内田教授の温和な笑みが――凱旋帰国から病院内で「そういう」視線で見られるのは慣れてきた積もりだったものの、表情筋を動かすこととかその他思いついたことを実行している今は格別に感嘆めいた眼差しを浴びせられることが多くなったのも事実だった。
「いえ、こういう食事を一人で頂くのは却って物寂しいものが有りますよね。
 病院の食堂から届けられる日替わり定食ならともかく……。ご一緒して下さって有難う御座います。わざわざお呼び立てしてしまってすみません」
 執務用のデスクから応接用のスペースに移動しつつそう告げると、内田教授は何だか眩しいものでも見るような感じで自分の方を眺めている。
「どうぞ、お掛け下さい。お茶が冷めないうちにどうか召し上がって下さい」
 自分の医局での貢献度が非常に高い黒木准教授ではなくて内田教授を選んだのは彼にまず相談をと判断したからだった。
 何しろいかにも患者さんから頼られるような誠実さに満ち溢れている温和そのものといった外見とは裏腹に病院改革の闘士としての裏の顔を持ち合わせていることや、医局内クーデターを見事に成功させた手腕とか統率力は――こう言っては大変失礼かもしれないが――白河教授などの拙さとは対照的だったので。
「来年のことを言えば鬼が笑うと言いますが……」
 内田教授が自分に期待をしているのは薄々だが知っていた。当時はそんな面倒なことを引き受けたくはなかったので完全に無視をしていたのだが、祐樹を教授職に就けるという野望に目覚めた今はその期待に応えるしかないのも事実だった。
 自分が退職すれば一番早いのも事実だが、そんなことをすると一番悲しむのは多分祐樹本人だろう。祐樹が納得して教授職の就くには自分が病院長に昇進した場合だけだろうし。
「鬼が笑うようなお話しなのですか?
 私はてっきりご本の話しかと思っておりましたが」
 若干怪訝そうな感じの温和な笑みが返ってきた。病院長命令がなくとも内田教授は祐樹と自分の本のために動いてくれることは確実だったので、それが病院ぐるみの運動となっている今、内田教授も水を得た魚のように動いてくれていることは院内メールで知っていた。
「その件については誠に有難う御座います。
 サイン会に非番のナースだけではなくて、仕事上がり先生方やナース達も順次投入するというアイデアまで出して下さって本当に有難う御座います。本の購入代金も医局で負担して頂けることも……。損にならないですか?」
 夜勤とか準夜勤など大学病院の勤務シフトはほぼ24時間体制で動いているのは周知しているが、仕事帰りの人間――勤務時間中に、いわば給料を出した上でのサクラというウイン・ウインな関係でない人達まで巻き込んでしまうというのはいささか心苦しかったものの――まで動員して貰えるのは本当に有り難い。
 そして経費節減に余念がない大学病院の現状を考えてみれば、その有り難さが身に沁みて嬉しかった。
「いえ、香川外科には及びもつかないとはいえ、ウチもそれなりの黒字運営ですのでお気になさらないで下さい。
 それはともかく、鬼が笑うとか仰った話しを伺いたく思います。
 私などは――まあ、最終的に顰蹙を買うとはいえ――患者さんは待ってくれますけれど、教授はそうではないでしょうから」
 確かに内科と外科では――特に執刀医を務めていると――その点の事情が大きく異なる。
「ここだけの話しなのですが、病院長のポストを目指してみようかと思うようになりました」
 ソファーから――比喩ではなく――飛び上がった内田教授は「驚愕」というタイトルの付いた絵画が有ればそれはまさにこんな表情になるだろうと思えるような表情を浮かべている。ムンクの「叫び」からの連想だったが。
 凱旋帰国からこれまでの自分の病院内での言動をつぶさに見ていれば――そして内田教授などはその筆頭格だろう――出世欲がないことは一目瞭然だっただろうし、驚かれるのも尤もだろうと思って内心で苦笑してしまった。
「……それは、大変有り難い御決心です。いえ、大英断と表現したほうがしっくりくるかもしれませんが……。個人的にはご聖断と呼んで差支えはないです」
 心臓の辺りを押さえながら――個人的にはバイタルが気になってしまったが、内科とはいえ心臓の専門医なので自己判断は可能だろう――今度は歓喜に満ちた感じの笑みを浮かべている。マフラーを手渡した夜の祐樹の笑顔もまさにそんな感じだったが、そもそも――こう言っては大変失礼だが元々の顔立ちという先天的な条件が全く異なってしまっているので――祐樹のような太陽神の輝きのような感じではない。ただそんなものは望んでもいなかったものの。
「可能でしょうか……?もし可能ならば、可能性を高めるために何をすれは良いのか御教示頂きたくてお呼び立て致しました」
 院内政治にも積極的な内田教授――あくまでも内部の視点で病院内改革を進めたがっていることは以前から承知していたし、陰ながら自分の出来る範囲限定で協力はしてきた――だけに彼の判断やアドバイスが一番的確だろうと判断していた。
 だから黒木准教授ではなく内田教授を選んだのだが、冷静な「政治家」でもある彼の判断はどうなのかと内心固唾を飲んで答えを待った。










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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 145

「えと。適当なブランドのタグ部分を切り取って別の糸で縫いつけようか?
 別にあんなものが有ってもなくても私はどうでも良いモノなので」
 一つの店で事足りるという点と、自分の年齢にしては高すぎる社会的地位を考慮した結果の消去法で選んだフランスの老舗ブランドだが、世間では「超高級」というイメージが強いので、祐樹の「彼女」が送ったとしても別に不自然ではない。もちろん祐樹のでっち上げた架空の「彼女」なのだが、才色兼備の商社レディということになっていて、手編みのマフラーというある意味高校生とか古い感じのモノを贈りそうにないタイプの女性だろう。長岡先生と似たような感じが漠然としたイメージで――絶望的までに手先が不器用という点は置いておくとして――絶対に思いつかないプレゼントのハズだった。
 それなら絹や馬具まで職人の手作業で作るというブランド――確かに物凄く丁寧に縫ってあるが、あの程度なら何とか自分でも再生出来そうだったし。
「いえ、そこまでして頂けなくとも、これで充分です。マフラーだけは誰にも触らせないように必死に守ります。
 せっかく貴方の黄金とか神の手とか尊称されている指先で、しかも深い愛情を込めて編み棒――と言うのですか?――とにかくそんな世界に一つだけしかない私だけの大切な宝物を他の誰にも触らせたくはないですから」
 祐樹の凛々しい眉が決然とした感じのカーブを描いているし口元は先程の爆笑がウソのように引き締まっていた。こういう感じの顔も大好きなので見ることが出来て内心嬉しさでシャンパンの薔薇色の泡が弾けたようだった。
「そうか……。祐樹にそんなに喜んで貰えて……本当に良かった。
 誰かに触られた時はまた編むので気にしなくても良いので。そんな些細なことで気を散らすのは、職業上マズイのではないか?」
 そんなたいそうなモノではないような気がするので言わずもがなのことを唇に乗せてしまってから後悔した。
「そっ、それに今回も模様を考えたり配色を考えたりで楽しかったのも事実なので、今度はどんな色とか更に精緻に編むにはどうしたら良いかを自分なりに考えたので……。それはネットに編む方法がたくさんヒットしたので一番出来そうなモノを再現しただけのいわゆるコピー品みたいなシロモノなので、次回は自分なりに工夫した完成品を編み上げるから」
 慌てて言葉を仕事の時以上の早口で一気に言い切った。祐樹はそんな自分の顔をマジマジと眺めている、何故か唇には甘くて少し苦い笑みを浮かべたまま。
「大丈夫ですよ。集中力を何分割も出来るのが我々の仕事でしょう。
 そんな、業務に支障をきたすようなことをすれば、最愛の恋人をいたずらに悲しませるだけですので厳に慎みます。
 最も寒いと実感している二月の夜もこれが有れば心も身体も貴方の愛情に包まれたようにポカポカになりますので、本当に有難う御座います。一生モノの宝物をたくさん有難う御座います。二個の折鶴は秘蔵品ですが、こちらは実用にも仕えますので……」
 二個というのは医局の慰安旅行の夜に祐樹を待ち焦がれて手すさびに折ったモノだった。
 それを殊の外――祐樹に欲しがられるとも思ってもみなかったし――大事にしてくれたことが編み物を思いついた切っ掛けなのだが、自分だって祐樹と取り換えっこした折鶴を大切に保管している。しかも祐樹の方がプレゼントの数も圧倒的に多いのも厳然たる事実だった――当然全てを大事に使っていることは言うまでもない。
「他の色のマフラーが欲しかったらいつでも言って欲しい。その程度のモノなら直ぐに編める自信もついたし」
 祐樹の顔がまた太陽の化身みたいに明るく輝いた。
「そうですね……。
 今度は貴方が私のイメージカラーだと仰って下さった暖色系でお願いします。貴方は薄青色とか白や五月の新緑の色がお似合いですから、色だけは変えて模様は一緒というお揃いにして頂いて、冬場のデートで一緒に巻きましょう。マフラーの柄と言うのですか?そういうものは巻いてしまえば誰にも分かりませんし一石二鳥でしょう。お揃いの洋服デートは以前でもなかなか難しいモノでしたが、今は更に難しくなりましたからね。特に京都では」
 被災地だったせいもあり、皆は――停電していないという前提だったが――情報収集のためにテレビをつけるのはむしろ当たり前の話しで、その番組で繰り返し二人の映像が流れた上に、後日ドキュメンタリー番組にまでなったので世間的な記憶として顔と名前の一致が進んだのも事実だった。大阪ではそこまで感じないのはそこまで熱心にニュースを見ていた人が少なかったからなのではないかと個人的に考えている。
「そうだな。今からでもすぐ編むが?祐樹とお揃いで着られるのなら私もとても、いや今でも充分以上に幸福だが、それ以上に幸せな気持ちでどこかの街を一緒に歩けるのは心の宝石箱にまた一つ宝物が増えたような気分になれるし」
 何だったら明日にでも毛糸を買いに行こうかと浮き立つ心で思った。
「この騒動が落ち着いたらで構いませんよ。具体的なスケジュールは未だ立てられませんが、オーク○のパーティとサイン会、そしてテレビ出演で一つの峠は越えますよね。
 その後には私のアメリカでの学会の講演、防衛大学での貴方の講演と出張が目白押しですから。
 それが終わってからで充分です。別に急ぐ話しでもないですし。毛糸も貴方も逃げないのは確信していますので」
 それもそうかと納得して用意してあったデザート――祐樹も最近は食べられるようになったイチゴのミニサイズのホールケーキを冷蔵庫から出した。
 祐樹の熱く甘い視線を背中で感じながら薔薇色の幸せ色で心がこの上もなく弾んでいることを自覚しつつ。
 いつまでも浸っていたい極上の時間だったが、社会人である以上時間の制約から逃れられないのも仕方のないことだったので、二人きりの甘い時間もそろそろ終わらせなければならなかった。
 残念ではあるものの、祐樹と過ごせる時間はこれからもたっぷりと残っている幸せ極まりない確信が有ったのでそれほど辛くはなかったが。








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■お知らせ■

・ヤフーさんのせいか、私のパソのせいかは分からないのですが、投稿したらネットから落ちてしまうという惨事に毎回襲われています。同じ記事が重複してしまう(こまめに消していますが)のもシステムのせいなので何卒ご容赦お願い致します。

・リアバタで時間がないので、趣味に割く時間が(号泣)原稿ストックが有る分は「学会準備編」ではなくて発作的に書いた分を、イザとなれば更新します。
 時系列的には「学会準備編」の途中の出来事(お互いがゆっくり話し合えなかった時期)のお話しです。

◆私信◆

心当たりの有る方のみ読んで下さい!!(お一人様限定)
以前、ご協力頂いた某キャンペーンなのですが、また始まりました(泣)
九月からの予定です。本当ニ、ナニを考エテ居ルンダ!な感じですが、またご協力頂けると幸いです!!切実(泣……)

あ!その節は本当に有難う御座いました!ただ、そのせいであちこちからの期待値が……。
なので、何卒宜しくお願い致します!!!!!!!!

気分は下剋上 学会準備編144

「有難う御座います。開けてみても構いませんか?」
 祐樹の瞳がサンタクロースの贈り物を貰った子供のような無邪気な感じで輝いている。
 普段――というか職場での――の割と鋭い感じのする光も惚れ惚れするが、今回浮かべてくれた輝きだけで若干の睡眠時間を削った甲斐が有ったと思う。
「もちろん。気に入ってくれればとても嬉しい」
 丁寧に青いリボンを解く祐樹の瞳がやや怪訝そうなのは吟味したとはいえ市販のラッピング素材――ブランドなどの「会社」が顧客のために大量に作ったものではない――ことが分かったからに違いない。
「へえ……。とても綺麗な色ですね。それにとても暖かそうです。底冷えすることで有名な街に住んでいますから救急救命からの帰路などには重宝しそうです」
 祐樹が手に取って肌触りを試している。恋人が最も気温の低い時間帯に帰宅することを慮って長めかつ幅広に編んでいたのだが、その隅々までじっくりと眺めている。唇には最高の笑みをそして瞳にはやや不審そうな輝きを宿しながら。
「これ……、タグというのですか?ブランド名とかが分かる小さな毛糸ではなく他の布地で出来ているものが有りません。
 もしかして……」
 祐樹の目が一際鮮やかな輝きを放った。
「そうだ。宿直室で休めば良いにも関わらず律義に帰宅してくれる感謝を込めてと、真冬でも風邪を引かないようにと祈りを込めて私が編んだ」
 祐樹の表情がフラッシュでも浴びたようにパッと明るく輝いた。
「手作りですか……。筆舌に尽くしがたいほど嬉しいです。本当に有難う御座います」
 マフラーを大切そうに持ったまま頭を深々と下げられてこちらの方が慌ててしまう。
「いや、そこまで喜んで貰えるとは思ってもいなかった。というか、むしろそういう系統のプレゼントは嫌いな人だと思っていたので」
 何だか身の置き場に困るようなあからさまな歓喜の表情を浮かべた祐樹の眩しすぎる笑顔で見詰められてしまって薄々予測はしていたもののこんなに喜んでくれるとは嬉しい想定外だった。ベートーベンの第九が祐樹の背後から流れて来るかのような錯覚すら覚えてどうして良いか分からず――そう言えば凱旋帰国直後から祐樹と晴れて恋人同士になるまではいつもこんな気分だったのを思い出してしまう――良い意味で途方に暮れるだけだったが。
「ああ、他ならぬ貴方から頂けるなら話は別ですけれども……基本的に手作りは苦手ですね。想いを込めて貰えたことが逆に重荷に感じてしまって。
 しかし、貴方からは全く別です。生涯に亘ってのパートナーになる最愛の恋人からこんなに精緻なマフラーを貰える私は幸せ者です。
 本当に有難う御座います。編み物の経験まで……まさか有るとは思っても居ませんでしたが……」
 愛おしげかつ嬉しそうな瞳でマフラーを見詰めている祐樹を見て本当に作って良かったと心の底から思った。それに人生のパートナーとかそういう類いの言葉が祐樹の確信に満ちた口調で言われる度に心が薔薇色に震える。
「いや、編み物はしたことがない。そもそも高校までの授業でしか家庭科関連のことはしていないので――それは祐樹も同じだと思うが――その中に編み物は含まれていなかったな……男女ともに」
 祐樹が納得と感嘆の入り混じったような光を湛えて見詰めてくる。
「では初めてでこれを?手先の器用さはよくよく存じ上げていましたが、まさかこれだけ完成度の高いものを作れるとは……。プロ並みでしょうね、きっと。
 しかし毛糸の売っているコーナーにいらして下さったのでしょう?まさか秘書やハウスキーパーの人には頼み辛いですからそれはないかと。足を踏み入れたことはもちろん有りませんが、女性ばかりのような気がします」
 輝くような笑みの中にもどこかこちらを慮っているかのような光が混じった。
「女性達から微笑ましそうな眼差しで見られたな……、普段街中などで見詰められるのとは明らかに異なっていて内心とても困惑したが、呉先生の説明を聞いて納得した」
 祐樹が興味深そうに相槌を打ってくれている。スヌーピーに出てくるライナスの毛布みたいにしっかりと、そして愛おしげにマフラーを手に取ったまま。
「ウチの病院では考えられないことだが……。ほらニュースなどでも取り上げられている、男性の育児休暇……あの流れで出来た育メンの一人に間違えられたらしくて」
 祐樹はテンションが上がっているのか堪えかねたように大きな笑い声を響かせた。
「年齢的には……確かに……。ただ、『世界の香川』とか……『病院の至宝』と呼ばれている……貴方が……ですか」
 ひとしきり陽気な笑い声と共に途切れ途切れに伝えられて。ただ自分の言動で祐樹をこんなに大笑いさせた経験がなかったのでそえはそれで嬉しかったが。
 祐樹が笑わせてくれることは多かったがその逆は悲しいほど少ないのを密かに気にしていたので。
「しかし、一点だけ困ることが……。貴方もご存知のように私の職階ではプライバシーという概念がないでしょう。事実久米先生のスマホのお気に入りのゲームに悪戯したのは他ならぬ私です。スマホという個人情報の宝庫ですらそんな扱いなのですから、後は推して知るべしなのです。タグがないことに気付かれたら絶対詮索されます。ま、彼女が編んだで良いといえばそうなのですが」
 そこまでは気が回らなかった自分の迂闊さを愛おしそうに指摘されてどうしようかと必死に頭を回転させた。











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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編143

「書店でのサイン会といったら、ほら以前二人で食事に出かけた時に『半澤直樹』としてドラマ化されて物凄い視聴率を稼いだとかいう原作者が行っていたやつですよね?
 ああいう感じで行われるのですか?」
 銀行員が主人公のドラマで骨太な感じのストーリーで、定時に帰れない祐樹は観ていないしさしてドラマ自体に興味を抱いた感じではなかった。主人公の決め台詞は社会的に認知された――そしてその趣旨というか行動様式は祐樹も似たメンタリティの持ち主だと内心思っていた。「基本的には平和主義だがやられたらやり返す、倍返しだ」だったような――家事をしながらテレビを眺める習慣がある自分は異世界を垣間見る感じで興味深く観ていた。家事の手を思わず止めてしまうくらい面白かったが原作本を買って読んではいない。基本的に小説は読まないので。
「ああ、あんな感じだ。高木氏によると作家の皆さんは自分の本の販売促進のために全国を回る人もいるそうだが、祐樹と私の本に関してはこちらの本業を重視して土曜日か日曜日の一日を潰して、京都の主だった書店を全部回るとかいう話しだったな。
 あの作家先生は世間で有名だったからあれだけの人が集まったようで、実際のところそんなに売れていないとか、サイン会に行くまでもない程度のファンしか持っていない作家さんのサイン会では書店員がサクラとして私服で動員されるらしい。
 祐樹と私の本の場合、病院というある意味組織票めいたものがあるのでそんな惨状にはならないらしい」
 コンソメの基を使わずに作ったトマトの分量を控え目にして黄色というか黄金色に輝くミネストローネ――ちなみにお祝いに相応しく人参やキャベツは星形に切ってある――は目でも楽しめるようにガラス製の大きなスープボウルに入れていて、愛の交歓の後に温め直したのは言うまでもない。それを大振りの白い皿に入れていそいそと手渡した。
 本来なら肉料理は赤ワイン、魚だと白ワインと決まっているようだが祐樹にはさして拘りがないようだったし――それこそ第二の愛の巣として定番になったホテルでも赤・白などが揃っているにも関わらず同じものを頼み続けているのでその点は大丈夫だろう。
 それにホテル代は祐樹が支払う回だった時に――その時々でどちらが支払うかは何となく流れで決まるが、祐樹が多少は多いもののほぼ折半になるように大雑把だが計算している――別料金のシャンパンではなくて無料で呑めるスパークリングワインをずっと呑んでいた。祐樹も自分もアルコール分解酵素に恵まれているらしくて深酔いすることはなかった。それに普段からそれほど呑むほうでもなくて泥酔した祐樹も見たことがないし、自分も見せたことはない。
「とても綺麗ですね。星形にキャベツが金色に染まっていて今日のお祝いに相応しいです。
 味付けはもちろんのこと目で見ても充分楽しめる最高の手料理を振る舞って下さるのも、貴方を恋人にして良かったと思える一因ですね。恋に落ちたと自覚した時にそこまで知っているわけではなかったので……あくまで後付けの要因ですけれど。
 キャベツも程よい硬さで……この噛みしめるたびにコンソメの精妙な味が口の中に広がってとても美味しいです」
 言葉だけでなくて太陽の光りのように輝く祐樹の笑み全体で満足の気持ちを表現してくれていて、作った甲斐を充分以上に感じてしまう。こういう笑顔を見るためだけに凝った料理を作っているのが恋人としての自分の役割だとも自然と思える。手料理を苦に思ったことはないけれども自分一人だと毎食異なる料理を作る気にはなれなかったのも厳然とした事実だった。
「そうか……。それは良かった。祐樹にそう言って貰えてとても嬉しい」
 宙に浮きそうなほど弾む気持ちで空になった祐樹のフルートグラスに黄金色のシャンパンを注いだ。
「その前に書店用にサインする作業が有るそうだが、一日で四軒しかも京都限定だと楽な方らしいし、高木氏も本業優先なのは知ってらっしゃるのでそんなに無理なスケジュールにはしないと言っていた。慣れないことで緊張はするだろうが……」
 祐樹と雛壇で二人並んでサインをするという嬉しさの方が勝ったし、しかも本の表紙裏――だったような気がする――とはいえ二人の名前が並ぶのは心の底から嬉しさが黄金色のシャンパンの細かい泡のように上っては弾けているようなイベントだろう。
「そういうふうに目立つことがお嫌いな貴方が率先して決めてしまわれたのは、私の存在がそれほど大きいということですよね?
 以前の貴方は――いえ、別に批判などではなくて――マスコミ露出も病院長命令で仕方なくといった感じでしたので」
 祐樹の笑みがよりいっそう深く強く輝いた。
「そうだな……そう言われれば……。祐樹と二人で燦々と日光が射しこんでいる白いテーブル、しかも花まで置いてある場所で二人して名前を書き込めるのがとても嬉しくて、そっちばかりに気を取られていて」
 祐樹が差し出してきたフルートグラスを空中で交差させると流麗な音が荘厳さを伴って部屋に微かに響いた。
「それはとても嬉しいです。そんなに愛されている恋人の立場からしてもそうですし、貴方自身が自ら開花する花のような感じで変わっていくのも個人的に喜ばしいです。
 貴方の場合自己評価が低すぎると常々思っていましたから。まあ、そういう貴方だからよりいっそう惹かれたのだと思いますが……」
 「が」という接続助詞の使い方が若干気になったものの、祐樹の太陽光の化身のような
笑顔を見る限りは逆接ではないのだろう。
「全ては祐樹のお蔭だ。祐樹がこうして傍に居てくれるだけで幸せなのだが、そういうふうに……良い意味で変わることが出来たのも全て」
 ほとんどのお皿が空になっていることに気付いて、弾む気持ちで立ち上がった。
「その感謝も込めて、ささやかなプレゼントを用意したので少し待っていてくれないか?」
 祐樹の目が驚いたような光を放った。
「いえ、夕方充分頂きました。あんな高価な服をたくさん……。それだけで充分なのですが」
 基本的に祐樹はプレゼントを贈る方が好きでその逆は抵抗があるらしいのは自分ですら分かってしまっている。だからこそ折鶴勝負までしてあのブランド店にほぼ無理やり連れていったのだから。
「もう用意してしまったので……。出来れば受け取って欲しい。気に入らなかったら捨ててくれても構わないので」
 祐樹が広い肩をこれ見よがしな感じで竦めた。
「貴方から貰えるものは、全てが宝物ですよ。あの攝子と鉗子を使った折鶴もそのウチの一つです。
 有り難く頂きます」
 その言葉を聞いて、自分用――と決めているわけではなかったが祐樹は遠慮して入って来ない――書斎へと軽い足取りで向かった。先ほどの愛の行為の余韻が残る身体とシャンパンの軽い酔いのせいか薔薇色の多幸感に包まれながら。
「これ……良かったら使って欲しい」
 一応綺麗にラッピングした手編みのマフラーの包みを差し出した、祐樹が良くしてしてくれるような感じを真似ながら花束を捧げるように。









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        こうやま みか拝
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