腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2018年04月

気分は下剋上 学会準備編 103

「田中先生が同居人に見せびらかすというか……自慢するようなことだけは謹んで戴けたらなぁと……。
 私には絶対に無理な要求なので、その点だけが気になりました。同居人も田中先生相手だとムキになる可能性が高い上にあの負けず嫌いの性格ですから……」
 呉先生の途方に暮れた声が可憐に揺れているのも、却って暖かい幸せ色に鮮やかな彩りを添えてくれるようだった。確かに手先の器用さにだけは自信がある自分と比べると呉先生はどちらかというと不器用なのは知っている。そして普段家事などの細々したことも全力でスルーしているのは「夏」の事件の時に知ってしまった。だから最愛の森技官に――といっても、森技官は祐樹以上に「手編みのマフラー」などはハナで笑うタイプの性格なので大丈夫そうだが、祐樹が下手なことを言うと妙な対抗心を燃やしそうなきはする。呉先生もそれを懸念しているのだろう。
 テーブルの上に並べられた京野菜をふんだんに使った料理を残して仲居さんが障子を閉めるのを待ってからおもむろに唇を開いた。
「それは大丈夫ですよ。そもそも、ゆ……田中先生のお母様を森技官と呉先生と同じテーブルにしたらどうかと言い出したのですから。
 根っこのところでは森技官のことをかなり買っていますよ。そうは見えないかもしれませんが。
 そういう呉先生に被害が及びそうなことはよりいっそうのこと避けるでしょう。呉先生のことは元々好意を持っていましたし……」
 それは自分だってそうだったが、自分が国際公開手術のためベルリンに出張中、決死の覚悟で救急救命室に伝手を辿って相談に来た呉先生と話した時から、祐樹は心の底から呉先生のことを案じて行動して――といっても自分の手術ミスのでっち上げ画像の件で森技官に敵意を抱いてしまったのは仕方のないことだろうが――いたのは後から聞いて知っていた。好意といっても恋愛感情ではないということは祐樹が口を酸っぱくなるまで説明してくれたし、愛の交歓の時も同様だったので心配性というか自分に自信がなかった当時の自分もその件については了承済みだった。
「有難う御座います。一安心しました。さて、改めて教授と田中先生の『披露宴』に乾杯しましょう。
 ビールで良いですか?それとも冷やの日本酒にしますか?」
 先にビールが運ばれて来ていて一度は乾杯したが、こういう薔薇色の幸せ色に弾んだ気持ちはまさに一生に一度の機会だったし、呉先生は一番の理解者かつ茶化さない人なのは知っている。先程彼から提案された杉田弁護士などは時々お茶目なイタズラのためだけに「大人のおもちゃ」を送りつけて自分の反応を面白がっている遊び心も持ち合わせているが呉先生はいつも親身になって相談とか惚気話に真面目に答えて貰っているので。
「ビールの方が乾杯には向いていますが、和風、殊に京風の料理は日本酒の方が当たり外れはないので、日本酒にしましょうか?
 鯛の和風カルパッチョ風味のお造りなどは隠し味に和のテイストをふんだんに取り入れているので、ビールよりも日本酒の方がしっくりと合うので……。一度ワインと共に賞味したことがあるのですが、両方とも最高級にも関わらず余り美味しくなかったです。
 お互いの良さを消してしまう働きも有るようですね。
 だから板前さんお勧めの日本酒の方が無難だと思います」
 一度呑んだお酒でも、和食の繊細な素材次第で――野菜がメインとはいえ繊細かつ緻密な和食は板長の匠の技とか料理法は季節によって異なる――ぴったりと合う日本酒を「お任せ」で注文していた。
「そうですか?では改めまして、お二人の公私共々前途洋洋な未来に向かって乾杯」
 呉先生はなみなみと注がれた日本酒の入っている青色のギアマンの薩摩切子を高く掲げてスミレの花が一斉に咲き誇ったような綺麗かつ可憐な笑顔でグラスを宙に浮かせている。
 ギアマンの繊細な音が畳の清らかな薫りのする個室に響き渡った。
 祐樹との乾杯は自分でも数えきれないほど交わしてきたし、それはそれで心が宙に舞い散るように嬉しい出来事だったが、気の置けない――そして、呉先生が一番大切にしているスミレの花をかたどったような綺麗な指輪を貸してくれる――呉先生と乾杯するのも心弾む出来事だった。
「この茶わん蒸し……、卵の色が若干赤いですよね……。
 それにこんなに小さい食器で供されたのは初めてです」
 祐樹と訪れた時にも同じような茶碗蒸しが出されたが、確かに自分が作る茶わん蒸しよりも赤かった。野菜をメインにと――日本人だけでなくて、健康志向のアメリカ人も絶賛したと聞いている――の店の方針で人参を擦り下したモノが入っていると聞いていた。それに卵と人参の薄い膜の下にメインの食材が隠してある。
「苦手な食べ物とかアレルギーはないですよね?だったら、この木の匙で召し上がってみてください。意外なモノが隠れていますので……」
 呉先生は「アレルギーはないですし、嫌いなモノはないです」と告げてからスミレ色に煌めく笑みを浮かべて木の匙を華奢な指で持って茶わん蒸しに挑戦している。
「ああ、人参の味がほんのりとしますね……。卵と強めの出汁の味が美味しい……、え?最上級のウニがメインですか……。こんな料理を頂くのは初めてですが、とても美味しいです。ウニの潮の香りとか独特の味を引き立てるために卵の膜と……そしてウニを連想させるように細かく刻んだ人参ですか……。流石は教授ご推薦のお店だけのことはありますね」
 呉先生も感心した感じで木の匙を華奢な指で動かしながら感嘆の吐息を漏らしている。
「田中先生も同居人に対して認識を改めて下さったかと思いますが…………」
 京料理には珍しく厚めに切った鯛のカルパッチョ――もちろんドレッシングは醤油と味噌が絶妙なバランスで配合されている――を幸せそうに可憐な唇に入れている呉先生は先程のようにスミレ色の笑みは浮かべたままに羞恥の紅さで頬を染めていた。
「はい。それは確かですね。『夏』の事件の時の全面協力とか……。それに国民の税金を無駄に使わせないという森技官の堅い信念を垣間見たのも好感度アップの要因だったようですが……」
 「夏」と聞いて、呉先生の頬が更に羞恥の色を濃くしている。
 思い当たることが有ったものの、それを口に出して良いものなのかは判断が出来なくてシャキシャキの水菜を鯛のお造りに挟んで口の中に入れて日本酒で唇を湿らせた。
 他のアルコールと異なって日本酒はそうたくさんは呑めないので。
「カルパッチョと名前が付いてはいますが、要は鯛のお造りですよね。このお酒にとても合いますね」
 呉先生が言いたくないのならスルーして料理談義に話を移すだろうという目論見も有って敢えて二択の選択肢を用意した。
「『夏』の事件の直後のことですけれども……」
 二月にも関わらず日中に暖かい日が続いて咲くかどうかを迷っているスミレの風情で呉先生は言いよどみながらも意を決したように言葉を紡いでいる。











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少し前に読書が趣味(腐った本もそうでない本も含めて)とか書きましたが、
小説書くのも趣味ですけれど、他人様が書いたモノの方が新鮮味も有って面白いのです。
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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 102

 呉先生が笑みの花を咲かせた唇を開こうとした時に障子の向こうから仲居さんの声がしたので、話題を変えることにした。といっても「無難」な話題が咄嗟に浮かぶ祐樹のような才能は持ち合わせていないので、必死に頭を回転させる必要は有ったが。
「この前、毛糸を買いに百貨店の編み物コーナーに行ったのですが、周囲の女性の私を見る目が普段と異なっていました。微笑ましげというか、称賛というか……。その理由が全く分からなくて、お分かりになります?」
 呉先生は小ぶりの御茶碗の中に入っている茶わん蒸しに一瞬だけ目をやってから更に笑みを深くした。
 一応気になっていた疑問――祐樹に聞こうかと心の中にメモしていたモノだったが、二人きりになる時間が極端に減ってしまっていたので聞けずにいた――をこの際呉先生に聞いてみることにした。
「毛糸ですか?それは凄いですね。何でも出来る人だとは知っていましたが、編み物までなさるとは……。もちろん自分用ではないのでしょう?」
 一応疑問形を装っているものの、確信に満ちた口調にこちらも自然と唇がさらに綻んでしまう。
「はい。細かい作業は慣れていますが、流石に編み物は初チャレンジです。以前ならば『相手が本当に喜んでくれるか』と心許ないような贈り物だったので遠慮したと思いますが。今なら、大丈夫なような気がしたので……」
 呉先生は春の日差しのような暖かい笑い声を狭い空間に細かな泡のように響かせている。
「さぞかしお喜びになると思いますよ、それは保証します。
 編み物コーナーにその指輪を付けて行かれたのですよね?」
 呉先生のスミレの花のような視線が自分の左手の薬指に注がれている。呉先生の「祐樹が喜んでくれる」というお墨付きを貰えて内心で薔薇色の大きな泡が弾けた。人の心という不確かなモノ――以前は絶対に信じられなかったが、今では信頼出来るようになっていた、祐樹の絶え間ない愛の言葉とか行為によって――に仕事上も向き合っている呉先生の方が詳しいのも確かだったので。
 テーブルの上に小皿を乗せてくれている仲居さんは黒子のような感じで声を発しないのもこの店を選んだ理由の一つだったので「無難」だと思われる会話なら大丈夫そうだった。
 本当に無難かどうかは自信がなかったものの。
「はい。外す理由な何一つないので」
 手術の時以外はほとんど身に付けているプラチナのリングを空中にかざしたら、今は仕事中の祐樹の端整な眼差しが目蓋の奥に浮かんで来て更に幸せ色に包まれた。
「多分ですが、今時の流行りというか、風潮に『育メン』というのが有ります。ご存知ですか?」
 そう言えば新聞の下の方に載っている週刊誌の広告にそんな単語が載っていたが詳しくは知らないし、自分の興味の範疇でもなかったので調べる気にもなれない単語だったが。
「一応知ってはいますが、詳しいことは分かりません。
 子育てを積極的に手伝う既婚男性……の意味でしたか……?」
 脳にストックされている記事タイトルの断片を繋ぎ合わせて――呉先生の一言がなかったらそんなことはしなかっただろうが――何とか答えを導き出した。
 産婦人科にも縁が余りない――ずっと以前に産婦人科の女性の准教授からの「相談事が有る」と呼び出された時に祐樹の機嫌の悪さに驚いて急遽キャンセルして以来先方も何だか避けているような感じだった一件も相俟って――上に数少ない知人の慶事は相次いでいたが、妊娠・出産という出来事はまだまだ先のことのような感じだったのでまるっきりの他人事だった、育児休暇とかは。
「妊娠中の奥さんに頼まれて毛糸を買いに来たとか、それともパパになる人が自発的に編み物を始めようとしている……とでも思われていたのでは?
 ウチの科――といっても名目上籍を置いているだけですが、交流がないわけでもないので――のメンズナースは奥さんにそういう役目を仰せつかったことがあるとかで……。
 『育メン』推奨の世の中ですが……そこまでする男性は余り居ないようでして、彼もそういう目で見られたそうですよ。『偉いわね』とか『羨ましい』とかそういった感じの視線です。
 地震の時にメインロビーに呼んだ中の一人で……柔道だか空手だかの有段者だったと思います。そういう彼ですら、いや逆にむしろ更に偉い感じを与えたのかも知れません。いかにも体育会系出身ですといった筋骨隆々の身体の持ち主ですから。それに専門が専門だけに笑顔で患者さんと向き合う習慣もないので顔は正直怖いですが、話してみると性格は穏やかだし優しいです。ただ、ウチの科では患者さんと話せるのは医師だけでナースは交流厳禁なので……」
 ご遺体を黙々と運んでいた屈強なメンズナース達のことは覚えている。確かに厳つい感じで人を拒む空気を醸し出していたが、それは精神科所属だからだとあの当時でも軽く納得していたし、精神病というある意味特殊な患者さんに向き合うために必要な「仮面」なのも書物で読んで知っていた。
「そうなのですか……。その彼に『凄いですね』と私が褒めていたとお伝え下さい、機会が有ったらで構いませんが……。
 そういう人と間違われたのですね、何だか一つ胸のつかえが下りたような気がします。毛糸を買いに行くほどの愛妻家だか子煩悩だかは知りませんが……、そういう人間だと思われていたわけですね、私も」
 あいにく結婚も出産も人生のプランには全く含まれていないと思い込んでいたのも事実だった。だからこそ「秘密の披露宴」とか「二人の共同作業」が降ってわいた今回のチャンスに浮かれてしまっているのだが、呉先生の話しは目からウロコだったけれども年配の女性の孫の成長を見守るような暖かい視線の理由がストンと腑に落ちた感じだった。
 自分にはその機会は一生ないものの、その選択には一片の悔いもない――祐樹も子供を欲しがっている気配は皆無だったし――生き方を貫く積もりだった。ただ、卵子の劣化を懸念して冷凍保存を選んだ長岡先生――といっても彼女の性格だと代理母にお金を支払って出産までお願いしそうな感じだが――に待望の赤ちゃんが産まれた時には割と慣れてきた毛糸の作業で靴下でも編んで贈ろうかとも思ってしまったが。アメリカ時代に代理母ビジネスで生計を立てている――出産も数をこなすほど楽になるのも知識として知っていたし、他人の子どもとはいえ、妊娠期間中は「自分が健康的な生活を営めばいい」だけなので意外にも需要と供給がマッチしているようだった――女性の存在もメディアを通して知っていた。
「きっとそうですよ。今のような幸せそうな大輪の花のような微笑を浮かべて毛糸も厳選されていたのでしょうし、彼女達が誤解するのも尤もだと思います。
 田中先生もさぞかし喜んで受け取るでしょうね……。
 ただ……」
 呉先生が笑いを含んではいたものの、スミレ色の眼差しに真剣さを滲ませて背筋を伸ばして声を落とした。
「ただ?」
 祐樹が喜んでくれるだけで単純に嬉しいが、呉先生の強張った感じの口調や表情が気になってついつい突っ込んでしまった。











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昨日の更新お休みしてしまいまして申し訳ありませんでした。


最後まで読んで下さいまして感謝です!!

        こうやま みか拝

お詫び。

楽しみにして下さった読者様には申し訳ありませんが、体調不良のためお休みさせて頂きます。

明日は更新出来ると良いなと思いつつも、あまり無理も出来ないのでまた覗いて下さいませ。

すみません。














        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 101

「え?それを貸して下さるのですか?」
 呉先生の華奢な手の上に乗った天鵞絨の小さい箱の中身は休日にしか身に付けない――自分だって祐樹のお母様から託された大切なダイアのリングは同様だったが――スミレの花のような呉先生には最も相応しいと思われる森技官からの最初の贈り物が可憐な煌めきを放っていた。
「ええ、うっかりとぶつけてしまいまして。石が取れてしまうまでには至りませんがやはり気になったので、自分の時間が取れた時にこっそりと百貨店に寄って修理に出そうとたまたま持ち歩いていたのです。
 ある意味私の一番の宝物ですが……こんなモノで良ければ使って下さい」
 良く見るとプラチナのあちらこちらに傷がついていた。あくまで凝視しなければならないレベルではあったものの。
 祐樹のお母様から託されたダイアの指輪――祐樹の今は亡きお父様が婚約指輪として贈ったという曰くつきの有る大切なモノでもあったが――よりも何だか使い込んでいるというか、傷などが多いのは祐樹と確かな血の繋がりを感じさせるお母様の几帳面で器用な一面を象徴しているようで何だか嬉しかった。見かけによらず大雑把な点も持ち合わせている呉先生らしい使い方も何だか微笑ましくてついつい笑みを深くしてしまった。
 それに森技官から贈られた宝物を気前良く貸して貰えるほど、自分は信用されている上に呉先生も我がことのように嬉しかったのだろう。
「本当に有難う御座います。大切に扱いますのでその点はご安心下さい。
 『何か古いモノ』というのもあるらしくて……、例のダイアのリングを地震の直後に贈って貰った……」
 呉先生の可憐な笑みが更に深くなって心得顔に頷いている。ダイアのリングというキーワードにすぐさま反応が有ったような感じだった。
「ああ、田中先生のお母様から贈られたという……。式には当然お母様もいらっしゃるのですよね?
 紹介して頂けますか?」
 呉先生の表情が興味津々といった感じの笑みの花を咲かせている。祐樹のお母様は話にはごく稀には出るものの、呉先生とは実際会うこともない人なのでそういう反応なのだろうが。
「はい、もちろんです。パーティの時に同じテーブルになるようにお願いしたいと、ゆ…田中先生とも話し合っていたのです。上座ではないのが申し訳ないのですが……」
 紫色の煌めきが良く似合う華奢な肩を大袈裟に竦めた呉先生は悪戯っぽい笑みを浮かべて銀の鈴の珠のような笑い声を立てている、ごく小さく。
「そんな……。上座には各界の大物とかそういう斉藤病院長が渾身の力で呼び集めた人が座るのでしょう?
 逆にそんな権威主義者というか、斉藤病院長の『公式』なお眼鏡に適った人達と一緒の方が気も引けますし……そもそも話したくもない人種だと思います。同居人も『友達』扱いして頂けたと判断して逆に喜ぶと思いますし……。既にご存知だと思いますけれど、年配の人に気に入られるように振る舞うのも得意です。普段とのギャップが逆に笑えますよ……。後で田中先生のお母様から同居人がどう見えたかを直接田中先生がお聞きになったら最高に笑って貰えるかと思います。
 多分、全く異なる評価というか『同一人物』とは思えない人格を垣間見せてくれるかと……。実際はそちらの方が素の性格なのも既に田中先生も察していらっしゃるでしょうが、具体的な臨床例――といっても病的なものではありませんが――サンプルとして見る機会かも知れませんね……」
 斉藤病院長の「私的」なお眼鏡に実は適っていて不定愁訴外来で患者さんから聞いた各科の愚痴というかクレームを密かに病院長に報告する役割を担っていると祐樹から聞いて知ってはいた。可憐な野の花の儚さと強靭さが宿っている呉先生ならではの病院というある意味特殊な場所を生き抜く見事な処世術だと内心思っていたし、そもそもカウンセリングは本職でも有ったので病院長の剛腕と辣腕ぶりに舌を巻いたものだったが。
 ただ「未来の病院長」を目指すに当たって斉藤病院長の手腕を具体的に知る必要が出て来たので、今までの他人事のような視点ではなくてキチンと向き合って真似すべきところは自己改善のためにも取り入れようと密かに決意を固めてしまったが。
 それに、呉先生の重大過ぎるほどの厚意に有り難く甘えることにして、万が一にも宝石が取れないように先に修理に出しておこうとも。
「有難う御座います。大切に使わせて貰いますね。地震の直後に贈って貰ったチェーンにダイアとこの指輪を通して無くさないように首にかけておきます。
 本当はこちらの指輪をなくさないための用心だったのですが」
 左手の指に煌めくプラチナのリングを宙にかざした。
 薔薇色の幸せ色に弾ける気持ちのせいだろうか、仄かな紅色に染まった指にプラチナの指輪がよりいっそうの煌めきを放っている。
「綺麗ですね、物凄く好みの高そうな田中先生が一目惚れしたのも納得です」
 指輪を褒めて貰っているのかと思っていたら、どうやら自分にとっては当たり飴過ぎて――職業柄傷つけないように気を配ってはいたものの――常に目に入る自分の指に賛辞を述べてくれたらしい。
 ただ、祐樹も褒めてくれる指を生まれつき持っていたことを亡くなった両親に今更ながらに感謝の気持ちがわいてきた。
「それに……この指輪が田中先生のお母様から託されたリングと一時的にでも同じ場所に留まることが出来て、私まで望外過ぎる幸せのお裾分けに与ったような気がします。
 私を選んで下さって本当に有難う御座います。
 四つの『モノ』の中に入ることが出来て、本当に嬉しいです。多分同居人も同じ思いを抱くでしょうし、その指輪をお貸しする件についても異存はないと思いますよ……
 それに……」
 何故か紅く染まった――呉先生も自分もそれほど呑んだわけでもないので、アルコールの影響ではないだろうが――羞恥めいた色を宿す可憐な顔に内心首を傾げつつ次の言葉を待った。
 それと同時に森技官も指輪を貸し出す件を快く了承して貰える光栄さも噛みしめて、幸せ色により一層の濃さを増していく。
 こうやって話していると、本当に式の準備に勤しむ花嫁気分を実感として味わえるという望外の喜びにも。













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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 100

「『何か借りたモノ』を身に付けていれば更に幸せになれるというジンクスだか御まじないだかが有るようなので……それを呉先生に是非お願いしたいのですが……」
 呆気に取られた感じで目を見開いていた呉先生が春の木漏れ日のような笑みを浮かべた。
 普段の自分らしさというか冷静沈着で居なければならない職業柄も相俟って感情の起伏が元々そう豊かでないのに、浮かれ過ぎている自覚は有ったのでそのせいかとも思ったが呉先生の表情を見る限り好意的な笑みしか浮かべていなかった。
「私ので本当に良いのですか?そんな身に余り過ぎる光栄な役目を振って下さるのですか」
 可憐な唇が日本語の文法を無視した言葉を紡いでいる。付き合いの割と長い呉先生が怒ると乱暴な口調になる――といっても相手は相思相愛の森技官に向けられたものしか聞いたことはなかったので余程気を許した相手というか恋人にしか向けられない感触を抱いていた――のは知っていたものの、慣用句などの間違いは聞いたことがなかっただけにそんなに意外だったのかと内心で首を傾げてしまった。
「はい。今日お誘いしたのはそのお願いを申し上げるためです。何でも幸せな生活を送っている友人のモノが良いようなので……。思いつく限りの――といってもそんなに数は多くないのですが――人の中で、かつパーティの本質的な意味を知っている人となると呉先生しか思い当たらなかったのです」
 森技官とはケンカしながらも仲の良い生活を送っていると惚気話的に断続的に聞いていた。それにどう考えても霞が関の本省勤務の方が出世しやすいのは世間知がそう高くない、というかむしろ低い自分でも容易に想像は付いていたし、実際本省勤務の和泉技官などからも世間話の延長のような感じで祐樹に話しているのを横で聞いた記憶が確かに有った。
 それでも関西に留まっているのは恋人の呉先生が職場に――というか自分の聖域である不定愁訴外来とその存在を許してくれているウチの病院――愛着をずっと抱いているからに違いない。森技官ほどの「言葉の破壊力」を持った人間ならば、その気になりさえすれば恋人の職場程度は変えさせることが出来そうなのに、そういう話は一切聞いたことがなかったのがその証拠だろう。
 祐樹のように病院の仮眠室で休んだ方が時間の短縮にもなるにも関わらず毎日帰って来てくれるのが愛情の証しだと心の底から感謝しているけれども、生きている世界が若干異なる森技官は毎晩帰るということが出来ないだけで、その代わり携帯電話は衛星経由のモノを持っているとか、地震の時に「想定しうる最も安全な場所」としても意味を持つ避難所めいた場所が大学病院の自分の元だったという、「仕事は大事だがそれよりも更に大切なのは恋人」と思っているのだろう。そういう意味では祐樹の海よりも深い愛情と匹敵する程度の愛情を森技官が呉先生に抱いているのは火を見るよりも明らかだ。
「分かりました……。お貸しすれば良いのですね。私で良ければ喜んで……。
 教授と田中先生がより一層お幸せになれるようなモノ……ですよね……」
 呉先生の科ではそういうケースは余りなさそうだが、余命宣告を行う医師のように難しい顔をして考え込んでいる感じの呉先生――あくまでもイメージだが、祐樹ならば多分そういうケースに当たった時には「祐樹だけの隠れ家」でタバコを吸ってから患者さんやご家族に向かうような気がした。自分も呉先生も喫煙の習慣がないだけで、イメージ的にはそういう感じで、ただ「深い思慮」のベクトルが全く逆方向なのが救いといえば救いだったが。
「ハンカチとか……」
 普段は割と饒舌な呉先生が細い眉根を寄せて沈黙の妖精にでもなったような軽やかな重い空気に耐えかねて思いつく限りの「大きな」お願いを口にした。
「えっ……。そんな滅相もない……。実質結婚式のようなそんな大切な場所に私のハンカチみたいなモノは相応しくないです。しかもその小さくても精緻と生気に満ちた青い薔薇に匹敵するようなモノでなくてはなりません。
 私が一番大切にしているモノをお貸しします。教授ならば安心して託せますが……他の人間には絶対に貸さないモノに致します」
 深い森の中で春爛漫の麗らかな光を浴びた妖精のような生気に満ちた儚い笑みを浮かべた呉先生がおもむろにジャケットのポケットから取り出した容器を見て、中身は直ぐに察することは出来たものの意外さの余り目を見開いてしまった。












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        こうやま みか拝
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