腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2018年02月

気分は下剋上 密会編 6

イメージ 1

「待ってはいたが、この恰好は……。祐樹が一時間後に着くとメールをくれたので、まだ考える時間が残されていると思って服を脱ごうとしていただけだ……」
 純白のワイシャツに解いた鮮やかな紺色と白のストライプのネクタイがただ纏わりついているだけの、確かに着替え中というのに相応しい姿だったが、艶やかな緋色の煌めきを宿す眼差しや――恐らくは少しでも印象を変えようとするために――下した前髪とか八重桜の濃艶さを想起させる瑞々しい笑みも「密会」には相応しい。
「会いたくて逢いたくて。そしてこの腕の中に抱き締めたくて堪らずに……逸る気持ちを抑えきれずに参りました」
 しなやかな肢体を強く抱きすくめて甘く熱い口づけを交わす。唇や舌で熱烈な愛の行為を行っている感じで。
 ひとしきり甘い口腔を味わって唇を離すと二人の接吻の激しさの余韻のように細い銀色の橋が二人の唇を甘く繋いでいた。
「祐樹……私も逢いたかった」
 濡れた唇が紅色の花のように綻んで切実な甘い言葉を紡ぐ。
「服はそのままで良いですので、鏡の前にいらして下さい」
 女性の身支度用なのか室内には大きな鏡が設えてあって、愛の小道具としても使えそうだ。
 シルクのネクタイが淫らな蛇のように純白のワイシャツに絡み付いているのも、そして慎ましやかな二つの尖りが祐樹の愛撫を待ち焦がれているように布地を押し上げてツンを存在を主張しているのも清廉な淫靡さが際立っている。
 それに普段の凛とした歩き方ではなくて花園の奥の火照りを持て余したような感じで着衣に包まれている足の運びもどこか蕩けたような甘さが薫り立つような蠱惑に満ちた眺めだった。
 濃い紅色の粉を振りまくような優雅で艶やかな歩みや、散らされるのを待つ大輪の花のようなしなやかな肢体に見惚れる。
「鏡で、愛されているご自分の艶姿を御覧になって目でも確かめて下さい。鏡に手を付いても構いませんから」
 背後から抱き締めて両の尖りを二本の指でそれぞれ摘まんで強く捩じった。
「ああ……祐樹……。もっと」
 鏡ではなくて、祐樹の首と肩に縋って薔薇色の濡れた嬌声混じりの声を零す唇が細く長い首筋を捩じって祐樹の唇へと押し当てられた。
 硬く尖った狭い側面部を指で強く摘まんで括り出すように前後に揺する。同時に先端部を軽く強く転がした。
 純白のシャツが祐樹の指の動きで紅色の小さな花を咲かせたような瑞々しさで咲き誇った感じで甘い硬度が増していく。
「ゆ……祐樹って……直接……触って……」
 甘い息が発火しそうな喘ぎ声で濡れていく。
「雪に包まれたような紅い花の風情も……、ルビー色の煌めきとは別な趣きがあるので、しばらくはこのままで……」
 紅く布地を押し上げている場所を祐樹の指全部で強く擦ると更に紅を濃くした小さな尖りが蠱惑的な艶やかさを鏡に映しだしている。
 しかも撓る背中が祐樹の手に押し付けられて更なる愛の仕草を強請る艶やかさに満ちてしなやかに反った。
「ご自分で窮屈な着衣を寛げて下さい。
 愛の交歓の痕跡を素肌にも、服にも残してはならないのですから」
 鏡に映った八重桜の妖艶さを彷彿とさせる最愛の人の乱れた表情とか、指の動きの隙間から覗く濃い紅色の尖りなどと共に最愛の人の下半身も甘く乱れていたので。
 紅色の細く長い指が甘く震えてベルトを外して着衣を乱しては紅色に濡れた素肌を露わにしていくのも、濃い紅色と銀の粉を撒いたように綺麗だった。
 シャツとネクタイだけを纏った濡れて薫り立つ素肌が、色香だけを纏った肢体よりも背徳感に彩られた感じがする。
 育ち切った先端部分から水晶の雫が煌めきながら床に墜ちていくのも。
「左手の指を私の唇に当てて下さい」
 硬度を増した胸の尖りを小刻みに弾いて、甘く蕩けた慎ましやかな声を上げる最愛の人の唇からは花の蜜のような滴りが絶え間なく零れ落ちて滑らかな紅色の素肌を更に濡らしていくのも祐樹だけに許された高原の花のような絶景だったが。
「この指輪……いっそ外してしまいたいです……」
 右手の薬指ごと指輪を甘く噛むと甘く濡れた声と撓る背筋が祐樹の身体へと甘い重さで押し付けられた。 
 歯と舌で紅色の指を、そして手は純白の布を真紅に押し上げている胸の尖りを愛すると、一際しなやかな肢体が若木の瑞々しさで撓んだ。
「ああっ……ゆ……祐樹……。とても……悦いっ……。
 頭の中で……ルビーが……爆ぜては……炎で甘く燃えている……感じで……。
 ただ、歯の痕は付けないで……欲しっ……。人に……見られると……困るのでっ……」
 悦楽には甘く脆い肢体の弱点は当然熟知している。皮膚が薄い指もそのうちの一つなのは確かだったが、ただ三日も残るような情痕を刻む強さではないのは最愛の人も分かっているハズで、それでもそう言ってくれたのは祐樹の「密会ごっこ」に付き合ってくれたからだろう。
「ご褒美を差し上げないといけませんね……。愛する聡のために」
 すんなりと伸びた足が開いた角度を扇のように広げて祐樹の身体を誘うように小刻みに動いているのもこの上もなく淫らでそして無垢な美しさを帯びていた。
 ただ、最愛の人の期待とは異なる動きをするのも愛のスパイスだろう。











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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 50

『こんばんは、呉です。教授今お時間宜しいですか?』
 呉先生のスミレ色の軽快な声が何時もよりも鮮やかな感じで聞こえた。これほど上機嫌な感じの声は聴いたことがないので森技官が紹介してくれるハズの出版プロデューサーの話しだけではないような高揚感に包まれる。
 それに11万部はほぼ確定した今はそれを二桁伸ばす手伝いをしてくれる人が存在すればそれだけで百万部よりもゼロの数が一個増えることになる。
 権威か金銭的利益かのどちらかが有れば必ず動く斉藤病院長には充分過ぎるほどの「餌」だろう。祐樹が防衛大学に出張扱いで――いや溜まりに溜まった有給休暇でも文句はないようだが――大学病院を留守に出来るほどには。
「はい、大丈夫です。そもそもこちらがお願いした用件ですよね?折り返しお掛けしましょうか」
 呉先生のスマホの契約状況によっては、通話し放題の自分の電話から掛けた方が良いような気がする。ただ、職場恋愛の祐樹と自分――だから電話で話すことは滅多にない――と異なって森技官は出張も全国規模なキャリア官僚という職務上、電話の機会も多いような気もするが。
『いえ、大丈夫です。通話し放題の契約なので。
 まず出版プロデューサーの件なのですが、何しろアポが分刻みで入っているような人らしくってですね、東京ならば隙間を見つけて時間を捻出することは出来るものの、京都や大阪に行く時間は到底取れそうにないとのことです』
 あいにく――といっては大変現金な感じだが、月に二回ほど行く――厚労省への出張もこの間済ませて来たばかりだし、こちらも動けそうにないのだが。ただ呉先生の口ぶりは全く残念そうでないのが救いだった。割と喜怒哀楽が声に出てしまう人なだけに。
「東京ですか……。厚労省詣でをする二週間後くらいしか上京する予定はありませんが……」
 確かに出版業界――といってもそんなに詳しくはないが――の大手は皆東京が本社だし、京都在住の有名作家も居ないでもないが、ほとんどが東京住まいだと何かで読んだことがある。
『ええ、その話は同居人から聞きました。それでですね、スカイプIDを取得済みでしたら、そちらでお話しする分には構わないということなのですが?出版業界なだけに今は仕事中で……、終わるのが12時で、それ以降はフリーだそうです。ただ銀座だか六本木だかに呑みに繰り出すらしいですが……。教授や私にとっては真夜中なのですが、業界が異なると生活時間も違うらしくてですね……』
 どうやら森技官経由でかなり詳しい話しをしているような感触で、しかも余り活用はしていないもののスカイプもIDだけは取得済みだったのが幸いだった。
 何だか夢のサイン会に一歩近づいたような気がして思わず先程まで幸せな手作業をしていた――まだ仕上がりの目途すら立っていない――贈り物を幸福な気分で眺める。
「IDは持っています。私が12時過ぎに東京の人に連絡すれば良いということですね?」
 規則正しい生活を心がけてはいたが、この際例外を作っても良いだろう。大型書店の雛壇で祐樹と並んで座る機会などこのチャンスを逃すと一生なさそうな気もしたし。
 執刀医としてメキメキと頭角を現した祐樹だったし、この調子でキャリアとスキルを積めば充分国際公開手術の術者として招待されそうな感じだが、ベルリンで行われた自分の時と同じで「術者」と「観客」という関係性に過ぎないのでそれほど一体感は得ることは出来ないのも経験上知っていた。自分はさほど興味もないが、熱狂的なサッカーでも野球でも何でも良いが、プロとして活躍する選手を応援する観客がどんなに熱く応援しても勝敗には殆んど影響がないのと同じようなものだろうか。
 それに森技官も好意で仲介はしてくれた感じだったが、先方もプロなのでそれなりの対価は発生するのは当たり前の話しで、当事者同士の話し合いは絶対に必要だろう。
『持っていらして良かったです。では通話終了後メールでお送りしますね、IDは。
 それと、同居人も地震の時の行動で――本当は単独行動で上司の指示ではなかったのですが、結果オーライというか得意の弁舌で済し崩し的にうやむやにしたらしいですが――省内でもよりいっそう株を上げたらしくて『省始まって以来の初の独身事務次官の座』に大きく一歩を踏み出せた御礼にと、全国の大学病院に発破をかけて、各病院によって対応が異なるらしいですが、まあどう異なるかは多分ご想像の通りだと思います』
 呉先生の声は苦笑交じりだったので、大体は自分でも分かる。弱みを握っている病院長にはその弱点につけこんで、それ以外の「良い人」の猫を被っている関係性の人には理路整然と「この本の大切さ」を説いてくれるのだろう。
 確かに森技官は目標のためなら手段を選ばない性格だが、根本的には良い人なのも知っている、好意を抱いた人間には。
 そしてその「好意を抱いた」人間のリストに自分も祐樹も幸いに含まれている。
 何だか良い方に良い方に転がるこの共著の話しは祐樹と自分の未来を象徴しているような気がしてならない。
 青と紺色と白の混じった「贈り物」の未完成品をこの上もない満足感で眺めて薔薇色の感慨に一時耽ってしまう。
『一番話しが通しやすい旧国立大学――もちろんウチは省いてですが――各一万部は堅いとのことです。公立大学も多分同じ程度には買ってくれるように働きかけるそうです』
 旧国立大学の数は当然知っていて42校で、それだけで42万部……何だか薔薇色の目が眩みそうな数字が脳裏を過った。
「え?それほどの数ですか?お心遣いは大変嬉しいのですが、そして出来れば直接御礼を申し上げたいと思います」
 森技官の純粋な好意には深く頭が下がる思いで、後ほど日を改めて御礼に行くのは当たり前だが一言だけでも感謝の気持ちを伝えたかった。
 ただ、次に出た呉先生の言葉に椅子から飛び上がるのではないかと思うほどびっくりして声を失ってしまった、良い意味で。











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        こうやま みか拝

「気分は、下剋上」<夏>279

「さてと、充分休みましたし、日も良い程度に暮れて来ましたので花火を致しましょうか?そっち側には足を踏み入れないように気を付けて」
 白玉とスイカも文句なしに美味しかったし、何より最愛の人の生気に満ちた瑞々しくて良く笑うようになった快復振りが最高の喜びだった。
「須磨海岸の花火もとても楽しかったし、私にとっては宝石のような大切な時間だったが、今回の花火も違った意味で楽しみだ」
 最愛の人が紅色の「震えていない」指が差し出されて祐樹の胸ポケットを澄んだ眼差しが意味有り気に煌めいている。
「ああ、ライターですか?ちゃんと持っていますよ……。縁側で花火を楽しんで、まあ公園のような場所ではないので打ち上げ花火は無理ですが、そこいらのホームセンターではなく百貨店で購入した花火なので一味違うでしょうから」
 柳生夫妻の手土産を買いに行ったので、ついでとばかりに花火も買いに行ってその高価さには内心驚いたが、まあこれで最愛の人の快復が早まるなら安い買い物だと財布を出した。
「そうだな……ヘビ花火も無事に入手出来たし、ただあの桐の箱に入った線香花火は高すぎて驚いた。あんなのを買う人間が実際に居るのだろうか?」
 花火の包みを花束のように抱いて、その上祐樹の差し出したライターを紅の指でしっかり掴んでしなやかな身のこなしで立ち上がった。
 割と何事にも動じない上に行きつけの店舗は品質も良いが値段も高いことで有名なフランス老舗ブランドショップで、そこだってかなり強気な価格設定を目にしている最愛の人が驚くのも無理はなかった。何しろ「匠の技」で作られたとかいう線香花火が一セット五万円で並べられていたのだから。
 線香花火という直ぐに消えてしまうものに5万円も出す人が――葉巻のように社会的な「成功者」としてのステイタスも味わえないし――実在するのが驚きだが、並べてあるからには買う人間も稀に居るのだろう。どういう人間か見てみたい気はするが。
「ああ、ツクツク法師ゼミが鳴き始めましたね……。陽射しとかはまだまだ夏といった感じですが、秋の気配を敏感に感じ取ったのでしょう」
 ヒグラシゼミの鳴き声に交じって「ツクツクホーシ」と確かに聞こえる。
「来年の夏には、セミの羽化観察とカブトムシなどを捕まえに行くデートをしましょうね。約束の印に」
 最愛の人と目を合わせて小指を差し出す。澄んだ無垢な瞳が煌めきを湛えて祐樹を見惚れたように眺めつつ、細く長い紅の小指が震えることもなしに差し出されて指きりげんまんを交わした。
「うわぁ、このヘビ花火……予想もしない方向に、しかも物凄く早く奔っていくのだな……」
 花火独特の香りが夏の暑さの残る空気に漂っている。
 ただ、もう日は暮れてしまったので――柳生夫妻は夕食を召し上がっているらしい雰囲気だった――花火を楽しめるように和室の灯りを消した庭は夕闇が濃い。
 ヘビ花火を身軽に避けるしなやかな肢体が弾んだ声で彼にしては大きな声で笑っていた。
「今度は私の番ですね……。ヘビ花火は物凄く久しぶりなので楽しみです」
 呉先生が庭へ下りた。花火をすることは呉先生が柳生夫妻に伝えてあったので、玄関から靴を持って来たのは言うまでもない。
「気を付けて下さいね……」
 普段はそんな感じを全く受けなかったが呉先生は意外にも不器用なところもあったので一応注意喚起はしておくことにした。
「大丈夫ですよ……。火を点けて下さい」
 祐樹が苦笑しながらヘビ花火に点火して即座に離れた。
 素早くうねりながら閃光をまき散らす速度は先程、最愛の人が「早い」と判断したものよりももっと急だった。
「うわぁ」
 必死な感じの呉先生の声と動きに危険を感じた。
「呉先生、そっちはダメですっ」
 最愛の人が手を差し伸べるよりも早く呉先生の華奢な身体は柳生氏が「入っては危険」と言われていた辺りへと入ってしまったかと思うと派手に転倒している。
「大丈夫ですか?」
 最愛の人と祐樹が駆け寄って助け起こそうとした。ついでにヘビ花火は祐樹が踏み消したが。
「すみません……怪我をしたみたいで……」
 膝を付いて覗き込むと呉先生は痛そうな表情が夜の闇に白く浮かんでいる。
「どこですか?良く見せて下さい」
 祐樹がそう聞いていると、最愛の人は的確な動作で和室に上がって電気を付けてくれた。
「右足の……膝の辺りです。すみませんが、多分血が出ているかと」
 迷わず抱き上げて和室へと運んだ。最愛の人はキビキビとした動きでキッチンへと早足で向かったのは多分消毒薬などがこの家にないかを聞きに行ったのだろう。
 呉先生の右足の膝小僧の外側に瀬戸物の欠片が刺さっていて、その傷の深さを物語るようにトクトクといった感じに血が流れている。
「心臓よりも足を上にして下さい。すみませんが、ズボンを下ろしますね。何か問題が有れば仰って下さい」
 怪我の状態を診るのは基本中の基本だった。救急救命室では意識のない患者さんの場合無許可で衣類を切ることも多々あったし。
「問題ないです」
 手早くスラックスを脱がすと、3センチ程度の裂傷で、かつ深さも8ミリから1センチといった感じだった。
「痛みはここだけですか?他には?」
 派手に転倒した場合最悪骨折とか頭を打った場合は更に深刻なので――ただ見ていた限りでは頭をぶつけたようには思えなかったが。
「ここだけです。骨折もしていないかと思います。血、たくさん出てます、よね」
 そちらの方がショックだったのだろうか、呉先生の蒼褪めた顔が痛々しく歪んで見える。
「祐樹、救急箱を……。いや、これはしかるべき場所に運んで縫った方が良いな……」
 傷の具合を一目見て冷静かつ怜悧な声で判断を下す辺りは普段と同じ最愛の人だった。
「救急救命室……」
 ただ、杉田師長は「傷や容態の重さ」で優先順位を付けるので――まあ当たり前と言えばそうなのだが――この程度の傷は彼女的には優先順位が物凄く下なのも確かだし、救急車よりもこのご近所の外科医に運んだ方がお互いのためだ。
「それだけは嫌です。今あそこがどうなっているか誰もが分からない以上、もっと酷い怪我人を見たらそれだけで……」
 具体的に想像してしまったのか、嘔吐しそうな感じに細い眉を顰める呉先生を見てそれは無理だと断念した。
「呉先生、どないしはったん?」
 柳生夫妻が最愛の人に呼ばれて慌ただしく奥から出てきて下さった。
「こけてしまった場所にこの欠片が有ったらしくて、深く突き刺さっています。この救急箱の中身では対応しきれないので、どこか外科のクリニック……出来ればご自宅とクリニックが同じ先生をご存知ないでしょうか?」
 消毒薬を気休め程度に塗ったが、瀬戸物の欠片を取り出して更に消毒して縫うしか傷が残らないようにする方法はない。
「はよ、田辺せんせのトコに電話して」
 ご夫人は頷いて奥へと姿を消した。多分田辺先生というのが近所の外科医らしいが、日曜日の夜なだけに不在かもしれない。
「すまんなぁ……こんな大きな欠片を見逃してもうてて……。ほんまに申し訳ない……」
 柳生氏の言葉遣いが京都弁になったのは動転してのことだろう。
「あなた……田辺せんせはあいにく留守だと奥様が……」
 田辺クリニックだか医院だかは知らないが、奥様が残っていらっしゃる以上そこに運ぶのが一番早いだろう。
「外科なのですね、田辺先生のクリニックは。
 でしたら、外科の経験は――バイト程度ですが――有りますので、奥様にクリニックを開けて頂けるように頼んで下さいませんか?」
 バイト程度というのは口から出任せで、ただ精神科を専攻していても医師免許の必要なバイトでかつ収入が良いなら外科も選ぶことも可能なので疑われることもない。
 慌ただしく頷いて奥へと去った奥さんは再び田辺クリニックに電話をしてくれるのだろう。
「そのクリニックは車で何分程度ですか?」
 最愛の人も怜悧かつ真摯な表情で柳生氏に質問している。
「公園を横切って門を背にして右に、そうやなあ……歩いて1分かそこいらや」
 それだったら抱いて運んだ方が速いだろう。車で遠回りするよりも。
 そう眼差しで会話していると、奥から奥さんが小走りに近寄ってくる。田辺先生の奥様が快く開けてくれれば良いのだが。











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        こうやま みか拝

気分は下剋上 密会編 5

 医局が一番寛いだ、そして宿直とか救急救命センターに向かう人間と、論文執筆などのデスクにかじりついている人や患者さんの最新のバイタルチェックを入力する事務仕事とか医局付きのナースでごった返す時間だった。
「お先に失礼します」
 全精力を傾けて「定時上がり」のために面倒な事務作業を手早く終わらせてデスクから離れようとした。
「何だか田中先生いつも以上に活き活きとしていますね。あ!豪華な美人商社レディ、しかも総合職の方とデートの約束でも取り付けたのですか?
 でも、柏木先生と交代するって決まったの、午前の手術が終わってからですよね?」
 犬のようにまとわりつく久米先生――いつもは構って遊ぶのも兄弟の居ない祐樹には弟を虐めているようで内心は嬉しかったが――に余裕と皮肉混じりの笑みを浮かべた。
「商社ですからね……大阪に支社も当然有ります。ちょうど出張でこちらに来ていたので、メールで知らせたら、新幹線に乗って逢いに来るとかで……。
 私もアクアマリン姫とのデートの時は邪魔しないでしょう?そちらは職場内恋愛かも知れませんが、こちらは遠距離恋愛なので――しかも彼女は海外出張も多い人です――馬に蹴られて……どうなるかご存知ですよね?」
 厳密には脅迫罪になるかも知れないが、この程度のことはいつも言っているし、加減はしたが実行もしたので久米先生は大袈裟な動作で慌てて後ろへと下がった。
 「祐樹の脚の届かない場所」としか考えてなかったのだろうが、ちょうどタブレット――最近は電子カルテがタブレット端末に変わった――を持ってドアをスライドさせた遠藤先生の腕に当たって高価な機械が床に落ちた。
「久米先生……。入力済みのデータが消去されたらどうしてくれるんですか?しかも論文まで入っているんです、暇を見つけて途中まで書いた……それのバックアップも取っていないというのに!!
 電源がアウトになっていたら、手術室に行って……」
 手技の腕――というか天賦の才能――では久米先生に劣っている分「積年の恨み」も買っている感じの凄味のある冴えたメスのような視線を向けられて硬直している久米先生に代わって床に落ちたタブレットを拾って再起動させた。
「大丈夫みたいですよ、ざっと見た感じ。それに、医局での刃傷沙汰は御法度です。
 メスは手術室だけで使うものですから、くれぐれもそのことだけはお忘れにならないで下さいね」
 眼差しの鋭さでは負けていないと思うし、何しろ「医局の小姑」という「蔑称」を甘受しているのはこういう時のためだ。
「ほら久米先生もキチンと謝りなさい。私も一緒に謝って差し上げますから」
 手のかかる弟とはきっとこういう存在なのだろうな……と、医局に柏木先生が居ないことを少しばかり残念に思いつつ二人で頭を下げた。
「ちっ!リア充め……」
 小さな声で悔しそうに呟かれた言葉は聞こえないフリをして「お先です」と医局を出た。
 祐樹は一流商社レディ――ということになっている――女性を、そして久米先生はアクアマリンの清楚さを持っていると香川外科では皆が認めている脳外科のナースを恋人にしている僻みなのかもしれない。病院内ではウワサの時に誰かに聞かれても良いように隠語めいたあだ名を付けられるのが普通だ。祐樹の「香川外科の小姑」とか呉先生の不定愁訴外来もクレーム外来と呼ばれているし、病院長は腹黒タヌキもしくはタヌキで通じる。
 ただ祐樹が把握している限りでは最愛の人にはそういうマイナスのあだ名は付けられていないのは人徳の賜物だろう。
 病院からさっさと抜け出して、お見舞いとか退院患者さん狙いのタクシーに飛び乗った。
 ただ、京都の街は渋滞しているのが普通なのでJR京都駅に何時に着くかは分からないが。
「すみません、ここから京都駅までは何分くらいかかりますか?今日の混み具合からして……」
 京都では有名な――ただ大阪などで走っているのを見たことがない――サービス重視をモットーにしているタクシー会社の運転手なので雑談の合間に重要なことを聞いてみた。
「そうですね。今の時間だとあと20分程度ですかね。幸いにもそれほどの渋滞ではありませんので」
 胸ポケットに入れた携帯がメールの受信を知らせる。
「密会ごっこ」の始まりはどんな幕開けが相応しいかを弾む気持ちで考えながら画面を見た。
 プライバシーなど有って無いような職場環境だ。患者さんの個人情報は厳密に保護されているのとは異なって。その上祐樹の生涯の恋人は商社レディなどではなくて皆が知っている人間だし、固有名詞を登録すると携帯を落とした時などに――スマホならロック機能が付いているらしいが、久米先生のスマホの暗証番号はアクアマリン姫の生年月日という分かりやすさだったのでゲームアプリの好感度を下げまくるというイタズラをした過去も持っているので――「おかしい」と思われるのも困るので「生涯の恋人」としか入力していない。ちゃんと「上司」の番号も登録はしているものの、実際は自宅のマンションの固定電話だ。
「1309」
 何だか銀行のキャッシュカードの暗証番号のような短いメールが秘密の逢瀬には相応しい。
「一時間後を目途に」
 タクシーの運転手が告げた所要時間は15分で、エレベーターが混んでいなければ2分程度で着くだろう。
 ただ、道後温泉の時は待ち焦がれてくれた人なので、今度は予定よりも早く二人きりの愛の部屋に着いて驚かせたい。
 そういう心理戦めいた駆け引きも「密会」という淫靡な言葉には相応しいような気がした。それに「一時間後」という祐樹の返信にあれこれ考えている最愛の人の部屋に突然入るのも充分過ぎるサプライズだろうから。
 エレベーターに乗って、13階と15階のボタン――ラウンジとかレストラン街なのは柏木先生の挙式や披露宴がこのホテルだったのでその時に知った――を最愛の人の言葉通り押した。中途半端な時間帯なのかエレベーターには人が居ないのを幸いに13階のボタンは何回も続けて押してしまっていたが。
 指定されたドアのチャイムをなるべく忍びやかに鳴らした。
 不意を衝かれた最愛の人はどんな表情を浮かべて出迎えてくれるのかという期待と、何だか久米先生に尤もらしく話しているうちに「本当に」新幹線に乗って逢いに来てくれたような高揚感も感じつつ。
「祐樹……か?」
 普段よりも小さな声で――しかもドアは開いたもののチェーンは掛かっているという凝った演出にも――忍びやかな感じといかにも人目を憚る感じが出ていて、期待に弾んだ胸がさらに昂ぶった。
「私です。早く開けて下さい。今廊下に人は居ませんので」
 チェーンを外す音と共に最愛の人が驚きに目を瞠って出迎えてくれた。ただ、瞳の煌めきには八重桜の妖艶さをふんだんに湛えていたが。
「その恰好も……とても良いですね。そんなに待っていて下さったのですか?」
 ドアを背にして密室となった二人の愛の空間――しかも部屋の番号を見た時から薄々は察していたが和のテイストをふんだんに取り入れたスイートルーム――が「愛人との密会」に相応しい豪奢な淫靡さを醸し出しているのもさらに期待を煽っている。
 しなやかな肢体も艶めかしさで香り立っているようで目が離せなくなる。その恰好と相俟って。










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気分は下剋上 学会準備編 49

「教授御自らのご指導を賜りまして誠に光栄です。父も大層喜んでおりました。しかも本に私が載るかもしれないと申したら『香川教授にくれぐれも宜しく』とのことでした」
 この辺りは想定の範囲内だったのだが。それに先ほど電話していた「義父」と遂に呼ぶことが出来なかった人――母が入院していた当時は「一番大きな病院」と思っていたが、それは町レベルで一番大きな病院だっただけで、権威とかお金にはシビアな斎藤病院長なら歯牙にもかけないだろうレベルだと「今は」分かる。
 その斎藤病院長が「親友」扱いしている清水研修医の実家の病院の院長兼経営者だけあって――何といっても愛息の「授業料」という名目で救急救命「室」(当時)に億単位のMRIをポンと寄付出来る財力の持ち主だ――人脈も物凄く広いのだろう。
「私が載った本、しかも著者が他ならぬ香川教授ということも相俟って10万部買い取りをするとのことです。
 自分で申し上げるのも何ですが、かなりの親馬鹿だとは思います。最低でも10万部はお約束するということなので、これからしかるべき人物に連絡を取ってさらに増えると思われます。取り急ぎ御礼とご報告まで。
 P.Sどこの書店で買えなどのご指示がありましたらこのメールアドレスにお返事頂ければ幸いです。また、兄の専攻は悪性新生物科なので折り鶴も当然織っていますから、毎晩100羽の折り鶴を織って当日に備える所存です」
 10万部……今日の自分のアクションだけで11万部はほぼ確定だ――自分だけの力、と言っても清水研修医は祐樹も救急救命センターで会う同僚の一人でもあるので、自分が声を掛けなくとも祐樹が絶対に見逃すはずはなかったが。
 ただ、自分だけでこの数字なのだから――岩松氏は接待か何かで多忙なのだろう、返信はまだだった――医局全員の人脈とか昔の患者さんなどに声を掛けていったら「夢の百万部」は行くかもしれない。
 そう思うと、そして森技官の知り合いの出版プロデューサーの協力も加われば四条烏丸にある大型書店でのサイン会も夢ではないかもしれない。
 公衆の面前で雛壇に並んで座れる日が来るとは思いも寄らない出来事で――といっても世間の人は「共著」人が二人並んでいる程度の認識だろうが――幸せ過ぎて薔薇色の眩暈がしそうな感じだった。
 祐樹のお母様にも電話で知らせるべきだと思ったが――口では何のかんの言うが、祐樹だってお母様のことを気にしているのは言うまでもない――それに、祐樹の学会の画像は医師免許の番号と名前が一致しないとログイン出来ない仕組みで、一般人には閲覧不可だった。ただ幸いにも祐樹の実家の個室には古いPCがあってインターネットには接続可能だったので、自分の医師免許の番号とか操作方法を電話で伝えて動画は無事に御覧になって、とても喜んで下さったのも昨日のことのように思い出す。
 ただ、時計を見ると思っていた以上に時間が経過していたので、普段かかってくる時間帯よりもはるかに遅いので明日に回すことにして――こんな時間に電話を掛けたら逆に心配されそうだ――いそいそと紙袋の中身を開けて、色々な色の球とか道具一式を机の上に広げて参考になりそうなサイトを探した。
 こういう時もPCは便利だなと思いながら、検索の言葉を微妙に変えて「手作りには見えない」手作りの贈り物の作り方が説明されたサイトを一つ一つ閲覧するのも楽しかったし、その中でも最も「玄人チック」な出来栄えを懇切丁寧に教えてくれているサイトを「お気に入り」のこっそりと登録した。
 多分祐樹は自分の許可なしにこのPCを触ることはないだろうが――そもそも祐樹は自分用にノートPCを持っていて調べ事とかの時はそちらを使うのが普通だったので――万が一のことを考えて、サイト名ではなくて暗号めいたモノに変える作業ですら心が薔薇色に弾む秘密の楽しみの時間だった。
 その画面を参考にしながら、そして今頃祐樹は何をしているのだろうかとあれこれ想像しつつ手を動かすのもとても幸せで、そしてこのサイトの出来栄え通りを再現すれば、祐樹もきっと喜んでくれるハズだと思うといつもと持ち方は異なるものの要求された精緻さは同じようなレベルなので、丹念にそして心を込めて手を動かした。
 初めてにしては自分でも上出来だと思えるほどの出来に満足のため息をついて数センチだけ出来上がったものをしげしげと見て、PCの画像と比べていると携帯電話が着信を告げた。
 ディスプレイには「呉先生」の文字が浮かんでいる。
 きっと森技官が帰宅――祐樹ほどではないかもしれないが彼だって厚労省が「残業反対」と言い出している省庁そのものの本家本元にも関わらず――充分激務をこなしているようだったので、帰宅時間としては早いほうだと思われる。
 早速出版プロデューサーの連絡先を聞き出して貰ったのだろうかと思うと、書店の雛壇が一歩近付くような気がして弾む気持ちで通話ボタンを押した。












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◇◇◇



すみません、リアルで少しバタバタする事態になってしまったので、更新お約束出来ないのが申し訳ないです!!






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        こうやま みか拝
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