腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2018年01月

「心は闇に囚われる」 93

「もしもし、裕子から連絡は有りましたか?」
 有吉さんのお母様の声は相当参っているようで、とても弱弱しい。
「いえ、なかったです、どうされましたか?」
 幸樹がよりいっそう眉根を寄せる。
「入院前の一通りの検査が終わって――その時は、発作じみた行動はなかったものですので、一般病棟で良いということになってしまいました――それで、私が入院に必要な細々したものを買いに行っている間に行方不明になってしまったのです。ただ、携帯電話は病院の規則だそうで別の場所に保管するとかで……裕子が覚えているのは、自宅の電話番号高寄君の携帯番号くらいでしょうから……。自宅に電話を掛けると、私の携帯に転送出来るようになっています。だから思い当たるのは高寄君の携帯だったのですが……」
 心配の余りだろう、語尾が震えている。
「有吉さんが運ばれたのは甲山――カブトヤマ――のセント・マリア病院でしたよね?解放病棟なら抜け出すのは簡単ですし、今日はいいお天気です。甲山は涼しいでしょうから……ピクニック気分で散歩しているだけかも知れませんよ?」
 幸樹が敢えて明るい声を取り繕っているのが分かる。だって、幸樹の眉根は思いっきり寄っていたし、幸樹の瞳の光もとても鋭かったから。
「私も最初はそう考えました。ただ、昼食時には絶対にベッドに居なければならない決まりなのです。それなのに姿を現さず、今も……。病院のスタッフが懸命に探して下さっていますが、手掛かりは一つもなくて……」
 泣くのを堪えている声のお母様の心痛はどんなに深いのかを思うとやり切れなくなる。
 最愛の御嬢さん、それも蝶よ花よと育てて、美人だし、頭もそこそこ良い御嬢さんに育て上げた。
 そんなに大切に育ててきたにも関わらず、忌まわしい「合宿」のせいで、拒食症や引きこもり、そして妄想で絶叫するという悲惨な目に遭い、精神病院へ搬送されて、入院が決まってしまっただけでも充分衝撃的なコトだっただろう。
 それが、今度は行方不明だ。
 幸樹は、厳しい表情でしばらく黙っていたが、意を決したように端整な薄い唇を開いた。
「実は、警察にはちょっとしたコネが有りまして……捜索のお手伝いが出来ると思います。
 もし、警察が動かなくても、オ……私と池上君がそちらの病院にお邪魔して、捜索を手伝います」
 「構わないよな?」と幸樹が視線で聞いて来た。一も二もなく首を縦に振った。
「有り難うございます。感謝してもしきれません。では宜しくお願いします」
 普通は、精神病院の患者さんが――それも、病院に行ってからの有吉さんは落ち着いていたらしい――行方不明になっても、警察は動かないということは菊地クリニックで聞いたことがある。
 だから有吉さんのお母様は幸樹が警察を動かせるかもと言った時にあんなに喜んでくれたわけだ。
「セント・マリア病院は、不幸中の幸いに、西野警視正のN署の管内に有る。理由を説明して――もし、管内とか、H県警で大変な事件が起こっていないならば人手を割いてくれるだろう」
「うん、それが良いね……やっぱりさ、幸樹はこういうことに慣れているかも知れないけど、俺は捜索なんかしたことがないから役に立ちそうにない。いや、行きたくないって意味ではないよ……。西野警視正が警官を動員しようがしまいが、捜索には加わるつもりだけど……。
 でも、幸樹ってスゴイね……有吉さんのお母様があんなに取り乱して電話を掛けてきたのに、テキパキといつも通りに冷静に対処してさ」
 俺だったら「どうしましたかっ?何が有ったんですっ!?」って聞き返してしまうだろう。
「ああ、あれか……お母様の精神状態がとても昂っていらっしゃるのは分かったので、それに合わせると、ますますお母様の精神状態は昂るんだよ。だからああいう時は冷静に対処するのが交渉術の初歩だ」
 交渉術まで学んでいるとなると、幸樹は弟の順司君の負担を軽くするために、国家公務員試験を受けて、警察キャリアへの道を踏み出すのだろうなと思う。
 幸樹がスマホを取り上げて、でも左手は俺の指を、いわゆる恋人繋ぎの状態で握っている。
 こんな非常時にそんな悠長なことをしていて良いのだろうかと思っていたんだけれど、俺の掌も幸樹のも汗をかいていて――掌の汗は精神的なことで発汗作用が起こることは知っていた――お互いの精神を正常に保つために幸樹は敢えてそういうコトをしてくれたんだろうと思う。
 そういうさり気ない優しさに幾度も救われたけど、「恋人同士」――世間に顔向け出来ない類のモノではあるものの――になった今では、幸樹は俺を今まで以上に守ろうとしているみたいだった。
「西野警視正ですか?実はゼミの女の子が精神病院から行方不明になりまして……ええ、例のような『闇への妄想』を持った人です。至急、手の空いている警官を『セント・マリア病院』に向かわせて頂くことは可能でしょうか?」
「ああ。その女性は、『妄想』を証言してくれるだろうか?我々が保護した時に?」
「ええ、証言をするように説得はします」
「分かった。可及的速やかに警官を10名派遣しよう。その女性の名前は?」
「よろしくお願いします。名前は有吉裕子さんです。写真は至急添付してお送りします」
 幸樹の視線が俺のPCに向けられ、スマホを耳で挟んだまま「頼む」というジャスチャーをする。きっとフェイスブックの有吉さんの姿が一番良く分かる写真を選び出してくれということなのだろう。
 俺は慌ててフェイスブックの写真で有吉さんの顔が一番くっきり写っているのを探し出す作業に没頭した。
「ただ、例の『妄想』の件で拒食症になっていて……写真よりもかなり痩せて痛々しいですし、顔色や表情は全く違うような気もするのですが」
 幸樹が思い出したように言う。そうだ、合宿に行った後、皆はフェイスブックのタイムラン機能を使っていない。申し合わせたようにだ。
「ああ、それについては心配には及ばないよ。我々は、犯罪者が変装したり整形をしたりして逃走している人間でも逮捕してきた。多少面差しが変わっても分かるように訓練はされている」
 ふと、有吉さんの『妄想』が他の被害者――と呼ぶことにしよう――とは全く異なる点が気になってしまっていた。


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                  こうやまみか拝

「心は闇に囚われる」 92

「ためらい傷っていうのはさ、自殺を決意して、ナイフなりを手首に当てたとしても、一気にスパっと切れないものなんだ。それは分かるだろう?」
 幸樹の言葉に頷いた。
 俺はナイフなんていつ死ぬかも分からないモノで自殺する積りは全くなかったけれど、それに自殺をしたいなんて思っても居ない――特に、幸樹とこういう仲になってしまった今となっては、幸樹を残して自殺じゃなくて事故死だとしても絶対にあの世とやらに行きたくない――ので、想像でしかなかったけど、自殺したい心境に追い詰められたとしたら俺ならビルの屋上から飛び降りそうだ。屋上に上がって、フェンスを乗り越えて、一歩踏み出せばもう、そこには何もない空間が広がっていたとする。そのままその一歩が踏み出せるかどうか……いくら切羽詰まっていたとしても、何の考えもなく次の一歩は踏み出せないだろう。行きつ戻りつして、色々考えるだろう。中村の『自殺』が飛び降りだったことに今更気付いて、背筋に悪寒が走った。
 そんな俺の身体を幸樹が優しく抱いてくれた。
 多分、ナイフで手を切る人間も同じような心境だ。
「そっか……。何回か手首とかに刃物を当てて傷が残るんだね?それを『ためらい傷』って言うんだ?」
 幸樹は相変わらず眉を曇らせて――でも、幸樹の顔はなまじ整っているだけにその表情はとても魅力的だ。大人の男性へと足を踏み込んだような思慮深い彫の深い顔立ちで――。
「でも、フェイスブックは遼の機転のお蔭で八木の彼女も見つかったし……まぁ、あのタイムランを見る限り合宿後はデートしていなかった可能性の方が大きいけれどな」
 幸樹の大きな掌が俺の頭を撫でてくれる。
「それ……とても気持ちが良い……もっとギュッと頭皮を掴んで……」
 昨日の行為で幾分マシになったものの、立て続けに起こる不幸の数々に俺の精神は参っている。ただ、以前菊地先生が仰っていたんだけど、「気持ちが参っている」とか「疲れた」と思うだけで、実際に行動力が落ちていない場合は却って安全なんだそうだ。
 これは酔っ払いにも言えるみたいなのだけど。アルコールを大量に摂取した本人が「酔っていない。大丈夫」と主張している場合は、危険水域だし、「酔っぱらった」と言っているうちは大丈夫なんだそうだ。
 幸樹の力強い指が頭皮全体をマッサージするように動いた。やっぱり幸樹に髪や頭を触られるのはとても気持ちが良くて、束の間の現実逃避が出来る。
 亡くなった人も大勢いるのに、こんなコトをしていて良いのかと良心の呵責を感じるけれども、一般人――幸樹のお父様は警察官僚だけど、幸樹本人は一介の大学生に過ぎない――が動けるのはたかが知れている。
 幸樹の胸にうっとりと背中を預ける。髪の毛の付け根がとても気持ちが良すぎて……。
「ねぇ、警察医の先生ってさ、そんなに違いがあるの?」
 ドラマなんかで観る警察医は、皆が、死因究明に一生懸命だったから素朴な疑問だったのだけれども。
「ああ、警察医っていうのは、開業医が本職の医院経営の兼業が多いからな……そこで『事件性有り』というか、『異常死』だと判断した場合は司法解剖も出来る仕組みだけれど、日本の『異常死』の解剖率は2%だ。とても怪しい遺体でなければ解剖なんてしない仕組みに成っている」
 2%って低すぎるんじゃないかと素人でも思ってしまう。
「そういうもんなの……」
「ああ、それに警察医は本業の医院経営で忙しいから適当な――例えば、『心不全』とかにしてしまいがちだ。医師のボランティアなんだから、本業が忙しい人はそっちを優先するだろ?
 ある警察医は、年間三千体の遺体を診ているってふれこみだったんだが、警察庁が調査した結果、医院経営以外に趣味のゴルフを週に三度ほどして……それで適当な死亡診断書を書いていたケースも有る。そこまで悪質な医師はN市には居ないだろうけど、西野警視正も人の弱みを握るのが上手いから、『飴とムチ』でどっかの医者を宥めすかしているに違いない」
 幸樹が怒りを押し殺した声で言った。多分公憤に駆られているのだろう。個人的な私憤ではなくて。
 年間3千体……ザクっと計算しても、一日10人ものご遺体を診ているわけか……それも本職は別で……それだと確かに見落としがたくさん有りそうだ。
「ねぇ、幸樹、そのお医者さんて……解剖の専門家じゃないんだよね?」
「ああ、内科と小児科の看板を掲げている東京の街のお医者さんだ。ただ、色々問題を起こしたので、今は警察医としての協力は仰いでいないらしいけどな……これがK戸市だと、監察医務院が有って、そこでは死因が調べて貰えるけれど、皆『自殺』だろ?
 麻田さんは……無理心中と言う名前のいわば他殺だから事件性アリと判断して、監察医に診て貰えるが……ただ、俺達が疑っているように、薬物の件はスルーされるだろうな」
 え?だって、色々調べられる――俺が死体になるのはゾッとするけど、もし、不幸な事件に巻き込まれて死んでしまったら、全身を調べられると漠然と考えていた――のではないのか……。
「ねぇ、監察医の先生は、色々な検査とかしないの?」
「しない。死因を特定するだけだ。例えばさ、オレが拳銃で撃たれたとするだろ?それが心臓にどんな風に打ち込まれたか、そして心臓の真ん中を打ち抜かれていたと分かったら、それで終わりだ。司法解剖に回されてもそれは同じで、解剖部分は体表の銃痕から心臓だと分かれば、心臓を解剖する。万が一、オレが癌とかで余命三か月の病気だとしても、それは管轄外だから、調べられることはない。『死因』だけしか分からない仕組みだ」
 頭皮をマッサージしてくれている幸樹の指が強くなる。それはとても気持ちが良いことだけれども、幸樹は多分無意識に力を込めているんだろう。
 幸樹のスマホが着信を告げた。一連の事件(?)からこっち、幸樹のスマホが鳴るとロクなことはない。
 俺は思わず身構えた。
 幸樹が手を伸ばしてスマホを取った。
「あれ?有吉さんのお母様からだ」
 有吉さんに何か有ったのだろうか?最後に見た、白い可憐な蝶を思わせる華奢な手首を思い出して、脈が速くなった。



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「心は闇に囚われる」 91

 八木君と麻田さんが「心中」と聞いて、心の中になんだか違和感の雲が積乱雲のようにむくむくと育って行く。その正体を考えて行くことにする。
 ああ、フェイスブックだと思い当たった。
 俺達は就職活動に有利になる――ホントかどうかは知らないが、そう先輩にアドバイスされている――ので、ゼミの皆がフェイスブックに登録していて、知りあったら「友達」になっている。
 俺は慌ててパソコンを起動させた。
「それで、八木君も部屋に閉じこもり気味だったのですね?」
 幸樹が眉間をますます曇らせて通話しているのを横目で見ながら、一分程度で起動するPCを一日千秋の思いで待っていた。
「いや、それは分からない。何しろ、お父様は石油などの資源を扱う日本有数の会社の重役でね、半年以上も海外で過ごすため殆ど家に帰っていないし、お母様は料理研究家としてはその道ではとても有名な方らしく、東京のテレビ局に出演するために、向こうにもマンションを持っていらっしゃる。今は、お父様はアルジェリアで、お母様は東京らしい。だから、詳しい状況は全く分からない。電話で話を聞くのが精一杯だ」
 ああ、そう言えば、あの合宿の時、八木君が高価なイタリア製の家具の値段をこっそり教えてくれたっけ?
 多分、ご家族でそういう高級家具を見に行ったことがあるのだろう。そう思うと、涙でPCの画面が見えなくなる。
 涙を掌で拭ってからフェイスブックにアクセスする。タイムラン――ユーザーが何か体験したことを投稿出来る仕組みだ。花火大会に行ったとか、外食した晩御飯はこんな感じとかの画像も添付してある――に、上野ゼミ所属の誰もが合宿以降、そんな投稿もなく、皆がどれくらい『闇』に苛まれていたのかが分かる。左の掌を白くなるまでギュッと握って、「友達」の中から「八木信也」をクリックして、八木君のページに飛んだ。
 フェイスブックに限っては、幸樹よりも俺の方が良く見るサイトだ。幸樹は実生活――といっても、俺の保護者というか親友というか……一番の心配どころだったようだけど――の人間関係を大切にして、調べ物以外ではあまりネットは使わない。
 八木君のページに飛んで、人間関係を見た。やはり思い違いではなかった。そこには、「花房葵さんと交際中」と書いてあった。
 花房さんのページに移動する。K女学院大学二回生と書いてあった。そしてタイムランには合宿の前に八木と一緒に行った花火大会の様子とか、神戸ハーバーラ○ドとか、ホテルの食べ放題に行ったとかの一言メッセージに書かれていて、それに幸せそうな二人の画像が――フェイスブックでは、ブログとかと違って顔も鮮明に写っている――多数載っていた。日付を確かめると、全部合宿の前だったけど。でも、交際終了とはどこにも書いていない。
「幸樹、これ」
 電話の向こうにいる西野警視正に気付かれないように――いや、気付かれても親友同士なんだから、一緒にいても全く不自然ではないのだけれども、昨夜、お互いの素肌で「生存」や「正気」を確かめ合って、そして、俺は幸樹の熱い楔を体内で感じるような関係になってしまった以上何だか恥ずかしい。
 大学支給のノートパソコン――ちなみにレポート提出がメールで行えるようにちゃんとネットに繋げる――の画面を幸樹に見せた。
 画面を指で触るのは良くないことだと分かっていたので、爪で「花房葵さんと交際中」という部分と指し示す。
 幸樹の眉がますます曇る。
「今、池上君の家なのですが……フェイスブックに八木君の恋人の名前が載っていました。
 花房葵さん……ええ、花屋さんの『花』に、女房の『房』、葵は、『源氏物語』の『葵上』の『葵』です。K女学院文学部英文学科二回生です」
 幸樹がテキパキと説明すると、西野警視正は驚いたような、感心したような複雑な吐息をつく。
「ほう、そんなにプライベートなことまでネットで公開する時代になったのか。分かった、大学も夏休みだが、事務の人は誰かしらいるだろう。K女学院大学に花房葵さんの住所などを問い合わせて、捜査員を事情聴取に向かわせよう。協力感謝する。詳しいことが分かればまた連絡する」
「あ、待って下さい。警察が介入出来るということは、『異常死』として扱われることになりますね。八木君と麻田さんの……」
 そこで辛そうな顔をして一度、唇を閉ざす。その端整な唇が再び動いた。
「……ご遺体は警察官が『異常死』として認めた場合、警察が委託している医師の元に運ばれますよね?多分、医師は『自殺』という診断を下すでしょうが……血液と尿の採取をお願いしたいのですが、そういった融通の利くお医者様も当然把握なさっていますよね?」
 お医者さんによって違うんだなぁと、幸樹の知識に舌を巻いてしまう。
「ああ、それは勿論。警察医で一番、こちらの言うことを聞く医者に任せることにする。ああ、それから国見君の尿からは覚せい剤は検出されなかった」
 花房葵さんと連絡を取るためだろう。通話はイキナリ終わってしまった。
「ねぇ、幸樹、ためらい傷って?」
 幸樹はしばらく俺の顔を案じるように見詰めていた。多分、俺が怖がらないかどうか心配しているのだろう。
「実際にご遺体を見る勇気はないけど……話しだけなら平気だよ?」
 幸樹は依然として眉根を寄せたまま、涼しげに引き締まった唇を開いた。



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気分は下剋上 Vt2018  1

「あ、あのう……香川教授……」
 定時上がりの職員用通用口で控え目な――というより蚊の鳴くような――綺麗な声で名前を呼ばれて振り返った。
「ああ、岡田看護師ですか。今帰宅ですか?」
 最近は表情筋の動きも良くなったと祐樹に褒められた「仕事上」の淡い笑みを浮かべた。
 白衣姿ではなく私服なのでその程度のことは分かる。
「はい。今日は珍しく定時に上がることが出来ました。久米先生との件で柏木先生ご夫妻までお手数をお掛けいたしまして本当に有難う御座います。個人的なことなのに、そこまで親身になって頂いて本当に感謝しています。
 直接御礼を申し上げるのが遅くなって誠に申し訳ありません」
 深々と頭を下げられて――しかも相手は祐樹が付けたあだ名のアクアマリン姫という表現が主観的にも客観的にも的確過ぎるほどの可憐な美人さんなので――周りの目も気になって内心狼狽えながらも淡い笑みだけは崩さないことに何とか成功しているような自覚はあった。
「宜しければ今からご一緒にお茶でも致しませんか?何でもこの辺りに穴場が有ると聞いた覚えが」
 この場から立ち去りたい一心でそう告げたのに、岡田看護師は心の底から驚いたように清楚な感じの強い目を大きく瞠って微動だにしなかったので内心困り果てた。祐樹が居れば難なくこの場を切り抜けるだろうが、あいにく今夜は救急救命「センター」勤務だ。
「貴女の科の元研修医のことを田中先生に教えて下さったという話は聞いています。その喫茶店にでも参りませんか?御礼を兼ねて……」
 この辺りの飲食店のことは全く分からない――八百屋さんや魚屋さんなら何軒も頭の中に入っているが――ので、祐樹から聞いた彼女と話し込んだという喫茶店に案内してもらうしかない。そもそも彼女が祐樹に脳外科の頭のおかしい研修医のことを話してくれなければ、もっと被害は甚大になっていただろう。それを考えると御礼を言うのはこちらの方だった。
「はい。ではご案内致しますね」
 淡いピンクの唇が綺麗な――久米先生が彼女に夢中なのも良く分かる、あくまでも客観的に――笑みを浮かべて軽やかに歩きだしたので、心の底から安堵した。
 彼女しか道を知らないので当然なのだが、先に立って歩く久米先生絶賛のウエストラインとはこういうものか……などと医局の中で漏れ聞いた話とか祐樹がマンションで話してくれた内容を意味もなく確認しながら後ろを歩いた。
「まさか香川教授に誘って戴けるとは……申し訳ありません、却ってお気を遣わせてしまいました」
 驚いたように出迎えた喫茶店のマスターは多分自分の顔を知っているのだろう。京都の人間で地震の時――停電していなければ、だが――テレビを観ない人は稀だろうし、災害時に最も視聴されるのがNHKなので当たり前と言えば当たり前なのだが。
 向かい合ってテーブルに座ってもまだ謝り続ける彼女の気分を変えようとメニューを手渡した。
「お好きな物を頼んで下さい。あの時ウチの田中に協力して下さった御礼です。貴女の勇気のある内部告発がなければ、私の外科医生命も終わってしまうような出来事でしたから」
 今となっては笑い話に出来る自分の強さはきっと祐樹が与えてくれたものに違いない。
 メニューをいそいそとめくる華奢な指にはアクアマリンの指輪が清涼な煌めきを放っている。
「そんな……香川教授にそう仰って頂けるほどのことは致しておりませんし。それに『病院の至宝』の名前に傷を付けるようなことにならなくて何よりでした」
 アクアマリンそのもののような笑みを浮かべている目の前の彼女の控え目な態度に「同じ医療従事者としての」好感を抱いた。これなら久米先生とも上手く行くだろうなと。
 祐樹にダメ出しを何回も食らった後に――何でもメノウとかサンゴとかを考えていたらしい――やっと選んだ宝石だと聞いている。というか、祐樹がアクアマリン姫とあだ名を付けたのだからその宝石を何故選ばないのかイマイチ良く分からないものの、久米先生には久米先生なりの拘りでも有るのだろうか?
 メニューを全部見た後に「ホットコーヒー」と無難なセレクトをする女性は一般的なのかどうかもまるっきり分からないが、ホットコーヒーを二つ頼んだ。
「柏木先生ご夫妻の説得で久米先生のご両親も納得して下さって……本当に有難う御座います。柏木先生とは同級生でいらっしゃったのですよね?そこまで良くして頂いて本当に有難う御座います」
 また深々と頭を下げられたが、彼女が心の底から感謝している程度のことは分かったので自然と笑みが深くなる。
「いえ、その件も田中が考えたようなものですから。私は単に話を繋いだだけで……。それに医局員の幸せを考えるのも上司の務めの一部だと考えていますので、そんなに気になさらず。
 強いて私から申し上げるとすれば、婚約指輪を買う時には一緒に宝石店に行かれるようにお勧めするくらいです」
 岡田看護師が宝石を選ぶのなら久米先生は唯々諾々と従うような気がしたし祐樹の無駄な労力も少しは減るだろうから。
「はい。久米先生はある意味とても純朴な方でいらっしゃいますから、そうさせて頂きます」
 「純朴」というキーワードに該当するのは自分が知る限り一人しか居ない。あの涙ぐましい返信を寄越した野口陸士のことをぼんやりと考えてしまう。
 久米先生の場合はどこか――いや自分も他人のコトは言えないのは充分自覚しているが――ズレているだけだろうと内心で思ってしまう。
「田中先生にも本当に良くして頂いて本当に感謝しています。それに久米先生は兄のように慕っている様子が微笑ましいです。あの時田中先生に出会えて本当に良かったです、私個人は……」
 言い難そうに口を噤んだ彼女に「もう全て済んだことですから」と心の底から言える自分は祐樹の存在に何時も助けられているからだろう。
「もうすぐバレンタインデイですね。そういえば、先輩ナースがゴディバのお店に行って『田中先生お気に入りのチョコは販売していない』と困っていました」
 内心愕然としたのを彼女に気付かれていないだろうか?
 コーヒーを飲んでいる時ではなくて本当に良かった。彼女が何気なく漏らした言葉でコーヒーに噎せてしまうところだったので。











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少し前に読書が趣味(腐った本もそうでない本も含めて)とか書きましたが、
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ちなみに時系列的には「夏」→【かなりの時間経過】→「学会準備編」→「Vt2018」です。



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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 35

 自分の行きつけのブランドには敢えて寄らず――あの神様のプレゼントのような特別休暇の時には第一候補として考えていたが、祐樹には更に似合う老舗を見つけたので――「祐樹のためだけに」買い物をしたというささやかな充足感が季節とは関係なく春風に乗っているような気持ちだった。
 職員用の出入り口から入って――多分僅かな暇を見つけてタバコ休憩に来ているのだろう――顔見知りのスタッフ達が皆怪訝そうな顔でこちらを見ている。百貨店の袋ではなくて整っていると祐樹が褒めてくれる顔よりも上を。
 髪型のせいだと思い当たってどうしようかと一瞬考えてから――顔見知りなだけで知り合いレベルが居なかったのは不幸中の幸いだった――旧館の方へと向かった。不定愁訴外来は診察日だが時間が空いていれば呉先生の部屋で、患者さんと対応中なら人の気配のないこちらの建物のトイレの水で髪を後ろに流してから新館エリア――当然自分の医局員達もたくさん存在するし、患者さんだって居るのだから「普段着」に等しい前髪を下した姿を見せるのはごく限られた人間だけで充分だった――いくら祐樹用の買い物だけをして心が弾んでいたとはいえ、ノーネクタイや髪のことまで気が回らなかったのは我ながら迂闊過ぎたと反省しながら。
 不定愁訴外来のドアの前で耳を澄ますと話し声も聞こえず、その代わりに薫り高いコーヒーの良い匂いがほのかに漂っている。患者さんの居る前で呉先生はコーヒーを飲まない――まあ、それが医療従事者としては当たり前の姿勢だろうが――ので躊躇いがちにノックした。
「どうぞ?」
 スミレ色の穏やかな声が旧館の風情のある建物に相応しく響いた。地震の時に若干の損傷はあったものの、大規模な工事をするには至らないとの専門家の見立てを受けて壊れた場所だけを直して使用中だった。だから地震前とはほとんど変わっていない。
「香川です。急にお邪魔してしまって申し訳ありません」
 ドアを開けると更に芳香が心を穏やかにする香りに匂い立った。
「いえ、ちょうど患者さんの愚痴を聞き終えて、手が空いたところですから。いや、今回のは長かったです。透析の患者さんなのですが、インフルエンザなどの感染する病気を併発している患者さんのために存在する個室を使わせないのは病院の怠慢とかなんとか……。まあその患者はもともと鬱から来る攻撃性のクレーマー患者なので、そういう患者さんの対応はある意味慣れているので大丈夫なのですが。
 病院側に問題があるとは全く思いませんので正直『そんなに嫌なら転院しろ』なのですが、そう言ってしまうとこのブランチの存在意義を失いますので、延々愚痴を聞き続けるのです」
 以前心臓内科に入院中の患者さんが自分の手術を受けたいとダダをこねていたことを思い出した。あの時は誠実に対応した積もりだったが血を見るのが嫌いでなおかつ想像力が有り過ぎる呉先生にトイレに駆け込むほど嫌な思いをさせたことを思い出して友人に向ける笑みに曖昧さが混じってしまう。
「加藤看護師はお留守ですか?地震の時に彼女のツバメのような道具出しのお陰で、ゆ……田中先生の神懸かり手技が一瞬の遅滞もなく上手く行ったのでそのお礼を申し上げないとと思っていたのですが」
 呉先生は白衣に包まれた華奢な肩を残念そうに竦めた。
「彼女はあれだけ気持ちのいい道具出しが出来て、心も体も現役時代に戻ったようだと喜んでいましたので、お気持ちだけ伝えますね。今日は患者さんの予約時間オーバーが二件有ったので、彼女は今ランチ休憩です。あれ?教授のその髪型とか紙袋……もしかして今日は有給ですか?」
 呉先生も遅い昼食と思しきサンドイッチを幸せそうに食べながら――多分よほどお腹が空いていたに違いない――スミレのような可憐な眼差しで自分の姿を見つめてくる。
「いえ、今日は珍しく午後の手術がなかったものですから少しの間だけ病院を抜け出したのです。
 ただ、平日の昼間に百貨店に居るのがバレたらサボっていると看做されるとゆ……田中先生が言ってくれたので」
 促されるままに椅子に座ると呉先生は軽快な感じで立ち上がってコーヒーを淹れてくれた。
「ああ、地震の時ので一躍全国区ですからね。その点私なんて薬剤室に籠っていたので一切顔バレはしていないのが助かりました。
 地震の時といえば……清水研修医の抜擢有難うございました。本人も精神科に限界を感じていたようで、この前挨拶に来たときは本当に晴れ晴れとした顔をしていました」
 呉先生も病院のブランチを立ち上げる力の有る――そうでないと病院長はバッサリ切るだろう、そういう人だ――精神科医だが、ブランチの数も自ずから制限されるので清水研修医は真殿教授の元で不貞腐れながら働くか実家の病院に戻るという二択しかなくなる。それを救急救命室勤務という畑違いのゴリ押しが出来たのは地震のせいだった。
「ああ、清水研修医に連絡は取れますか?彼に伝授したい技も有りますので直近に連絡を取ろうと思っていたのです」
 救急救命室に行けば清水研修医には会えるだろうが――ちなみに自分の医局員ではないので連絡先を知る権限はない――教授を教授と思わない唯一の看護師でもある杉田師長にこき使われる可能性があった。普段なら助っ人でも喜んで引き受けるが、これから祐樹の居ない夜の時間には――床に置いた紙袋の中身を含めて――することが山積みなので出来れば避けたい事態だった。
「ええ、教授にならお教えしても構わないでしょう。ちょっとお待ちください」
 スマホに登録してあるのだろうが、そのスマホをタップしながら自分の動作を見て驚いた感じで可憐な目を見開いているのが不思議だった。












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少し前に読書が趣味(腐った本もそうでない本も含めて)とか書きましたが、
小説書くのも趣味ですけれど、他人様が書いたモノの方が新鮮味も有って面白いのです。
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ちなみに時系列的には「夏」→【かなりの時間経過】→「学会準備編」→「Vt2018」です。



最後まで読んで下さいまして有難う御座います。

        こうやま みか拝
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