腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2017年07月

気分は下剋上 ドライブデート 126

「今度こちらの海岸に来る時は、花火を単体で売っている店を見つけるか最高に気に入って下さったヘビ花火がたくさん入っているかどうかを確かめてから購入しますね」
セミの羽化とかカブト虫やクワガタの話ですっかり夏のドライブデートーー最愛の人の好みでは多分ないだろうホテルが山から最も近いのが残念だったがーーに思いを巡らしていると思しき無垢な笑みを花よりも綺麗に綻ばせている最愛の人より楽しんで貰おうと花火の話に戻した。
「花火は詰め合わせではなくてバラ売りでも買えるのか?
ただ。セミの幼虫の活動時間と花火の時間がかち合うような気もするが」
裕樹の幼い頃に夏限定で花火を各種お任せで購入出来た文房具屋がーー当たり前だが実家にいた頃の話だし、今その店が営業を続けているかどうかすら知らないーー有ったのは事実だが京都の街中にそういうお店があるかどうかなど興味の範囲外だったので当然知らない。最愛の人がこんなに喜んでくれたので、次も花火付きのデートプランを練っただけで花火そのものにはさしたる吸引力は感じないのも事実だった。
「布引ハーブ園に行った時のことも当然覚えていらっしゃるでしょうが、神戸の中心地側ーーというには少し離れていますが、ただ新幹線の駅と直結している便利さはありますーーループウエーの乗降口に行くために通り過ぎたホテルを次の宿泊先にしようと考えているのですが、貴方にはあまり相応しくないホテルかも知れません」
基本的に裕樹のすることには何でも喜んでくれる人ではあるものの、一応の予防線というか最愛の人の反応を確かめたい。
草むらに座り込んで線香花火を息を殺して見詰めている最愛の人の無垢な表情が線香花火の煌めきよりも綺麗だった。
「もちろん覚えている……あのハーブ園では裕樹に死ぬほど嬉しいことを言われたし」
花火の赤さよりも薔薇色に染まった最愛の人の懐かしそうで幸せ色の笑みの方が比べようもないほど綺麗なのは言うまでもなかったが。
「ああ、あの時の言葉ですか。その想いは降り積む雪のように深くなることこそありますが、その逆は金輪際ありませんので安心してくださいね」
花火の煌めきを加えた最高の笑みを幾分薄い唇が極上の花を咲かせたように鮮やかに花開いた。
「ああ、それはもう疑ってはいないので……。で、あのホテルにするのか?私は裕樹さえ側に居てくれるならどんな場所でも天国なので……特に異存はない」
花火や海岸を走り回るというーーもしかしたら前日のドライブから始まっていたのかも知れなかったがーー心の弾みを率直に紡いだだけの言葉だろうが、裕樹にとっては宝石よりも貴重な愛の言葉だった。
「セミの幼虫は個体によっては夕方頃に土の中から出て来るのも居ますので、先に幼虫を捕まえてから、花火ーーああ単体で買える店が有るかどうかはこれから調べますがーーを楽しんだ後にカブト虫やクワガタを探しに行けば時間的にもぴったりだと思います。
セミの羽化が始まってしまうかも知れませんので、虫カゴのようなモノは必要でしょうが」
今にもポトリと落ちそうな赤くて小さな火を花火を息を殺して凝視している眼差しの無邪気な光を湛えた切れ長の目の綺麗な光に見入ってしまうが、職業柄とか生来の器用さのせいで二つ以上のことを同じ集中力を保ちつつ出来るーーもちろん裕樹も彼ほどではないにしろ可能な技ではあっったがーーので、裕樹の話に微笑みの濃さを増していてピンクの大輪の薔薇のような風情だった。
「では虫カゴのようなものは私が用意する。セミ用のと、カブト虫などは分けた方が良いのだろう?」
裕樹の目を見る最愛の人の眼差しには夏の計画の期待からか無邪気な煌めきが先ほどよりも増していてダイアモンドの無垢さを彷彿とさせてくれたが。
「セミの羽化の時に限って言えば妖精の羽根のように繊細なので、余計な力が加わってしまった場合は羽化が失敗に終わって飛べないセミになってしまいます。病院内でご覧になったことは有るとは思いますが成虫になってしまえば羽も割と丈夫なので平気なのですけれども。カブト虫やクワガタは既に成虫なのでカゴは一個だけでもある程度の大きさが有れば大丈夫です、よ。多分百貨店かスーパーでお買いになるのだと思いますが、カブト虫用のセットも同じコーナーに売っているはずなのでそれも忘れずに買って頂ければと」
今回は赤い小さな火玉がポトリと落ちてしまって落胆のようなため息を零した最愛の人だったが、それでも唇にはーー今は車に中に置いて有るーーピンクの薔薇よりも綺麗な笑みを浮かべているのは新しい楽しみを裕樹が提示したからだろう。
「カブト虫用のセットが有るということはクワガタ用も?」
次の花火に火を点けて小さな儚い風情の煌めきを放っている線香花火をダイアモンドよりも無垢な光を宿したまま見詰めていたものの、唇の薄紅色が清純な色香を放って甘く匂い立つようだった。
「多分売ってはいると思いますが、どうせ中身は同じ成分なので、一つで良いですよ。
虫カゴというかケースと言うか、まあご覧になったら分かるかと思いますが要するにプラスチック製のモノでーーああ、すみませんが花火を持って頂けますか」
夜目にも薄紅色の煌めきを放つ細く長い指が、秀逸過ぎる手技の時のように慎重かつ繊細に動いたのは線香花火の火玉がセミよりも儚く生を終えることに気付いたせいだろう。
一瞬だけ触れ合った指先の快いーーそしれ走った後なのでひんやりとしている普段の指とは異なって温かみを帯びているー感触を楽しみながら花火を手渡した。
薄紅色に煌めく指に花火の弾けるような赤や黄色の火花が映えてとても綺麗で花火よりも指を見詰めてしまいながら、ケースの大きさを両手で表現する。
「だいたいこの程度の大きさ以上であれば問題はないかと思います」
息を殺して花火に見入っていた最愛の人だったが視線は裕樹へと流してくれたので、薄紅色の細く長い指が花火で飾られているという裕樹にしか見せない指の色と無垢な煌めきを放つ瞳が儚い花火の光でよく見えたのは僥倖以外の何物でもなかったが。
「ケースの件は了解した。セミの幼虫用には何が必要なのか教えてくれれば有難い。私にとっては初めてのことなので、裕樹だけが頼りだし」
一般常識にもやや欠ける点はあるものの、卓越した彼の世界レベルの手技と同様の頭脳の持ち主なので、言葉にはしないもののインターネットで検索するというそこいらに居る人間でも容易に考えつく手段は当然思い至っているだろうが、そういう言葉を言わない点も最愛の人の美点の一つだと心の底から思ってしまう。
裕樹自身も自覚しているが、負けず嫌いな性格なのを最愛の人も当然知っているからこその言葉だろうから。
過去の今思えばチャチな恋愛ごっこの最中でも、相手が浅薄な知識をひけらかすーーちなみに研修医時代は実際の職業とか職場を明かさないまま恋人もどきも居たので、裕樹を普通の会社員だと自己申告したのをそのまま信じた人も割と多かった。それに勤務先イコール出身大学が分かるような職場だったのでごくごく普通の会社員を装うために学歴すら言っていなかったから仕方のないことかもしれないがーー自分の方が賢いと思い込んでいた人も居たのも事実で、そういう人は裕樹の好みからは大きく外れてしまう。
ただ、最愛の人は医局内などで他人の目が有る場合は教授と一介の医局員としての言動をするのが病院内、いや社会のルールなので逸脱はしないものの、二人きりの時には何事も立ててくれる奥ゆかしい性格も最高に惹かれてしまっていたのも厳然たる事実だった。











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◇◇◇
都合により、一日二話しか更新出来ないーーもしくは全く更新出来ないかもーーことをお詫びすると共に、ご理解とご寛恕をお願いいたします。
やっとリアバタがー段落ついたので、次回更新分からは毎日更新を目指します!(目指すだけかも……(泣)

諸般の事情で、クライマックス近くにも関わらず中断してしまっていた「気分は、下剋上」夏 ですが(プロットは流石に覚えていましたが、ちょっとした登場人物の名前などその場で思いついた名前とかは忘れてしまっていたため、復習に時間がかかりましたが、「ドライブ~」か「震災編」が終了次第再開する予定ですのでもう暫くお待ちくだされば嬉しいです。
あと、熱烈リクエストがあった「蛍の光の下のデート」も超短編で書こうかと目論んでいます!ただ、ストーリー性が強いのは「夏」なので、そちらを優先したいのですが、予定は未定(泣)

気分は下剋上 ドライブデート 125

「今度は裕樹の方に行ったな。早く逃げた方が良い」
花火の閃光よりも弾んだ声がより鮮やかに耳に響く。決して大きな声ではなかったものの、普段の彼よりも無邪気さに満ちて空間をラムネ色に染めていく。
「了解です。しかし、貴方がバランスを崩すだけのことは有りますね。すごい勢いと速さです、ね」
砂を踏んで花火から逃げるという幼心の帰ったような気がした。裕樹にはまだそういう「人並み」の夏休みの想い出は持ち合わせていたが、最愛の人にとっては「初めて」の体験だったので、経験値の差かもしれない。ただ、裕樹自身が最愛の人の寂しい過去を埋めて、上書き保存していけることの歓びの方が上回ったし、過去のことはーー最愛の人が聞いてくれば話は別だったがーー触れない方が良さそうなので敢えて黙っていたが。
忘れかけていた経験則と二個のヘビ花火の火薬の要領は大体掴めたので、次は最愛の人が上手く逃げられるようにだけは配慮して火を点けよう。
「次はきっと貴方の方へと断末魔の大蛇のようにのたうちながら閃光を放つように工夫致しますのでお気をつけくださいね。大体コツは掴めたと存じますが」
夜の海岸を全力疾走するという開放感に満ちた「初めて」も最愛の人には必要そうだったので。
「分かった。今度は自力で逃げられるように頑張るので」
怜悧な瞳で裕樹の手と花火を見つめている最愛の人の声は花火の煌めきよりも綺麗だった。
「海水浴の季節にもこの辺りにドライブランドデートして下さると約束しましたよね?蝉の羽化を眺めた経験はお有りですか?」
なるべくさり気なさを装って質問してみた。花火に気もそぞろな感じの最愛の人ーーただ、セミの幼虫は京都の街にもたくさん居たのでもしかしたら小学生とかの夏休みの宿題で多分会ったハズの自由観察がてら最愛の人も見ている可能性は有ったし、裕樹も救急救命室勤務の時に一人きりで休憩する隠れ家めいた神社の境内でもタバコを吸いながらたまに蝉の幼虫が地面から木に登る様子や羽化真っ盛りを慌ただしく見た記憶も有ったのでーーの過去をこの際聞いておく絶好のチャンスだった。
「夜は早く寝るのが習慣だったので、図鑑でしか見たことはないのだが。ああ、あとテレビのニュースに何故か羽化の様子が早送りされて放映されたのを観た記憶はある」
つまりは肉眼で見たことはないということだろうと心にメモして花火に火を点けた。
思惑通りに最愛の人の方へと閃光がうねって弾けるのを楽しそうに微笑みながら走る人のしなやかながらも無垢さが際立つ動作を見入ってしまったが。
「物凄く楽しかった。ただあんなに複雑にうねる花火の軌道計算が出来るのだな。少なくとも私には無理なのでーーもっとサンプルが多くてかつ逃げ回る手間がなければ計算式は立てられそうだがーーそうなると花火の楽しさが台無しになりそうなのでやめておくが、裕樹は凄い、な」
息切れと表現する程度ではなかったが、走った直後の普段よりも早い呼吸ーーベットの上などと異なって艶めいた蠱惑は全くないーーのが逆に心を揺さぶられる要因になってしまっていた。
そんな大層なシロモノではなくーー裕樹も一応は理系なので頑張ったら可能だろうが、そんな気はさらさらないーーただの経験則と二個の花火の傾向から分析しただけだが最愛の人に心の底から感動している賞賛の眼差しに無粋なことを言って水を差したくなかったので曖昧に笑った。理詰めで物事を考える人なことも含めて愛していたので。
「夏に再び訪れた時にはセミの幼虫を探しましょう。一番大きなクマゼミがお勧めですね。羽化したての妖精の羽のような儚さを是非貴方にも見せて差し上げたいですし。
もっとも、ベッドの上で甘く乱れる聡の肢体の方がさらに綺麗ですけれど。
ベッドと言えば、カブト虫やクワガタも夜に交尾をする習性が有るのでオスとメスを捕まえてきて、何かの容器に入れて観察がてらしつつ私達の愛の交歓を見せつけるというのも一興です、ね」
ヘビ花火の在庫が切れてしまったのを残念そうに眺めていた最愛の人の無垢な眼差しがさらに透明さを増した感じで煌めいた。昆虫が苦手という話は聞いた覚えがなかったので、多分喜んでくれるだろうと目論んでいたが図星だったようだ。
「セミの幼虫はーー病院内の木の枝に抜け殻が有ったのでーー捕まえることも可能そうだが、カブト虫やクワガタは夜の林とか森に樹液を吸いに来るのだろう?だったらかなり歩き回らないと不可能ではないだろうか?」
ゼミの知識も図鑑で得たのだから、カブト虫などの情報も同じだろう。裕樹も確か小学生の時に図鑑で見た覚えはあったが、伊達に田舎育ちはしていない。
「割と簡単に捕まえることは可能ですよ。特に車が有れば、ね。それに夏の宿泊先のホテルは山に近いのを選んでいいですか?自然に放して、そして短い一生ーーといってもクワガタは七年程度生きるらしいですがーーセミは七年も土の中で過ごして短い夏を過ごすと儚く終える一生なので流石に可哀想ですから」
花火の残り火のような笑みが灯台の灯りに朧に浮かび上がってセミの羽化したてのような瑞々しい繊細さが一際印象的だった。
「それもとても楽しみだ。クワガタやカブト虫を捕まえる裏ワザも有るのだな……。山に入るのではなく?」
線香花火が残っていたので、砂浜をサクサクと踏みながら指を深く絡めてゆっくりと歩くのも楽しかったし、その上最愛の人が感心した感じで見上げてくれたのでなおさら幸せだった。
「山には近付きますが、車から徒歩五分以内で見つかりますよ、カブト虫とクワガタ両方は保証しかねますが、どちらかの番いならほぼ100%見付ける自信はあります」
ピンクの薔薇のように清楚な感じで弾んだため息が最愛の人から溢れ落ちる微かな音が耳に異なった意味で心地よく浸透していく。









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諸般の事情で、クライマックス近くにも関わらず中断してしまっていた「気分は、下剋上」夏 ですが(プロットは流石に覚えていましたが、ちょっとした登場人物の名前などその場で思いついた名前とかは忘れてしまっていたため、復習に時間がかかりましたが、「ドライブ~」か「震災編」が終了次第再開する予定ですのでもう暫くお待ちくだされば嬉しいです。
◆◆クーラー多用の夏風邪が長引いてしまっておりまして、更新時刻はバラバラ、しかも何話更新出来るか自分でも分かりませんことをお詫び申し上げます。楽しみにしてくださる読者様には誠に申し訳なく思っております。なるべく無理のないように、かつ更新は途切れないように体調と相談の上頑張りますので宜しくお願い申し上げます◆◆

気分は下剋上《震災編》155

「……『ローマの休日』の恋人役も新聞記者だかカメラマンだったと記憶している。つまり……」
二人きりのゴンドラはゆっくりと上昇していって、今は大阪港と思しきーー自分にとって宝石のような煌めきの時間を裕樹と過ごした神戸の須磨海岸の花火の記憶のせいで美化されている可能性は高かったが、この高さから見下ろすと工場がやや殺風景なもののーー充分綺麗な海とか独特の建物が「非日常」を高めてくれていた。
そして、頼もしさがさらに増した裕樹の身体で京都方面の山々が自分から見えないように座っているのも、今の京都がどうなっているかを案じさせない裕樹の細かい配慮だと確信した。
大阪の中心街に居る自分達を含め、忙しげに働くビジネスマン達や買い物をしている主婦達は京都寄りの大阪府とは何の関係もなく「日常」を送ることが出来る人達でーーもしかしたらテレビで放映された京都寄りの大阪の被災地の同僚の分までカバーしているのかも知れなかったがーーとにかく自分も今朝というか夜中まで何の疑問もなく送っていた「日常」の中の「天国のような別世界」に二人きりにならせてくれているのも裕樹なりの心遣いだろう。
「つまり、カメラが気になるというわけですよね?今乗り込んでから何分経ったか聡なら無意識に記憶していらっしゃいますよね?時計よりも正確なのは存じていますので」
裕樹が自分にしか見せた記憶しかない極上の笑みを唇に刻んで、信頼に満ちた眼差しで間近に見つめられて頬の紅さも胸の疼きも増してしまう。
「四分三十五秒だと思うが?」
疑問符をつけたアクセントだったが多分狂いはないはずだった。薔薇色に弾んだ気持ちがより強かったものの、そして身体の熱く甘い疼きは持て余すほどになってはいたが、以前のように完全に理性を手離す感覚までは行っていなかったので。
「ポラロイド写真は一番上で撮影されるらしいです。空中滞在時間は十五分ですよね。だったら小学生でも計算出来るでしょう?」
裕樹がわざわざ係員さんに聞きにいった理由に思い当たってよりいっそう心が薔薇色というよりも行きつけのブランドの暖炉のようなオレンジ色に染まっていくような気持ちだった。
ちなみに裕樹が買ってくれた柔らかく儚げな印象の強い琥珀付きのチェーンの紙袋と共に暖炉のオレンジ色の紙袋は向かい側に置いてあったので嫌でも目に入ってきて、高い場所に居るという高揚感と共に幸せ色の炎が心の中に染み通っていくようだった。
惚れ直した衝動と実感に駆られて自分から唇を重ねた。
「二分間なら……触っても構わない、というかむしろ触れて欲しい」
十二時の鐘だか時計をはらはらして待つシンデレラになった気分だったが。ただこの二人だけの空間ーーしかも目に入る先をいく誰も乗っていないゴンドラは裕樹の纏う生気に満ちた太陽の紅さなのでなおさらそう思うのかも知れないがーー「でも」裕樹に愛された記憶を魂に刻んでおきたかったし。「ローマの休日」ごっこの心の弾みにままに唇が動いた。
甘く切なく疼く胸の尖りに唇と指が輪郭を辿るように動かされて、厚めの生地が却って悦楽の焦ったさを募らせる結果になってしまって唇から紅いため息を零してしまっていたが。
「…………あの大阪港の特徴的な建物は何だろうか……」
直接触って欲しいとは流石に言えなくて答えを知っている質問で誤魔化してしまう。
「『海遊館』という水族館ですよ。お望みならお連れ致しますが、この慎ましやかに硬く尖った胸の煌めきとか……聡の薔薇色に艶めく肢体を先に拝見したいです、ね。
そろそろ限界ではないですか?
少なくとも私は聡を身体全部で愛したくてたまらないのですけれども……」
厚いコットンで包まれているハズなのに裕樹の熱い声で胸の尖りが炙られるように甘美過ぎる甘さと熱で疼いてしまっている。直接素肌を愛されているような錯覚すら抱くくらいに。
「空中のゴンドラもとても素敵な想い出を刻んでくれたので…………忘れられない場所の一つになったが………やはりホテルの密室で…………チェーンを付けて貰いたい…………」
二人だけの空間なので当然日本語を使っていたが、英語でならすらすらと言える愛の言葉が母国語ではなかなか言えないのは何故なのか自分でも分からなかったが。
裕樹の指が左手を愛おしそうに、そしていつも以上の恭しさーー多分「ローマの休日」ごっこの続きだろう。ただあの王女様は休日が終われば王女様のある意味孤独な日常に帰ってしまった分だけ自分の方が幸せだろうが。










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気分は下剋上 ドライブデート 124

「裕樹、今度はもっと気をつけるのでヘビ花火をもっと楽しみたいのだが……」
控え目な声が瀬戸内海の穏やかな潮騒と二人きりの淡い闇の中に儚い砂の城のように溶けていった。
多少は豪華かも知れないがーー裕樹が幼い頃に遊んだ覚えがある花火と単純に比較してだし、当時は値段のことなど全く気にしていなかったので具体的には全く知らないーー家庭用の花火をこれほどまでに気に入ってくれている最愛の人の細やか過ぎる我が儘が却って愛おしい。
「良いですよ。一番のお気に入りはヘビ花火ですか。ではもう少し波打ち際の方へ参りましょう」
手を深く繋いで夜の砂浜を歩くだけで花火よりも鮮烈で穏やかな気持ちになれるのは花火の熱ではなく心の弾みで普段はひんやりとしている細く長い指が熱を帯びている最愛の人の体温と懐かしい花火独特の香りの余韻が潮の香りと混じっているせいだろう。
ことさらロマンチストではない裕樹の子供の頃の無邪気な気持ちまでもが脳裏にまざまざと蘇ってくるのだから「初めて」の花火を体験した最愛の人の無邪気で静謐な興奮もなんとなく分かるような気もした。
「この辺りで良いでしょう。線香花火のように寄り添って見ることは無理ですが、酔っ払った大蛇のようにのたうつ閃光から全力で逃げ回るのも楽しいですよね」
最愛の人の耳朶に囁いてから唇を重ねた、手は依然として繋いだままで。
「裕樹の全力疾走、それも私の傍に来るためだけに綺麗なフォームで走って来るのを見たら、私も走りたくなったし、ヘビ花火から逃げるのも面白そうだなと思って……」
花火の鮮やかな残光のような声が無垢で無邪気な響きで砂浜を彩るようだった。
「貴方の運動神経とか身体能力の高さは存じていますし、一度経験なさっているので大丈夫だとは思いますがくれぐれも気をつけてくださいね。貴方の『神の手』をくれぐれも損なわないように。世界の医学界の損失ですから、万が一そうなってしまったら。もちろん私も責任の重さを実感して慚愧の念に苛まれるでしょうし」
有名なピアニストや手のモデルなどは仕事以外に指を使わないと何かで読んだ覚えもあるし、同業の医師ーー裕樹が一方的に知っているだけの存在だったがーーもそういう人は多い感触で、指に怪我をするリスクの高い料理を難なくこなす最愛の人の方がむしろ特殊なのかも知れない、無論良い意味で、だったが。
「何だか恋人ではなくて、母親に注意されているみたいだ」
嬉しそうに弾む小さな声が先ほどの線香花火の煌めきを想起させる。裕樹には必定以上に口煩い母親が未だこの世に存在するが、最愛の人の人生から砂の城のように儚く消えた「母親」役を、今だけでも演じたかったのも事実だった。
「もっと注意しましょうか?と言っても貴方の場合、完璧過ぎて叱責するネタがないのが欠点といえば欠点なのですが。それとも恋人役に徹する方が良いですか?」
絡めた指を強く繋ぎ合わせると灯台の朧な光でも薔薇色の笑みを大輪の花火のように煌めかせている最愛の人の横顔がとても綺麗で見入ってしまう。
昨夜の妖艶に乱れた肢体や薔薇色の艶やかな嬌声混じりの声もこの上なく綺麗で耳に残っているものの、屈託なく無邪気な感じで透明に笑う笑みも咲きたての朝露に濡れたピンクの薔薇のように綺麗だったが。
「この世で叱ってくれるのは裕樹だけなので、気が付いた時には遠慮なく叱責して欲しいような気もするが……この上もなく優しい恋人で居てくれるほうがもっと嬉しい、な。
ヘビ花火も許してくれたし……」
最愛の人は何気なく「優しい」と口にしたのだろうが、裕樹の今思えば赤面モノのちゃちな恋愛ごっこと独り善がりの欲望の解放のために付き合わせた数えきれないほどの「即席の恋人」には言い返すと面倒なので容認出来る範囲内ーー裕樹の場合は極めて狭かったがーーだけは無責任な「優しさ」を演じていただけだった。
今手を繋いでいる大切な人のようにその人の人生そのものを思い遣って苦言を呈したことは一度もなかった。
「それは固くお約束しますよ。叱るべき時にはキチンと叱責します。
その代わり私の言動が優しい貴方の目に余るようなことがあれば遠慮なくおっしゃってくださいね。下手に我慢をされて……徐々に不満が蓄積していってある日突然愛想尽かしをされるのが一番怖いです。生涯に亘って一緒に居ると決めた人は聡しかおりませんので、不満が有れば遠慮なく指摘してくださいね、公私に渡って、ね。約束ですよ?」
曖昧な感じで頷いた最愛の人の唇に唇を重ねた。
「裕樹も完璧過ぎて不満などは全くないのだが……。ただ私の場合気持ちを言葉で表現するのも苦手な分野で……。しかし裕樹を見習ってなるべく言葉にしたいとは思ってはいるものの、なかなか上手くいかないな」
曖昧な感じで頷いたのは彼なりに対人関係のコンプレックスを持っているからに違いない。研修医と教授として出会った時に比べればかなり改善されていたがーー公私共々ーーまだまだ苦手意識を持っているのだろう。
「聡が凱旋帰国をなさってからずっとお側で拝見して来ましたが、表情筋の動きとか言葉の数は段違いに向上していますよ。実のところ私の傍だけで笑っていてくだされば恋人としてはそれで充分なのですが、職場ではそうも言ってられませんので我が儘な恋人の些細な独占欲だと思って聞き流してください。
心の動きを言葉や表情にある程度はお出しになられた方が医局内でも貴方を慕う人にとっては嬉しいと思います。貴方はご自分の魅力にーー抜群の手技だけではなくてーー無頓着過ぎるきrうぃがあるので、医局内で褒めるべき時は微笑んだ方がより説得力が増します、よ。
今思いつくのはこの程度ですね」
無邪気な眼差しに怜悧さと熱心さを宿して頷きながら聞いている最愛の人に眼差しで微笑んでから手を一瞬だけ力を込めて握ってから、絡めた指を離した。
「分かった。以後なるべく気をつける」
決意を新たにした感じの無垢な声が潮騒よりも鮮やかで静謐な空気に溶けていった。
「少し距離を取ってくださいね。火を点けますので」
ヘビ花火を袋から出してライターに火を点けると二人きりで花火を楽しむ期待感からだろうか弾んだ笑みが線香花火よりも煌めきを放って、足取りも軽やかに裕樹から離れていった。
ヘビ花火の閃光が煌めいた時に見せてくれるであろう、最愛の人の極上の笑みを期待しつつ花火に火を点けた。最愛の人が一番気に入ってくれた花火だけに心にも灯りが灯ったような満足感に満たされながら。












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都合により、一日二話しか更新出来ないーーもしくは全く更新出来ないかもーーことをお詫びすると共に、ご理解とご寛恕をお願いいたします。
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諸般の事情で、クライマックス近くにも関わらず中断してしまっていた「気分は、下剋上」夏 ですが(プロットは流石に覚えていましたが、ちょっとした登場人物の名前などその場で思いついた名前とかは忘れてしまっていたため、復習に時間がかかりましたが、「ドライブ~」か「震災編」が終了次第再開する予定ですのでもう暫くお待ちくだされば嬉しいです。


◆◆何とか二話更新出来そうです。綱渡りな感じですが楽しんでいただければ嬉しいです◆◆

気分は下剋上《震災編》154

英語で会話を交わしていたために完全に観光客と思い込んだらしい係員さんは向かい合わせではなく隣り合って座った自分達を特に怪しむ様子は全くなかったことに内心安堵したがーー仕事だから当たり前だろうがーー慣れた感じで扉を閉めた瞬間、ゴンドラはゆっくりした動きで上昇を開始した。
もともとビルの屋上に設置されているだけあって、高い場所からの風景を楽しむーー大阪と奈良の境の生駒山とか案内図に書かれていた場所は第二の愛の隠れ家として慣れ親しんだ大阪のホテルのクラブラウンジからも見ることは出来るがエレベーターは豪華でシックな感じでとても気に入っていたが京都の、呉先生や森技官がお気に入りだというホテルのようにエレベーターの壁がシースルーというわけでもなく完全に人目を遮断する代わりに風景を見ることも出来ないようになっていたので、ラウンジから見下ろすことは出来るーー過程を楽しむ、しかも強化ガラス張りだろうが見渡せる面積は広い空間で裕樹と二人きりというのは初めてだった。
ゴンドラはゆっくりと高度を上げていく。衣服が擦れ合うほど近くに座った裕樹の横顔と、徐々に視界が開けていって大阪の中心地だけあって高層ビルが林立している風景が割と直ぐに高さを追い抜いていく。
強化ガラスーーだと案内図に書いてあったーーでも見晴らしの良さは普通のガラスとは異ならないので充分「非日常」な二人だけの空間だった。
「裕樹、あの双子のようなビルは確か……」
二つのビルがかなりの高層階ーー具体的な高さは自分達もゆっくりと空中高く上っているので具体的な高さは把握出来ないし計算すらも不可能なのが逆に楽しいーーで繋がっているのを二人して見るのもゴンドラの微かな振動とも相俟ってとても心弾む貴重な体験だった。
「ああ、空中庭園ですね。地上何階だったか具体的には忘れましたが、あちらは徒歩で空中散歩を楽しむことが出来るように二つのビルが繋がっていますよ。このゴンドラのほうが高い場所まで上がれますが、機械任せのこのゴンドラとは異なって自分達のペースでそぞろ歩きが出来ますし、最も貴方が気に入った場所からずっと風景を眺め続けることが可能です。この梅田の中心地からは少し離れている場所に有るので面積的にも余裕が有って、確か一階だったと思いますが季節によっては蛍ーーまあ、和歌山のような絢爛豪華さは望むべくもありませんがーーも放されていて綺麗な場所のようですが」
和歌山の蛍と聞いて二人で訪れたこの世のものとも思えないほど空を仄かな瞬きで満たしている舞い散る蛍とその下で愛を交わした夢のような一夜を思い出してさらに頬が上気してしまう。
肩に垂らしていたカーディガンがするりと裕樹の手で外されたので尚更だった。
「興味がお有りでしたら、もちろんお連れ致しますが?
ただあちらもデートスポットなので自由な会話を楽しむことは少し憚られますが、ね。そぞろ歩きの恋人達が集まるので、聞き耳を立てられます」
宿泊しているホテルの近くでアイスクリームを二人して食べた時には忙しげに職務に励んでいる感じのビジネスマンは裕樹との会話に聞き耳を立てられることはなかったが、裕樹が向かったもう一つのホテルのアーケードでは時間に余裕の有りそうな女性客はこちらの会話に興味津々という感じだったことを思い出してーー自分だって夕食用の買い物などで時間に余裕が有る場合に限って言えば一人で歩いている時に英語で話している人を見掛けると無意識に話しを拾い聞きしてしまうこともしばしばあったが、病院内で自分とは関係のない単なる病院見学のアメリカ人医師とか研究者の一群に出くわした時にはそんな時間の余裕もないのでスルーするのが常だった。
特に世界に冠たるiPS細胞の研究室も存在するのでアメリカ人の研究者と稀にしか行かないーー普段は執務室で昼食を済ませていたのでーー病院内食堂でもそうなのだから皆同じような心理状態なのだろう。
「裕樹と自由に話せるほうが私にとっては重要だな。このゴンドラみたいに」
裕樹の右手が頬から顎のラインを辿って、顔を優しい力で持ち上げられる。
「会話だけが重要ですか?つれない恋人ですね」
愛おしそうな声を放つ唇に自分の唇を重ねた。高層ビルよりも高い場所とはいえ、ガラス張りの空間でのキスは魂が薔薇色に震えるほどの恍惚感をもたらしてくれる。
それにポラロイド写真の撮影も申し込んであったはずなのでスタッフに見られたらと思うと微かな羞恥もシャンパンの泡のように心の隅で弾けていた。
もっと裕樹の端整で見た目よりも柔らかな唇の感触を愉しみたい気持ちのほうが強かったのは紛れもない事実だったが。
実際には充分強度も計算され尽くしているに違いないゴンドラも心許なげに揺れていて、裕樹への揺るぎない愛情に裏打ちされている自分の気持ちが羞恥の泡のように弾けるのと同じだろうと思ったが。
ただ、昼間の深いキスに酔いしれてしまう。何もかも忘れて裕樹の柔らかな唇の感触を堪能したい気持ちのほうが強かった。
「貴方との昼間のキスはアルコールよりも心地よく酔わせてくれますね」
僅かに離した唇から裕樹の熱い囁きと呼吸の弾みが唇をしっとりと濡らしていくような心地よさを感じてごく近い距離で視線を絡み合わせる薔薇色の時間にさらに胸が弾んだ。
「こちらも私の口付けを待っているようです、よ」
コットンを押し上げて疼いている胸の尖りに裕樹の指が当たって思わず身動ぐとさらに疼きが増してしまう。羞恥を上回る期待でますます頬が染まってしまう。
「確かめてみても、良いですか?」
もう一度唇を交わした後に確かめるように瞳を凝視されて薔薇色に弾んだ心が理性を奪っていく。











どのバナーが効くかも分からないのですが(泣)貼っておきます。気が向いたらポチッとお願いします!!


◇◇◇
都合により、一日二話しか更新出来ないーーもしくは全く更新出来ないかもーーことをお詫びすると共に、ご理解とご寛恕をお願いいたします。
やっとリアバタがー段落ついたので、次回更新分からは毎日更新を目指します!(目指すだけかも……(泣)

諸般の事情で、クライマックス近くにも関わらず中断してしまっていた「気分は、下剋上」夏 ですが(プロットは流石に覚えていましたが、ちょっとした登場人物の名前などその場で思いついた名前とかは忘れてしまっていたため、復習に時間がかかりましたが、「ドライブ~」か「震災編」が終了次第再開する予定ですのでもう暫くお待ちくだされば嬉しいです。
◆◆◆
体調不良で(夏風邪)でダウン中です。更新時間が遅れたことと、一話しか更新不可能なことをお詫び致します。誠に申し訳ありません。
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