腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

2017年04月

『気分は、下剋上』《夏》30

「申し訳有りません。失礼しました。裕子と申します。裕子は女優さんの田中裕子と同じ字です」
 自分の名前に酷似しているな……とは思ったが、どうでも良いことなので口には出さない。ありがちな名前でもあるので。
「了解しました。で、他の画面は何だったのですか」
 そろそろ帰宅しないと滅多に過ごせない平日の二人きりの夜の時間が勿体ない。
「はい。香川教授のインタビュー記事でした。医師向けのサイトもありましたし、一般雑誌の有料記事もありました」
 医師向けのサイトは医師免許の番号と氏名が一致しないと会員にはなれないサービスだ。ただ、そのサイトそのものは医療関係者を始めとして医学に少しでも興味のある素人も良く知っているのでそうそう驚きはしなかったが。
 祐樹最愛の彼は心臓バイパス術で日本屈指の手技を誇っている看板教授なだけに病院側としても露出に熱心だ。だから病院長命令で時々はお堅い雑誌のインタビューを受けている。
「では、香川教授関連ばかりということになりますね……。脳外科の医局に居ながら未だ未練が捨てきれないのですか」
 内心の暗澹たる思いと共に闘志がわいてくる。ただ、表情も口調も「呆れた」という感じを演出してみた。
 そもそも、最愛の彼に仕事以外の関心などないフリをしなくてはならない身の上だった。
 その脳外科の戸田教授を激怒させたのだから病院内の出世は絶望的だ、それにも関わらずまだ病院にしがみついているのはひとえに祐樹最愛の彼の存在なのは確定的で、しかも「香川教授の懐刀」とウワサされている祐樹のことも良く知っている口ぶりだった。医局関係からは悉く嫌われているのに良くウワサが入ったな……と思ってしまう。それだけ偏執狂的に集めて回ったのだろうか……。
 不定愁訴外来――元精神科所属――の呉先生の警告と共に無残に散らされた小さな命達のことも考え合わせると、ますます危険度が上がってしまう。
「しかし……一度医局に入ったらその分野での専門医を目指すしかありませんよね。ですから香川教授の心臓外科は絶対に無理です。それなのにあのセンセーはそういう現実をちっとも分かっていらっしゃらないのかと……」
 彼女は無残な亡骸を実際に目撃した衝撃からか、華奢な肩を震わせている。あるいは、研修医のクセに人もなげに振る舞う井藤への怒りなのかもしれなかったが。
「しかし、何故その画面が香川教授のインタビューだと分かったのですか……」
 医局は当然のことながら人の出入りが多いのでのんびりとPCの前で盗み見めいたことをしている余裕はないハズだ。たとえそのデスクが医局の嫌われ者の研修医のモノであってもやはり常識的な反発は必至だろう。
「いえ、全てに教授のお写真が載っていましたので直ぐに分かりました。
 あの端整で怜悧なお顔は一目拝見すれば分かりますので」
 雑誌によっては談話のみという扱いもあるが、殆どが写真付きだった。
 端整で怜悧な容貌というのは祐樹も全く異存はない。出会ってから随分になるが、病院や厚労省で見せる彼の形容にはとても相応しい。
 二人きりの時には全く違った顔を見せてくれるのは祐樹だけの胸に収めておくことにする。
「ああ、なるほど。それならば納得です。記事本文を読まなくても分かりますからね」
 あれだけ魅力的な容貌の持ち主なのに本人だけがあまりピンと来ていないのも今の場合は危険だった。
 井藤がどういう積もりで執拗に追い回しているのかは未だ不明だったが。
 彼の手技が天賦の才能だと思い込みむやみやたらと嫉妬と敵意の対象になっているのか。
 それとも祐樹の直感通り、彼に一方的に惚れているのか。病院内限定に限った話だが遠くで見守るだけなら百歩、いや千歩譲って許しても良いような仏心くらいは持ち合わせている。しかし、それはあくまでも相手が正常な精神状態に限っての話しで、井藤とやらは論外だった。
 それに呉先生が血を見るのが大嫌いということに唖然としてしまった過去を持つ祐樹だったが、精神的におかしい人間の相手をするのは苦手過ぎていつになく精神力を消耗した気がする。
 こういう時は、詳しい人間の力を借りるしか手段はない。
 森技官が明日来てくれるのを待つしかない。彼も祐樹程度の直感は持ち合わせているし、何よりも祐樹以上に好戦的な彼の性格ならどうするかを――あくまで彼の協力が得られればの話しだが――出来れば聞いてみたい。恋人の呉先生の尻に敷かれている森技官なので、彼の口添えが有ったら動かざるを得ないだろうが。
 それに何より今は厚労省の講演なども引き受けているので保護対象人物に認定されているハズだ。そうそうムゲには出来ないだろう。東京でも彼の身に不測の事態が起こることのないように藤宮さんという任務至上主義の腹心の部下をつけてくれているくらいだ。藤宮さんは最新鋭のロボットか何かのように与えられたミッションは完璧にこなす能力を持ち合わせているが、それ以外のことは全く考えないという、ある意味高級官僚らしからぬ一面がある。
 ちなみに同じ医局の柏木先生の奥さんと従姉妹ではあるが、性格は全く異なる。ただ、旧姓藤宮さんも手術室の道具出し係だったので運動神経とか正確さを求められはするが患者様と話す機会のないという点でもしかしたら従姉妹と似ているのかも知れなかったが。
「香川教授の手術を見に行っているというのは初耳でしたが、PCの画面が全部香川教授なのに驚いてしまって、そっとデスクのファイルまで見てしまいました。もちろん、辺りの気配を伺いながらですけど……」
 誰にでも丁寧な口調で語りかける最愛の彼はその実績を鼻にかけない謙虚さが病院内でも人気のあることは知っている。目の前の彼女もそういう好意的なウワサを嫌というほど聞いていたに違いない。
 それに何より、その行動力は素晴らしい。久米先生とのセッティングを絶対に実現しようと改めて思う。彼女が喫煙所で愚痴をこぼしていたのは院内に深い繋がりを求めるのが第一目的のような気すらしてしまう。脳外科ではなく香川外科所属の誰かと知り合いたくて佇んでいたような。まぁそれ以前に井藤の小動物の酷い扱いにも深い憤りを覚えていたのだろうが。
「それは医局の一員として本当に有難いです。お礼を申し上げなければなりませんね。お礼の言葉だけでは足りないようですので、久米先生に絶対に紹介させて頂きます。
 それで何か収穫は有りましたか」
 彼女の持っている情報の深さを思えば久米先生の一人、いや十人でも売り飛ばしてもいいだろう。
 彼女のアクアマリンの微笑がいっそう華やいだ。これは久米先生が余程の自爆行為を仕出かさない限りは大丈夫そうな感触だ。
 久米先生も幸せになって欲しいが、それ以上に最愛の彼に狂気の牙が向くことがないように。



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諸般の事情で途中で切れてしまっていた『気分は、下剋上』《夏》ですが、旧ブログに跳んで読んでください!と申し上げるにはあまりにも長いのでこちらに引っ越しします。
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『気分は、下剋上』《夏》29

 最愛の彼の足もとに及ばないまでも、目の前の女性は世間からすると充分魅力的な女性だろう。
 絶対に久米先生と飲み会なり何なりを設定しようと心に決めて、祐樹の隣の席に大切に置いてあるお菓子の包みに目を遣った。甘いモノ好きな恋人が一番執着しているメーカーのマカロンで、そう言えば呉先生も冷蔵庫で保管していた。このクーラーが効いているとはいえ暑い夏には耐えられない繊細なお菓子なのかもしれない。
「あ、すみません。コーヒーのお代わりを頼んで良いですか?貴女も良かったらお好きな物をオーダーして下さい」
 目の前の彼女が目を瞠ってかぶりを振る。アクアマリンの清楚な眼差しはとても魅惑的なので、うかうかしていると患者さんとか見舞客、もしくは病院関係者に告白される前に手を打つ必要が有った。
 コーヒーを頼むついでにマスターに冷蔵庫を貸してくれるように頼むと快く引き受けてくれたので助かった。
 この包み紙を開ける時の透明な薔薇色に弾んだ笑みとしなやかな指を見るのは祐樹の密かな楽しみなのだから。
「話しを中断してしまって申し訳有りません。で、そのPCの画面ですが」
 新しく運ばれて来たコーヒーを飲みながら話の先を促した。出来れば早く帰って最愛の彼と二人で寛ぎたい。
「ウチの病院の外部サイトです。院内LANではないところからネットに接続しているのだと思いますが。そしてその画面には心臓外科のスタッフ紹介のウインドウが開かれていて……」
 驚きの余りタバコに火を点けてしまう。病院がサイトを開設しているのは祐樹だって知っているが、内部の人間がそんなHPを閲覧する方が稀だろう。
 ただ、名ばかりとはいえAiセンター長の自分は「死後画像診断」の方では顔写真まで晒している。本来の所属先の医局の方はどうだったか忘れているが、最愛の彼の画像は勿論載っていた。
 心臓外科――通称香川外科――は病院の看板なのでかなり大きな扱いだったと記憶しているが、祐樹自身は顔を出しているかどうかは驚異的な記憶力を持つ最愛の彼と違って思い出せない。ただ、井藤とやらは写真付きIDなしでも祐樹の名前を知っていたのは病院のサイトで得た情報なのかもしれない。そしてそこまで粘着質に絡まれるとは想定外だった。
「その画面にはウチの教授の画像が載っていたというわけですか……」
 コーヒーに罪はないものの、祐樹の心もコーヒー色の暗澹とした気分になってしまう。そして微かにさざ波が立っているのも祐樹の心の揺れと同じだった。小さな波どころか精神的におかしな人間の作り出す渦の中に否応なく巻き込まれた気分だった。
「はい。どうして内部の人間が外部サイトを見るのかと不思議な気がして……。思わず見入ってしまいました。幸いにも医局には誰もいらっしゃらなかったので。
 香川教授のメッセージの載ったページでした」
 恐らく患者さんの容態急変が何人も出たとかそういうことだろう。戸田教授の総回診なら目の前の彼女も同行しなければならないので。
 それはともかく最愛の彼の画像を見ていたという点が最高に引っ掛かってしまう。外部用のサイトなど病院関係者の関心の埒外だ。
「なるほど……。普通は見ませんよね。ウチの教授の手術も何度も見に来ているようですし……。それに久米先生のことも逆恨みしているとお……貴女は教えて下さいました」
 目の前の彼女が岡山だったか岡田だったか、またはそれ以外の似た名前だったか忘れていたので、慌てて言い直した。
 祐樹が生涯で唯一と思い定めている最愛の彼に対する粘っこい執着を目の前の彼女から聞いて、背筋に冷たい氷を押し当てられたような気分だ。
「はい。それにウインドウズだったので、何個か窓が開いていました。何故こんな――と申し上げれば失礼ですよね……、香川教授の医局の方に」
 「こんな」にマイナスの意味を持たせていないことは彼女の鈴を転がすような口調で判然としている。
「いえ、病院のサイトは私もハッキリと見たことはないのです。兼務しているAiセンター長の方は一応責任者なのでチェックはした覚えは有りますが、ウチの医局紹介などは一度見ただけのような気がします。ですから貴女の仰言りたいことは分かります。何窓か開いていた……のは全部ご覧になられたのですか?
 ところで、お名前は」
 久米先生に紹介すると決めた手前、名前くらいは知っていなくてはならない。そして、彼女が病院内でどうウワサされているかも一応チェックはしておいた方が良いだろう。
 清純で清楚な美貌の持ち主だが、外見がそうだからといって行状が芳しくないと久米先生も迷惑だろうから。
「岡田ですが
 そして、医局に誰も居ない上に香川教授の画面を開いているのがとても不自然だったので、他のもついつい見てしまいました……」
 肩を竦めてピンクの唇を悪戯めいた笑みで刻んだ。その方が――異性に興味のない――祐樹にも魅力的に映ったのは事実だった。
「それは知っています。私が伺ったのは下のお名前です。うっかり聞き流してしまったので。そして貴女はそういう笑顔の方が似合いますよ。久米先生とのセッティングは私が責任を持って行いますから、その表情で臨まれれば良いかと思います。
 それは置いておいて他の画面は何だったのですか」
 本当はフルネームを綺麗さっぱり忘れていたが、そういうことは言わない方が良いだろう。
 他の画面が何だったか非常に気になってしまう。やはり祐樹の、出来れば的中して欲しくない勘が当たったようで心はコーヒー色よりももっと暗く沈んでいる。表情には決して表していない自信は有ったが。


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『気分は、下剋上』《夏》28

「香川教授のプライベートな話しは医局でもほとんど噂にはなりません。尊敬とか敬愛の対象なので噂にするのも何となく憚られるというか……」
 祐樹の「彼女」のウワサは率先して流してきた。その方が最愛の彼との本当の関係を隠すための煙幕になりそうだったから。ただ、ナースの情報網を甘く見ると大変なことになるので予防線を張り巡らせておいた方が絶対に良い。
 それに彼の場合、病院の稼ぎ頭とか厚労省も認めた心臓バイパス術の世界的権威ということも相俟って私生活を詮索するようなモノ好きはいない――と、信じたい。
「そうですね。私達ナースにとっては雲の上の人……ですから。その点田中先生は『研修医時代から気さくで話しやすい。あんなに出世しているのにナースなどにも分け隔てなく相談に乗って下さる』と評判です。お忙しいのでそんな機会は滅多にないようですが。今日、こうしてお誘い下さって二人きりでお茶したと同僚に喋ったら随分と羨ましがられると思います。
 それに久米先生の件は口約束……なのでしょうか」
 少しでも多くの情報を彼女から聞き出したくて、先を急ぐことにした。メロンが一体どうしたというのだろう。祐樹が手渡したハンカチを何だかお守りのように握りしめている。
 小動物に対して酷いコトをした井藤を脳裏から消し去るためのおまじないかもしれない。
「はい。久米先生の件は私がお約束します。まぁ、お相手のあることなので……。二回目以降は――もちろん相談には乗りますが――お互い好きになさって下さい」
 久米先生はあんなに出会いを求めていた上に、祐樹の言うことには唯々諾々と従うのは慰安旅行の「夜」の幹事役で証明済みだ。
 それに目の前の岡山さんだか岡田さんだかはすっかりその気のようだったので祐樹としては心が楽だった。
「ああ、香川教授の件でしたね。黒木准教授から漏れ聞いて医局限定で広まったウワサによると活け伊勢えびだろうが物凄く大きな鯛だろうがご自分で料理なさるそうですよ。
 私には絶対無理な話でとても感心した覚えが有ります。私は仕事以外で手を動かすのは苦手ですし、殆どの医局員もそうです。そして黒木准教授の奥様も嫌な顔をなさるので、そういう差し入れが有った時は教授自らが持ち帰って料理なさるとか」
 驚きに目を見開いた彼女はアクアマリン――祐樹が最愛の彼に贈ったルビーの指輪を買いに行った時にたまたま見た――の碧い色を彷彿させる清純な色を浮かべている。清楚な若さが匂い立つ風情がとても綺麗だった。
 異性には興味が全く持てない祐樹が見てもそう思うのだから久米先生が気に入ってくれればいいな……と思う。彼女には助力を、久米先生にはアドバイスという名の圧力を惜しむ積りは毛頭ない。
「そうなのですか。教授が料理をなさる姿は想像出来ません。遠目で拝見した限りでは私達と違った浮世離れした感じの雰囲気を漂わせていらっしゃいますから」
 「彼の料理は物凄く美味しいですよ」という言葉を口にしたいが、突っ込まれるのは分かりきっているので黙って微笑むしか出来ない。
「そうですね。教授はプライベートな時間に何をなさっているかは医局の中でも謎に包まれています。チラリと黒木准教授に漏らす程度ではないでしょうか。
 で、メロンがどうかしましたか」
 教授職ともなると――医局で嫌われている場合は別だが――本人が私生活のことを話さない限りミステリアスな感じだ。格別フレンドリーな性格の教授ならともかく。ただ、そういう教授は病院内には数少ないが。
「お忙しい田中先生と話し込んでしまって本当に申し訳なく思います。それにそのお菓子の包み紙は甘いモノがお嫌いな田中先生がご自分で召し上がるわけではないでしょう。
 これからデートだったら私に割いて頂く時間はもう充分です」
 女性は目敏いなと思ってしまう。呉先生から貰ったマカロンの箱――中身までは彼女も流石に分からないだろうが、甘いモノしか売っていないメーカーだけに即座に察知したに違いない――
「ええ、実は最愛の『彼女』を喜ばせようと思いまして。ああ、時間はまだ大丈夫です」
 滅多にない定時上がりの日なので出来れば最愛の彼と寛いだ時間を過ごしたい気持ちはやまやまなのだが、井藤という研修医は祐樹の勘では最高値レベルのリスクを告げているので情報収集は怠ってはならない。 
「患者様から某先生に差し入れメロンの大きな箱を持って医局に行った時に、ついうっかりと転びそうになりまして……」
 恥じらいにうっすらと頬を赤らめた彼女も清純な美しさに満ちている。こういう女性は異性に好かれやすいと何かで読んだことがあるので、久米先生も気に入るような気がした。
 目の前の美人さんが久米先生を好きになってくれればいいのだが。
「それは良く分かります。ウチの医局でもそうですが、製薬会社とかからの試薬だとかパンフレットやその他事務用品の差し入れとかで、忙しい時には床に置いたままになりますから。つまずいてしまうのも無理はないです。それにメロンの箱もかさばりますからね。
 このお菓子の箱など可愛いものです」
 「転びそう」ということは実際には未然に防げたハズで、その時彼女は何を見たのだろう。
 彼が大好きな菓子メーカーのマカロンの箱に視線を走らせながら続きを促した。きっと彼は極上の笑みを浮かべていそいそとコーヒーを淹れながら祐樹にも幸せ色を分けてくれるだろう。甘いモノを食べている時の彼の顔は目の前の彼女よりももっと無垢なダイアモンドのような眼差しの光りがとても愛おしい。
「そう仰言って頂くととても嬉しいです。
 転倒だけは避けようとメロンの箱を手近な机に置こうとしました。それが例のせんせーのデスクだったのは偶然なのですが」
 医局に居場所がないらしい井藤とやらがそのデスクに居なかったのは幸いだったと思う。もしデスクに座っていたら烈火のごとく怒ったハズなので。井藤とやらは看護師ごときと公言して憚らない幼すぎるメンタリティの持ち主――専門家の呉先生は精神性ではなく病気を疑っていたが――だ
「怪我はありませんでしたか……。
 そして何をご覧になったのですか」
 目の前の彼女は心を落ち着けるように飲み物を一口飲んだ後に唇を開いた。
 アクアマリンの眼差しに不可解そうな光が加わっている。ただ、先程のような肩の震えはないので、そう残酷なコトではないのだろう。
「御心配有り難うございます。転倒は免れましたし大丈夫でした。
 メロンの箱を置いたらマウスが動いてしまって……そしてどんな設定にしていたのか、PCの画面が見えてしまいました」
 マウスを動かしただけで画面が表示されるとは随分と安直な設定にしているに違いない。ただ、医局の鼻つまみ者になっている井藤とやらは院内LANは他のPCでしか閲覧出来ないのかも知れない。祐樹もインターネットに接続可能なPCも使っているが、院内LANは情報漏えいが怖いので別のPCから見ている。それと同じことだろうか。
「その画面が問題なのですね……。一体どんな画面でしたか。
 御怪我がなくて何よりでしたが」


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気分は下剋上 ドライブデート 61(I8禁)

イメージ 1

『神秘的なサファイア色も素敵でしたが、愛の交歓には情熱的なルビーの色が良く似合いますね。せっかく洗い流した後ですが……もう一度求めても良いですか?
その代わりと申し上げては何ですが、智の好きな場所にお連れしますよ』
耳元で熱く囁くと、しなやかな肢体がひらりと跳ねてバスタブに妖艶なさざ波が立った。
薔薇色の耳朶を甘く噛みながら、いつもより少し大きく尖った胸のルビーを爪で辿った。
『一回くらいなら、洗い流してもらわなくても大丈夫だし……行きたい場所は……裕樹の居る場所ならどこでもそこが居たい所なので……。それに、裕樹がその気になってくれる方が嬉しい……な』
薔薇色の唇がルビーの粉を振り撒いたような愛の言葉を紡いでくれる。それにこの人は恋人を有頂天にする殺し文句の達人なのは知り合ってからずっと思っていたことだが、多分本人に自覚はないのだろう。
『聡がお好きそうな場所は探しておきます。ココの』
濡れた二つのルビーの尖りを爪で強く弾いてから強く摘む。さっきまで愛の小道具に使っていた苺なら潰れてしまう強さで。
『あっ……』
バスタブに浮かんだ薔薇の花びらよりも綺麗な色に染まった肢体が裕樹の方へと愛撫を強請るようにしなやかに仰け反った。薔薇色の吐息を零しながら。
『ココの艶やかさとか肢体の全てがルビー色に煌めく様子を見せて下さいませんか?』
橋のライトアップが最も良く見える位置へと最愛の恋人を優しく誘った。
全面がガラス張りなので、ルビーの神秘的な煌めきと濡れた薔薇の花びらを飾りにした最愛の人の肢体はいつも以上に神秘的で艶めかしい煌めきを放っている。
『私の指がルビーの尖りを愛する様子をご自分の目でも確かめて下さい。ガラスに映っていますよね?』
綺麗なラインを描くうなじに唇の刻印を刻みながら、上半身が動くくらいの強さで胸の尖りをキツく摘んだ。
『ああっ……ゆ……裕樹……そんなに……されたらっ……』
薔薇色の濡れた嬌声がバスルームのルビー色に良く調和して極上のシンフォニーを奏でている。清楚な淫らさに満ちた音色で。
『ゆ……裕樹っ…』
細い首筋もルビー色に染めた彼が背後を振り返って熱い吐息を零す薔薇色の唇を上向けた。キスをねだる様子は苺の可憐さも含んでいて、唇を重ねずにはいられない。
白い滑らかな歯列を辿り上顎を舌で丹念に愛しながら、胸の尖りの側面を唆すように強く摘んで小刻みに動かすと薔薇色に染まった脚が優雅な花のように開いていく。
『綺麗ですよ、とても。ご自分で……花園の門を開いて……私を……迎え挿れて……下さい』
ルビー色に濡れた艶やかな肢体と切れ切れに上がる慎ましいながらも壮絶な色香を纏っている声に情欲の炎が刺激される。
薔薇の花びらと匂いやかに香り立つ裕樹を求める肢体の聖なる淫らさにも最高にそそられる。
薔薇色の細く長い指が瑞々しさに艶めく双丘を自ら開いていくのも、ルビー色の艶かしさだった。
『ゆ……裕樹っ……来て……』
蠱惑的なお誘いの言葉は妖精の羽根のように、か細く紡がれるのも眩暈がするほど魅惑的だった。
一気に花園の奥まで貫くと、ルビー色の肢体が淫らな弧を描きながら仰け反った。
『ああっ……とても……』
悦楽を訴える声も薔薇の上の雫のような儚さと蠱惑さで煌めいている。
ヒタリと裕樹を包み込んでは強く緩く極上の動きをする花園から一旦退いて、大きな動きで花園を一気に穿った。
『あっ……ゆ……裕樹……』
湿った肌の立てる音と最愛の人の悦びの声が浴室をルビーの煌めきを深めていく。
その時に、部屋のドアをノックする音が微かに響いて、その後ドアを開ける気配が漂ってきた。
『声は控えて下さいね。覗かれたら、困るでしょう……』
小声で囁きながらも胸の尖りと花園への強い動きはリズムを刻み続けていた。花園の中も、そしてルビー色の肢体も小刻みに震えている。ただ、薔薇色の指が唇に当てられて声だけを防ごうと健気な努力を払っていたが。
『ちなみに浴室のドアは開いたままです。気配は漏れているかも知れません、ね。寝室のドアも、そういえば開けっ放しでした』
薔薇色の耳元で囁きながら花園を力強く蹂躙し続ける。
薔薇色を増した肢体が小刻みに震えては、ルビーの雫を撒き散らすような色っぽさだった。
裕樹のウソを真に受けて羞恥と快楽に震えている大輪の紅い薔薇のような姿はライトアップされた橋などとは比べ物にならないほど魅惑に満ちていた。








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読んで下されば嬉しいです。

気分は下剋上《震災編》64

『貴方の器用さは良く存じていた積もりですが、注射もそこらの内科医よりも手際が良いのかちっとも痛くないですね。老後はやはり外科のクリニックを二人で経営しましょう。赤字にならない程度にのんびりと運営すればそれで充分ですから。私の退職金は全部それに費やしても大丈夫なくらいには出世します』
救急救命室からメインロビーへと向かう道すがら裕樹はとても楽しそうに老後のプランを口にした。
そんな、他人が聞いたら緊急時に不謹慎だと怒りそうな話題でも、心は薔薇色に弾んでしまう。それにリラックスする時はとことん休むのは鉄則で、裕樹はそれを心得ているからに違いない。学生時代にボランティアで救急救命室に入り浸っていた自分とは異なり、裕樹の場合は医師として研修医時代から働いているのだから背負う責任の重さは自ずと異なるのも当たり前だった。
『あ、自衛隊のヘリの着陸音だ』
裕樹は左手を確かめるように触った後に微笑みを浮かべた。
『痛みは皆無です。やはり愛する貴方が選んで下さった鎮痛剤の方が森技官のよりも私には効果があるようです。
急ぎましょうか?』
真顔に戻った裕樹は自信に満ちた表情と歩き方に変わっている。男らしい凛とした表情も自分を惹きつけてやまない裕樹の活き活きとしたオーラもよりいっそう強まったように思えるのは、きっとあの神懸かり的な手技を成功させたことによるのだろう。
『そちらから行くのか?』
人の気配のない場所では肩を並べて歩く習慣が出来上がっているが、病院の人間の目の触れそうな場所ではやはり自分が先に歩くことになる。
『指揮台からでは分からないことも有るかと思いまして。玄関から入ってみませんか?』
裕樹の判断もあながち間違ってはいない気がして、正面玄関の方へと足を早めた。
メンズナースが慌ただしくストレッチャーを押して怪我人を搬送している。多分慣れたせいで手際が良くなって、患者様は二人同時というハイスピードだった。ただ藤宮さんならこの程度では動じないだろうが。
正面玄関先にはボランティアの学生や看護師が安否確認ボードに名前と年齢などを記した紙を貼ったり、電源に繋ぎっぱなしのタブレットに一心不乱に情報を打ち込んだりしている姿が目につく。ただ、通路などは充分過ぎるほど確保してあるのは藤宮さんの的確過ぎるほど素晴らしい判断力の賜物だろうが。
『この患者さん、ブラックはおかしいのではないですか?まだ息をしています』
山崎医師が藤宮さんに詰め寄っているのを見て、さらに足を早めた。山崎医師の判断には全く信頼に値しないが、藤宮さんが実は病院内部の人間ではなく厚労省にも許可を得ていない森技官の好意の賜物なのを暴露されたくはなかったので。医局が異なる以上は配慮しなければ後々どんな形でしっぺ返しが来るか分からないのも事実だった。
手早くバイタルチェックを施す自分とは異なって裕樹は佇んだまま患者さんの容態を診ているだけだった。
『ブラックが正しいです。内臓に多量の出血、しかも源発は多数。自発呼吸は辛うじて有りますが、二分後には止まるでしょう。残念ながら対処は不可能です』
裕樹が有無を言わさない冷徹さを含んだ声で断言した。
脈拍も徐々に弱まっていくのを手で確認しながら裕樹のーーそして藤宮さんのーー判断が正しいことを実感した。
『二分後だと?どうしてそんな……』
山崎医師が言いがかりめいた感じで裕樹に詰め寄った。ユニットから外された恨みを晴らす積もりかもしれない。
『私の判断が正しいかどうか、先生ご自身で確かめられたら宜しいかと思います。あと1分ですよね』
自分や藤宮さんですら患者様のバイタルチェックは触診で確かめているハズで、裕樹は診ただけの判断だ。それなのに正確無比な判断が可能になったのも、救急救命室勤務が伊達でなかった証拠だろう。
キッカリ1分後に心肺が停止した。
『ブラックの搬送を例の場所にお願いします』
メンズナースにそう告げてーー霊安室は一杯になることが予め分かっていたので実は会議室の一室をご遺体安置所と決めてあったーー藤宮さんに感謝の目配せを送った。ごく事務的な表情で頷き返された後に、患者様の個人情報をボランティアの女性に告げている。
山崎医師は呆然と立ったままだったが、力量の差を見せつけられたせいか何も言い返すことはなかった。
裕樹がこれほどまでに医師として成長してくれたことに心の底から喜びを感じながらも、気を引き締めないと追い抜かれる日が近いような気がして手技を磨こうと心に決めた。ただ、手技のスキルが並び立つ日が来ても裕樹の愛情は変わらないことは確信出来たが。








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