「やっと、二人きりになれましたね……」
 客室の木の扉が音もなく閉まったのを合図に最愛の人の花よりも綺麗な唇に口づけを落とした。
 何時ものように舌を絡ませるわけでもなくて薄紅色の唇が紅色に煌めくように、やや薄い唇を甘くきつく吸い上げる。重なった唇が奏でる濡れた音がヨーロッパの貴族の館を模した客室に甘く響いていく。
 最愛の人も潤んだ目を艶やかに見開いて祐樹の顔を見詰めてくれている。口づけを繰り返しながら着衣を床に落としていくと、最愛の人も祐樹の着衣を同じように乱してくれた。その性急な愛の仕草に身体の熱が上がって行く。
「一糸(まと)わぬ聡を見ることが出来るのは私だけの特権ですよね……」
 一歩下がって薄紅色に染まったしなやかな肢体と甘く潤んだ端整な顔に視線が釘付けになる。
「祐樹だけの特権だけれども、私だって祐樹の何も着ていない姿を独占したいのだが……」
 愛らしい我儘(わがまま)を紡ぐ最愛の人も健康な蠱惑に満ちていた。
「別にここまでの姿を他の人には見せていませんよ……。シャワーは個室ですし……」
 艶やかに濡れた切れ長の目が驚いたような光を宿す。
「そうなのか……?てっきり……」
 この人は大学病院の手術準備室に入ったことがないという事実をすっかり忘れていた。旧態依然のヒエラルキー制度が蔓延(はびこ)っている病院では教授用の個室は有ってもその他の医師は使えない。執刀医であってもそれは同様なのだけれど、大学病院勤務を経ずにアメリカに行ったせいでその辺りの事情は知らないのだと。
 ただ、最愛の人がそんな些細なことまで気にしていたとは思わなかった。祐樹にとって色香だけを纏った最愛の人の肢体は誰にも見せたくないけれども、祐樹の身体などは……と考えて、逆もまた(しか)りなのかも知れないと思い至った。
「ただ、こんなふうに反応した姿は絶対に聡にしか見せませんけれど……」
 先ほどの接吻の最中に薫ってきた最愛の人のコロンとか、雨に濡れた花のような風情の紅色の唇の感触とか最愛の人が脱がしてくれた布地の擦れて若干(きざ)した部分を手で大きく育てようと手で包んだ。
「それを育てるのも私の特権だろう……」
 薄紅色の指が祐樹の手を其処(ソコ)から離してくれる。
「それはそうですけれども……」
 手首を優しく掴んで制止した。
「続きはベッドで、ね」
 一区切りの意味を込めて紅色の唇に唇を重ねた。最愛の人は嬉しそうな(つや)やかな笑みと潤んだ透明な眼差しにだけ愛の交歓への期待の色を宿しているものの、胸の尖りも愛情と欲情の象徴も「()だ」反応してはいない。素肌は薄紅色に染まっていたけれど。
 最愛の人がいそいそとした感じで祐樹の指の付け根まで指を絡めてきた。
「聡がそういう軽いスキンシップを好んでいた気持ちが今晩身に染みて分かりました。こういうのって、心の底から愛した人でないととしても意味がないというか……、心が満たされないというか……。ずっとそういう気持ちで手を繋いでいてくださったのですね」
 付け根を強く握ると、しなやかな肢体が艶やかに軽く反った。
「祐樹のことをずっと好きだったし、これからも愛し続けると神様でも何にでも誓えるのは事実だけれども……手を繋いでいる時は心が満たされるというよりも、ライナスの毛布のような感じかも知れない。それを触っていると安心するという……。そういう子供じみた気持ちの(ほう)が強いかと……」
 最愛の人が祐樹を見上げて散らされるのを待つ花のような風情の笑みを浮かべている。
 ライナスの毛布は「スヌーピー」の登場人物がいつも持っている毛布のことだ。
「なるほど……。それはともかく、大人の時間を愉しみましょう、ね。聡」
 薄紅色の耳朶(じだ)に甘く低い声を滴るように浴びせてから軽く噛むと胸の尖りがごく薄い色ながらも存在を主張しているようだった。
「祐樹、ベッドの上で愛し合いたい……」
 尖りに指先を当てて円を描くと硬度が増してくる。その変化を楽しんでいると甘く蕩けた微かな声で言葉が紡がれた。
 二人して純白のシーツの波へと倒れ込むと、最愛の人は萌し始めた祐樹の欲情と愛情の象徴の(ほう)へと肢体を翻している。
 先ほどの「特権」を果たす積りらしい。そういう律儀な性格も愛しさが募る。
「聡……積極的な感じで嬉しいですよ……」
 足の付け根の滑らかな皮膚を指で辿って半ば育って立ち上がった花芯と二つの果実を(そそのか)すように撫でると薄紅色の肢体が若木のしなやかさで跳ねるのも扇情的過ぎる眺めだった。
 最愛の人の唇がソフトクリームを舐めるような音を立てている。負けじと祐樹も花芯を唇で挟みながら先端部分を舌全体で強く愛した。
 お互いの欲情と愛情の象徴を育てる淫らでいながらどこかひたむきな濡れた音が室内の空気を愛の色で染めていくようだった。
 次第に熟していく花芯を口で愛していると開花を急ぐ花のように両の足が開いていく。
 双丘を湿らせた指で割り割いて花園の門をくるくると円を描くと祐樹にだけ許された場所が徐々に開いて指を迎え入れてくれた。
「あっ……。そこっ……」
 凝った蕾を押すと肢体が跳ねて熱い口の中から祐樹の屹立が零れてしまった。その空虚感を埋めようと本能が強く揺さぶられる。
「聡の極上の花園の中は私を求めて下さっていますよね?そろそろ、聡の天国を私の最も敏感な場所で愛したいのですが……。出来ればお互いの顔を見ながらが良いです」
 祐樹の指を熱く厚いシルクの感触で包み込んだ場所が貪婪な動きを始めている。
「分かった……」
 紅色の肢体が鮮やかに翻って祐樹へと向き直った。その艶やかな姿に見入ってしまう。




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