「聡の唇……今宵は何時(いつ)もよりもきっと甘いですよ……。抵抗感は全くないですから」
 真率な声で告げると最愛の人は紅色の唇を祐樹の唇に重ねてくれた、おずおずとといった感じなのが最愛の人の奥ゆかしさだ。
 紅色の唇を舌で辿ってノックをするように(つつ)くと観念した感じで閉じられた唇が花開いた。
 滑らかな歯列を辿って紅い歯茎、そして舌の付け根といった場所を舌で愛した。当然、祐樹のばら撒いた真珠の味もしたが、最愛の人の口の中に宿っていたものだと思うと不快感は全くなくてむしろ愛おしい甘さに感じてしまうのは愛情の深さ(ゆえ)だろう。祐樹の舌の動きが全く躊躇(ちゅうちょ)をしていないことを感じた最愛の人は安堵したように祐樹の舌に絡んできてお互いの先端部分を擦り合う。()めやかな水の音が秋の空気を紅く染めるような気がした。
「私のモノを口で愛して下さっている時に……」
 情熱的なキスのせいか、再び並んで座った最愛の人はしなやかな肢体を祐樹の身体に凭たせ掛けている。秋の冷気にも関わらず最愛の人の肢体は愛の行為の余韻のせいか普段以上の熱を孕んでいた。これなら風邪を引くこともないだろうな……と思いながらもあまりこの場所で身体を冷やすのは良くないとも。
「部屋に戻って……続きを致しましょう……。唇で愛して下っている時に聡の腰が物欲しげに揺れていましたよ……私を欲してのコトですよね……?」

 紅色に染まった最愛の人の頬が更に紅を刷いたように染まって行く。
「そういう聡の姿を見ることが出来たのも、私にとっては大変幸せな時間でしたが……」
 愛の交歓の時には奔放に振る舞う最愛の人だけれども、我に返った時には羞恥心が勝る人だ。だから祐樹のフォローに安堵したような笑みを浮かべてくれた。
「聡の素肌にはまだ紅葉の葉が宿っていますか?」
 紺色の浴衣で覆われた素肌までは祐樹には分からない。
「祐樹が貼ってくれた葉だろう?ここにある……」
 紅色の指が浴衣の上を指している。指しているどころか、葉の形を再現するような感じでしなやかに長い指が浴衣の上を滑っていく。肝心な場所ではないものの、何だか自分で自分を慰めているような錯覚を抱くのは紅色の指が愛の行為を即座に連想させるからだろう。
「それは良かったです……。あと松ぼっくりも部屋に持って帰ってと……」
 何を想像したのか最愛の人の肢体がヒクリと震えた。これは煽っておく(ほう)がもっと悦楽が深くなるだろうと、最愛の人の肩に手を回して更に身体を密着させた。
「聡はご存知ないでしょうが……地域住民も暗黙の了解で夜は近づかない場所が有るのです……。何の変哲もない木立に囲まれた公園なのですが……。そこは夜になると、私達のような性的嗜好を持った人が集まって来ます。刹那の恋人を求める人とか、意気投合して愛し合う人も当然存在しまして……。その愛の行為を単に覗きに来ただけの人も多数存在します。聡の壮絶に艶っぽい色香を放つ肢体とか、私が(はい)って行く時に極上の花園の門が(まく)れ上がって真っ赤に咲いた花のような赤さを垣間見せて下さいますよね……。ああいうのを一度皆様の前でしてみませんか……。ギャラリーが絶対に増えると思うのですが……。それにああいう場所は一種の治外法権みたいなものなので、そこで起ったことが外部に漏れる心配はないです。まあ、スマホで撮影する人間とかは居そうですけれど……多分、一人でこっそり倒しむくらいでインターネットにアップするようなバカは居ないでしょう……」
 具体的に想像したのか、祐樹の身体にも最愛の人の震えが伝わってきた。ただ恐怖で震えているわけでないのは首筋が更に紅く染まっていることでも明らかだ。
「あとは……そうですね……。先ほどの聡の唇での愛撫、あれも最高でした。紅い唇に私の怒張が飲み込まれていく様子……。視覚的にも充分な快感を運んでくれてくださいましたよ。あれを再現してみませんか……」
 実際にそんな場所が有るということは祐樹もゲイバー「グレイス」で聞いて知っていたが、その場に行って相手を探すまでもなくグレイスで事足りたので実際に足を運んだことはない。
 祐樹の愛情と欲情の象徴を唇で愛してくれた時に腰が揺らめいていたのも事実だったが「そういう場所」だと、もう一人が参加する可能性は極めて高い。祐樹や最愛の人は異なるが、こういう性的嗜好を持っている人は複数で……とか、カップルで来たのに、お互いが異なる人間と繋がっているのを見てより興奮を深める人も居るらしい。ただ、そこまで言うと本当に恐怖に震えそうなので自粛したが。
 今夜のような浴衣姿だと、高く上がった腰に挿入を試みる人間が絶対いる。最愛の人は顔も肢体も極上なので、(じか)に味わってみたいと思う人間は多いだろうし……。
「……こういう姿を見せるのは……祐樹だけが良い……。他の人には絶対に見せたくない……」
 紅い唇が震えながら言葉を紡いでいる。
「それは、う……残念です。聡の艶やかな姿を独占したいと思う反面、誰かに見せつけたいという気持ちも常に有って……。聡だけを愛している私の相反した気持ちが(せめ)ぎ合うのも、愛情が深すぎる所以(ゆえん)ですよね……。こんな感情を抱いたのは聡が初めてですし、聡が一生傍に居て下さると約束して下さいましたよね?だったら生涯で聡一人きりへの恋情になりますね……」
 「それは。嬉しい」と言いかけて慌てて言葉を替えた。嬉しいと言ってしまえば愛の行為の後の戯れの睦言めいたものが終了してしまうので。
「酷く酔ったフリをして、私の胸に顔を埋めておいて下さいね……」
 ロビーではなくて駐車場から非常階段のルートを辿った。そもそもその道筋は夜のドライブで散々熱を煽って顔や首筋を紅色に染まらせたりどこもかしこも尖らせたりした最愛の人を連れて帰って部屋でメインデッシュとして最愛の人の極上の花園を味わう積りだったのだが、二人の愛情が暴走してしまって――勿論嬉しい誤算だったが――目論見からは大きく外れた。ただ、このルートを「こういう」目的で使うことが出来て結局はムダになっていない現状も心も身体も浮き立つような興奮を覚えたが。





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