「祐樹……車内の温度……高すぎないか……?」
目的地に向かって車を走らせていると助手席の人がごく薄い紅色の顔で祐樹を見つめている。目論見が有ってこの気温設定にしたが最愛の人が疑問に思うのも尤もだ。祐樹だって汗ばむほどだし、それに普段はこんなに高くはしない。
「良いのです……。温度調節なら窓を開けてください……」
最愛の人は怪訝そうに切れ長の瞳を大きく見開いて祐樹を見ていたが、祐樹が何も言わないと分かると窓の開閉スイッチを押している。
羽織る物は持参しているが、それを着用されては祐樹が困る。
普段なら一枚一枚を脱がす喜びが有るけれども、限られた空間しかない車内では自ずと行動も制限される。
「この山です。聡を是非ともお連れしたかったのは」
何の変哲もない、ただ高さは割と有る山の前でスマホを出して確かめてみた。何だか「隣のトト〇」が住んでいそうな感じの山で――まあ、車の音を煩く感じて引っ越しするような気もしたが――鬱蒼とした木々とギリギリ二車線の山道が見える路肩に停めた。
街灯と表現するよりも蛍光灯といった感じの光しかない場所だった。
山道を車で攻略しようという人間は居ないらしくて他の車のヘッドライトの光はないし、田んぼと畑と思しき土地があるだけで、民家もなかった。ホテルの男性スタッフに教えて貰った後に祐樹も地図を拡大して家がないのは確かめてあった。こういう時にはグーグルマップはとても役立つツールだ。
カーナビは車を買った時に付いて来たけれど、最近はスマホをナビ代わりに出来るスマホホルダーも売っている。ただ、祐樹は休日にしか乗らないし、車には付けていない。それほど高いモノではないが、不要なモノは買わない。その代金を節約(?)したら最愛の人の大好きなケーキを買えると思ってしまったし。
「ここか……。一体……え?」
運転席から最愛の人へと顔を近づけてキスをした。先ほどのように唇に触れるだけの軽いキスではなくて、唇を舌で辿って半ば強引に口腔内に入って舌の付け根や先端といった感じやすい場所を重点的に愛する。同時に白いワイシャツの釦を上から一つずつ外していって、滑らかな素肌の感触を味わいつつ胸の尖りを車内の空気に晒した。ただ、シートベルトに戒められた場所は当然触れない。
「聡の肢体は全部食べてしまいたいほど綺麗ですが、胸の尖りは私が愛するとルビーよりも紅く硬く、そして熱くなりますよね……」
激しく絡み合った舌の余韻のように―-まるで舌を使って愛の行為をしているかのような感じだった。お互いの感じる箇所は二人とも当然把握していたし――お互いの唇に銀色の細い橋が架かっている。それを断ち切るのも惜しいような気がしたが、次のステップに進むためには已むを得ない。
まだ薄い紅色の尖りを四本の指を使って強く早く愛してみた、石を磨くような感じで。
「あっ……祐樹っ……。もう片方もっ……。指で弾いて……欲しっ……」
車内の空気までもが紅く染まっていきそうな吐息交じりの嬌声も艶っぽく濡れている。
祐樹の指の動きで紅さを増した尖りのような空気が車内を愛の場所に塗り替えていくような気がする。
「シートベルトを外さないと流石に無理ですね。外して下さいますか?」
カチッという音が車内に大きく響いたような気がした。最愛の人の熱い吐息と切れ切れの艶やかな声、右の尖りを四本の指で強く弾いた結果の汗に濡れた素肌と指が触れ合う音に混じって。
正確にはエンジンの音も混じっているが、そういう雑音は愛の行為に耽っていると全く聞こえなくなるほどに魅惑に満ちた肢体だったので。
「あっ……」
薄紅色の肢体がヒクリと跳ねた。シートベルトの金具部分が尖りに当たったせいで。
祐樹はその部分は敏感ではないが、シートベルトを外す際の勢いの付いたベルトや金具がどの程度肌を刺激するかは知っている。服を着ていても、痛いとまでは行かないが最愛の人の尖りはただでさえ鋭敏になっているので些細な刺激でも貪欲に取り込むことも分かっていた。
「指が良いですか?それとも口で……?」
汗で濡れている白いワイシャツを素肌から剥がしながら聞いてみた。薄紅ではなくて夜目にも輝くような紅色の素肌が瑞々しく薫るようだった。
「両方で……。ただ……」
右の紅く硬い尖りを歯で挟んで頭を上下に動かし、もう片方は先端部分だけを指で転がした。
熱と硬さを増して行くにつれて薔薇色の濡れた溜め息交じりの嬌声も高く甘く車内に響いて空気までも染めていくようだった。
「ただ……何ですか?」
熱くて甘く蕩けた声が車内の空気を紅に染めていくようだった。
「ここが……祐樹の……お勧めの場所……なのか?」
祐樹の指と口の動きに連動して高く低くなる声が壮絶な色香を放っている。
確かに、この路肩部分が――これまでのドライブデートと比較しても――何の変哲もない場所だった。
最愛の人は結ばれた最初の頃は愛の行為で理性を飛ばしていたが、馴染むにつれて理性が脳の片隅に宿り続けるようになった。
そういう彼が不審に思うのも尤もだと思ってしまう。ただ、愛の行為の前菜ともいうべきこのドライブも必要不可欠だったが。
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