「え?私に出来ることなら。

 それと先ほどの祐樹の質問だが、外国人とは一回も言われていなかったし、呪術師の御三家と呼ばれる名家出身なので多分日本人だ。ただ、あの青い目は一般人には不可視の色々なことが見えるらしい特別な目なので、その副次的効果でああいう色になったのではないかと思う。あくまでも想像だし、医学的根拠も全くないがそれはフィクションの世界なので……。

 あのキャラクターは――他の女性などはリップクリームか口紅を塗っているのだろうが――唇がつやつやでそこも綺麗だったな……。祐樹も唇の形が男らしくていつも惚れ惚れして見ている。全体的な顔立ちはそこまで似ていないと思うし、性格も異なるみたいだが……、口角を上げた不敵な笑みは似ていると思うし、あの恰好をどこまで再現するのかはまだ分からないがリップクリームを塗った祐樹の姿をみ……」

 絶対に見に来てくれるのだろう、この言い方だと。確かに祐樹の顔とあのキャラクターの全体的な顔立ちは似ていないと思う。まあ、どうせコスプレとやらをするのだったら、そして最愛の人がこんなに楽しそうにしてくれるのなら是非とも見て貰いたい。今時(いまどき)はメンズリップもコンビニに並んでいるが、祐樹は使っていない。

「……それはそうと、呪いというのは人間の(マイナス)の気持ちが蓄積して出来たものらしくて、病院や学校などの負のエネルギーが溜まりやすい所では特に発生しやすいとか言われていた。

 この病院なんて……作中では呪いがたくさん発生しそうだな……。

 それはそうと、リクエストとは?」

 無理やり話題を変えたのがありありと分かる最愛の人が長く白い首を傾げている。マイナスの気持ち……。出世競争の階段を踏み外した怨恨も含めると、確か「『特級』()(じゅ)怨霊(おんりょう)」と紹介されている女の子の怨霊が居るならば、ランク分けがされているっぽい。だったらこの病院には特級以上の呪いがバンバン発生しそうな気はする。手を尽くして亡くなってしまった患者さんの無念な気持ちについては忸怩(じくじ)たる思いは当然有ったが。

「このキャラクターの得意技、覚えてらっしゃいますよね?」

 疑問形で聞いたが否定で返ってくる可能性はゼロだろう。

「ああ。『無量空処』だろう?漢字は分からないが」

 祐樹もそうだったが、アニメだと音しか聞けないので、漢字変換が分からないのはある意味当然だ。

「そうです。漢字についてはこのマンガ本で確認してください。あ、それとこのマンガは1巻からではなくて0巻から読むのがお勧めらしいです。

 その『無量空処』のポーズ……あ、指だけで大丈夫です……、それをしてみて貰って良いですか?……今後の参考にしたいので」

 向かいに座った彼が怪訝(けげん)そうな表情を浮かべたので、慌てて言い訳というか「こじつけ」を付け加えた。

「『領域展開・無量空処』」

 アニメの俳優?いや声優だったかも知れないが、その人も割と淡々と言っていたような気がするが、芝居っけ皆無の最愛の人はむしろ恥ずかしそうな口調だった。ただ、イントネーションの模倣(まね)は完璧で、そして右手の親指を立てて人差し指と中指を絡み合わせて他の指は握っていて、薄いグリーンのワイシャツを左手の人差し指でキュっと下ろしている。

 その白くてすんなりと伸びた長い指がその形を作っている、その圧倒的な存在感と協力過ぎる破壊力は祐樹の想像していた以上に素晴らしかった。もうその指だけを凝視してしまうほどに……。

「素晴らしいです。見惚れてしまいました……。こういうふうな動きをすれば更に良いとも分かりましたし……」

 アニメではなくて、この指の動きを再現出来れば良いなと思った。

「そうか?それは良かった。少しでも役に立てて……。これは読み終わったら医局に持って行って良いか?」

 そろそろタイムリミットだ。

「はい。私が不在の場合は柏木先生にでも渡しておいてください。では後で……」

 あの指を見ることが出来ただけで眼福(がんぷく)の至りというか、教授執務階の分厚い絨毯(じゅうたん)の上でスキップしたくなるほどだった、当然しないが。

「あ、祐樹……」

 最愛の人の指が祐樹の着衣を掴んで、そして楽しげな笑みの余韻を残した顔がキスを強請るように上を向いていた。

 その唇にそっと唇を重ねた。愛情と感謝が唇で伝わるように。

 

 

 約束した時間に辛うじて間に合った小児科病棟に一歩入ると、物凄い熱量が場を支配していた。ナース達に熱烈歓迎を受けることは予想していた。しかし、熱量と共に人口密度も高い。こんなにスタッフが居るわけでもないだろうに……と思って周りを見渡せばどこかで見た覚えのある若手の医師とか技師達――小児科所属でないことだけは確かだ――そし小児科のナースと思しき人が「参加料をまず支払って下さい。一人5万円です」と言って回っている。

……参加料が5万円……?祐樹も支払わなくてはいけないのだろうか……。思わず(きびす)を返そうとしてしまった。


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ハロウィンに間に合うようにと思っていたのですが、安定の終わらなさです(泣
多分、読者様は私の悪癖をご存知だと思いますので「またかよ!!」と生暖かく見守ってくださると嬉しいです……。

     こうやま みか拝



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