最愛の人が助手席でカブトムシの入った容器をとても楽しそうに見ている。片手には祐樹の渡したペットボトルを持ってしきりに飲んでいる。

 ただ、その眼差しには艶っぽさが混じっているのは先ほどの祐樹の指の愛撫のせいだろう。

「あ!あれはオオクワガタか?カブトムシも居る……」

 先ほどの名残の艶っぽさを秘めた声が夜の闇に弾んでいる。

「あれはミヤマクワガタだと思いますが、いかにもクワガタ虫といった冠状の突起が見事ですよね。

 ああ、こちらに……」

 ミヤマクワガタの雄を――(めす)には角みたいな突起がないので直ぐに分かる――持つ指先も紅色に染まっている。

「これがオオクワガタですよ……。どちらがお好きですか?」

 拾い上げて最愛の人に差し出した。

「甲乙つけ難いが……。祐樹が捕ってくれたオオクワガタの方が私にとって格別なので」

 最愛の人の弾んだ声が祐樹にとっては最大のご褒美だ。

「可愛い人ですね、聡は……」

 背中に腕を回して唇を重ねた。背骨のラインを優しく上下しながら。

「ゆ……祐樹っ……。

 それ以上したらっ……。全部欲しくなって……しまうのでっ……」

 祐樹の腰に最愛の人の半ば育っている下半身が当たっている。欲情した天使のような感じの声が素晴らしい。

「では、ホテルに帰りましょうか……」

 仕上げのように紅く染まった耳朶を弱く噛んだ。

「あっ……」

 一際艶やかな声を零すと、祐樹の身体に肢体を預けてくる。

「聡……まだ感じているでしょう?」

 最愛の人が幾分震える薄紅の指でプラスチック容器に入れた今夜の収穫を後部座席に置いたのを見計らってそう聞いてみた、取って置きの甘く低い声で。

 シートベルトに戒められた肢体がヒクリと動く。

「想像してみてください。一番感じていらっしゃる場所を。

 胸のルビーのような尖りですか。それとも雫を零す先端部分……。花のように綺麗な幹ですか……。もしくは実った果実のような二つの場所……。または、聡の極上の花園の中ですか……?」

 祐樹が普段よりもゆっくりと言うたびにしなやかな肢体がヒクリと反ったり、長い脚が痙攣したかのように動いたりする姿は絶景だった。

「ゆ……祐樹、一番は決められない。どこも……とても気持ちが()いので……」

 言葉で煽られた熱を逃がすためか、長く紅い首を左右に振っている。そして、目論見通りに祐樹の渡したペットボトルの水を飲んでくれている。

「こういう曲がりくねった山道をドライブする時、上半身は素肌が良いですね……。

 胸の尖りがシートベルトで擦られて聡のルビーがより一層硬くなっているのを拝見出来ますので……。まさかシートベルトを押し上げるほどにはならないと思いますけれど……。

 対向車の運転手の視線も有りますから、羞恥心が快楽の後押しをしてくれますよ。

 体調次第では、乾いた絶頂も味わえますし。

 良いと思いませんか」

 ホテルの部屋に向かうまでの前菜代わりの言葉だったが効果は覿面(てきめん)で、陸に打ち上げられた白魚のようにヒクリヒクリと背中が反っていたり、紅を()いたような頬が綺麗な紅に染まっていたりする。

「ゆ……祐樹……。ホテルはまだか……」

 上気した紅い頬と切なげな煌めきを宿す眼差しが壮絶な色香を放っている。

 普段は滅多に祐樹を急かしたりしない人だが、相当「そういう」劣情に身を焦がしているに違いない。

「もう直ぐですよ。神戸の市街地に入りましたから。

 シートベルトで戒められた下の尖り、今度は是非素肌で味わってください」

 滑らかな素肌を他人に見せるのは抵抗も有りますが……肝心な場所は隠れているので大丈夫ですよね……」

 ありありと想像したのか、上半身が僅かに反ってシートベルトに押し付けられた。

「やっと着きましたね。

 聡の羽化も楽しみですが、セミはどうなっているでしょうか?

 部屋に入って――最愛の人は煽り過ぎたせいか息も絶え絶えといった感じで、それもまた素敵過ぎる――灯りを点けた。

「カーテンの所に一匹いますね。ああ、この子は私達のため、健気に頑張ってくれたのでしょうか?ベッドヘッドまで上ってくれています。もう一匹は、ああ、ソファーの背で羽化していますね」

 セミの羽化を見せたかったというのもこのデートの目的だった。

 艶っぽい吐息を零し続けている最愛の人も祐樹の指し示す方へと顔を向けて、束の間息を飲んでいた。

 どういう感想が聞けるのだろうか?

 まあ、散々煽った肢体の熱でそれどころではないかも知れない。

 せめて一言だけでも感想は欲しかったものの、祐樹が一番に望むのは隣に佇んでいる最愛の人の身体だったので、どちらでも良い。

 それにセミの羽化は一晩中かかるので、一回愛の交歓を終えてからゆっくりと見れば良いことだったし。




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